
2026.03.01 upload
ハイエナカー インタビュー
FEVERという、自分のなかではちょっと大きなライブハウスでやることで、お客さんにとっても刺激になるんじゃないかなあ、と思います
―― ハイエナカー(村瀬みなと)
村瀬みなとのソロバンド、ハイエナカーがセカンドアルバム『世界中に張り巡らされてる運命の赤い糸を全部切って僕に繋いで!?』を昨年の11月にリリースした。今作はファーストアルバムより3年ぶりのフルアルバム。楽曲のタイトルやリリックにリスペクトするアーティストの曲名や、あるいは「エルビスコステロ物語」のようにアーティスト名そのものが入っている曲もある。ハイエナカーの才能の引き出しを全開にしながらも、かつ、ファーストアルバムとは違う軽やかさや自由な発想が見て取れる。ハイエナカーは早くも次のフェーズに突入した感がある。ハイエナカーは2026年11月27日金曜日、東京・新代田FEVERでワンマンライブ「焦がしたパンにたっぷりのマーマレード」を行うことを本日、3月1日に発表した。ハイエナカーにとっては今までで一番広い会場でのライブになる。前進するハイエナカーのインタビューを、FEVERでのワンマンライブ発表のタイミングに合わせて公開。
●取材=森内淳
―― 2025年11月にハイエナカーはセカンドアルバム『世界中に張り巡らされてる運命の赤い糸を全部切って僕に繋いで!?』をリリースしました。ハイエナカーの才能の引き出しを全部開けたような作品になりました。
本当にそうですね(笑)。もうこれを作って空っぽになっちゃった感じで(笑)。今回はファーストの『まだ僕じゃないぼくの為の青』よりも、もっと具体的なメッセージを込めて作りました。例えば、誰かに「この曲はどういう意味?」と訊かれたら、全部、その意味を答えられるよというくらいの気持ちで作りましたね。
―― かなりこだわって作ったんですね。
アルバムのタイトルもそうですけど、ジャケットも今回自分で写真を撮りました。そういうところも含めて、自分なりに意味を作ってアルバムを作ってみました。
―― どうしてそういう気分になったんですか?
昔、小沢健二さんが自分の曲の説明をすごくしていたんですよ。普通のミュージシャンはあまり自分の曲の説明をしないじゃないですか。そっちのほうがかっこいいですからね。それに聴いた人の想像力に委ねられるという良さもあると思うんですよ。だけど、そこをあえて説明しているというところが、逆に、かっこいいなあ、と思ったりもしたんですよ。そういうものを目指してみよう、と思いました。
―― そういう心境に至るきっかけはあったんですか?
「どういうアルバムを出そうかな?」と考えていたタイミングで、以前から長くお世話になっているライブハウスのブッキング担当の方がいたんですけど、その方がディスクユニオンに入ったんですよ。それがきっかけでその方と一緒にまた新しくやっていこう、みたいなことになって。今はもうディスクユニオンも辞められて、ハイエナカーを機にレーベルのようなことを始められたんですけど、会うたびに「次はこういうのを作りたいです」とか、自分のなかの設計図みたいなものをずっと説明していたんですよ。そういう流れもあって、こういうアルバムになりました。
―― その設計図がテーマに結びついているわけですね。村瀬さんは前作のときに「青い自分にファーストで区切りをつけた」みたいな発言をしていました。今作は前作とは違うものを目指したようなところはありますか?
ファーストアルバムはギターロックだけで押し切るみたいな、オルタナティブ要素を全開にしてやったんですけど、今回はそれよりも、わかりやすさというか、オマージュも入れてありますし、そういうところにこだわりました。以前、インタビューでも話していたと思うんですけど、ファーストが、ある意味、アルバムっぽくなかったんですね。1曲1曲の密度が濃いから、ベスト盤のようだ、という話をしていて。今作はもうちょっとアルバムっぽいものを作りたいな、というのがあったんです。そうなると、オマージュだったりとか、オマージュもあからさまにわかるものも入っていてもいいのかな、と思ったりしました。
―― 少し自由にやってみよう、と。遊びの要素も入れてみよう、と。
そうですね。そういうイメージです。今はそういう時間なのかな、みたいな。
―― ハイエナカーとして活動するなかで、そう思える余裕が出てきたのですかね。
余裕が出たのもありますけど、少し歳もとって、必死さのベクトルを変えたという感じなんですよね。
―― なるほど。
例えば、オマージュにしても、ここまであからさまにやっても、聴いている人のなかにはわからない人もいたりするんですよね。それはそれでいいんですけど、それを思うと、逆にもっと振り切ってもいいのかな、とも思いました。
―― もっと遊んでもいいのではないか、と。
そうですね。
―― オマージュ的な要素を探し出すのは面白かったですよ。
本当ですか? 嬉しいです(笑)。
―― 「バンド オン ザ ラン」はウイングスのアルバムタイトルで、「スタンバイ」にはスピッツの「ヒバリのこころ」が出てきて、「エルビスコステロ物語」はコステロの初期のバンド、アトラクションズ時代の曲名がたくさん出てきて、「情熱と小細工」はチープ・トリックがしのばせてあって……
もうあからさまに「サレンダー」ですからね(笑)。ドラムの音も近づけました(笑)。それから今回、11曲入りなんですけど、ぼくは、元々エレファントカシマシが好きで、エレカシのアルバムはいつも11曲入っているんですよ。それでずっと11曲でアルバムを作りたかったんです。
―― そこもオマージュなんですね(笑)。
前作は10曲で、1曲足りなかったんですけど、今回は11曲揃って(笑)。
―― 今回は参加メンバーも大勢いて、ファーストとは違う様相になっていますよね。
ディスクユニオンからリリースするということもあって、今回が初の全国流通だったんですよ。どれだけ枚数を流通させられるのかわからなかったので、会社的に「なるべく推せる材料がほしいです」みたいなことを言われまして。「じゃあ友達を呼ぼうぜ」みたいな。最初はわりとそういう軽いノリだったんです。
―― なかには村瀬さん以外の方が作詞作曲した曲もありますよね。
このアルバムのパッケージング自体に自分のなかでこだわりがあったので、そのなかに自分ではない何かが入っていても、自分の作品として出来上がるだろうという自信があったし、自分の声で歌ったら自分の曲になるかな、というふうにも思いました。
―― あと特徴的なところをあげると、タイトルがやたらと長いという(笑)。
たしかに(笑)。前回のアルバム『まだ僕じゃないぼくの為の青』も含めて、ミニアルバムのタイトル(『愛について考えてたら天使にぶん殴られた件について』)とか、ちょっとずつタイトルが長くなっていたんですよ。だから今回も長めにしようというふうに考えていて(笑)。
―― 『世界中に張り巡らされてる運命の赤い糸を全部切って僕に繋いで!?』というタイトルは、村瀬さん的にはどういう意図でつけたんですか?
言いたいことを省かずにそのままタイトルにしよう、と思ったら『世界中に張り巡らされてる運命の赤い糸を全部切って僕に繋いで!?』になりました。前回のアルバムが「青」がテーマで、その間に出したミニアルバムが黄色っぽいイメージだったんです。ミニアルバムはジャケットも黄色なんですけど。信号機じゃないですけど、青、黄色と来たら、今度は赤だろう、みたいな(笑)。じゃ次は赤いテーマの曲たちを集約させたアルバムを作ろう、というふうには決めていたんですよね。それで、学校の後輩がぼくの活動を見たことをきっかけに音楽を始めたりとか、歳を重ねるに連れて、自分が音楽の活動をしていることによって、少しぐらいは変化が起こっているのかなあ、と思って。自分を通して少しでも音楽を変えられたらなあという意味を込めて、このタイトルをつけました。
―― 1曲目の「バンド オン ザ ラン」はそういう決意が書かれていますよね。
そうですね。最近のライブでは必ず「バンド オン ザ ラン」を最後のほうに演奏するんですけど、「俺はそこにいなくても良いけどいたほうが良い」という一節が自分のなかで大きなメッセージになっているんですよね。音楽自体がそういうものではないかなあ、と思っていて。
―― この辺りも前作から一歩踏み出した感がありますよね。
そうですね。もうちょっと具体的に見えていることを言っているというか。
―― このアルバムを聴いたときに失恋をテーマにしたラブソングが多いような印象でした。これは比喩としてのものなのか、それとも直接的なものなのか、どちらなんでしょうか?
基本的には直接的なものですね。自分の状況がこの歌詞のような状況に置かれているわけではないんですけど、曲に導かれるというか、「テキーラ!!」とか「とけないハート」の次に「バンド オン ザ ラン」ができたんですけど、そこからラブソングを増やしていこうという感じになりました。6曲目の「傾いたシーソー」だけは失恋の曲ではないんですけど、それ以外はど直球って感じですね。3曲目の「スタンバイ」もちょっと違うテーマなんですけどね。
―― それはどうしてなんですか?
ソリッドなロックソングというか、見えないものを信じて突き進むというような、ぼくの好きなタイプのバンドの曲のようなものは過去にやってきたから、別にそういうものばかりを歌わなくても大丈夫だろう、というか。もうそういう曲は残してきたから、という理由が強いですね。「次に自分はこういう歌詞を書いたらいいんじゃないかな」みたいに思ったんですよね。「こういう歌詞を自分は求められているんじゃないかな」というか。それは誰かに言われたわけではなく、自分が肌感で感じた雰囲気なんですけど。それがアルバムの雰囲気に繋がっているというか。
―― 村瀬さん的には今作で新境地を切り開いたという手応えもあるんですか?
そうですね。今回のアルバムはすでに配信していた曲を集めたわけではなく、「これを作るぞ!」と思って作ったから、自分のなかで「こうしたい、ああしたい」というのが詰まっていますね。それをやり遂げてしまったので、これを出したときに、空っぽになっちゃったんですけどね(笑)。
―― 周りの評価はどういったものだったのですか?
アルバムに対する反響もかなり良かったので、どうにかして頑張って12月くらいに、またアルバムを作れるように絞り出したいなあ、とは思っているんですけどね(笑)。実は「スタンバイ」とか「エルビスコステロ物語」とか、そこら辺の曲たちって8月くらいまでできていなかったんですよ。「てぃあどろっぷ」もそうか。このアルバムのリリースが11月5日でしたから、「やばい」と思って、けっこう勢いで作ったんです。そういう意味では「次もいけるな」という感じにはなっていますね。時間をかければいいものができるというわけでもないので。
―― かなり集中して作ったんですね。
自分でミックスもやるので、レコーディングだけじゃなく、音を作る作業もあるので、ずっとやっていたアルバイトも辞めて、本当にアルバムを作ることだけに集中してやりました。2ヵ月くらいはずっと家にこもっていました。
―― 村瀬さんはミュージシャンであってエンジニアでもありますからね。集中した分の熱量が感じられる作品ですよね。
そう思ってもらえると嬉しいですね。もしまた今年中に頑張ってアルバムを作ることができたら、もっとそうしないといけないんだろうなあ、とは思っていて(笑)。でも、そのスピード感というか、それをやることによって、応援してくれる人が増えたなという手応えはあるんですよ。しかも、この時代に、予算があるわけでもないのに、配信をやった上にわざわざCD盤も作るって、めちゃくちゃ効率が悪いやり方なんだけど、そういうところを見てもらうことで、応援しようと思ってもらえるんだなあ、と思いましたね。プロモーションにしても、独自なやり方を意識しながらやっていったというか。アルバムのトレイラー映像があるんですけど……
―― あの忙しいやつですよね。
そうです(笑)。ああいうのもぼくしかやらないようなことをやったというか。
―― まさにオルタナティブな発信の仕方ですよね。
そうですね(笑)。
―― その流れでアルバムジャケットも自分で撮影したわけですね。アルバムのテーマカラーである「赤」を基調にした薔薇の花のジャケットになったわけですけど。
「100本の薔薇の花束を赤と白の薔薇で作るんだったら、割合をどうしますか?」みたいな心理テストがあったんですよ。ぼくは「白が2本で赤が98本」と答えて。その心理テストによると尽くしたい気持ちが赤で、見返りが白みたいなことだったらしくて、それが面白いなあ、と思ったんですよ。それをそのままジャケットにしようと思いました。それから、エレカシに『ココロに花を』(1998年)というアルバムがあるんですけど、心に花が咲いているからジャケットは葉っぱだけなんですよね。花がないんですよ。『世界中に張り巡らされてる運命の赤い糸を全部切って僕に繋いで!?』も『ココロに花を』と絵面が似ていますよね。それもあって、今回は薔薇の花のジャケットにしたんです。
―― そして、本日、3月1日に、2026年11月27日に新代田FEVERでワンマンをやるという発表がありました。
先の予定だけ最初に決めたという感じですね。2025年は新宿紅布とか渋谷ラママで小刻みにワンマンライブをやっていたんですよ。同じくらいの規模でライブを続けてもいいんでしょうけど、お客さん的には「またこういう感じのワンマンか、みたいになるかもしれないなあ」と思ったんですよ。中だるみじゃないですけどね。FEVERという、自分のなかではちょっと大きなライブハウスで、しかも初めてのライブハウスでやることで、お客さんにとっても刺激になるんじゃないかなあ、と思ったことが大きいですね。こういうことをやることによって、ハイエナカーを広めてもらうのもいいなあ、とも思いました。
―― 最近のライブの手応えはどのようなものですか?
2025年の頭くらいからサポートドラマーが変わったんですよ。それもあってガラッとバンドが変わった感じですね。ジャンルが変わったというか、もうちょっと歌モノのバンドに変わったというか、けっこう隙間が増えたというか。
―― あ、そうなんですね。情報量をあえて減らしたというニュアンスなんですか?
そんな感じがしますね。前のドラムの人は歌に張り付いてドラムを叩くタイプだったので、気持ちはよかったんですけど、聴いているほうとしては、それによって歌が霞んだりとか、そういう部分があるという意見もあったりしたんですよ。「そうなのかな?」と半信半疑ではあったんですけど、実際に、違うタイプの、もうちょっと隙間がある、オールドタイプのドラマーと言えばいいんですかね、前のめりに転がっていくみたいな、いわゆるロックのドラマーに変わったときに、ライブ自体にもいい意味で隙が見えてきた感じがしました。
―― 音の密度の高さは課題でもあったんですね。
実は、昔から「ガチガチにやっているのはいいけど、隙みたいなところがないと疲れない?」みたいなことをずっと言われ続けてきたんですよね。新しいドラムの人は、アメリカのロックが好きみたいで。ぼくは元々イギリス系のロックのほうが好きだったから、そこにアメリカの要素が入ったことによって、ライブで出す音がシンプルになった気がしますね。そういった変化もあったおかげなのか、バンドの状況もいい感じになってきました。
―― 11月27日のFEVERのタイミングでニューアルバムがリリースされていたら、理想ですね。
そうですねえ(笑)……いや、本当にね、その勢いでもしかしたら新作があるかもしれませんね(笑)。新曲の配信は今年の中旬になるかもしれないですけど、そこからたぶん急速にやると思います。
© 2026 DONUT
LIVE INFORMATION
ハイエナカー ワンマンライブ
「焦がしたパンにたっぷりのマーマレード」
日時:2026年11月27日金曜日 19:30開演
会場:新代田FEVER
料金:前売り¥4,000/当日¥4,500/学割¥2,500(各チケット別途ドリンク代必要)
LivePocket予約:https://livepocket.jp/e/hyenacar_oneman_01
取り置き予約:hyenacar.info@gmail.com
RELEASE INFORMATION

2nd AL『世界中に張り巡らされてる運命の赤い糸を全部切って僕に繋いで!?』
2025 年 11 月 05 日リリース
収録曲:01.バンド オン ザ ラン/02.てぃあどろっぷ/03.スタンバイ feat.ツチヤカレン/04.エルビスコステロ物語/05.とけないハート/06.傾いたシーソー/07.情熱と小細工と天使/08.抱きしめたい/09.もちろん月は出ていない feat.仮屋ナオト/10.29/11.テキーラ!!





