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中野ミホのコラム「まほうの映画館2」

中野ミホ(Singer/Songwriter)のコラム「まほうの映画館2」
中野ミホが最新作から過去の名作まで映画を紹介します。
●プロフィール:中野ミホ/北海道札幌市生まれ。2009年に結成したバンド「Drop’s」のボーカルとして活動し、5枚のフルアルバム、4枚のミニアルバムをリリース。2021年10月にDrop’sの活動を休止後、現在はシンガー、ソングライターとして活動。ギター弾き語り、ベースを弾きながらのサポートピアノとのデュオ編成やドラムを加えてのトリオ編成など、様々な形態で積極的にライブ活動を行なっている。
●公式サイト:https://nakanomiho.tumblr.com
●中野ミホYouTubeチャンネル:https://www.youtube.com/channel/UCjvQfnXVg6hTd8C8D6PSQGQ


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第28回「どんな世界でも、あなたはずっと歌っていて。ディーバ」

2022.10.01 upload

『ディーバ』 (1981年:フランス)
原題:Diva
監督:ジャン=ジャック・ベネックス
原作:ドラコルタ
キャスト:フレデリック・アンドレイ/ウィルヘルメニア・フェルナンデス/ロラン・ベルタン ほか
公式サイト:https://divafilm2022.jp
デジタルリマスター版、全国順次公開中


みなさんこんにちは。お元気ですか?
気付けば久しぶりの更新になってしまいました……。
だんだんと夏から秋にバトンタッチしてる感じ、嬉しいー。ほっ。
毎年秋の空気を吸うと一瞬札幌の気持ちになります。

さて、今回は以前からずっと観たかったこちらがデジタルリマスター上映されるとのことで行ってきました。
ジャケからしてなんだかとても惹かれませんか。素敵な予感を胸に、いざ映画館へ。

『ディーバ』(『Diva』)1981年、フランスの作品。
監督はジャン=ジャック・ベネックス、出演はフレデリック・アンドレイ、ウィルヘルメニア・フェルナンデスなど。

舞台はパリ。オペラを愛する郵便配達員のジュール(フレデリック・アンドレイ)は、レコーディングを拒み続けるアメリカ人ソプラノ歌手シンシア・ホーキンズ(ウィルヘルメニア・フェルナンデス)の大ファン。
彼はある日シンシアのコンサートを、自分が聞きたいがためにテープに盗み録りをしてしまいます。
翌日、ある娼婦が二人組の男に殺害される事件が発生。彼女は殺される直前に偶然通りかかったジュールの原付のバッグに闇組織の秘密を暴露したテープを忍ばせていました。そのテープがきっかけで警察と殺し屋に追われることになるジュール。
さらにシンシアの音源を狙う謎の二人組からも追われてしまいます。
彼はミステリアスな男ゴロディッシュとベトナム人少女アルバの協力を得ながら、街中を逃げることに。
一方でシンシアとも心を通わせていきます……。

なんだかとても不思議な余韻の残る作品でした。
劇中の台詞にもあるエリック・サティのメロディーみたいな感じというか……。
観終わった後もふわふわしてたなぁ。

ちょうど前日に家でリュック・ベッソン監督の『サブウェイ』(1984年)を観ていて、近い時代のフランスのアンダーグラウンドな空気を感じたり、地下鉄の駅が出てきたり、同じ俳優さんが出ていたりで面白かった! おしゃれでちょっとヘンテコな感じかわいい。
建物や車、着ている服も絶妙です。黄色いバイク、赤いジャケット、白のシトロエン。
リュック・ベッソン、レオス・カラックス、そしてベネックス監督は当時「BBC」と呼ばれ、新たなフランス映画の波“シネマ・デュ・ルック”を生み出したそう! 知らなかった。

個人的には、正直なところ突っ込みどころが結構あるし、話をそんなに複雑っぽくしなくてもよかったんじゃないかなぁとも思うのですが、笑
むしろこのまぜこぜな感じも魅力なのかも。
そしてなんだか他の突っ込みどころ多い系の作品とは明らかに違う、切実な愛おしさがあったなぁ。

シンシアは黒人のアメリカ人、万引きが得意な少女アルバはベトナム人。
録音テープを狙う台湾人、とかいろいろな人種の人たちが出てきて、みんなフランス語を話しているところもなんか素敵で新鮮でした。
というかとにかく個性的な人たちばかりでどうなるんだろうこれ、とドキドキ。笑

悪者のわかりやすくサングラスをかけた二人組たちや、謎に包まれているも結局は助けてくれる、悟りおじさんゴロディッシュとアルバの暮らしぶりもかなりシュール。
ただやっぱりその中で主人公ジュールの繊細でまっすぐなまなざしが、きゅーっと刺さります。
そしてなによりディーバ・シンシアの歌声! 理性の外側に押し寄せてくる、圧倒的な素晴らしさに鳥肌。

ふたりが一緒に過ごす場面はそこまで多くはないのですが、初めて彼女のホテルで言葉を交わすシーン、その後嬉しさを堪え切れないジュールもとてもいいー。
彼は衣装を盗んじゃってるうえに、彼女のコンサートを勝手に録音しているわけですから、バレたら軽蔑され、失望されてしまう。でも話せて嬉しい、そばにいたい。
彼のまなざしが気持ちの全てを物語っていて、切ないー。
明け方、淡い色の街を一つの傘で散歩するシーンは苦しいほどに美しかったです……。
ジュールが彼女の肩にそっと手を置くその前後。あれはずっと忘れないだろうなぁ。
霧雨、ピアノの旋律、ふたりの距離。何もかもが繊細でロマンチックすぎです。

あとはやっぱりラストシーンだなぁ。これに尽きます。
人のいない空っぽのオペラ座で、彼女は初めて録音された自分の歌声を聴く。
もう言葉なんていらなくって、最高です。

時代の中での監督の野心とかパワフルさと、俳優と歌手の繊細な佇まいや表情。
そんな幾つもが重なって奇跡を起こしたみたいな作品なんだろうな、と勝手に思いました。
不思議でずっと心に残るような映画。
デジタルリマスター、とっても綺麗です。観られる方はこの機会にぜひ!

それではまたね。
体調には気をつけて、朝晩は上着きてくださいねー。


中野ミホ「Breath」インタビューを掲載

© 2022 DONUT

INFORMATION


1stEP『Breath』
2022年8月17日(水)リリース
収録曲:01.My friend/02.不思議なぼくら/03.電源/04.Good morning to you/05.ハウ・アー・ユー/06.Mabataki
販売サイト:https://nakanomihoshop.stores.jp/

■ ライブ、イベントの最新情報は公式サイトをご確認ください。
https://nakanomiho.tumblr.com

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