
2026.01.07 upload
中野ミホ『Bones』インタビュー
日常があって大事な人がいた上で、自分のなかで初めて、見えないところにいる人々のことも少し考えたくなったというか、歌いたくなりました――中野ミホ
中野ミホがリリースしたニューEP『Bones』は、タイトルが示すとおり、自身の土台に意識が向いたパーソナルな作品になった。しかし、パーソナルと言えどここで響くのはけっして閉じた世界ではない。学生時代に思いを馳せながらも、今、自身が立っている場所から少し先の未来を思い、潜在意識を辿りながら自分を掘り下げていった結果、見えないところにいる人々のことも歌いたくなった。そういった心情の変化が今作を照らし、内省的でありながら淡い光を放つ作品になっている。Romantic、サトウミノルとの創作活動やバンドセットでのライブも好調で、今作を携えたツアーもこれまでの楽曲を織り交ぜながら躍動感あふれるステージをみせてくれた。ここでは改めて、「自分にとってはすごく意味のある作品になった」という『Bones』について、中野ミホに話を聞いた。
●取材=秋元美乃/森内淳
■今回は自分の潜在意識というか、自分のなかに入っていく感じがありますね
―― まずは最新EP『Bones』、手応えはいかがですか?
ツアーをしたり取材を受けるのに自分でも聴き直していたんだですけど、けっこういいかもしれないと思いました(笑)。あと落ち着いてアナログ盤を聴いたらさらにいいなって。
―― 今回はCDとアナログ盤を作ったんですよね。アナログ盤を作ろうと思ったのは、何かきっかけがあったんでしょうか。
今作ではじめてPヴァインさんとご一緒して、Pヴァインさんにアナログの自社工場があるということで、ぜひ作ってみようという話になったんです。Drop'sのときにもアナログ盤は作ったんですけど、『Bones』は5曲しかないのにA面B面でレコードが作れるってすごく贅沢で(笑)、嬉しいですね。
―― アナログで聴いた感想はいかがですか?
上から下まで音の情報量が多いというか、全部の音が聴こえてくるというか、全然違うんですよね。ピアノの音もそうだし。5曲目の「グリーンピース」という曲は、アナログで聴くと曲が始まった瞬間から、作っていたときの感覚に近い生々しさがあって。これは聴いてほしいなと思いました。
―― 今作の楽曲は全体的に音を削ぎ落として作られた印象があるので、余計に曲の輪郭が浮かび上がるのかもしれませんね。
そうですね。この曲たち自体がかなりシンプルで言葉数も少ないので、アナログでひとつ一つの音の情報量が増えることによって、より生演奏に近い豊かな部分が見える気がします。アナログで聴くと表情が変わるというか、解像度が立ち上がってくる感じはありますね。
―― ライブで感じる感覚に近いというか、今のミホさんが表現する世界にすごく合っている気がします。
そんなふうに聴こえてくれるのは本当にありがたいというか嬉しいです。
―― 前回のフルアルバム『Tree』のときはかっちりしたものが作りたいと話していましたが、今回はそういった指針みたいなものはあったんですか?
自分の身の回りのこととか、まず自分がいて、というところは変わりはないんですけど、前作は音もけっこう構築して、どちらかと言うとキラキラしたり、“美”みたいな世界観を大事にしたり。あと、自分と他者=誰かがいて、という外に向いている感じがあったんです。『Tree』に比べると、今回は自分の内側に入っていく感じというか。自分が曲を作っていたのも1月とか2月に自分の部屋にこもって、いろんな断片を少しずつ貯めていたんですね。20曲くらいあって、それをちょっとずつ2人に聴かせたり、聴かせなかったり(笑)。そんな感じでけっこうひとりでやっている時間が長かったので、自分の潜在意識というか、自分のなかに入っていく感じというか、起きてこうやって喋っている意識だけじゃない、夢だったり、もっと深いところが気になっていったというのはありますね。
―― 具体的な心象風景が浮かぶ曲にも、そういう感覚が表れているんですね。
一番、情景が浮かぶのは「オレンジ」なんですけど、これは私の高校時代の友達に久しぶりに会ったときの感じというか、30代になるとわりと変わるじゃないですか。結婚して子供が生まれる子もいるし、バリバリ働いている子もいるし。そういう友達に本当に久しぶりに会ったときに、「変わったところもあるけれど、変わらないところもあるよね」という、ポロッとしたつぶやきみたいなことなんですけど。「オレンジ」は他の曲よりも具体的だし、自分のそのままを歌った感じですね。だけど本当に、実際にあった「カフェ・オレ」だったり、この景色はこれ、というのが強く出てるかな、と思いますね。今回の作品はわりと映画を見て、映画のなかの風景と、自分の今の気持ちや自分が見た景色が混ざったりしていますね。
―― そのあたりのイメージは、今回は安田さん(Romantic)やサトウさん(サトウミノル)とはどんなふうに話したりしたんでしょうか?
『Tree』のときは「この曲は4月の札幌だよね」みたいな話があったんですけど、そういうところは引き続き大事にしたかったので、同じように共有していて。「オレンジ」に関してはけっこう(イメージの)そのままという感じなので、わかってもらえたと思うんですけど。
―― 素直にその曲の世界に参加してもらえたということですね?
「ちょっと具体的すぎるんじゃない?」という話もあったような気はします(笑)。ミホ色が強すぎるというか、「ミホちゃんの、まんますぎる」と言われたりとか。そういうところは少しアレンジを入れてみたり、これは例えですけど、純粋なC、Dだったのをセブンスを入れるみたいな、ちょっとしたおしゃれさというか少しひねりを加えたり。そうすることで私のどストレートなところから少しハズす、みたいなことを安田くんとかは客観的に見て考えてくれるので、その辺のバランスは「オレンジ」はすごくよくなったんじゃないかな、と思いますね。
―― 例えば曲づくりにおいて、ミホさんのなかで以前よりも素直に自分の世界を表現できるようになったような感触はありますか?
そうですね。「オレンジ」とか「So long」は最初にギターで私が曲を作ったんですけど、自分の癖でギターだとシンプルになりがちで、ピアノだとちょっと複雑になりがちなんです。今回は「オレンジ」はギターから始まったので、その部分では元々自分が持っている土台とか素に近い状態から始まっているので、そういう面はあるかもしれないですし、けっきょく自分でしかないというか。いつもそうなんですけど、映画を見るのも、そこからまた曲を作ったりするのも楽しいし。自分の気持ちが動いたことがあったら記録しておきたいというのはずっと昔から思っているんです。どうしても30代とかになってくると、20代前半とかに比べると日々に感動することが減ってくるというか、新しく体験することがどうしても減ってくるじゃないですか。まだそんなことを思うのは早いと思われるかもしれないんですけど(笑)、コロナ禍もあって、コロナ禍後に外に出ることが減ったり、これは性格なんですけど、どうしても安定のほうに入ってきてるな、自分、みたいなところがあって。そんななかで久しぶりに友達に会って、普段、こんなに喋らないじゃない、と思うくらい喋ったりするのがすごく面白くて。「オレンジ」は高校の友達に久しぶりに会うだけで曲ができるとは思っていなかったんですけど、あとからじわじわと「あの日は喋り倒して面白かったなあ」みたいなことが出てきたんですね。それをそのまま書いたらこうなったという。
―― 日々の新鮮がなくなってきているというのは……
やばいですよね(笑)。
―― 思い返すと、東京に出てきてゴミを捨てるのも大変だということを知ったと、ミホさんが語っていたことがありました。
Drop'sの「アイラブユー」の頃ですね。
―― 新しく自分で経験することは日常でもまだまだこれからあると思うので(笑)。
あってほしいです(笑)。
■曲がっていても歪なかたちでも、それが自分。そういうイメージですね
―― 今回も3人で音を練り上げているとは思いますが、よりシンプルに聴こえます。音作りやレコーディングなど、どんな制作風景でしたか?
アレンジは3人でしたんですけど、かけた時間はわりと短かかったかな、と思いますね。夏に「RISING SUN ROCK FESTIVAL」に出させてもらうことになって、1曲は新しい曲を出したいということになって、それに合わせてレコーディングしよう、という勢いもあって。曲自体も私のパーソナルな部分やシンプルにギターで作ったものが多かったので、すごく練り上げるというよりはシンプルに作っていきましたね。「グリーンピース」はピアノで作ったメロウな曲だったんですけど、これはけっこう安田くんが変拍子というか、途中で拍子を変えたり、サティとかドビュッシーみたいな感じのフレーズをつけてくれたりして。ああでもない、こうでもないと言って、アウトロもつけたり変えたり、いろいろ試しました。曲のイメージは、歌詞がどういう景色なのかというのを都度、話し合って。「それだったらここはなくしたほうがいいね」とか、「それだったらもうちょっと明るいアウトロをつけたほうがいいね」とか、けっこう話し合いましたね。
―― そんなやりとりも踏まえて、「グリーンピース」の祈りのような曲が生まれたんですね。
「グリーンピース」は自分のなかで明確な色があったし、最後の2行の「ただあってほしい 愛とピース」というのも、今までは自分の日常だけという感じだったんですけど、自分のなかで初めて、日常があって大事な人がいた上で、全世界じゃないですけど、見えないところにいる人々のことも少し考えたくなったというか、歌いたくなった、みたいな。具体的ではないですけど、ちょっと祈りたい気持ちがありました。
―― それは作品全体をとおして感じました。今回のタイトルが『Bones』=骨格、土台みたいなところを表現されていて、パーソナルと言われればそうなんですけど、どこかに相手というか光が見えるというか。
めっちゃ嬉しいです。いろんな人がたくさんいるという感じではなくて、より絞られた相手かもしれないですけど、自分の数少ない友人とか家族とか、当たり前ですけど幸せであってほしいなあ、という気持ちみたいなものが……10年前じゃ考えられなかったですけど、それが出てきたかもしれないです。たしかに、「オレンジ」の「遠くない 未来を少しだけ 愛せたら」というのもそんな感じですね。
―― 「So long」はセンチメンタルな響きがあり、「グリーンピース」は祈りのような曲で、「ねずみの記憶」はスウィングするように景色が変わって、「オレンジ」ではミホさんの情感がよりストレートにあらわれて、「バニラ」は最後にシックなモードですごく印象的です。「バニラ」というと白い感じをイメージしますが、歌詞に出てくる「茶色いバニラ」というのは根源的なバニラのことですよね?
そうなんですよ。植物の状態のバニラというか、木というか。みんなに説明しているんです(笑)。あっちのバニラだよ、みたいな。
―― この曲の「背骨をなぞって 曲がったら」というフレーズにすごくドキッとしました。本来であれば背骨は真っ直ぐでありたいと思うけれど、でも、曲がっていてもいいんだ、みたいな。そういう希望じゃないけれど。
本当におっしゃるとおりで。けっこう前作に繋がる部分もあると思うんですけど、木も絶対に曲がっているじゃないですか。根っことか枝とか。以前、鍼治療に行ったときに「背骨が曲がっていますよ」と言われたことがあって。それで、曲がっているのも自分だな、という感じがすごくしたんです。そのときに見た映画にも少し影響されているんですけど、冬の森というかジャングルみたいな鬱蒼としているところに自分がもたれかかっていて、曲がっていても歪なかたちでも、それが自分だし、そのままの骨のかたち。そういうイメージですね。
―― どんな映画にインスパイアされたのですか?
『クィア/QUEER』というウィリアム・S・バロウズ原作の映画で、原作を読んだらじんわりとすごくよくて。それで映画を見に行ったら、映画もすごくよかったんですよね。なんか寂しくて。大事な人との関係って、長くなればなるほど、上手く自分の気持ちが言えなかったり愛を表現することもできなかったりするけど、でも、けっきょくはすごく愛おしいという気持ちがあって。そういう部分も映画とリンクして、原始的なズンズンタンというリズムに合わさって、茶色いバニラというイメージがかなり具体的に自分のなかにはありましたね。
―― めちゃめちゃいい曲ですね。
私もすごく好きです。
―― 今は本格的なソロ活動を始めて4年くらいで、Drop'sは活動休止中ですが、ミュージシャンとして自分の現在地をどんなふうに捉えていますか?
行き当たりばったりでやってきたので先々の計画を立てるのがめっちゃ苦手なんですけど、ずっと自分の身の回りのことを歌ってきたんですよね。本当に自分の半径5センチくらい……5センチはちょっと短いかな(笑)、1メートルくらいのことが、やっぱり聴いてくれる人にも当てはまったりするんじゃないかな、というのが昔からあるので、すごく飛躍したところではなくて、地に足がついている範囲内のことを歌って、それを聴いてくれる人が「わかるなあ、そうだよねえ」みたいな感じにふわっとなってくれたらという気持ちはずっと変わらずにあります。あとはこの3人で演奏している状態が自分はすごく気持ちいいし心地良いし好きですけど、常に新しいことをやりたいから、例えば、もうひとり入れてみたらどうなるかなあとか、そういうことを前向きに考えたくて。私もいきなりベースを始めたので、いきなりまた違うことをやったりしてもいいなあとも思うし、その辺は縛られずに「せっかくのソロだから別に何したっていいよね」という気持ちでいます。今回エンジニアをやってくれた猪爪東風(イノツメアユ)さんは、アユさん自身もミュージシャンで、いろんな提案をしてくださって。この作品でアユさんと出会えて一緒にやれたのは、大げさに言うともうひとりメンバーが加わったくらい大きくて感謝していて。そうやっていろんな人とやっていくのも面白いし、凝り固まらず「こうしてみたらいいんじゃない?」というのを聞いてやってみるのも面白いな、と思っていますね。
―― ミホさんの歌声は、歌が情景の一部のように聴こえたりもするし、エモーショナルでもあるのがグッときますが、最近は、歌い手としての考えた方はいかがでしょうか。
曲が伝わるように、ツールとしての歌、みたいなところは引き続きありますね。それにはやっぱり技術が必要だから、最近はマイクの使い方だったり距離感だったり、人の歌い方を見たりしていて。「けっこうリズムっぽく歌っているなあ」とか「すごい抑えているなあ」とか。歌というのはただ歌えれば歌えるし、それはそれでいいところも少なからずあると思うんですけど、そういう工夫というか細かく研究すればキリがないんですよね。自分は、それがよくなるのかどうかはわからないですけど、もっと深く歌を研究していくのも面白いなあ、と思ったり。マイクのこととか、全然わからなかったんですけど、今回も何種類も試させてもらって。「あ、全然、違うんだなあ」という気づきがあったので、そういう技術やモノの使い分けができるだけでももっと幅が広がって、聴いてもらえるきっかけになるんじゃないかなあと思いました。まだまだ勉強できていないですけど。あとジャズも好きだし、例えば耳にすっと流れていく感じというのも、音楽的には大事なのかもと最近ようやく思えるようになりましたね。
―― あと今作でとくに思ったんですけど、AメロBメロサビみたいな流れではない曲展開がすごく自由だなあと。そのあたりで自分の曲作りにおいて意識した部分はありますか?
普段はほぼ洋楽しか聴いていないので、それがけっこう大きいかもしれないですね。「この曲、すごく好きで気持ちいいけど、どういう構成でできているんだろう?」みたいに聴いていると「あれ、なんかもう終わったわ」みたいな。「早っ」みたいな(笑)。けっこう、そういう曲があるじゃないですか。「これとこれしかないんだ」って。でもすごく気持ちがいいし、伝わってくるものがあって。「あ、これでいいんだ」って(笑)。長さとか展開とかじゃなくなっているというか、時代もあると思うんですけど、よりなんかそういう感じでいいんだな、と。別に途中で調が変わって、ずっとそのまま行ってもいいし、最後にサビがなくてもいいし。逆にサビで始まってもいいし、みたいな。そこはすごく自由になっていると思いますね。
―― 聴いていてまさにそう思いました。「こんな展開でいいんだ」みたいな。
安田くんとかも「これで終わりでいいんじゃない?」みたいなことをよく言ってくるんですよ。最初は私も「え、いいの?」と思うんですけど、「ま、いいか」みたいな。Drop'sのときに昭和歌謡にハマっていた時期もあるし、Cメロをやたらつけたがっていた時期もあるし、わりとカッチリ(曲の流れを)作ってきたんですけど、若い子とか聴く人は別にそんなの気にしないんだろうな、と思って(笑)、その辺はもうノリでしたね、今回は。
■自分のなかにまだまだ何かあるかもって探していきたい
―― 1stEPは『Breath』、フルアルバムが『Tree』、今作が『Bones』。作品ごとに、そのときの中野ミホを表現してきていると思いますが、あらためて今回『Bones』に込めたかったことや思いはありますか?
そうですね。何かを込めたくて、という感じではなかったんですけど、結果的にこの4年、3人でやってきて、いろんなことをそれなりに試してみて、一回またここで自分の“ギターと歌”とというところになんとなく戻った感じはあります。土台というか、土っぽさみたいな。去年はわりとアートワークとかも少し背伸びをした感じというか、きらめきみたいなところを出していて。それはそれでよかったんですけど、付け加えた自分というか、見られる意識を付け加えた自分が去年だったとしたら、今年の『Bones』はもう少し自分の地面、土、骨、という部分に近づいたというか。結果的にそういうふうになったんですけど、シンプルになってかなりパーソナルになっているかなあと思っていますね。
―― それはどういう気分でそうなったんでしょうか?
曲を作っていたときの状況がそうさせたというか。
―― 部屋にこもっていた状況ということですか?
そうですね。「けっきょくは自分ってこういう人間なんだなあ」というか。もちろんメルヘンでキラキラしたものもすごく好きだし、自分の曲にそういう部分もあってほしいんですけど、いざひとりになって部屋にこもったときにポロって出てくるものがあって。今回はたまたまそうなった感じですけど。
―― 自分の原点を確かめたかったという気持ちもあったんでしょうか?
意識せずとも、それはあったかもしれないですね。自分の生活に本当に根付いていることなので。なんというか、30代になってもちろん人と会うのも好きですし、たくさんの人と関わり合いたいんですけど、けっきょく1対1とか、自分対自分みたいなことが常に一番大事だし、前にも話したかもしれないですけど、夢日記をつけたりしていて、より自分に向かうことが増えて。曲を作るとなると、外というより、やっぱり自分を掘り下げていくしかないと思うんですよね。映画を見てとか、絵を見てとか、そこがスタート地点じゃなく、自分がスタート地点で、そこに映画が入ってきたり、音楽が入ってきたり、というのが基本にあってほしいというか。それをなくしたくないがゆえに、自分を掘り下げていった結果、こうなったというか。
―― 前作の反動も少しはあるんですか?
あるかもしれないですね。なんか自分がなくなっちゃう、自分がなんにも感じなくて空っぽになっちゃうのが一番怖くて。じゃあ自分の中身ってどんなものがあるんだろう、まだまだ何かあるんじゃないか、みたいな。もしかしたら自分のなかに何かあるかもって探していきたいという気持ち……そのときに、例えば、人の幸せを考えたりとか、身近な人が亡くなったりとか、産まれたりとか、若い頃にはあまりなかったじゃないですか。遠くの国で起きている戦争についても、今まではテレビのなかの出来事のように、自分はあまり深くは考えてこなかったというか。それが歳を重ねると共に、そういうことを考えるようになってきて。それも今の自分が考えることではあるから、じゃあ少し歌にしてみたらどうかなあ、というふうに思えて、それが今回、少し変わったことかもしれないですね。「So long」も生きるとか死ぬということがテーマになっていて、「グリーンピース」も祈りだったり平和だったり、自分が本当に少しですけど近づいたというか。それが今の自分が思っていたことかなあという感じはしますね。
―― このEPを作ってよかったですね。
そうですね(笑)。新しく感じる華やかな刺激みたいな、目に見えるキラキラした恋愛とか、そういう新しい世界ではないけれど、自分が生活している範囲のなかでの、ちょっとした変化みたいなものは残せた、記録できたという意味では、自分にとってはすごく意味のある作品になったんじゃないか、と思います。
―― リスナーにはそういうところを少しでも共感してもらいたいというか、確信ではないでしょうけど、ミホさんなりの希望があるわけですよね。
自分と同世代の人だったり、同じ思いで生きている人にほんの少しでも届いたら嬉しいですね。
―― 自分を歌っているんだけど、そこで共感してもらえることで外ともコミットしているという。
そうですね。希望ですね(笑)。自分のなかで曖昧な部分でもあったんですよ、作品を作ることの意味みたいなものが。もちろん曲を作ってライブをして音源を出してという、目に見える意味はあると思うんですけど、この曲を今、世に出したことの意味みたいなものは、ずーっとワーッとやっていたから、あまり考えられていなかったんですけど、たしかにそうだな、って今、思いましたね(笑)。
―― 自分を掘り下げてできたアルバムから相手が見える曲たちが生まれたというのが、この作品のすごく素敵なところだと思います。
ああ、よかった。まだ心が死んでなかった(笑)。
© 2026 DONUT
INFORMATION

EP『Bones』
2025年10月2日リリース(CD)
2025年11月19日リリース(12インチ)
収録曲:01.So long/02.グリーンピース/03.ねずみの記憶/04.オレンジ/05.バニラ
LIVE INFORMATION
「ブルースの話をしよう」
2026年1月20日(火)
出演:石川蓮(YAPOOL)/髙松名人(自爆)/島崎大/中野ミホ
下北沢 CLUB Que
「浮遊 vol.53」
2026年2月14(土)
新代田 live+bar=crossing
出演:平理央/no-year(no-years)/中野ミホ
BLUE Enoshima SR_BLUE presents 中野ミホ (Band Set) - 江ノ島サンセットライブ –
2026年3月7日(土)
BLUE Enoshima
※その他、バンドセット、弾き語りなど、ライブの最新情報はオフィシャルサイト、公式Xにてご確認ください。
nakanomiho.tumblr.com
https://x.com/miho_doronco12
<こちらもチェック>
音楽トーク番組「マイハギ」
ゲスト:中野ミホ(前編・後編)





