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中野ミホのコラム「まほうの映画館2」

中野ミホ(Singer/Songwriter)のコラム「まほうの映画館2」
中野ミホが最新作から過去の名作まで映画を紹介します。
●プロフィール:中野ミホ/北海道札幌市生まれ。2009年に結成したバンド「Drop’s」のボーカルとして活動し、5枚のフルアルバム、4枚のミニアルバムをリリース。2021年10月にDrop’sの活動を休止後、現在はシンガー、ソングライターとして活動。ギター弾き語り、ベースを弾きながらのサポートピアノとのデュオ編成やドラムを加えてのトリオ編成など、様々な形態で積極的にライブ活動を行なっている。
●公式サイト:https://nakanomiho.tumblr.com
●中野ミホYouTubeチャンネル:https://www.youtube.com/channel/UCjvQfnXVg6hTd8C8D6PSQGQ

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第34回「どんなわたしも、結局はわたし。ジュリア(s)」

2023.06.02 upload

『ジュリア(s)』(2022年:フランス)
原題:Le tourbillon de la vie(英題:JULIA(s))
監督:オリビエ・トレイナー
脚本:カミーユ・トレイナー/オリビエ・トレイナー
キャスト:ルー・ドゥ・ラージュ/ラファエル・ペルソナ/イザベル・カレ/グレゴリー・ガドゥボワ ほか
公式サイト:https://klockworx.com/movies/13045/
全国順次公開中


みなさま、こんにちはー!
風が気持ちいい日が増えてきて、お散歩にもいい季節になってきましたね。
いかがお過ごしでしょうか? もうすぐ梅雨なのかな……?

最近は大切な人の結婚式があったり、何かと「縁」を感じる出来事が多くて、そんなときにもぴったりの映画を観てきました。
予告編からすごく観たいと思っていたこちら。今回ネタバレあるかもです。

『ジュリア(s)』(英題『JULIA(s)』)
2022年、フランスの作品。
監督はオリビエ・トレイナー、主演はルー・ドゥ・ラージュ、ラファエル・ペルソナなど。

主人公はピアニストを目指す女性・ジュリア(ルー・ドゥ・ラージュ)。
人生の中で、「もしもあの時、違う選択をしていたら……?」という枝分かれしたいくつもの彼女が描かれる物語。
音楽学校に通う17歳の時、友だちとベルリンの壁崩壊の現場に向かっていなかったら。
本屋さんで彼と出会っていなかったら。自分がスクーターを運転していなかったら。
17歳から80歳までの彼女のいくつかの人生を音楽とめぐる、不思議なお話です。

よかったーー。泣いた……。これはほんとに大名作でした。
きっとどの世代が観てもグッとくるんじゃないかな。
とてもわかりやすく作られていて、でもありそうでなかった物語に夢中になりました。
文章であらすじを書いてもなんのこっちゃと思うかもしれませんが……笑
違うパターンの人生が同じ画面上で繋がったりするしかけも面白かったな。

まずやっぱり、主人公ジュリアがとっても魅力的!
最初のセリフを聞いたとき、その深みのある声に惹き込まれました。
17歳から80歳までを演じているのすごい! どのジュリアも違った魅力があって、それぞれの年齢や生き方にあったファッションやヘアメイクもすごくかわいかったなー。

まず17歳の彼女がベルリンの壁崩壊の熱気の中でピアノを弾くシーン、ここからもう鳥肌……。
ピアノを弾く自由な表情、それを見て寄り添う人々、最高の空気がありました。
でもそれがきっかけで家出してしまい、ベルリンに住むことになるのですが、お母さんが訪ねてくるシーン、「帰ってくると思ってたけど、ドアを開けた瞬間にわかったわ、あなたの居場所はここだって」という言葉に早くも泣けた……。なんかそんな共感が、散りばめられています。

そして一方ベルリンに行けなかった場合のジュリアには、本屋さんでポール(ラファエル・ペルソナ)と出会うか出会わないか、という分かれ道があるのですが、出会う方本当にキラキラしていて素敵だったなぁ。
フランスの男性の言葉は本当にあんなにキュートでロマンチックなんだろうか……うっとり。
彼との出会いによってすごく幸せな空気がずっと流れてて、キュンとしました。

ただその幸せも、二人が乗ったスクーターが事故に遭うか、遭わないかという分かれ道によって大きく変わってきてしまいます。
事故に遭ってしまった方は怪我によってキャリアが遠のき、流産もしてしまいポールと離婚。
高校の音楽教師になる道を選びます。
事故に遭わなかった方も、最初はよかったものの子育てでピアニスト業がうまくゆかなくなり、ポールとも不仲になってしまいます。さらにポールの浮気が発覚し自殺未遂まで起こしてしまい、それによって子どもの親権も奪われてしまうことに。

ひとつ前に戻りポールと出会わなかったジュリアは、着実にピアニストとしてのキャリアを重ねるものの、「氷の女王」と呼ばれ、心から愛する人とは出会えない孤独なときを過ごします。
というように、学生時代の無敵のキラキラや情熱だけでは乗り越えられないような、壁にぶつかる彼女もまたとてもリアルで、ぐっと苦しくもなりました……。

それでも、それぞれのジュリアにはそれぞれの出会いがまた訪れたり。
親権を奪われたジュリアも、愛する我が子に会おうと必死でもがきます。
彼女の周りの人物もそれぞれ魅力的なんだよなぁ。
変わっていくジュリアの表情が、本当に素晴らしいです。

そして最愛の母の死。一つの区切りとなるこのお葬式のシーンがまた、とても泣きました……。
それぞれのジュリアと、そばにいる人。
そして変わらないお父さん。お父さんー。涙
愛する人の死は平等に訪れるし、両親との間にある愛は変わらないんだな、と感じました。

でもどのパターンの彼女も、偶然もあるけどやっぱり自分で選んでいっているところがあるというか、出会いをちゃんと受け止めてまっすぐに人と向き合っているからこそ、輝いているような。
結局は人と人との縁、愛でしかないよなと感じました。
雨のシーンが印象的だったなぁ。ロマンチック……。

そして音楽、お父さんのセリフにもあったけど、最初から彼女のなかに強くあったもので、音楽がどんな形であれ彼女を支えていたと思う。
もしそれがなかったら出会わなかった人もいるだろうし、もっと味気ないものになっていたかもしれない。

自分のこととして考えてみても、確かに、もしあのときあの場所に行ってなかったら、とかあの人と話をしなかったら、とかそういうことってあるよなぁ。これはすごく不思議。
そう考えるとやっぱり、人との出会いって奇跡なんだなと思わざるをえないです。
小さな偶然の積み重ねで人生は変わっていくのかも。

きれいな思い出も、人との別れも、後悔もみんなあるかもしれないけど、もがいて、自分に正直に生きていくことを肯定してくれるような映画でした。
物語の枠が大きいだけに壮大にみえるけど、誰にでも当てはまる作品なんじゃないかな。
あたたかくて、素敵な気持ちがずっと残りました。

いま隣にいる人とか、しばらく会ってない両親とか、もしくはまだそんなに親しくない人でも、誰かと一緒に観たらそれも忘れられない出来事になりそうな気がします! ぜひお近くでやっていたら観てみてくださいね。

それではまたー。


© 2023 DONUT



中野ミホ「Breath」インタビューを掲載

LIVE INFORMATION


自主企画「Hug 2」
2023年7月1日(土)荻窪velvet sun
Open 18:15 / Start 19:00
charge ¥3,000(+1d)
出演:Ålborg/中野ミホ(Band Set)

■ ライブ、イベントの最新情報は公式サイトをご確認ください。
https://nakanomiho.tumblr.com

INFORMATION


配信シングル「TAPES」
2023年3月29日(水)リリース
収録曲:01.国境/02.Turn



1stEP『Breath』
2022年8月17日(水)リリース
収録曲:01.My friend/02.不思議なぼくら/03.電源/04.Good morning to you/05.ハウ・アー・ユー/06.Mabataki
販売サイト:https://nakanomihoshop.stores.jp/

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