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2024.11.26 upload

the myeahns
「ワイルド・ワン」 インタビュー

「このままでいい」と思ったことは一度もないので、たぶん、ぼくもthe myeahnsをまだまだ壊したいと思っていたんだと思います―― 逸見亮太

the myeahnsは毎回高いアベレージを叩き出してくれているので、いつも安心してライブを見ていられる。それが観客の熱の高さや動員にもつながっている。そんななか2024年10月と11月にthe myeahnsのライブを2ヵ月連続で見る機会があった。いつものように「安定のthe myeahns」であったが、EP「BONE VIBES」の収録曲「ロックの背骨」で風景が一変した。ただただシンプルに初期衝動を曲と歌に落とし込んだ「ロックの背骨」はthe myeahnsのライブをいい意味で引っ掻き回し、壊していた。この1曲が高いレベルに達したバンドをさらにロックンロールの高みへと連れて行っていた。そんななか、新曲「ワイルド・ワン」と「サドルメン」がリリースされることになった。2曲とも「ロックの背骨」の流れを汲んだ勢いのあるロックンロールナンバーだ。この新曲を聴いたとき、バンドが新しいフェーズへと進もうとしていることがより明確になった。そのあたりの心境をボーカルの逸見亮太(へんみ・りょうた)に訊いた。

●取材=秋元美乃/森内 淳



■世良ジーノくんは新ギタリストのイメージにぴったりでした。


――今年(2024年)9月にthe myeahnsのギタリストが世良ジーノさんになりました。まずは世良さんの紹介からお願いします。

逸見亮太 元々、滋賀県で活動していたCOWCITY CLUB BANDのギタリストです。ぼくらのツアーに出てもらったり、彼らのツアーに呼んでもらったり、東京で一緒になったりしていたんです。いいバンドだったんですけど、去年活動が止まっちゃって。でも世良くんはバンドが終わってからも他のバンドでサポートをしていたのを見かけて「まだ音楽をやってるんだな」って思ってたんです。それで、ぼくらのギターが抜けたタイミングで、バンドのメンバーと誰に後任をやってもらおうと話しているなかで、やれたら嬉しいなと思っていた世良くんを一番最初に提案したんです。

―― 世良さんはそのときは上京していたんですか?

逸見 まだそのとき彼は滋賀在住だったんです。まずはサポートからって感じで快くやる気になってくれたので、ライブの度に毎回、東京に来てもらって、ライブの前に何回かスタジオで曲を合わせてライブをする、という感じでしたね。そのライブの期間はうちに泊まってもらって。

―― そうだったんですね。

逸見 世良くんが9月に上京してくるまではそんな感じで活動していました。世良くんは「他のバンドのサポートもいろいろやりたい」と言っているなかで、the myeahnsは正式ギタリストとしてやってくれるということになって。それで、今回のシングルのリリースと同じタイミングで世良くんの加入を発表しようという流れになりました。

―― 逸見さんは世良さんのギターのどこに惹かれたんですか?

逸見 世良くんは若いのにいなたい感じのギターを弾くイメージがあって。あのギターなら、リフものもコードをジャーンって弾く感じもいけるし、バンドにぴったりだと思いました。ライブで遠慮がちにスッと前に出てくる感じも好きですね。

―― the myeahnsにハマったんですね。

逸見 対バンしたときもお互いのバンドのことを話したりして、「この人、本当にギターが好きなんだろうなあ」「ずっと家でギター弾いたりしてるんだろうなあ」「ずっと売りに出されてるギターチェックをしてるんだろうなあ」なんて思ったりして人間的にはわかってきていたんです。スタジオに入ったりライブをやっていくなかで世良くんが楽しそうに見えたし、なによりthe myeahnsを好きでいてくれたので、すぐに溶け込んでいけた気がします。世良くんは新ギタリストのイメージにぴったりでしたね。


■DECKRECからのリリースが決まってから、この2曲をあらたに書きました


―― 11月27日にネモト・ド・ショボーレさんのDECKRECレーベル(UK.PROJECT)からthe myeahnsのニューシングル「ワイルド・ワン」がリリースされます。DECKRECレーベルからリリースすることになった経緯を教えてください。

逸見 2022年ですかね、the myeahnsも出演した新宿LOFTのイベントでネモトさんがぼくらの出番前にDJで出演していて、そこで出会いました。そこから交流がはじまって音楽の話ですぐに打ち解けてネモトさんの家に遊びに行くようになって、音楽の話をする友達みたいになっていて。ロックンロール、ガレージ、パンクやネオアコの話で盛り上がったり、ネモトさんは90s〜00sの日本のインディーシーンにも詳しくて色々教えてもらったり。下北でレコードバーに行ったり。

―― 2年くらい交流があったんですね。

逸見 それで、ちょっと間があいてしばらく会ってないなあなんて思ったりしてたら、ネモトさんが荻窪TOP BEAT CLUBで開催したDECKRECの25周年イベントにthe myeahnsを誘ってくれたんです。ネモトさんは「あと15年早く出会ってたらリリースしたかったバンド」と思ってくれてたみたいで。ぼく自身DECKRECのファンで聴き漁ったりしていたので光栄でした。茂木くんもあっち行ったりこっち行ったりでめちゃくちゃ忙しい時期だったにも関わらず無理してくれて出演が決まって。

―― the myeahnsはDECKRECからリリースしていないですよね?

逸見 そうなんです。イベントに出たのはいいんですけど、DECKRECから作品を出していなかったのはぼくらくらいだったんですよ。そのときネモトさんがあらためてthe myeahnsのライブを見て、数日後連絡をくれて「DECKRECからいま出さないか?」と言ってくれて、話を詰めていって今回のリリースとなりました。

―― そういう流れだったんですね。シングルには「ワイルド・ワン」と「サドルメン」の2曲が収録されていますが、この2曲をシングルに選んだ理由は?

逸見 元々この時期に作品をリリースしようというのがバンドのスケジュールにあったんですよ。それにあたって、何曲かぼくのなかで候補はあったんですけど、DECKRECからのリリースが決まってから、候補にあった曲は一旦外して、この2曲をあらたに書きました。

―― ストックではなく、あらたに書き下ろしたんですね?

逸見 そうです。DECKRECから作品をリリースすることになって2曲書いたって感じです。ネモトさんの家に行って「どんな曲にしようか?」「今、こんな曲のカケラあります」「あ、こんなリフの曲もありました」「あ、これいいね! これ仕上げていこうよ」とか話をしながら、2曲を詰めていきました。DECKRECと言ったら、なんつったってロックンロールという意気込みで。

―― ネモトさんとは曲については、どういったやりとりをしたんですか?

逸見 「ワイルド・ワン」は当初テンポがもうちょっと遅かったんです。ネモトさんが「もう少しテンポを上げてみたらどう? ラモーンズみたいに勢いある感じに」という提案してくれたり。「サドルメン」は元々サビがない状態でネモトさんに聴かせて「やっぱりサビがほしいよね」という話になって。作っていくうちに自然とサビがマイナー調になって。それを聴いてもらったら「このマイナー調で一気によくなった!これだ!」という流れになったり。

―― 音もいいですよね。

逸見 今回のレコーディングは元毛皮のマリーズの西さんに録音とミックスをお願いしようという話になって、音も相当かっこよく録れました。レコーディングの帰りにラフミックス聴きながら、メンバーみんなで「ロックンロールだあ」「カッコいい音で録れた」なんて話ながらテンション高めで帰りました。今日も何話そうかなぁなんて考えながら取材の前にずっとこのシングルを聴いていたんですけど、いい2曲が揃ったなという感じです。


■「ワイルド・ワン」を歌って、自分たち自身を目覚めさせようというのはありました


―― 前作のEP「BONE VIBES」のM5「ロックの背骨」から、いい意味で開き直ったようなロックンロール・ナンバーを積極的に書いているような印象があります。逸見さんのなかで心境の変化があったりしたんですか?

逸見 やっぱりロックンロールが大好きだし、一番かっこいいよなあと思うことが増えたんですよね。家でレコードを聴いてても「やっぱロックンロールは気持ちよくなれるよなあ」「笑い飛ばしてやるぞお!」とか聴いてたら、どんどん勇気湧いてきて、謎に強くなった気になっちゃったり。「開き直っちゃえ!」みたいなことはありました(笑)。「ロックの背骨」は馬鹿っぽいですからね(笑)。でも「それでいいんだ、それがいいんだ」と思ってました。

―― 「ロックの背骨」はいい意味でthe myeahnsのライブを壊していますからね。

逸見 「ロックの背骨がボーン、ボーン」って発語して気持ちがいいんですよ(笑)。嫉妬もありつつ、性格悪いんで「流行りがなんだ! オレはこう歌う!」「ザマアミロ!」「これでカッコいいんだから文句ねぇだろ!」って思いながら歌ってます(笑)。

―― そういった意味でも「ロックの背骨」から「ワイルド・ワン」への流れはバンドにとって大きな転換点のような気がします。

逸見 「このままでいい」と思ったことは一度もなかったので、たぶん、ぼくもthe myeahnsをまだまだ壊したいと思っていたんだと思います。ライブで「ロックの背骨」をやるときはギアが1速、2速上がる感じがするんです。お客さんが盛り上がってるのがわかるし、最近ライブではあの曲を後半の起爆剤にしてます。そこに「ワイルド・ワン」や「サドルメン」が入ってきて、もっとライブが楽しくなればいいと思います。

―― 今回の「ワイルド・ワン」と「サドルメン」は「ロックの背骨」の勢いにつづくような2曲になって、いよいよthe myeahnsが次のフェーズに行くんだなという手応えを感じています。

逸見 「ワイルド・ワン」を歌って、自分たち自身を目覚めさせようというのはありました。DECKRECからのリリースというタイミングも重なって「じゃあこの2曲は開き直ってバーンとやろう!」と思ったのもあるし。世良くんになって最初のシングルだから、新しいthe myeahnsのテーマソングみたいな曲にしたかったというのもあります。わかりやすい2分台のロックンロールで新しくなったthe myeahnsを盛り上げようという気持ちもありました。


■デタラメのようで辻褄が合っているというような曲が書きたい


―― カップリングの「サドルメン」もブルーハーツの「ナビゲーター」にも通じる歌詞が出てきて。それなりの決意がないと歌えない歌詞だと思いました。

逸見 「いつかたどり着いた場所がふるさとになればいい」っていうところですよね。

―― その一節はthe myeahnsの決意表明のようなものではないかと思いました。

逸見 「サドルメン」だけじゃなく「ワイルド・ワン」も、そういう決意はありましたね。転がって転がって本当にたどり着いたところで死んでもいいやっていうくらいの気持ちはありました。今までやってきたことを無駄にさせないし、ちょっとしたことが運命を変えるし、「メンバーや色々な人に助けられてただけで本当だったらお前死んでたぞ」と自分に言い聞かせて書いた2曲です。生きているとちょっとBADになるときもあるじゃないですか。好きなことして、やりきるロックンロールを歌っているときくらいは強い心で立ち向かおうという。

―― やりきったロックンロールがあるからこそグッドメロディの曲もより活きてくるという。the myeahnsがこういうモードに突入するのを心待ちにしていました。

逸見 「ゆるキャラ」という歌詞で歌いだすのに「ワイルド・ワン」っていうタイトルなんてめちゃくちゃだし(笑)。

―― たしかに(笑)。

逸見 それぐらいデタラメだったりふざけていたり馬鹿っぽかったりする曲ですけど、真剣だし、本気だし、本物です。

―― その発想自体がロックンロールだと思います。

逸見 この曲は最初、Aメロだけがボイスメモに吹き込まれてたんです。ネモトさんと「この感じいいね」って話していたんです。the myeahnsにはあまりなかったコード進行だし、「この曲、面白いよ」って。後日、持ち帰って、この曲のつづきをなんとなく書いていたときに「ゆるキャラ」で始まる曲なのに、タイトルが「ワイルド・ワン」だったら痛快だなと思って(笑)。

―― 完全に覚醒してますね(笑)。

逸見 よかった(笑)。だから、これからもデタラメのようで辻褄が合っているというような曲が書きたいです。

―― そういった楽曲の意図をメンバーの皆さんにはどうやって伝えたんですか?

逸見 歌詞についてはとくに話してませんが、今までは弾き語りで聴かせて、そこからみんなで曲を合わせていくという感じだったんですけど、ある日思い立ってスクールに通ってDTM(デスクトップミュージック)を勉強してみたんです。それで、ドラムを打ち込んで、ベースを弾いて、ギターを弾いて、歌を録音してパソコンである程度デモを作って、みんなに聴いてもらって。イントロとか、ビート感だったりはこういう感じでやりたいということは伝えた感じですかね。あとは2曲のバランスとかも考えつつ。

―― いつもより手っ取り早く楽曲のテーマをメンバー間で共有できたわけですね。

逸見 そうだったらいいんですけどね。弾き語りのときよりも、逸見(へんみ)がこうしたいというプランはメンバーもわかりやすかったかなと思います。デモを聴いたときに「あ、こういう曲なんだね」とすぐに理解してくれたので、あとは「このデモをもとにしてよくしていこう」って感じです。

―― いろんな変化があったんですね。メンバーの皆さんはステージ上では激しいパフォーマンスをやりますからね。「ワイルド・ワン」は彼らのポテンシャルをさらに引き出せるかもしれませんね。

逸見 茂木くんのドラムも、ハルくんのベースも、カッチのキーボードも、世良くんのギターも、この曲がライブでどうなるか、めちゃくちゃ楽しみです。それに本当の意味で、ぼくはまだまだ笑えてないと思うんで、もっとゲラゲラ笑いたいですね。この2曲をきっかけにまだまだ転がっていければいいし、the myeahnsはもっと暴れまわっていいし、the myeahnsをもっと壊さなきゃ駄目だし、止まっちゃ駄目だし。「このバンド、馬鹿だなー」って笑われたとしてもへっちゃらというか。ロックンロールバンドならそこは笑えてこそだと思うので。この2曲はツアーからバンバン、セットリストに組み込んでやっていくので、もう噛みつきまくってやるという感じですね。

© 2024 DONUT

INFORMATION

Digital Single 「ワイルド・ワン」
2024年11月27日リリース
収録曲:1.ワイルド・ワン/ 2.サドルメン
配信リンク:https://themyeahns.lnk.to/WildOne

LIVE

​the myeahnsニューシングル『ワイルド・ワン』リリース“モアモアツアー”

2024年
11/29(金) 大阪・心斎橋Pangea w/古墳シスターズ
11/30(土) 愛知・名古屋HUCK FINN w/THE KING OF ROOKIE
12/06(金) 東京・渋谷Spotify O-Crest w/ビレッジマンズストア

■ライブの詳細は諸事情により変更になる場合があります。必ず公式サイトやSNSで最新情報を確認してください。また上記以外のイベントの出演情報なども公式サイトやSNSでご確認ください。
公式サイト:https://myeahns.jimdofree.com/gigs/

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