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中野ミホのコラム「まほうの映画館2」

中野ミホ(Singer/Songwriter)のコラム「まほうの映画館2」
中野ミホが最新作から過去の名作まで映画を紹介します。
●プロフィール:中野ミホ/北海道札幌市生まれ。2009年に結成したバンド「Drop’s」のボーカルとして活動し、5枚のフルアルバム、4枚のミニアルバムをリリース。2021年10月にDrop’sの活動を休止後、現在はシンガー、ソングライターとして活動。ギター弾き語り、ベースを弾きながらのサポートピアノとのデュオ編成やドラムを加えてのトリオ編成など、様々な形態で積極的にライブ活動を行なっている。
●公式サイト:https://nakanomiho.tumblr.com
●中野ミホYouTubeチャンネル:https://www.youtube.com/channel/UCjvQfnXVg6hTd8C8D6PSQGQ


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第25回「誰も予想できない、未来について話そう。前へ、前へ。カモン カモン」

2022.05.03 upload

『カモン カモン』 (2021年:アメリカ)
原題:C'MON C'MON
監督・脚本:マイク・ミルズ
キャスト:ホアキン・フェニックス、ウディ・ノーマン、ギャビー・ホフマン ほか
公式サイト:https://happinet-phantom.com/cmoncmon/
全国順次公開中


みなさん、こんにちは。
だんだんあったかい日が増えてきたりジメジメ?したり何かと不安定な空気ですが、いかがお過ごしでしょうか?
風が気持ちいい瞬間があると嬉しくなりますね。

さて、今月もずっと楽しみにしていた作品が劇場公開してくれました。
A24とマイク・ミルズ監督、そしてホアキン・フェニックス!
予告編を観たときからすでにウルウルきていて、これは必ず観なければと思っていた作品。

『カモン カモン』(『C'MON C'MON』)
2021年、アメリカの作品。
監督・脚本はマイク・ミルズ。主演はホアキン・フェニックス、ウディ・ノーマン。

NYでラジオジャーナリストとして1人暮らしをするジョニー(ホアキン・フェニックス)は、母の死がきっかけで疎遠気味になっていた妹ヴィヴ(ギャビー・ホフマン)から、彼女の夫の問題のために9歳の甥・ジェシー(ウディ・ノーマン)の面倒を数日間みてほしいと頼まれます。
そうして突然始まった二人の共同生活。
ジェシーは好奇心旺盛でちょっと風変わりで、ジョニーを戸惑わせることもしばしば。
ですが二人は次第に距離を縮めていきます。
デトロイト、ロサンゼルス、ニューヨーク、そしてニューオリンズ。
ジョニーを通して実際にアメリカの子どもたちへインタビューした映像も織り込まれた、不器用な大人と子どものロードムービーです。

はぁ、よかった。本当によかった。観終わった後もあとからあとからじんわり涙がでた。
なんて素晴らしい作品に出会ったんだろう、という幸せな気持ちで満たされました。

まず、モノクロの映画をこんなに美しいと感じたのは初めて。
もちろん大好きな白黒作品はたくさんあるのですが、また違った新鮮な感覚。
特に街を俯瞰したシーンは鳥肌が立つほどでした。
色がないからこそ見えてくる人物の表情や言葉の深みもあるんだろうな、この作品がモノクロであることにすぐに納得がいきました。
音楽もとても好き。『人生はビギナーズ』のときのロマンチックなピアノも大好きでよくサントラを聴いていたけど、今回もとても心地よかったな。

とにかく終始、ジェシーとジョニーの表情、話し方、もうほんとに一つもお芝居とは思えなかった。
「大人と子ども」がこの作品の大きなテーマだと思うのだけど、子どもがいない、接する機会もほぼない私にとってはジョニーと同じかそれ以上に子どもは未知の存在に思える。
自分が子どもの頃はどんな風に大人と接していたんだっけ……となりました。
なぜそういう行動をとるのか、彼のなかで何が起こっているのか、予想もできないことだらけ。
でも子どもたちひとりひとりに彼らなりの主張があって、考え方があって、ちゃんと対話して理解していくことしかないのだなぁと思いました。

大人だって、全然偉くないし完璧じゃないし、劇中でもジョニーがジェシーを叱ってしまったとき、彼と親密になれたとき、きっと今までにない気持ちになったんだろうと思う。
大人も子どもも、予想だにしないことがいっぱい起こる。迷いや不安、お互いから気づくこともたくさん。
それぞれの気持ち、ひとつひとつを丁寧にすくいとって、本当に二人の生活をのぞいているようで素晴らしかったです。あと劇中で読んでいる本もとても気になった! 素敵な言葉がたくさんありました。

ジェシーはとても大人びたように話をすることもあれば、ママが恋しくて泣きだしたりもする。
おやつがなくなって泣いたことを後から自分で「恥ずかしかった」と言ったりする。
大人がハッとするような鋭い言葉を投げかけたりもする。
子どもは本当に複雑で、大人以上にきっといろんな感情が渦巻いているんじゃないかなぁ。
そして最終的にはとにかくかわいい。

彼をただ「子ども」としてでなく、完全にひとりの人間として、俳優を通して描かれていることにとてもに感動したし、インタビューを受けているアメリカに住む子どもたちの言葉も本当にしっかりしていて驚きました。
未来について、自分たちの住むところについて、彼らはきちんと自分の言葉で話していた。
ていうか自分が子どもの頃こんなこと考えてなかったよなぁと思いました……。
現代に生きる若者たちは不安なこともきっとあって、それでもしっかりと前を見ている。
自身や周りのことをちゃんと見ているんだなぁと感動しました。

子どもはやがて大人になるし、今の自分がそうであるように多くの幼い頃のことは忘れてしまうんだろうな。
でもその一瞬が本当に尊くて大切で、大人はちゃんとそばにいて守ってあげなくてはいけないんだなと改めて思った。
子どもが生きづらい、苦しいような世の中にしてはいけないな。
意見をしっかりきいて、リスペクトして、ひとりの人間としてきちんと接する、そしてなによりも大きすぎるくらい大きな愛をあげること。

子育てを経験したことのある人はきっと当たり前のように、身をもって感じることなんだろうな。
いつかもしも自分に子どもができたとき、その子がジェシーくらいの歳になるとき、そしてもっと大きくなったとき、何回も観返したい作品だなぁと思いました。一緒に観てみたりもしたいな。
あとは自分の親がこれを観たらどんな風に感じるんだろうというのも気になる。
思い出しただけで涙が出るシーンがいっぱいありました。
もうとにかく愛おしくて、大事なひとを抱きしめたくなるようなずっと心に残る作品。すべての人におすすめしたい!

というわけでこのへんでまたね。
5月もみんなが穏やかに過ごせますように。

© 2022 DONUT

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