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中野ミホのコラム「まほうの映画館2」

中野ミホ(Singer/Songwriter)のコラム「まほうの映画館2」
中野ミホが最新作から過去の名作まで映画を紹介します。
●プロフィール:中野ミホ/2009年に札幌でDrop’s結成、vo&gtを担当。2021年10月にDrop’s活動休止。現在はシンガー、ソングライターとして活動。Favorite→映画、喫茶店、Tom Waits、Chet Baker。
●公式サイト:https://linktr.ee/nakanomiho
●中野ミホYouTubeチャンネル:https://www.youtube.com/channel/UCjvQfnXVg6hTd8C8D6PSQGQ


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第20回「かっこ悪くても、そのままの自分を歌え! 愛は続いてく、チック、チック...ブーン!」

2021.12.06 upload

『tick, tick... BOOM!:チック、チック...ブーン!』 (2021年:アメリカ)
原題:tick, tick... BOOM!
監督・リン=マニュエル・ミランダ
原作:ジョナサン・ラーソン
脚本:スティーブン・レベンソン
キャスト:アンドリュー・ガーフィールド/アレクサンドラ・シップ/ロビン・デ・ヘスス ほか
公式サイト:https://www.netflix.com/jp/title/81149184
全国順次公開中、Netflixで配信もスタート


みなさん、こんにちはー!
気づけばあっという間に12月になりましたね。

なんかいつも、12月はわくわくします、大好きな季節です、って書いてる気がしてふと辿ってみれば。
この「まほうの映画館」も、サイトのお引越し前含めると、約3年半続けさせてもらっていることに気づきました!(気づき方よ)
改めて、ありがたいなぁ。お付き合いいただいている皆さん本当にありがとうございます。

今月は観たい映画がたくさんあって今からとっても楽しみ!
最近やはりNetflix制作の映画がすごく多いですね。一部の映画館ですが上映するものもあって嬉しい。
今回観に行った作品もNetflix映画です。

『tick, tick... BOOM!:チック、チック...ブーン!』(『Tick, Tick... Boom!』)
2021年、アメリカの作品。
監督は、ブロードウェイ・ミュージカルの人気作『ハミルトン』『イン・ザ・ハイツ』などを手がけたリン=マニュエル・ミランダ。今回が映画監督デビュー作とのこと。
原作は、今作の主人公でもあるジョナサン・ラーソンが1990年に上演した“ロック・モノローグ”、『tick, tick... BOOM!』。 この映画では原作の舞台は劇中劇として扱われていて、物語は実際のジョナサン自身に焦点を当て、彼の伝記映画のような形になっています。

出演はアンドリュー・ガーフィールド、アレクサンドラ・シップ、ロビン・デ・ヘススなど。

主人公のジョナサン(アンドリュー・ガーフィールド)は、ミュージカル作家としての成功を夢見て、ダイナーでアルバイトをしながらなんとかNYに暮らしています。
同じく芸術家を志していた幼なじみのマイケル(ロビン・デ・ヘスス)や恋人のスーザン(アレクサンドラ・シップ)は、安定した職につき始め、ジョナサンは日々焦りを抱えながら過ごしていました。
30歳の誕生日まであと数日、制作に8年を費やしてきたミュージカルの関係者に向けての試聴会を目前に控えているものの、重要な場面の曲が書けないまま……。
のちにロック・ミュージカルの金字塔的作品として多くの人に愛される『RENT/レント』を作り上げ、その公演初日に35歳の若さで亡くなったミュージカル作家・ジョナサン・ラーソンのはじまりの物語です。


これはちょっと、予想はしていたけれどやっぱり、わかりみが深すぎて泣きました……。
めちゃくちゃリアルで、グサグサきました。

実は私はあまりミュージカル映画というものを観ていなくて、ミュージカルも観たことがなくて、ジョナサン・ラーソンのことも恥ずかしながら知らずだったためその勢いに最初は少しおおぉ……となってしまいました。笑
だけどアンドリュー・ガーフィールドがすごい良くて、すぐにミュージカル世界に入れた!
前にこのコラムでも書いた『アンダー・ザ・シルバーレイク』の時とあんまり変わってないというか、笑
すごく親しみやすくて適度にふざけててよかったなぁ。
そしてこんなに歌えるのか! すごい。

主人公はあと数日で30歳。一つの作品にもう8年を費やしている。
しかもその作品の試聴会が数日後に控えているのに、重要な場面の曲が全然できてない。
幼なじみの親友は俳優の道をあきらめて広告マンになって高級マンションに住んでる。
恋人はダンサーだったけれど、足の怪我を機に第一線からは離れていて、地方でダンスの先生の仕事を見つけ、心機一転そちらに行こうとしている。
彼はダイナーでバイトしながら、そんな自分に常に焦りを感じている。
私も30歳手前で音楽をやっている身としては、この状況からしてもう刺さりまくりでした……。
舞台は90年のNYだけど、この年齢のこの感じって変わらないのね。

そう、冬のNYの街がとっても素敵でした!
自分もちょうど2年前の冬にNYに行ったのですが、その時何時間も買い物した本屋さんや、セントラルパークや、あーこんな感じだったなぁという景色がたくさん映し出されて幸せでした。
冬のNYは本当に寒くて、コートにマフラーで自転車に乗るジョナサンとてもよかったな。
また行きたいなぁ、とても恋しいです。

私が一度行っただけでも思ったのは、本当にいろんな人がいるなーってこと。
映画を見てもわかるように、リッチで高層マンションに住んでる人もいれば、路上で暮らしているような人ももちろんいるし、深夜の地下鉄はちょっと怖いし、人種もかなりさまざま。
東京も少なからずそういう街だとは思うけれど、それよりもっとはげしいというか。
物価も高いので若い芸術家とかは本当に大変なんじゃないかな。
でもやっぱり、それでも住み続けたくなるような、誰でも受け入れてくれるような魅力がNYには絶対にあるなと思いました!

話がそれてしまいましたが……

そんなジョナサンの切実な、笑えないような産みの苦しみや年齢への焦りが、ミュージカルになることでこんなにもポップに、わかりやすく伝わるのってすごい。
クスッと笑えるような日常の曲、恋人とのことを歌った曲。
歌にしちゃいけないことなんて一つもないんだ、なんだって歌にしていいんだ!と思った。

試聴会のその日の朝まで書けなくて、プールに泳ぎに行ったらプールの底の模様が音符になって、そのまま書いた大事な曲!(なんのこっちゃと思うかもですが観たらわかります笑)
その曲を歌う恋人のスーザンの歌声がとにかく最高すぎて涙がでました……。
最初の、ミュージカルちょっと入り込めないかも……な感じは完全に消えていました。

ラスト近くでベテランのエージェントの女性に言われた言葉、
「とにかく次の作品を書きなさい、作家というのはそういうもの。壁に投げ続けて、いつかくっつくかもしれない。
あなたの身の回りのことを書きなさい。」
というような言葉がそのまま自分にもグサーっと刺さりました。まさにその通りだ……。
とにかくやり続けること、そして自分のことをありのまま書くこと。
それがいつか多くの人の心を掴むための唯一の道なんだと思う。

そして時代はまだエイズが不治の病で、彼の友達も亡くなったりしていて。
偉い人たちの言動に対して声をあげたりすること、自分たちの世代に訴えかけること。
そういうことができるのが芸術だし、立ち向かう勇気を持つことはすごく大切なんだなとも改めて感じました。

安定した道を選んだ親友も、現実を見ようとする恋人も、全然間違ってないし、きっとみんなないものねだりで、隣の芝は青く見えたりするよね。
だけど彼はとてもすてきな周囲の人たちに恵まれていたんじゃないかなぁ。

大変だー、けど楽しい! 愛がなくちゃ。愛でどこまでも行ける気がする。
そう思ったなぁ。35歳で亡くなってしまったことはとても惜しいけれど、彼の作品は今でも確かに若者の共感を得て広がっている、本当にすごい。

全くミュージカル知識ゼロの私でも、すごく楽しめたし、刺さりまくり。
かなりパワーと刺激をもらえました! 観てよかった。

Netflixで配信開始されているようなので、お家でもぜひ観てみてくださいね。
ではまた! みなさんあたたかくして、素敵なクリスマス&年末をお過ごしください〜。

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