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La Vie en ROSIE 〜ROSIEのレコード日記

La Vie en ROSIE 〜ROSIEのレコード日記
暴動クラブのベーシスト、城戸 “ROSIE” ヒナコが毎月、1枚レコードを紹介するコラム。
●プロフィール:城戸 “ROSIE” ヒナコはロックンロール・バンド、暴動クラブ(海外ではVoodoo Club)のベーシスト。メンバーは釘屋 玄(vo)、マツシマライズ(gt)、城戸 “ROSIE” ヒナコ(ba)、鈴木壱歩(dr)の4人。平均年齢20才、ワイルドで荒々しく挑発的なロックンロールでライブハウスシーンを席巻中。昨年12月に行った二度のワンマンライブはそれぞれ即完。今、最も注目されているロックンロールバンド。■X:https://twitter.com/Voodoo_Club_ ■Instagram:https://www.instagram.com/voodooclub_japan/

第1回:STRAY『嵐の宮殿』

2024.1.25 upload

1月某日 雨

ボンジュール、ムッシュー・マダムの皆さま。なんと大変ありがたいことに、ここWEB DONUT様にて連載をスタートさせていただくことになり、今回はその記念すべき第1回、初めてのことに右も左もわからぬまま、いわゆるワクワク・ドキドキ、で只今執筆しております。
興奮のあまり申し遅れました、私、今巷で話題(そうであってくれたら大変嬉しい)の、新人・ピチピチ・ロックンロール・バンド“暴動クラブ”でベースを担当している、令和のロックンローラー、“ROSIE”こと城戸ヒナコと申します。どうぞヨロシク。
お前誰やねん!な方も、もうすっかりお馴染みな方もいらっしゃることと思いますが、まずはお前誰やねん!な方々のために、軽くバンドと、私自身について紹介したいと思います。お馴染みな方は、もう知ってるよバーカ!とでも吐き捨てて、どうぞすっ飛ばしていただいて構いません。
暴動クラブとは、2022年(昨年、と書こうとしたらまさかのもう一昨年!)の春、東京にて運命の出会いを果たした19歳と18歳のロン毛4人組により結成されたドカドカうるさいロックンロール・バンドであります。昨年はおかげさまで、我々にとって怒涛の一年となりました。年初めには初のDEMO集を発表し、夏には初めて関西ツアーを敢行。秋にはデビューシングル「暴動クラブのテーマ」をなんとレコードでリリース、同日には愛媛にて初の野外フェス出場を果たし、年末は幡ヶ谷ヘビーシックにて2度にわたるワンマン公演を実施(どちらも完売、ありがとうございます!)、と、こんな感じでジリジリ、ジワジワとその名を広めんと、精力的に活動を行なっている次第であります。2024年はもっともっと、ドカンと暴動していきますので、皆様何卒よろしくお願い申し上げます。

そして私はそんなバンドで城戸“ROSIE”ヒナコなどと名乗りあげベースを弾く19歳、最年少ではありますがこの奇妙なバンド名の名付け親であり、唯一のギャル(ここではGALの意味、日本語のそれではない)・メンバーとしてやらせていただいてもろております。激しいパフォーマンスで時にメンバーからもう少し下がれと怒られる私ですが、普段は毎日休むことなくクソ真面目に大学に通い、フランス文学などというなんだか気取ったみたいな学問を勉強している(冒頭の挨拶がフランス語だったのはその所以)、猫とルースターズとフランス映画とベルボトムをこよなく愛する大学2年生です。

嗚呼、軽い説明のはずが少々長くなってしまったことを反省しつつ、そろそろ本題に入っていこうと思います。

本連載はその名の通り、私が毎月買ったレコードについて書くという、いわばレコード日記であります。昨年まで某有名レコード店にてアルバイトをしていたくらい、レコード鑑賞は私の趣味のひとつとなっていて、かれこれ15歳くらいの頃から(決して並外れたマニアや収集家ではありませんが)ちょっとずつ集めてはひとり家でニヤニヤと、気持ち悪い笑みを浮かべながらその贅沢な趣味を嗜んでいる所存です。最近は時々DJとして呼んでいただいたりして、愛しのレコードたちを公に披露する機会もありますがやはり本来一人で楽しむだけであるはずの趣味、こうしてこの場を借りてこれから皆様と共有できると思うと大変嬉しく、高ぶった胸と共に財布の紐が緩むどころか張り裂けそうなので、いよいよ気をつけなければなりません。はい。

では早速、私が新年一発目に買ったレコードをお見せしたい(突然の“だである調”にびっくりされたかもしれませんが敬語でものを書くことに慣れていないのでここからはこれでいきます、あしからず)。それがこちら、STRAYというブリティッシュ・ハードロックバンドの『嵐の宮殿』(日本発売:1974年/オリジナル:1972年)である。

せっかくの日記、ということなので、まずはこのレコードを買った経緯についてちょちょいと綴ってみようと思う。
1月7日、荻窪のTOP BEAT CLUBにて暴動クラブ新年最初のライブがあった。そのハコは地下のライブハウスの上にアメリカのダイナーを連想させるようなカフェが、そしてそのさらに上、地上2階には大変素敵なレコードショップが常設されており、ロックファンが一日中楽しめる場所となっている(私はここをロックファンのためのディ○ニー・ランドと呼んでいます、モチロン勝手に)。
で、このレコードはそこの2階で買った。リハーサルを終えて出番まで随分と時間があったのでメンバーみんなで仲良く入店(Vo.釘屋は残念ながら不在)、と思いきや入店と同時に皆不仲の如く黙り込み、一切の会話も許されぬ、というもはや狂気さえ感じられる雰囲気の中ただひたすら各々が血眼になって、一時間近く物色し続けた。
私は何枚か欲しいレコードを見つけたが、散々悩んだ挙句この一枚だけを買って帰ることにした。メンバーもお目当てのものを見事ゲットしたみたいだった(先程までの狂気は消え、それと同時に浮かび上がってきた二人の満足げな表情がそれを物語っていた)。ライブ前にレコードを買うなんてなんたる贅沢! その日はいつにも増してウキウキでライブに挑んだ。(ライブ後、買ったことを完全に忘れて帰りかけ、共演のバンドの方に届けてもらったことは絶対にナイショである。)

さて、このSTRAYというバンドとは昨年の春頃、たまたまYouTubeで1973年くらい?の何かよくわからないラジオを聴いていたとき流れてきたのがきっかけで出会った。なぜ自分がそんなものを聴いていたのか全くもって謎であるが、この出会いがかなり衝撃的だったということは鮮明に記憶している。そのとき流れていたのは彼らのセカンドアルバム『Suicide』に入っている「Natures Way」という曲であった。印象的なリフで始まるそのイントロは、阿呆のようにボケっと聴いていた私の脳天を見事に揺るがした。まさに、腑抜け野郎の脳天が叩き割られたのだった。私はすぐさまサブスクで検索(現代っ子なので)、『Suicide』を早速ライブラリに入れ、通しで聴いてみた。洗練されたハードロック・サウンド、圧倒的に優れた演奏技術。こんなにも素晴らしい、そして私の好みにドンピシャりなバンドが存在したとは! と嬉しさと衝撃の止まらない私についにとどめを刺したのは、当時まだ彼らが我々と同い年、平均年齢18、19の青年たちであるという事実だった。私は甚だ絶望した。彼らはそのセンス、技術ともにあまりにも熟しすぎであり、これが同い年が生み出すサウンドであるとはとても信じ難かった。もし私が彼らと同じ時代に生きる、同世代の若者バンドだったとしたら、きっとその絶望は私が今感じているそれとは比べ物にならなかったろう。
この度私が買った『嵐の宮殿』は、そんな彼らのサードアルバムである。サブスクで配信されてはいるが私はまだ聴いたことがなかったので、期待と緊張を胸に、ドキドキで針を落とした。
レコードお馴染みのプチプチ音の後に流れ出したのは、意外にも優しいアコギの音だった。前作と少し違った雰囲気に驚きを覚えているのも束の間、針が進むにつれ激しさを増していく彼らの世界に、思わずどんどん引き込まれてゆく。私は普通の音量では飽き足らず、近所迷惑も忘れプレーヤーのつまみを殆どマックスまで上げた。

爆音で聴こえてくる一曲一曲が、飽きさせることなく私を喜ばせ、また強く嫉妬させる。
かっこいい。
本当に、むちゃくちゃにかっこいいのだ。
それでいてとんでもなくぶっ飛んだ、4人の演奏技術。
同じ若きバンドマンとして、悔しがらずにいられようか。

針が持ち上がる音がして、我に返った。全ての曲が終わったのだった。私はプレーヤーに向かってひとり拍手喝采をしてから、レコードを丁寧にしまった。
どの曲もとにかくすごかった。本当に優劣つけ難いが、特にB面の3曲目、アコギのボトルネック奏法が印象的なカントリー調のロックンロールナンバー「ミスター・ホーボー」が私のお気に入りだった。
私は(もちろんいい意味で)完全に打ちのめされた。これを聴いてますます彼らのフアンになってしまった。やれやれ新年一発目にいい買い物をしたもんだ、と自分の買い物センスに我ながら感動しつつ、今年がいい年になったらいいな、なんて少しキザなことを、ボロボロのライナーノーツを読みながら、考えてみる。

さて、やっとこの日記も終わりでございます。記念すべき第1回、興奮のあまり予定の3倍くらい長くなってしまったことをここに謝罪いたしますと共に、ここまで読んでくださったそこのあなたには、心より感謝申し上げます。 まだまだ未熟な私ですがこれから皆様に楽しく読んでいただけるよう頑張って参りますので、どうか温かい目で見守っていただければ幸いです。ROSIEを何卒よろしくお願いいたします。それではまた次回、

あ、隠れた天才実力派バンドSTRAY、聴いたことのない方は是非一度聴いてみてください。彼らの世界に引き込まれた暁にはきっともう帰ってこられないことでしょう!

では気を取り直してまた次回、お楽しみに。;)
サリュ!


たくさんの愛をこめて   城戸”ROSIE”ヒナコ

© 2024 DONUT

暴動クラブ INFORMATION

7インチ・レコード「暴動クラブのテーマ」
2023年11月3日 レコードの日 リリース
収録曲:暴動クラブのテーマ/Money(That’s What I Want) 全2曲

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