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La Vie en ROSIE 〜ROSIEのレコード日記

La Vie en ROSIE 〜ROSIEのレコード日記
暴動クラブのベーシスト、城戸 “ROSIE” ヒナコが毎月、1枚レコードを紹介するコラム。
●プロフィール:城戸 “ROSIE” ヒナコはロックンロール・バンド、暴動クラブ(海外ではVoodoo Club)のベーシスト。メンバーは釘屋 玄(vo)、マツシマライズ(gt)、城戸 “ROSIE” ヒナコ(ba)、鈴木壱歩(dr)の4人。平均年齢20才、ワイルドで荒々しく挑発的なロックンロールでライブハウスシーンを席巻中。昨年12月に行った二度のワンマンライブはそれぞれ即完。今、最も注目されているロックンロールバンド。■X:https://twitter.com/Voodoo_Club_ ■Instagram:https://www.instagram.com/voodooclub_japan/

第5回:シルヴィ・ヴァルタン『シルヴィ・ヴァルタン・ベスト』

2024.05.29 upload

5月某日 くもり

今月もボンジュールです皆様。いかがお過ごしでございましょうか。
わたくしROSIEは毎年恒例、所謂五月病とかいうなんともおぞましい病に今年もバッチリ罹患しまして、今月頭の方なんかはまあひどい。思い出しただけでも恐ろしく、自分で自分に目も当てられないくらい大変悲惨な状態で日々過ごしておりましたが、気づけば日没の時間も遅くなってきたし、つい最近まで、「大好き。君に一生くるまっていたい。朝が来たってこのままずうっと、離れるものか」だなんて甘い言葉を囁いていたはずの掛け布団を今じゃ「暑いんじゃボケ! どっか行けこのドアホ!」などと罵り残酷に蹴り上げる夜も増えてきて、自分のこうした二面性が我ながら怖くなると同時に、所々に夏の気配を感じ始めて少しワクワクしておりまして、絶望的だったこの病状もなんとか回復の兆しが見えてきたところでございます。

そしてこのコラムも気づけばもう5回目。こんな拙い文章ですが、いつも読んでくださっている皆様、面白いと言ってくださる皆様、そしてこんなにも自由に書かせてくださっているDONUT様には、本当に感謝申し上げます。
初回なんかは私生活における何もかもを一切放棄、このレコード日記を書くためだけに起き、眠り、息をして、そのうち頭から火でも吹いて世田谷の街をいつかボヤ騒ぎにするのではないかというほどの勢いで、もうほとんど魂を削る思い、文字通り、全身全霊で執筆作業に取り組んでいたのですが、最近ではもう慣れたもんで、チョチョイ、と筆を走らせればアラ不思議。いつの間にか、素敵なコラムの完成。なんてことにはなりません。これを書いている今現在も半狂乱、飼っている猫でさえ怯え、慄き、遠ざかっていくほどの鬼の形相でキーボードを無我夢中でぱちぱち、いや、もう、ガタガタと、地響きの如く、叩き鳴らしているのでござります。執筆家への道のりはまだまだ長いですな、ワッハッハ、と、少し調子に乗ったことを言ってみたものの自分でバツが悪くなってきたため、早速本題に入ります。

さて今回紹介するレコードはコチラの『シルヴィ・ヴァルタン・ベスト』(1981)。
半狂乱の筆者が紹介するには、ちとキュートすぎるんぢやあないの。という声がうっすらと聞こえてきた気がしなくもないですが、気にせず続けます。



収録曲:1. 悲しみの兵士/2. あなたのとりこ/3. 悲しみのシンフォニー/4. アブラカタブラ/5. 愛に生きるわたし/6. ハウ・ドウ・ユー・ドウ/7. 悲しきジプシー/8. アイドルを探せ/9. 悲しきスクリーン/10. わたしを愛して/11. ジョニーはどこに/12. ラ・ヴィ・サン・トワ/13. 恋の瞳/14. ダン・テ・ブラ


このレコードは私が高校2年生の春だか夏だかなんだったか、私の愛する、今は亡き祖母の家があった神戸に帰省していた際、三宮の「ロックンロールエイズプロダクション」という中古レコード屋さんで購入。

狭くて急な(レコ屋あるある)階段を上がっていったところにあるそのお店、店内こそかなり狭いのですがレコードの種類も豊富で、なんといってもそのアットホームな雰囲気が(某有名レコードショップ元店員にとってはとりわけ)非常に魅力的。
置いてあるレコードには全て店主手書きの説明文付き値札シールが貼られているし、またその店主の方が大変お優しく、いろいろな音楽を教えてくれたり、レコードもたくさん聴かせてくれます。いつの日か、私が買うのを迷っていたレコードをなんと1枚おまけしてくれたりしたこともあって、数回しか行ったことはないものの、私がとても好きなレコードショップの一つです。神戸の街が好きだし。

で、これを買った当時はまあ私も今以上のガキンチョですわな。フレンチポップもまだまだにわかでフランスギャルとゲンズブールくらいしか知らないくせになんやかんやイキリ散らかしブイブイ言わせていた、まあ、いうなれば、完全に“おわっていた”んですが、そんな私の長ったらしい買い物に嫌な顔ひとつせず付き合ってくれていた母が、これいいよ、とすすめてくれたうえ、なんと、買ってくれたのです(そもそもフレンチポップにハマったのも母が小さい頃から家でかけていたからなのです)。
私は母に感謝し、レコードを然と抱きしめ、東京に帰りました。

ここまでは大変感動的かつ模範的な母娘の物語、なんとも美しいレコード日記に見えることでしょうがしかし、私の期待の裏切らないのはまさにここからでございます。
東京の家に帰って、よし聴くぞ、だなんて言いながらレコード棚の“奥”の方に丁寧にしまい、気づけばそのまま4年、経っていたのである。
4年、である。
ああ、情けない。さすがこの怠惰が生み出したバケモノこと、城戸“ROSIE”ヒナコである。いや、城戸日菜子である。この期に及んでROSIEなどとても名乗れたものじゃない。
この恐ろしい怠惰ぶりには全く、拍手の一つでも贈ってあげたいものである。

まあとにかく4年のブランク(少しでも自分の怠惰という名の罪を軽減すべくかっこつけた言い方をしている、いわば無意味な罪償い)を経て今、私は彼女、シルヴィ・ヴァルタンの虜である。

最近また自分の中でフレンチポップブームが到来しており、ここ数ヶ月間聴いている音楽の大半はフレンチポップが占めているくらいなのですが(おそらく私が仏文専攻に在籍していることが深く関係しているのであろう、大変単純な人間なので)、そこで4年前に買ったこのレコードの存在を突如思い出し、4年も放置していたことに絶望を覚えながら、恐る恐る針を落としてみたのです。

するとプチプチ音の後に流れてきたのは、シルヴィ・ヴァルタン氏がラララと力強く歌い上げる、あまりにも切なすぎるメロディライン。そこに男性の静かな語りが絡む。

私はレコードがクルクルと回るのを目の前に、立ち尽くす。
完全に、やられた。
そして4年も放置していた私の罪は、針が進むにつれますます大きくなるばかり。この馬鹿野郎。

その1曲目というのは、邦題『悲しみの兵士』<原題:Les Hommes(qui n’ont plus rien a perdre)>。ライナーノーツによると、‘70年の日本で爆発的にヒットしたらしく、「戦争で消えていった兵士達を想い、平和への祈りを詩的に歌い上げている」とある。
なるほど。

他の曲も素晴らしかった。ベスト盤ということもあって、クラシックをオマージュした曲や、シェールのカバー、きっと誰もが一度は耳にしたことのある有名な曲や、オールディーズチックなポップな曲、ジャジーな感じの曲まで、そのジャンルはA面B面を通して幅広く、またライナーノーツにはシルヴィのプロフィールも載っており、大変充実した内容となっている。



だが私はやはり最初の曲に感じた衝撃を、とくに忘れられないでいる。

シルヴィの声にはその可愛い見た目からは想像もつかないような野太さ、力強さがある。そしてそれが歌に説得力を持たせている。これは彼女の表現者としての、歴とした才能である。 どの曲においても彼女の声の力強さは非常に印象的なのだが、特にこの1曲目はその彼女の素晴らしい歌声とドラマティックな演奏、展開、先にも述べたが所々で聴こえる男性の語りの全てが相まって、私の心を激しく、揺さぶった。

そしてこれは割と普段から考えていることではあるのだが、言葉が分からずとも、時代が何十年も違っても、人の心を大きく揺さぶる音楽って、一体なんなのだろう。と、改めて思ったのだった。

フランス語がわからない私が、2024年を生きる私が、1970年の、フランスという遠く離れた異国の音楽に感動を覚えているという、ロマン。
このロマンこそ私が昔の音楽や異国の音楽に、強く惹かれる理由の一つでもあるのだ。

生きている背景が全く違うはず、共通点を探す方がよっぽど難しいはずなのに、なぜそんなかけ離れたところから生まれたものに、こんなにも深く感動するのだろう。こうして涙が出るのだろう。

なんだかキザなことを言うようで小っ恥ずかしいですが(といいながらも書くのをやめないこの矛盾とはいかに)、芸術や文化が人間の営みの一つとしてずっと絶えずありつづけるのは、そこにあると思います。 文化や芸術の素晴らしさは人間の素晴らしさ、生の素晴らしさ。逆もまた然り。
同じ人間に生まれ、生きているということの意味。具体的な言葉も記号もいらない、人間が生まれながらにしてもった共通言語としての、表現。

と、まあこんなことを、優れた作品に出会って言葉にできない感動や衝撃を覚えるたび、思うのです。

だから私も人間として生まれ、生きているからには、形はどうであれたくさん表現したいし、たくさん触れてたい。
衝撃とか直感とか、言葉や記号では表せないものを、たくさん感じたい。
芸術に生きて芸術に死す、人間万歳!ってか。

せっかく今ここに、平和に、生きているのだから、せめて今の間はそうでありたい。いや、そうあらねばならない気がする。なんてことを今月はたくさん考えていたのでした。きっと五月のせいよ。

なんか、この曲がダイナミックなあまりになんだか日記まで引っ張られダイナミックになってしまって、これ以上書いているととんでもないことになってきそうなので、この辺でおしまいにします。
ぜひフレンチポップの金字塔、シルヴィ・ヴァルタン女王による力強い表現を、フランス語がわかるあなたもわからないあなたもぜひ、聴いてみてください。

ではまた次回もお楽しみに。サリュ;)

世界中に愛と平和を  城戸ROSIEヒナコ

© 2024 DONUT

暴動クラブ INFORMATION


RECORD STORE DAY限定7インチシングル「シニカル・ベイビー」
2024年4月20日リリース
収録曲:シニカル・ベイビー/気になるお前 全2曲


配信シングル「恋におちたら」
2024年2月14日リリース
収録曲:恋におちたら/俺のあの娘 全2曲


7インチ・レコード「暴動クラブのテーマ」
2023年11月3日 レコードの日 リリース
収録曲:暴動クラブのテーマ/Money(That’s What I Want) 全2曲

アーカイブ

第1回:STRAY『嵐の宮殿』
第2回:レーナード・スキナード『SKYNYRD’S FIRST AND...LAST』
第3回:バナナラマ『Deep Sea Skiving』
第4回:マイケル・シェンカー・グループ『ASSAULT ATTACK』
第5回:シルヴィ・ヴァルタン『シルヴィ・ヴァルタン・ベスト』

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