La Vie en ROSIE 〜ROSIEのレコード日記
■La Vie en ROSIE 〜ROSIEのレコード日記
暴動クラブのベーシスト、城戸 “ROSIE” ヒナコが毎月、1枚レコードを紹介するコラム。
●プロフィール:城戸 “ROSIE” ヒナコはロックンロール・バンド、暴動クラブ(海外ではVoodoo Club)のベーシスト。メンバーは釘屋 玄(vo)、マツシマライズ(gt)、城戸 “ROSIE” ヒナコ(ba)、鈴木壱歩(dr)の4人。平均年齢20才、ワイルドで荒々しく挑発的なロックンロールでライブハウスシーンを席巻中。昨年12月に行った二度のワンマンライブはそれぞれ即完。今、最も注目されているロックンロールバンド。
■連載のアーカイブ:https://donutroll.tokyo/rosie/index.html#archives
■公式サイト:https://voodooclub.fanpla.jp/
■X:https://twitter.com/Voodoo_Club_
■Instagram:https://www.instagram.com/voodooclub_japan/
第11回:ホワイトスネイク『サーペンス・アルバス〜白蛇の紋章』(1987)
2025.02.12 upload
2月某日 くもり
えー、まずお決まりのボンジュー、の前に言わなければならないのが、そうです。あけましておめでとうございます。Bonne Année!
ハイ、かなりお久しぶりになってしまいまして、もう2月半ばに差し掛かっているというのに皆様にとっては遠い昔となっていることでしょう「正月ボケ」という年に一度必ず誰しもに襲いかかる国民的異常現象を、いまだ一人ズルズルと引きずりまくっている、正月大ボケやろうになってしまっておりますが、もうこの際、しょうがありません。
改めまして皆様、今年もよろしくお願い致します。新年一発目のロージー日記が、今この、2月半ばという、この瞬間に、始まります。城戸日菜子と申します。久しぶりすぎて、もう忘れ去られていたことと思いますので、自己紹介です。どうかよろしくです。
いや。年末も年始もこのロージー日記、ちゃんと出そうとしていたんです。本当に。
が、年末は、なんと思いがけぬ事故(或る朝のことでござります。仏語の辞書とノートパソコンと大量の本が入っている通学用のリュックを、よっこらせ、と、いつものように背負おうとしたところ、あれれ、何かをどこかで間違えたらしく、右手の親指、そう、たった一本のその指に、そのリュックの全重量がかかるという、うん、あの、文面で説明してもよくわからないことになってしまい、とにかくそのせいで親指が逆方向にねじれるという2024年史上、最もしょうもないのに、最も厄介なやらかしを年の瀬に起こしてしまったのです)に遭い、ベースが弾けなくなることはおろか、ペンなどの物を掴んだりするのさえ厳しいという状況が割と何日か続いてしまったのです。
この一連の流れを各方面にいちいち説明しなければいけなかったとき、どれだけ情けなかったことか。
「突き指してしまって、スタジオに行けないです」
―― え、突き指? なんで?
「いや、あの……それが……大学に行こうとして……リュックを……持ったら……なんか間違えちゃって……親指に引っかかっちゃって……えへ……」
―― ……は?
あほめ。そのせいで年末年始に詰まっていたレコーディング諸々関係の仕事にも支障が出てしまい、ああ! とても悲しい年末を過ごし、よし、指も治って年が明けたぞ、と思えば怒涛のレコーディング祭りの始まり。ろくろのライブも年明けすぐにあって、年末ベースが弾けなかった分、練習に追われまくり、正月休みなんてありゃしない。
先月はとにかく、思い出せば年明けからずっとスタジオに缶詰状態でした。
と、同時にやってくる地獄の大学期末期間。イェーイ。毎日スタジオとガッコと図書館を行ったり来たり行ったり来たりで、たまのライブがちょこちょこ、レコーディングスタジオでもゼミの研究発表の準備に追われ続け、内容が内容なもんで(哲学をやっているので!)精神にどうにも良くなくて、スタジオで発狂しかけていたら、釘屋に「髪が炎みたいになっているよ、ケッケッケ」と笑われ、おかげで我に帰ることができましたが、とにかくそんな感じで、ムキャーーー! と叫び続けていたら、いつの間にか、春休みを迎えておりました。
なんやかやで今いろんな事が一旦ちょっと落ち着き、ふぅ、そろそろレコードでも聴いちゃいましょか。日記でも書いちゃいましょか。ほほほ。と言えるくらいの余裕が戻ってきた感じで、コラムに取り掛かっているというワケなのであります。大変お待たせ致しました皆様(特にDONUTのお二人……大泣き土下座……)。
んで、今回は、新年一発目だし、今年は巳年ということで、何か蛇にまつわるレコードにしようかなあ、なんて考えてたんです。
ロックの曲にはなんか蛇がモチーフになっていることが結構多くて、サンハウスの「キングスネークブルース」、シナロケの「スネークマン」……むむむ……。
ああ、蛇を自ら名乗っているバンドが、いるじゃあないか。
ホワイトスネイク!
ということで、絶対次はホワイトスネイクにしようと、もう正月くらいから決めておったんです。
そしたらそんな中、ちょうど先月に入ってきた、ホワイトスネイクのギタリストであったジョン・サイクス氏の訃報。
HM/HRに多大なる影響を与えたギタリストの死は、ロック界を騒がせた。
これは、ロージー日記をやっている私の使命としては、もう絶対に書かねばいかんと、神に囁かれている。そんな気がする。そんな気がしてならない。
てことで今回のレコードはコチラ。
ホワイトスネイク『サーペンス・アルバス〜白蛇の紋章』(1987)
実は彼の訃報を知る前は、元々持っていたホワイトスネイクのもっと初期のアルバム『Ready an’ willing』を紹介しようかな、と思っていたんですが、ジョン・サイクス氏が参加しているアルバムを求め、レコ屋に走りました。そして、こちらを見つけ、即買い。
このアルバムはホワイトスネイクの数ある作品の中でも、最高傑作と名高く評価され、商業的に最も成功したアルバムとなった。全米ビルボード200では初のトップ10入り、最高記録はなんと2位にまで達したそうな。
ホワイトスネイクの7作目でありながら、ホワイトスネイクを世界に売ったアルバムと言っても過言ではない。
そして本作は前作の6作目を出してから、なんと3年のブランクを経てから出されており、その間にもメンバーの変遷、レコード会社とのいざこざに継ぐいざこざ、ボーカルのデイヴィッド・カヴァデールのポリープ摘出手術などなど……様々な事がやはりこの決して短いとは言えない3年という月日の中で起こり、しかしその濃い3年があってこそ、いずれ最高傑作と呼ばれるようになるスーパー・アルバムが生み出されることになったのだろう。
そして私にとっては個人的な思い出もたくさん詰まっているこのアルバム。
幼い頃からいつも車の中でかかっていたので、ほぼ全曲完璧に歌える。
日曜日の朝になるといつも聴こえてくる父親の弾き語り。私は休日はいつもその音で目を覚ます。その父の弾き語りのレパートリーの一つであった、このアルバムの4曲目、そしてホワイトスネイクの代表曲である「Here I go again」。
私がまだ幼稚園に行っているかいないかくらいの頃かもしれない。父親がこの曲を弾いていると、すごく嬉しかった。
サビの“ヒア・アイ・ゴー・アゲイン“の、“ヒア・アイ・ゴー”が、ずっと私には “ヒナコ”に聴こえていたのだ。私は自分の曲だと思って嬉しくなって、「ひなこアゲイン、ひなこアゲイン」だなんて、よく一緒に歌って踊っていたものだ。いまだにこの曲を聴くと、あ、自分の曲だ、と思って嬉しくなってしまう。
でも私も知らなかったのだが、このアルバムに入っているこの曲は、実は再録バージョンだそうで、カヴァデールがアメリカで売るために、名曲であると彼自身自負しているこの曲と、1曲目の「Crying in the rain」を再録して、このアルバムに入れたそうだ。
1曲目のこの、ヘヴィでブルージーなイントロは聴くものの脳天に、まずいきなりドカンと爆弾を落とす。ライナーノーツにも見られるが、やはり彼の中にあったのはブルーズだったそう。
確かに彼の先見の明は、やはり正しかったといえよう。この2曲がA面に入っているからこそ、ビルボード2位にまで上り詰めたのかもしれない。が、しかし他7曲の新曲たちも忘れてはいけない。ジョン・サイクス氏のギターが、炸裂しまくっている。
3曲目の「Still of the night」なんて、ライナーノーツでBURRN!初代編集長の酒井康さんもおっしゃっているが、まさに'87年のレッドツェッペリンである。そして名曲、そう、あまりに名曲すぎる「Is this love」。激しいハードロックナンバーばかりが続く中、こんなに切なく美しいラブソングを持って来るなんて、こっちもたまったもんじゃあない。この緩急が、カヴァデールのすごいとこ。
そして私のお気にいりは7曲目の「Children of the night」。ジョン・サイクス氏の炸裂したギターも見どころ。いかにもHM/HRなナンバーだが、この曲のBメロ(?)的な、サビにつながるところの部分がなんかすごく好きなのです。多分、日本人にすごい刺さる感じ。知らんけど。そして、そこからの“Are you ready to rock?”でどかーん!!! みたいな構成が、たまらんかっけえのです。
で、このアルバムで面白いのが、カヴァデールの、ジョン・サイクスのギターに負けないくらい、これまた炸裂している高音ボイスのゆえん。先にも少し述べましたが、喉のポリープ摘出手術を経て、より高音域のパワーが増幅されたらしく。本人も手術についてはショッキングだったと述べているが、そんな大変な手術の後でさらに最強になっちゃうなんて、やっぱすごすぎるよカヴァデール。
なんか似たような話を最近聞いたな……(うちのギターのライズのブラックビューティのネックが折れたんですが、元々ギブソン系のギターはネックが折れやすいらしく、折れたネックを補強することによりさらに鳴りが良くなるとか、なんとか……)。
ちなみにこの3年の間にカヴァデールの身に起きたあれこれについてはBURRN!の5月号で詳しく追求したと、酒井康さんのライナーノーツに、P.S.として書かれている。良い宣伝の仕方である。当時のだから'87年の5月号か。超気になっちゃうじゃん!
巳年の初めに、白蛇を名乗ったバンドの、ギタリストの訃報。
なんだかすごく切ないな、と思った年明けでしたが、不朽の名作、彼の残してくれた不朽の名ギターを、ぜひ今年は改めて聴き込もうと思わされたのであります。
聴いた事ない方も、是非一度聴いてみてください。それで「Here I go again」が「ひなこアゲイン」に聴こえたかどうかもぜひ教えてください(私にはどう頑張ってももうそれにしか聴こえないもので)。
ではまた次回! 次回はすぐお会いできるよう頑張ります(汗)。
てことで、お楽しみに。サリュ〜:)
世界中に愛と平和を!
城戸”ROSIE”ヒナコ
© 2025 DONUT
暴動クラブが2025年4月22日(火)
恵比寿リキッドルームにてワンマンライブを開催!
暴動クラブ INFORMATION
カバーCD『VOODOO SEE,VOODOO DO』
2025年4月2日リリース
※CDのみの発売で、配信等はありません
収録曲:01. つ・き・あ・い・た・い/
02. I‘M FLASH(ホラ吹きイナズマ)/
03. スローなブギにしてくれ(I Want You)/
04. タイムマシンにおねがい/
05. 上を向いて歩こう
CDシングル「撃ち抜いてBaby,明日を撃てLady」
2024年12月4日リリース
※CDのみの発売で、配信等はありません。
収録曲:01.撃ち抜いてBaby,明日を撃てLady/02.あばずれセブンティーン/03.欲望/04.撃ち抜いてBaby,明日を撃てLady– Alternate version
1stアルバム『暴動クラブ』
2024年8月7日リリース
※CDのみの発売で、配信等はありません。
収録曲:1.とめられない/2. Born to Kill/3. ロケッツ/4. すかんぴん・ブギ/5. カリフォルニアガール/6. Roadrunner/7. まちぼうけ/8. いとしのクロエ/9. Voodoo Rag/10. チェルシーガール/11. C.M.C.
RECORD STORE DAY限定7インチシングル「シニカル・ベイビー」
2024年4月20日リリース
収録曲:シニカル・ベイビー/気になるお前 全2曲
配信シングル「恋におちたら」
2024年2月14日リリース
収録曲:恋におちたら/俺のあの娘 全2曲
7インチ・レコード「暴動クラブのテーマ」
2023年11月3日 レコードの日 リリース
収録曲:暴動クラブのテーマ/Money(That’s What I Want) 全2曲
アーカイブ
第1回:STRAY『嵐の宮殿』第2回:レーナード・スキナード『SKYNYRD’S FIRST AND...LAST』
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第5回:シルヴィ・ヴァルタン『シルヴィ・ヴァルタン・ベスト』
第6回:サンハウス『ドライブ』
第7回:ザ・ルースターズ『VIRUS SECURITY』
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第10回:HOME『HOME』
第11回:ホワイトスネイク『サーペンス・アルバス〜白蛇の紋章』