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中野ミホのコラム「まほうの映画館2」

中野ミホ(Drop's)のコラム「まほうの映画館2」
中野ミホが最新作から過去の名作まで映画を紹介します。
●プロフィール:中野ミホ/2009年に北海道・札幌で結成されたDrop’sのvo&gt。Favorite→映画、喫茶店、Tom Waits、Chet Baker。
公式サイト:http://drops-official.com
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第14回「言葉にならない、胸の奥にある音楽のようにふるえる。メリークリスマス!ミスターローレンス。」

2021.04.23 upload

『戦場のメリークリスマス 4K修復版』 (1983年/日本、イギリス、ニュージーランド)
原題:『Merry Christmas, Mr. Lawrence.』
監督:大島渚
脚本:大島渚、ポール・マイヤーズバーグ
キャスト:デヴィッド・ボウイ、トム・コンティ、坂本龍一、ビートたけし ほか
公式サイト:https://oshima2021.com
全国順次公開中
—————

みなさんこんにちは。
4月も終わりに近づき、みどりの匂いがいい感じの季節になってきましたねー。
サンドイッチ持ってピクニックにでも行きたいなぁ。

さてさて。
今月は、劇場で4K版を上映すると知ってから絶対に観に行こうと心に決めていた、こちらの作品。
『戦場のメリークリスマス(『Merry Christmas, Mr. Lawrence.』)』です。
初鑑賞でした! 観たことがある方も多いと思います。

1983年、日本、イギリス、ニュージーランドの合作映画。
監督は大島渚。
主演は坂本龍一、デヴィッド・ボウイ、ビートたけし、トム・コンティ。
他にも内田裕也やジョニー大倉、三上寛などのミュージシャンも出演しています。

舞台は1942年、戦時中の日本統治下にあるジャワ島、日本軍の俘虜(捕虜)収容所。
収容所で起こった事件をきっかけに、血の気の多い日本軍軍曹ハラ(ビートたけし)と、温厚で日本語が理解できるイギリス人捕虜ロレンス(トム・コンティ)はともに事件処理をしたりする中で不思議な友情を持ちます。
そしてハラの上官で、規律を厳格に守る収容所所長で陸軍大尉のヨノイ(坂本龍一)はある日、収容所に連行されてきたイギリス人俘虜のセリアズ(デヴィッド・ボウイ)をひとめ見て心を奪われてしまいます。
日本人とイギリス人、文化や考え方の違い、そして収容所という特殊な環境の中で人物たちが心を通わせる様を描いた作品です。

うー、ちょっともう、素晴らしすぎて言葉が出なかった、です。
というか、あれこれ語るのはなんか違うなというか、言葉にならないなぁ。
じゃあ書くなよって感じですが、笑
どうしても、感動したということをお伝えしたいので書きますね。

もちろん作品名と、あの有名な一曲「Merry Christmas, Mr. Lawrence」は知っていたのですが、どんなストーリーなのかあまりよく知らないままドキドキしながら映画館へ。
冒頭、ハラとロレンスの台詞がいくつかあった後に、あのメロディーが流れ、赤い文字でタイトルが出たときは鳥肌がたちました。

出てくる場所はほとんど収容所とその周辺だけ。
人物の着ているものもほぼ変わらなくて、季節もよくわからない。
戦闘シーンは一度もなくて、だけど不思議な緊張感がずっと続いている感じ。
とてつもなく繊細で、かつ大胆で、かなり衝撃的でした。

私がとにかく印象に残ったのは、坂本龍一さんの美しさ……!
鋭くて悲しげな目、話し声、すっと伸びた背筋、なんだかもう存在感が飛び抜けていたなぁ。
彼が登場するたび、心がぐらぐらするような。現実味があまりないような。
後半、彼の心が乱されていって声を荒げるシーンなんかも、どこか品と落ち着きがあってそれがまた悲しい。
もちろん、もちろんデヴィッド・ボウイも超美しいです。
画面がパッと華やいで、明らかにデヴィッド・ボウイでした。。
パントマイムみたいな素振りをするシーンとかすごく引き込まれたなぁ。
こんな音楽家ふたりが主演なんて、すごすぎる。

当時の日本人には死に対して美学があったというか、敵国の捕虜になるくらいなら切腹する、国のために死ぬことは名誉である、という考え方がやっぱり強かったんだなぁ。
対してイギリス人のロレンスは、捕虜になることは恥とは思わない、勝ちたいという気持ちがあるから俺は生き続ける、という。
そんな考え方の違いもなるほどなぁと思いました。

少しの規律違反や失礼なことをしたらすぐに処刑か切腹。そしてとにかく殴る。
軍隊という特殊な集団のその極限状態の中で、異国の軍人同士で生まれる言葉にはしない、できない絶妙な気持ちの揺れがものすごく切なかった……。
色のない過酷な環境の中で歌や花、そしてそれをもたらすセリアズの存在はとても強くてまぶしかった。
そしてあのキスが、もう涙。。なんなんだろう、本当にあのメロディーを聴いた時みたいな、言葉にならない衝撃と感動。

他にもぐさーっとくるシーンはいくつもあったのですが、やはり最後のたけしさん……涙
それぞれ本当に魅力的で、人間がそのまま語っているって感じでした。
トム・コンティ(ロレンス役)の柔らかさもよかったなぁ、じんわりくる。

戦争、国、信仰、生と死、そんな言葉がテーマとしては当てはまるのかなと思うのだけど、なんかもう頭で考えるところを超越した素晴らしさがありました。こころの深いところに直結する映像。
これは愛だ! と一言で言える感じともまた少し違う気がするし。
観終わった後もしばらく立ち上がりたくなかった。今まで観たどんな映画とも違うこの気持ち。
聴いた瞬間になぜだか涙が出るような音楽とすごく似ている気がしました。

いやー、映画館で観ることができてよかった! そしてまたもう一回観たい。
なんか本当に説明とか感想とかあまりうまく言えないけれど、この映画はずっと自分の中に残るだろうなぁと思います。
心の大事なとこにしまっておきたいな。

全国の映画館で順次公開するみたいなので、観たことのある方も、私のように初めての方も劇場で観ることをおすすめします!!
とにかく素晴らしかったです。

それではまたねー、お元気で!



観た日は買わなかったけど、後日どうしても欲しくなりパンフレットも買った!

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