DONUT

中野ミホのコラム「まほうの映画館2」

中野ミホ(Singer/Songwriter)のコラム「まほうの映画館2」
中野ミホが最新作から過去の名作まで映画を紹介します。
●プロフィール:中野ミホ/北海道札幌市生まれ。2009年に結成したバンド「Drop’s」のボーカルとして活動し、5枚のフルアルバム、4枚のミニアルバムをリリース。2021年10月にDrop’sの活動を休止後、現在はシンガー、ソングライターとして活動。ギター弾き語り、ベースを弾きながらのサポートピアノとのデュオ編成やドラムを加えてのトリオ編成など、様々な形態で積極的にライブ活動を行なっている。
●公式サイト:https://nakanomiho.tumblr.com
●中野ミホYouTubeチャンネル:https://www.youtube.com/channel/UCjvQfnXVg6hTd8C8D6PSQGQ

>> まほうの映画館2のアーカイブへ
>> まほうの映画館1のアーカイブへ(別ウィンドで開きます)

第32回「潮が満ちて、永遠に解けない彼女のミステリー。別れる決心」

2023.03.13 upload

『別れる決心』(2022年 韓国)
原題:Decision to Leave
監督:パク・チャヌク
脚本:チョン・ソギョン/パク・チャヌク
キャスト:パク・ヘイル/タン・ウェイ/イ・ジョンヒョン/コ・ギョンピョ ほか
公式サイト:https://happinet-phantom.com/wakare-movie/
全国順次公開中


みなさま、こんにちは。
ついに、少しずつ、あったかくなってきましたねー。
個人的には春は毎年体調があまり良くないのですが、笑
みなさんは大丈夫ですか? 気温の変化、花粉症などあると思いますがゆっくり過ごしてくださいね。

さて、少し間が空いてしまいましたが今回も映画館へ行ってきました。
いつもは洋画ばかり観に行ってしまいがちな私ですが、前からとても気になっていた韓国映画があったので今回はそちらを。ドキドキ。
あ、今回ちょっとネタバレ注意かもしれません。

『別れる決心』
2022年、韓国の作品。監督は『オールド・ボーイ』のパク・チャヌク監督。
主演はパク・ヘイル、タン・ウェイ。

舞台は現代の韓国。ある時、男性が山頂から転落死する事件が発生します。
事故ではなく殺人の可能性が高いと考える刑事ヘジュン(パク・ヘイル)は、被害者の妻であるミステリアスな中国人女性ソレ(タン・ウェイ)を疑います。
取り調べを進めるうちにいつしかヘジュンとソレはお互いに惹かれあってゆきます。
やがて捜査の糸口が見つかり、事件は解決したかに見えましたが……。

いやー、とても不思議な映画でした。観終わった直後は、少し難しかったなぁという印象が強かったのですが。
自分の中で噛み砕いていくうちにじわじわと染みこんできています。うむ、よかったなぁ。

全体的に濃い紺色のようなイメージが強くて、濃密な空気感が漂っています。
左右対称な画面、ハッとするような色づかい、海や山の自然とスマホや車の現代的な感じ。
ソレの部屋のレトロな深いグリーンや彼女の着ているセーターやスカート、ワンピースの色。山の柄?の壁紙。
全てが世界観を作り出していて、洗練された画面がすごく美しかったです。
韓国映画ビギナーの私には新鮮でとてもかっこよかった!

物語もなんていうか、ちょっとシュール、でどう展開していくのか予想がつかない。
複雑なようでそうでもない? 解決したと思ったらそうではない? えぇぇ何?ってなる。
推理サスペンス的な面もありつつ、基本的にはふたりの心の動きが繊細すぎて難しいくらい繊細に描かれています。

ソレは中国人で完璧な韓国語が話せないので、使う単語がちょっと変だったり、大胆だったりするんだろうな。
私は韓国語も中国語もわからないのでそのあたりが大変もどかしかったのですが……。
翻訳アプリを使った会話もするのですが、その翻訳がまたシュールで無機質だけど、大胆さにドキッとしたり。

だけど言葉が完璧に通じないからこそ、二人は感覚的に惹かれあっていきます。
視線、傷跡、呼吸、声。とても静かに近づいていくのが良いです。ドキドキします。
劇中にもあるように、二人は確かにどこか似た雰囲気をまとっています。

ソレは中国から逃げてきた過去もありきっととても孤独で、でももうどこかで割り切っているというか、基本的に感情があまり読めなくて淡々としている印象でした。
でも彼女の行動は驚くほどに大胆で、背筋はいつもシャンと伸びている。
そして言葉とか表情から想像する以上に、深くヘジュンのことを愛していたんだなぁ。

お互い自分の独り言をスマートウォッチに吹き込むのですが(ヘジュンは捜査のためですが)、その演出がとてもよかった……。それを本人に聞かせるところとか、なんだかとてもエロティック。
母国語で、独り言でしか出ないソレの言葉とか。うおぉとなります。
許されないとわかっていながらじりじりと惹かれあってしまう二人に、とてもドキドキしました。
ヘジュンがハンドクリームぬってあげるところとか。一度だけのキスも、とても苦しくて、素敵。

そしてラスト近くに鍵となる、「愛してる」の意味については……深い……。こりゃ深いです。
この完璧には理解しきれない感じと彼女の表情が、観終わった後もずっと頭から離れませんでした。
刑事としての誇りを失って(捨てて)、「崩壊」したのがヘジュンにとっての別れる決心、そしてそこからソレにとっての愛がはじまっての、結末、なのでしょうか。うー、切ない。

お金や暴力や権力の目に見える横暴な強さではなくて、もっと深い芯のある凜とした強さ、彼女の持っているそんな性質が怖いほどに美しく、貫かれた作品でした。
でもすごくロマンチックだったなぁ。海と山……。

パク・チャヌク監督の映画もっと観たい!
みなさんおすすめの韓国映画あったら教えてくださいー。

それではまた。


© 2023 DONUT



中野ミホ「Breath」インタビューを掲載

LIVE INFORMATION


ワンマンライブ「たてがみ」
2023年4月28日(金)三軒茶屋 GrapeFruitMoon
open 19:15/start 19:45
Adv ¥3,500/Door ¥4,000(+1d)
入場チケット予約URL:https://tiget.net/events/233354

■ ライブ、イベントの最新情報は公式サイトをご確認ください。
https://nakanomiho.tumblr.com

INFORMATION


配信シングル「TAPES」
2023年3月29日(水)リリース
収録曲:01.国境/02.Turn



1stEP『Breath』
2022年8月17日(水)リリース
収録曲:01.My friend/02.不思議なぼくら/03.電源/04.Good morning to you/05.ハウ・アー・ユー/06.Mabataki
販売サイト:https://nakanomihoshop.stores.jp/

LATEST ISSUE

LATEST ISSUE

PODCASTING

池袋交差点24時

STUDIO M.O.G.

STUDIO M.O.G.

amazon.co.jp

↑ PAGE TOP