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2026.02.02 upload

ザ・ビートモーターズ『THREE WHEELER』インタビュー

今回は曲もいっぱいあったので、加藤ひさしさんにどういうふうにプロデュースしてもらっても、いい感じになる気はしていました
―― 秋葉正志

ザ・ビートモーターズは秋葉正志(vo,gt) 、ジョニー柳川(ba)、 鹿野隆広(dr) の3ピースバンド。結成は2004年。2009年4月にデビューした。彼らは、2025年の暮れに5枚目のフルアルバム『THREE WHEELER』をリリース。プロデューサーにTHE COLLECTORSの加藤ひさしを、レコーディング・エンジニアに奥田民生やGARAPEVINEなどを手掛けた宮島哲博を、マスタリングに風間萌を起用するなど、盤石の布陣で制作された。タイトルの『THREE WHEELER』=三輪の自動車が象徴するように、3ピースバンドならではの、タイトでソリッドな輪郭がより鮮明な作品に仕上がった。ビートモーターズは現在、リリースツアー中。ツアーファイナルは2026年3月1日に渋谷クラブクアトロにてワンマンライブを開催する。秋葉正志に『THREE WHEELER』について訊いた。

●取材=森内淳


―― 昨年末に5枚目のアルバム『THREE WHEELER』をリリースしました。サブスクを見ると、前作『20』までの間、10年くらい作品が抜けているんですが、これは何か理由があるんですか?

前の事務所のときに、最後にリリースしたのが2013年になるのかな。それ以降、作品を出せなくて、2017年に事務所を辞めたときから、配信でちょこちょこ出してはいたんです。それがまとまったら「これが2017年の作品です」「これが2018年の作品です」といった形で、CDにはしていました(*『2017-1』『2018-1』『2019-1』『2019-2』をリリース)。サブスクリプションだと、なぜか「ザ・ビートモーターズ」というカテゴリーが2つあって、今回の『THREE WHEELER』と2024年にリリースした『20』は前の事務所のときに出した作品と同じカテゴリーのなかで配信されているんですよ。2017年以降に、自分たちでリリースしていた曲はもうひとつの「ザ・ビートモーターズ」というカテゴリーで配信されているんです。今回の『THREE WHEELER』が「5枚目のアルバム」とは言っているんですけど、体感的には9枚目とか10枚目の感じなんです。

―― アルバムタイトルの『THREE WHEELER』が今回のアルバムを象徴していました。

アルバムタイトルは(ザ・コレクターズの)加藤(ひさし)さんがつけたんですよ。

―― 加藤さんは今作のプロデューサーですよね。これはどういう経緯だったんですか?

2024年の10月にコレクターズと対バンしたんですけど、そのときに加藤さんのバンドの話があって。

―― 加藤さんが10代の頃に作った曲をレコーディングするために結成したバンド、加藤ひさし&バーティー・トゥモルタンスですよね。秋葉さんと鹿野さんが加藤さんと同じ熊谷出身ということもあって、メンバーとして参加していました。

バーティー・トゥモルタンスのアルバム『クマガヤウマレ』(2025年)のレコーディングでスタジオに入っていたときに、加藤さんから「若いときに伊藤銀次さんにプロデュースをやってもらったんだけど、そのときはイラッとしたこともあったけど、それが今はためになっている」という話があったんです。「今、コレクターズは吉田仁さんにプロデュースをやってもらっているんだけど、そういう人がいないとレコーディングはできないんだ」と言っていて。「ビートモーターズにそういう経験がないとしたら、一度、誰かにプロデュースをやってもらうというのもいいんじゃないの?」と言われたんですよね。そのときに加藤さんが「もし俺でもよかったら、プロデュースするよ」と言ってくれたので、「じゃあお願いします」ということで、『THREE WHEELER』は加藤さんがプロデュースをすることになったんですよ。

―― きっかけは加藤さんのソロプロジェクトだったんですね。

そのときすぐに「3ピースで突っ走るロックのアルバムを作ろう」ということで、タイトルも『THREE WHEELER』でいこう、ということになったんです。アルバムジャケットも加藤さんが「昔のアニメ『スーパースリー』みたいなイメージで作れないかなあ」と言っていたので、デザイナーの方にぼくから頼んで作ってもらいました。本当はこの三輪の車に乗っている写真を撮って、それをジャケットにしたくて、車の所有者を探したんですけど、誰も持っていなかったんです。

―― 実際にこの車にメンバーが乗って、ということですか?

そうです。裏ジャケでもいいから載せたかったんですけど、時間切れで探せませんでした。

―― この三輪の車って実際に存在しているんですね?

存在するんですよ。「モーガン・3ホイーラー」っていうんです。

―― これまでは秋葉さんがビートモーターズのアルバムのプロデュースをやってきたんですが、加藤さんがプロデュースに入ることによってアルバムの作り方が変わった点を教えてください。

今回はデモをたくさん作って、それを加藤さんに送って、そのデモのなかから加藤さんが選曲して、曲順も加藤さんが決めましたね。「曲をガラッと変えろ」とか、そういうのはなかったんですけど、「衣装はこれを着て」みたいなことはありました。バンドの全体のイメージのプロデュースもやってもらいました。

―― 加藤さんは総合的にバンドをプロデュースしたんですね。他人のプロデュースは楽しめたんですか?

面白かったですよ。自分だと全く思いつかないような選曲だったり曲順だったり衣装だったりしたので。加藤さんは曲調がマニアックになりそうな曲を全部外して、わかりやすい曲に絞ったと思うんですよね。

―― 選曲に加藤さんなりのテーマがあったんですね。

『THREE WHEELER』を聴いてくれたほとんど皆に好評なので、よかったかなあ、と思います。それから、レコーディング・エンジニアを奥田(民生)さんとかGARAPEVINEを録っている宮島(哲博)さんにお願いしたんですけど、いい仕事をやってくれたんですよね。

―― アルバム1枚を通してサウンドの方向性も定まっているので、何を表現したいのかがよりわかりやすい作品になりましたよね。歌詞についてもアドバイスがあったとお聞きしました。

「この歌詞のこの一節はこういう書き方じゃなくて、こうしたらどう?」というふうにも言われました。異論はなかったんですけど、100%その通りにやると自分じゃないじゃないですか。言われたことに対して違和感があるときには「その間をとって50%のところにどうやって落とし込もうか?」とか考えながら、楽しんでやっていましたね。

―― デモの段階から変わった歌詞もあるんですね。

2曲目の「恋はどどめ色」という曲があるんですけど、その曲だけ加藤さんはすごくこだわって(笑)。

―― 面白いラブソングですよね。どういう注文があったんですか?

「強がっているんだけど、未練たらたらな感じを出すんだ」と言われて(笑)。もうちょっとあっさりした曲だったんですけどね。加藤さん的には、ちょっと笑えるような方向に持っていきたかったと思うんですよ。それはやっていて面白かったですけどね。あとは9曲目の「宿題が終わらない」のCメロのところに「夏休みとか冬休みという言葉を入れない?」と言われました。それはちょっと考えて付け足しましたね。それから「この曲は熱く歌わないで、60年代のお洒落さを残した雰囲気で歌ってほしい」とも言われました。それも面白かったです。「怒鳴らないほうがいいよ」というのは。「たしかに」と思いましたね(笑)。

――「宿題が終わらない」もそうですけど8曲目の「そば屋」も日頃の風景を描いていて面白かったです。

歌詞はわからないんですよねえ。

―― 歌詞はわかりませんか(笑)。

頑張ってはいるんですけどねえ(笑)。楽曲作りにおいて、けっこう悩むところは歌詞が多いですね。曲のほうは頑張って作っているほうだと思いますけどね。

―― 1曲目の「茫洋」もよかったです。彷徨うことに対しての開き直っている歌詞も曲も今作の世界観を決めているようなところもありました。

そうですね。1曲目なんでね、景気はいいですね。

―― それから6曲目のインストナンバー「THREE WHEELER」がいいフックとして機能しているという。

「THREE WHEELER」というタイトルで1曲、作ってみようよ、と加藤さんに言われていて。最初は歌ありで作っていて、何回か作り直したんですけど、最後にインストにしよう、ということになったんです。

―― 演奏面では何かアドバイスはあったんですか?

演奏面ではそんなにはなかったですね。ここにタムを入れようとか入れないようにしようとか、ここのドラムパターンをこうしよう、とか、それくらいだったと思います。それから、4曲目の「サマー・オブ・チルドレン」は加藤さんが自宅まで来てくれて、オーバーダビングを一緒にやりました。加藤さんはカブに乗ってやって来て(笑)、これはいい思い出ですね。あとは5曲目の「恋の魔法」では、加藤さんがストリングスを知り合いの人にお願いして入れてもらいましたね。

―― 「サマー・オブ・チルドレン」はビートルズのオマージュのような作品になりました。

最初はビートルズみたいなドラムだったんですけど、まんまだと面白くないので、ケミカル・ブラザーズのドラムパターンを持ってこようよ、ということになりました。それも加藤さんのアイデアですね。

―― ケミカル・ブラザーズがビートルズをオマージュした「Setting Sun」(1995年)ですよね。この曲の歌詞には「遅れてきたサマー・オブ・チルドレン」という印象に残る一節があります。

加藤さんが『イギリスカブレ』(音楽と人・刊/2024年)という自伝を出しましたよね。『イギリスカブレ』を読んだり、バンドを手伝ったりしていると、イベントも多かったので、地元の熊谷に帰る機会がたくさんあったんです。そういうときに並行してビートモーターズの曲を作っていたんです。加藤さんの自伝を読んでいると、自分の中高生くらいのときとオーバーラップするようなところがあって。同じようなブリティッシュロックが好きで、でも、ライブをやるところがなくて、仲間を集めて公民館で演奏して、みたいな場面が、けっこう自分の体験とかぶるような、思い出すようなところがあったので、たまたまこういう歌詞になったのかなあ、という気がします。

―― バック・トゥ・ルーツみたいな意味合いがあるんですね。秋葉さんが中高生の頃は90年代だったと思うんですが、それこそ日本の音楽のミリオンヒットもバンバン生まれているような時代だったんですけど、そのなかでブリティッシュロックやロックンロールに傾倒したのはどうしてなんですか?

高校のときに、音楽評論家の柴崎祐二さんとクラスが一緒で、ぼくはオアシスとかエアロスミスとかビートルズとか、まあ、ビートルズは母親が好きだったので、そういう音楽が好きです、と自己紹介したら、すごくその辺の音楽に詳しくて。「こういうのを聴いたらいいよ」と言ってロバート・ジョンソンのボックスセット(『コンプリート・レコーディングス』1990年)やローリング・ストーンズとか勧めてくれたんです。そこからブルースやブリティッシュロックが好きになったんですよね。それが高校1年生のときで。後に柴崎さんとは一緒にバンドをやりました。大学は別々だったんですけど、付き合いは続いて、音楽を教えてもらって、好きになっていった感じなんですよね。柴崎さんがいなかったら、普通にその頃の音楽を聴いていたと思いますね。

―― ロバート・ジョンソンのブルースが入り口でロックンロールへ行くという感じだったんですか?

パンクもブリティッシュビートも全部、並行です。「こんなのもあるよ」という感じで柴崎さんが勧めてくれるんですけど、最初は聴いても良さがわからないんですけどね(笑)。だんだん聴いているうちに好きになっていって。すると「バンドをやろうよ」というふうになって。柴崎さんが歌っていたんですけどね。ぼくはギターで。同じような業界にいると恥ずかしくて最近は連絡をとっていないんですけど(笑)。

―― 今回、プロデューサーの加藤さんにいろいろアドバイスを受けながらアルバムを仕上げたんですけれども、完成した作品を聴いたときの、秋葉さんなりの率直な感想はどういったものだったんですか?

自分でずっとプロデュースをやってくると、力が入りすぎて余計なことを考えたりするんですよ。まあ、そういう良さもあるとは思うんですけどね。今回は曲もいっぱいあって、加藤さんにどういうふうにやってもらっても、いい感じになる気は最初からしていました。「だったら思い切って、全部、任せちゃおう」と思ってレコーディングに臨みました。その結果、わかりやすいというか、ベタベタしていないというか、このアルバムは、そういうところがいいのかなあ、と思いますね。全部、自分でやっていると、こだわった部分に限って、あとで考えたときに「余計だったなあ」「ちょっと鬱陶しいいなあ」と思ったりするものなんですよね。

―― 『THREE WHEELER』は世界観がはっきりしていますよね。

加藤さんはカルチャーにも精通している人だから、「これだ!」と決めた世界観に向かっていくことに関しては得意なんでしょうね。

―― セルフプロデュースでは出てこない客観性というか、楽曲を俯瞰するがゆえの面白さが今作にはあるのかもしれません。

また時間が経ってみると、違う感じ方をするのかもしれないですけど、今はそういう感じですね。プロデュースと言っても、いろんなプロデュースがあると思うんですよね。なかには楽曲を1からバンドと一緒に作る人もいると思うし。音の面から何か言ってくる人もいるだろうし。

―― 次作もプロデューサーを立てようと思っていますか?

そこはまだ未知数ですね。

―― ビートモーターズは2026年3月1日に渋谷クラブクアトロでワンマンをやります。

ぼくたちは自分たちでライブも作っているので、イベンターなど、どことも関係を持たずにやっているんですよ。CDもとくにレコード店に卸すわけでもないし、流通に流すわけでもないし。やり方がわからないので、完全に自分たちだけでやっているので、自分たちでできることだけをやっているんです。ところがクアトロはイベンターを通さないととれないんですよ。「たまにはクアトロのようなところでワンマンライブをやったほうがいいよ」っていろんな人に言われていて。そこで、昔、お世話になったことがあるイベンターの人に連絡したら、「しょうがないなあ、やってやるよ」ということになったんです。それで、3月1日のクアトロが決まって。実はこのクアトロでのワンマンライブがありきだったんです。ここを目指してアルバムを作ったんです。そのときに加藤さんが「やるよ」ということになったんです。

―― そうなんですね。今回のアルバムは、クアトロでのワンマンライブありきだったんですね。

クアトロのワンマンライブが先なんですよ。

―― クアトロという会場を選んだ理由はありますか?

元々のきっかけは、20周年でコレクターズと一緒にライブをクアトロでやったことなんです。あのときも最初はいつもやるようなライブハウスでやろうと思っていたんですけど、(古市)コータローさんが「それだとすぐに売り切れちゃうから、クアトロでやろう」と言ってくれて。それがきっかけなんです。

―― 20周年のときに、クアトロでコレクターズとの共演があって、今度はワンマンでやってみようじゃないか、と。

そうなんです。

―― じゃあニューアルバムも出そうじゃないか、と。どういうライブにしたいですか?

22年のなかで一番大きいところでやるワンマンライブで、お客さんも一番来てくれると思うんですよ。そういう意味ではひとつの区切りとしてやろうと思います。ただ、『THREE WHEELER』の曲をけっこうやるつもりではいるんです。昔の曲を待っている人もいるとは思うんですけど、そればっかりだとライブが活き活きしなくなるような気がしているんですよね。『THREE WHEELER』のリリースツアーというふうな内容にしたほうがいいライブができると思っています。

© 2026 DONUT

LIVE INFORMATION


5th FULL ALBUM “THREE WHEELER” RELEASE TOUR

2026年2月21日(土) 京都磔磔
開場 16:30 / 開演 17:30
前売 ¥4,500 / 当日 ¥5,000 (D代別)
チケット:https://tiget.net/events/437706

2026年3月1日(日) 渋谷CLUB QUATTRO
開場 16:15 / 開演 17:00
前売 ¥5,000 / 当日 ¥5,500 (D代別)
e+:https://eplus.jp/thebeatmotors/
チケットぴあ: https://w.pia.jp/t/beatmotors26/ (Pコード : 297-980)
ローソンチケット:https://l-tike.com/thebeatmotors/ (Lコード : 72450)

RELEASE INFORMATION


5th FullAL『THREE WHEELER』
2025年12月17日リリース
収録曲:01. 茫洋/02. 恋はどどめ色/03. ディズニーガール/04. サマー・オブ・ラブ・チルドレン/05. 恋の魔法/06. Three Wheeler -Instrumental-/07. たぶんUFO/08. そば屋/09. 宿題が終わらない/10. good night/11. こんなのは好きかな?
*CDはライブ会場と公式サイト(https://thebeatmotors.stores.jp/)で発売中

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