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中野ミホのコラム「まほうの映画館2」

中野ミホ(Drop's)のコラム「まほうの映画館2」
中野ミホが最新作から過去の名作まで映画を紹介します。
●プロフィール:中野ミホ/2009年に北海道・札幌で結成されたDrop’sのvo&gt。Favorite→映画、喫茶店、Tom Waits、Chet Baker。公式サイト:http://drops-official.com

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第3回「どんなに暗く冷たい雨だって、いつかは止むだろう。ブラック・レイン」

2020.04.28 upload

『ブラック・レイン』 (1989年/アメリカ)
原題:『Black Rain』
監督:リドリー・スコット
キャスト:マイケル・ダグラス、アンディ・ガルシア、高倉健、松田優作ほか
—————

みなさん、こんにちは。
お元気ですか?

4月、外はどんどんあったかくなってきて、気持ち良さそうで
あぁ〜深呼吸したい。。となりますよね。
たまにはベランダに出て深呼吸したり、お家の中で窓開けてぼーっとしたり、そういう時間も大切だなぁと思います。
自分の心と体と上手に付き合っていけたらいいな。

さて、今回は私のお家時間のおともAmazon Prime!で配信されているこちらをご紹介したいと思います。

『ブラック・レイン』。
1989年、アメリカの作品。監督はリドリー・スコット。
出演はマイケル・ダグラス、アンディ・ガルシア、そして高倉健、松田優作など。

ニューヨーク市警の刑事ニック(マイケル・ダグラス)とチャーリー(アンディ・ガルシア)はNYで起きた日本のやくざ同士での殺人事件に居合わせ、そのまま佐藤(松田優作)を逮捕します。
彼を日本に連行する役目を与えられた二人ですが、目的地の大阪に到着するなり、あっさり逃亡されてしまいます。
ニックとチャーリーは言葉の通じない日本で困惑しながらも、佐藤を自らの手で捕まえようと追跡に乗り出します。
そんなふたりを監視するよう命じられたベテランの警部補、松本(高倉健)と共に次第に事件の手がかりをつかみ闇に迫っていきます。
大阪が舞台となっている、ドキドキのサスペンスアクション作品です。

いやー、これは本当にかっこよかったです……!
まさに歴史的です。

まず最初にNYの場面から始まるんだけど、ニックとチャーリーのシーンは普通にこう、かっこいいアメリカの刑事もの感があってうんうん、と観ていたのですが、二人がランチをとっているバーに佐藤が現れた時の空気の変わりよう!!
もう鳥肌が立ちます。やはり松田優作さんの狂気、目をひん剥くところとか、全編通して他の誰にも真似できない存在感にとにかく圧倒されます。凄み。
絶対現実にこんな人いないでしょう、っていうくらいの表情なんだけど、それが観るものを釘付けにしてしまうくらい、芸術的です。

そして松本(高倉健さん)の登場シーンも最高!
警察の事務所みたいなところで蕎麦をすすってるんだけど、それだけでなんか、わぁー、となります。やっぱり特別な色気、かっこよさがあるなぁ。
彼は組織や規律を重んじる真面目な警部補で、最初はアメリカ人の二人のやり方に戸惑ったり、振り回されたりするんだけど、次第に絆が芽生えて彼自身の生き方も考え始めることになります。
英語話すの素敵だったなー。なのに「ニックさん」ってちゃんとさん付けで呼んでたり、何かにつけてきちんと手土産持って行ったり、ニックのうどんに薬味かけてあげたりとか。
あとクラブでお花の飾りがついたかわいいカクテルみたいなの飲んでるところとか、素敵ポイントがいっぱいあったなぁー。健さん。。

この二人の日本人俳優の存在感がやっぱり、すごいなぁと本当に思いました。
気迫というか、表情、目がすごい。
もちろんマイケル・ダグラスやアンディ・ガルシアもすごくかっこよくて、キラキラしているのだけどそこに全くひけをとらない魅力がありました。
ハリウッドの監督の作品で、こんなに色気のある空気で日本人俳優をしっかりとみられるのは、なんか勝手に嬉しくなってしまうなぁ。
さすがです。

舞台はほとんどが大阪なのだけど、タイトルにもある「雨」がすごく印象的でした。
雨にぬれたアスファルト、深夜のがらんとしたネオン街や地下街、モータープール。
けむる美しい雨上がりの街。
そして市場、ショートヘアのホステスの女の子が黒いキラキラのミニドレスで市場を歩くシーン、よかったなー。
あと当時の車とかも良い! タクシーやパトカーはあの四角い感じのやつ! 昔の形のセダンっていうのかな?(すいません)
デコトラみたいなギラギラの派手なトラック、スズキのバイク。
東京とはまた違うであろう、当時の大阪の雑多なきらびやかさのようなものがかっこよかったです。
80年代のホステスの女の子たちの派手なメイクとか、かわいいなー。肩幅広いドレスとか。
クラブにいるおじさまたちの偉そうな感じとかもなんか面白かったです。

海外の監督・俳優さんが日本の景色の中でつくった作品って、ツッコミどころ多いなぁ、ってなることもあるけどこの作品はなんか良い意味で客観的に観られたというか、日本面白い!渋かっこいい!って感じがしました。笑
きっと丁寧にリサーチして撮影したんだろうなぁ。

ストーリー的には、日本の極道の粛々とした、暗黙のルール的な雰囲気をアメリカ人刑事のニックがどんどん踏み入っていっちゃう感じ、ハラハラしたけど面白かった!
鍵を握るアメリカ人ホステスのジョイス(ケイト・キャプショー)が、「日本人の言う“イエス”は“ノー”で、“たぶん”は“ダメ”ってことなのよ」と言ったり、松本が「チームのことを考えろ。日本人のようにな」「今のアメリカにあるのは映画と音楽だけだ、日本人は機械を作り、平和を手にした」というとニックが「だが新しい思いつきを持つ人間は押しつぶされるんだろ!」という。そういったセリフが印象的だったなぁ。
日本とアメリカそれぞれの良いところとあまり良くないところ。
個人的には、どちらも対等に描いている感じがして、なるほどなーと、気持ち悪くなく観られました。
それってすごいことだと思う。
(関係ないけどジョイス役のケイト・キャプショー、めっちゃデヴィッド・ボウイに似てると思ったの私だけでしょうか!? 笑)

タイトルの「ブラック・レイン」は、戦時中に原爆投下や空襲の後に日本に降った黒い雨のことで、それを具体的に示唆するのはやくざの親分のセリフだけなのだけど。
私はこの映画の時代も、もちろんそれ以前の戦争もリアルタイムではなくてあまり実感なく観てしまうけど、きっと当時の人やもう少し前の世代の人たちはアメリカへの意識も少し違っていたのかなぁとか。
色々考えながら観るのも勉強になるなぁと思いました。

観る人によってどう感じるかはわからないけど、わたしは俳優さん、映像、ストーリーのパワーがすごくてすごく気持ちよかった!! つまりは、男たちの友情の物語なんだよね。それが全てなのかも。
観てよかった!と心から思いました。
あっ、もちろんアクションシーンの見応えも抜群ですよ! ひぃー!

ちなみにこの作品は松田優作さんの遺作なのだそうです。
やっぱり素晴らしい表現はずっと残るんだなぁと改めて思いました。
こうやって後の時代の人間が見ても鳥肌が立つほどすごいんだもの。
何回も言うけど、かっこいいなぁ。

はぁー、こうやってお家で映画を観て余韻に浸るだけの一日も悪くないですね、というかすごく贅沢!笑
みなさんも好きな映画をおともにお家での時間を過ごしてね。
映画を観ればどんなところへだって行けます。

それではまた!
少しでもおだやかに過ごせますように。
お元気でー。

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