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中野ミホのコラム「まほうの映画館2」

中野ミホ(Singer/Songwriter)のコラム「まほうの映画館2」
中野ミホが最新作から過去の名作まで映画を紹介します。
●プロフィール:中野ミホ/北海道札幌市生まれ。2009年に結成したバンド「Drop’s」のボーカルとして活動し、5枚のフルアルバム、4枚のミニアルバムをリリース。2021年10月にDrop’sの活動を休止後、現在はシンガー、ソングライターとして活動。ギター弾き語り、ベースを弾きながらのサポートピアノとのデュオ編成やドラムを加えてのトリオ編成など、様々な形態で積極的にライブ活動を行なっている。
●公式サイト:https://nakanomiho.tumblr.com
●中野ミホYouTubeチャンネル:https://www.youtube.com/channel/UCjvQfnXVg6hTd8C8D6PSQGQ


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第21回「どんなときだってずっと、家族は家族。大丈夫。パーフェクト・ノーマル・ファミリー」

2022.01.08 upload

『パーフェクト・ノーマル・ファミリー』 (2020年:デンマーク)
原題:En helt almindelig familie
監督:マルー・ライマン
脚本:マルー・ライマン
キャスト:カヤ・トフト・ローホルト/ミケル・ボー・フォルスゴー/リーモア・ランテ ほか
公式サイト:https://pnf.espace-sarou.com
全国順次公開中


みなさま、あけましておめでとうございます!
2021年はどんな年でしたでしょうか。
わたしは色々ありましたが、やっぱり周りのひとや応援してくださるみなさんなしでは絶対に生きていけないなぁと改めて強く思った年でした。
感謝。大感謝です。この場を借りて、いつも本当にありがとうございます。
2022年は大胆に、軽やかに突き進みたい!と思っています。
みなさま、本年もどうぞよろしくお願いいたします。

さてさて、今回は昨年とても気になっていて、年末に観に行きましたこちらの作品を紹介したいと思います。
ポスターやホームページもかわいいのです!
『パーフェクト・ノーマル・ファミリー』(『En helt almindelig familie』)
2020年、デンマークの作品。監督・脚本はマルー・ライマン。
出演はカヤ・トフト・ローホルト、ミケル・ボー・フォルスゴーなど。

デンマークの郊外で暮らすエマ(カヤ・トフト・ローホルト)は、地元のサッカークラブで活躍する11歳の女の子。家族四人で幸せな日々を送っていました。ところがある日突然、両親から離婚すると告げられます。
しかも離婚の理由は「パパが女性として生きていきたい」から。
ホルモン治療、そして性別適合手術を受け女性になったパパ(ミケル・ボー・フォルスゴー)。
自分を「アウネーテ」と呼んでほしいと家族に告げます。
姉のカロリーネ(リーモア・ランテ)は上手に受け入れますが、エマは戸惑い、うまく接することができません……。
11歳の時に父親が女性になったという監督の実体験を基に、少女の視点で描かれる家族の物語です。

監督の実話だったのね!とびっくりしました。とってもよかったー。
お父さんがカミングアウトする映画といったら、『人生はビギナーズ』を思い出したけど、それとは年齢的にも国もまた違って新鮮で、何よりかわいかった……。
時代は90年代後半で、主人公のエマはまだ11歳。
ある日突然、お父さんが女性になると言ったら……それはかなりの衝撃だと思います。
自分の家族が突然形を変えてしまったら。昨日までの「お父さん」ではある意味なくなってしまったら。
戸惑うのは当たり前だと思う。

でもお父さん・トマス(アウネーテ)の「もう我慢できない」という気持ち、それを理解して話し合う家族、自分らしく自然に生きることを尊重していて素晴らしいなぁとまず思った。
感情的になってしまう場面ももちろんあるけど、常に抱きしめ合って、名前をちゃんと呼び合っていて素敵だったな。
エマの最初の視点で、女性の服装をしたお父さんが映った時、ああ、こうなりたかったんだ、これが本当のお父さんなんだ、って思うとなんだか泣けた……。

これはエマの小さな世界にとってはとても大きなことで、本当はお父さんが大好きで一緒にいたいのに、わざと意地悪にあたってしまったりする。
周りの友達や気になる男の子からどう見られるかとか、彼(彼女)が周りから「お母さん」と呼ばれるのが嫌だったり。
アウネーテの存在をうまく受け入れることができずにいる。そりゃそうだよね。

それでも一緒にいるときの笑顔や、うなずく表情は子どものそれで、なんていうか一つじゃない、相反する気持ちとかその時々で表れる感情がすごくリアルだなぁと思いました。
とても複雑で、常に変化していたあの頃の気持ちを遠く思い出したような……透明でくすぐったい。
彼女の表情ほんとうに素晴らしかったです。

あと90年代の感じもよかったです。
ブリトニー・スピアーズに憧れてるお姉ちゃん(このお姉ちゃんがまたナイスキャラ!)の、ギャルっぽい髪型とかメイクも可愛いし、サッカー少女のエマの身につけているものも、素朴だけれど洗練されていてさすが北欧……って感じです。
アウネーテやお母さんのワンピースも素敵なものばかり。
そしてみんなで集まってお食事して、歌ったり踊ったりするシーンが多くて、お国柄もあるのだろうけどとてもいいなぁと思った! エマがお姉ちゃんのために歌うシーンは最高。。
デンマークといえばマッツ・ミケルセンですが(個人的に)、『アナザーラウンド』でもそうだった気がするなぁ。
お酒も日本よりもだいぶ若いうちから飲めるみたいですね。

話がそれました……
最後の最後でやっと「行かないで」って言えたエマの涙には泣けたなぁ……。
あんな態度取るんじゃなかった、とかもっと優しく接していたらよかった、とか家族だからこそそう思うこと、あるよね。
でもきっと気持ちは伝わってるよ、大丈夫だよ、って言ってあげたくなる。涙

タイトルにもあるけど「普通」ってなんなんだろう。「普通」の家族なんているのかな、って思うよね。
お父さんがお母さんになったっていいし、愛さえあれば形なんてどうだっていい、と心から思いました。
自分の気持ちに正直に、まっすぐに家族を愛していれば何も怖いことなんてない。
エマが小さな胸のなかでモヤモヤして苦しんで、でも最後はキラキラの笑顔になって。
彼女の視点を通してひとつの家族からおっきな愛を受けとりました。

きっと愛おしい気持ちで満たされるはずです。
機会があればぜひ観てみてくださいね。

今年もたくさん映画観るぞー。わくわく。
中野は1月もライブありますのでお近くの方はぜひです。

今年もどうぞよろしくお願いします。
みなさんにとって素敵な一年になりますように!
それではまた。

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