2024.3.07 upload
ザ・クロマニヨンズ ツアー HEY! WONDER 2024
2024年2月29日(木) Spotify O-EAST
●写真＝柴田恵理 テキスト＝森内淳
2024年2月29日、「ザ・クロマニヨンズ ツアー HEY! WONDER 2024」が渋谷O-EASTで行われた。会場は超満員ソールドアウト。2階席も満員電車状態。始まる前から熱気もすごく（とにかく会場は暑かった）完全にコロナ前の状態に戻った印象だ。
ステージには「HEY! WONDER」と書かれたバックドロップが掲げられている。開演前にはいつものようにスタッフによる前説が行われる。毎回、凝った衣装で楽しませてくれるのだが、今回は海賊の格好だった。新作『HEY! WONDER』のジャケットが海と月と島とオーロラとクラーケンだからなのか。そういえばセットリストに「嵐に船を出す」と歌う「雷雨決行」も入っていたなあ。まぁぼくらはこれから数時間の間、ロックンロールの大海原をかき分けて進んでいくんだけれども。このように、クロマニヨンズのライブは毎回前説が物語の導入のようになっている。メンバーが登場する前からオーディエンスは「HEY! WONDER 2024」の世界へと誘われる。
メンバーが下手から登場して、甲本ヒロトの「オーライ、ロックンロール！」という掛け声でライブがスタート。クロマニヨンズはアナログレコードの曲順通りにセットリストを組むことが多い。だから始まる前から覚悟はしていたけれど、いざ1曲目の「あいのロックンロール」が始まった瞬間、最後まで体力が持つか不安になった。小林勝と桐田勝治の高速リズムが特徴のこの曲は会場を埋めたオーディエンスの心のタガを外し、その結果、1曲目からフロアは大きく波打った。会場には「あいあいあい」の合唱がこだまする。意味があるんだけど意味がないようなサビを無心に叫ぶ様が何とも清々しく映る。
クロマニヨンズのロックンロールはシリアスさとユーモアが入り混じっている。平たくいうと刺さる言葉と笑える言葉が同居している。それが彼らのロックンロールのリアリティでもある。それでいくと3曲目の「ゆでたまご」も見ていて楽しかった。どこの世界に「かたゆで〜」「半熟〜」というコーラスを観客が真剣な顔をして大合唱するロックバンドの「コンサートがあるだろうか。これがクロマニヨンズのロックンロールの素晴らしさなのだ。
「ゆでたまご」から「ハイウエイ61」へ。ロバート・ジョンソン、クロスロード、エルヴィス・プレスリー、グレースランド、ボブ・ディラン……ロックンロールの物語が詰まったハイウエイ61へひととびだ。甲本が「渋谷くんだりまで来てくれてありがとう」というMCをする頃には、ぼくらの心は遥かメンフィスあたりをうろついている。
6曲目の「恋のOKサイン」ではミラーボールが回り出す。手拍子とウッ！という合いの手、そして真島昌利のギターがロマンチックな空間を作る。『HEY! WONDER』の歌詞カードに描かれた女神が微笑んでいる姿が頭のなかに浮かび上がる。ジャケットに描かれたモノクロとピンクの世界を具現化したような時間だった。
「A面、終わり。ありがとう」と甲本。B面に行く前に以前のアルバムから披露される。今夜は前作『MOUNTAIN BANANA』より「ランランラン」、『ACE ROCKER』より「雷雨決行」、『レインボーサンダー』より「生きる」の3曲。「好きなものを見つけるまで空っぽでいいよ」という「生きる」の歌詞はできるだけたくさんの人に届けたいといつも思う。
「B面やるぜー」と甲本のMCでライブは後半に突入。『HEY! WONDER』のB面最初の曲「メロディー」が始まる。次が「くだらねえ」。歌詞は「くだらねえ」のみ。「くだらねえ」の一言のなかに万の言いたいことが詰め込まれている。この歌がいろんな人に届いた瞬間に、いろんな「くだらねえ」に変容するのだ。O-EASTに集まった人の数だけの「くだらねえ」が炸裂する。アンコール1曲目の「SEX AND DRUGS AND ROCK 'N' ROLL」も同じ。SNSでは自分の感情の発露の手段としていろんな言葉に溢れている。それとは正反対に、O-EASTではシンプルなフレーズにいろんな感情をのせてこだまする。13曲目の「SEX AND VIOLENCE」もほぼ同じように機能している。
14曲目はフォーク調の「不器用」へ。真島が新調したグレッチのギターの音色が会場を覆う。「いいことがきっとある」という歌詞が会場を覆う。
「最後の曲は最後にとっておきます」という甲本のMCを合図にライブは終盤へ。「イノチノマーチ」「紙飛行機」「ナンバーワン野郎」などのシングル曲を次から次に演奏。フロアはさらに激しく波を打つ。毎度のことだけれど、なんだかわからないけど頭のなかの霧が晴れていくような感覚になる。ライブは非日常の空間であり現実逃避の手段としても有効なのは百も承知だけれど、クロマニヨンズのライブはその逆で、日常のどんよりした気分からはっと我に返る。あ、ちゃんとやろうという気持ちになる。ちゃんとやることがどういうことなのかよくわからないけど。
本編最後が「男の愛は火薬だぜ〜『東京火薬野郎』主題歌～」。甲本にインタビューをするまで『東京火薬野郎』というドラマだか映画が本当にあると思っていた。それくらい『東京火薬野郎』というワードセンスと古き良きロックテイストがぴったりはまっている。今夜のライブは高速ロックンロールから始まり王道のロック・ナンバーで終わった。
怒涛のアンコールは「SEX AND DRUGS AND ROCK 'N' ROLL」「タリホー」とつづく。クロマニヨンズと観客の熱量が融合し、熱気となって2階席まで立ち昇る。最後は「ギリギリガガンガン」。超満員のオーディエンスは「今日は最高 今日は最高な気分だ」と歌いながらクロマニヨンズのロックンロールに呑み込まれていった。
© 2024 DONUT
「DONUT 15 ザ・クロマニヨンズ号」4月上旬リリース予定！
写真家・柴田恵理によるライブ・フォト・ドキュメンタリーを始め、アルバムジャケットをデザインした菅谷晋一にも取材。さらにWEB DONUTに掲載した甲本ヒロト インタビューの完全版、1万3千字を掲載。クラッシュ本の編集中に彼らのファンジン「ハルマゲドン・タイムス」を目にし、同じ頃、ザ・クロマニヨンズのニューアルバム『HEY! WONDER』を耳にし、ロックンロールの見えない力に後押しされて、急きょ「DONUT 15」をつくることにしました。「ハルマゲドン・タイムス」のモノクロページは、時代を飛び越えたクラッシュのかっこよさとロックンロールの息吹にあふれていました。『HEY! WONDER』のモノラルサウンドがスピーカーを飛び越えて心を揺さぶりました。そのふたつの「MONO」が合わさり、DONUTは初のオールモノクロ号をつくることにしました。テーマは「DONUT MONO」。皆さんの心で自由に色を加えてください。
【DONUT 15】
発売日：2024年4月上旬
判型：A4／モノクロ／64p／中綴じ
表紙：ザ・クロマニヨンズ
INFORMATION
AL『HEY! WONDER』
2024年2月7日リリース
収録曲：1. あいのロックンロール／
2. 大山椒魚／
3. ゆでたまご／
4. ハイウェイ61／
5. よつであみ／
6. 恋のOKサイン／
7. メロディー／
8. くだらねえ／
9. ダーウィン（恋こそがすべて）／
10. SEX AND VIOLENCE／
11. 不器用／
12. 男の愛は火薬だぜ〜『東京火薬野郎』主題歌〜
SG「あいのロックンロール」
2023年12月13日リリース
収録曲：1. あいのロックンロール／
2. SEX AND DRUGS AND ROCK’N'ROLL
LIVE INFORMATION
「ザ・クロマニヨンズ ツアー HEY! WONDER 2024」
3月9日（土）福岡県 DRUM LOGOS
3月10日（日）福岡県 DRUM LOGOS
3月12日（火）広島県 LIVE VANQUISH
3月16日（土）千葉県 KASHIWA PALOOZA
3月20日（水・祝）長野県 NAGANO CLUB JUNK BOX
3月21日（木）長野県 NAGANO CLUB JUNK BOX
3月25日（月）神奈川県 CLUB CITTA’
3月27日（水）山梨県 甲府Conviction
3月30日（土）岩手県 Club Change WAVE
3月31日（日）青森県 青森Quarter
4月6日（土）北海道 札幌PENNY LANE24
4月7日（日）北海道 札幌PENNY LANE24
4月10日（水）静岡県 LiveHouse 浜松 窓枠
4月13日（土）茨城県 大昭ホール龍ケ崎
4月14日（日）栃木県 栃木県教育会館
4月20日（土）神奈川県 伊勢原市民文化会館
4月21日（日）千葉県 市川市文化会館
4月26日（金）大阪府 フェスティバルホール
4月28日（日）愛媛県 しこちゅ～ホール
4月29日（月・祝）岡山県 岡山芸術創造劇場ハレノワ 大劇場
5月3日（金・祝）埼玉県 和光市民文化センター サンアゼリア 大ホール
5月5日（日・祝）静岡県 静岡市民文化会館 中ホール
5月11日（土） 愛知県 Niterra日本特殊陶業市民会館 フォレストホール
5月12日（日）福井県 敦賀市民文化センター
5月18日（土） 新潟県 りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館・劇場
5月25日（土）京都府 KBSホール
5月26日（日）和歌山県 和歌山城ホール
6月1日（土）熊本県 玉名市民会館
6月2日（日）大分県 日田市民文化会館 パトリア日田 大ホール
6月4日（火）東京都 TOKYO DOME CITY HALL
6月8日（土）宮城県 東京エレクトロンホール宮城
6月9日（日）福島県 けんしん郡山文化センター 中ホール
6月15日（土）北海道 名寄市民文化センター EN-RAYホール
ライブスケジュールは諸事情により変更になる場合があります。必ず公式サイトで確認してください。
公式サイト：https://www.cro-magnons.net/live/
