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2023.4.26 upload

山中さわお インタビュー

今回はただ動物的なエネルギーみたいな、そういうロックンロールをやりたいなというふうになったんです
―― 山中さわお

2023年4月26日、山中さわおがニューアルバム『Booty call』をリリース。今作は勢いのあるロックンロール・ナンバーが満載のアルバムに仕上がった。しかもすべての曲が3分、あるいは2分台と短い。ロックミュージックの原点ともいえる「3分間のロックンロール」を体現。ArtTheaterGuildの木村祐介(Gt)、安西卓丸(Ba)、Base Ball Bear の関根史織(Ba)、Radio Carolineの楠部真也(Dr)の演奏が山中さわおが創造したロックンロールをさらにドライヴさせる。なぜ山中さわおは「動物的なエネルギーに満ちたロックンロール」へ向かったのか。コロナ禍で作品を量産した山中さわおが1曲もストックがない状態で着手したという『Booty call』について、山中さわおに訊いた。

●取材=森内淳

―― ニューアルバム『Booty call』はロックンロールアルバムになりました。

山中さわお そもそもスタートは楽しいロックンロールアルバムを作りたいという明確なテーマがありました。

―― 最初からテーマがあるというのは珍しいですよね。

山中 けっこう珍しいと思います。普段はとにかく適当に曲を書いて10曲たまったらアルバムすりゃいいやみたいな。「いい曲であればいいでしょ?」みたいな感じで作ってるんですけど、ここ3年間、ちょっと作品を作りすぎて。さすがに曲のストックがない状況だったんですよ。60曲くらい作ったんですけど、アコースティックやテクノポップみたいな作品まで出して、もう何でもやってたので。

―― ストックがないなかでアルバムを作ろうという動機はなんだったんですか?

山中 アルバムを出すと仲間とツアーができるなというね。人生を楽しむための口実を作らなきゃということで作り始めました。音楽を作るという口実があればスタジオに入って没頭できるし、スタジオに入ってみんなでセッションするというのはミュージシャンとして建設的な作業だし。それを楽しみに待っててくれる人もいるので、1曲もない状況で、とりあえず楽しいロックのアルバムを作ろうと思ってスタジオに入りましたね。

―― 楽しいロックンロールアルバムを作ろうと思ったのは?

山中 この3年間はミュージシャンにとってとても居心地が悪い日々だったし、俺個人的にはいろいろ納得いってないことばっかりだったので。「仕方ないな」とは1ミリも思ってないんですよ。ひじょうに理不尽だと思ってるし、世の中に怒っているし。俺にとっては憤りを感じていた3年間なので、そうするとこの3年間はそういう曲ばかりを書いてしまってたんですね。もう全身全霊、魂爆発みたいな。そういう曲をやることによって、自分に溜まっていた毒を発散してはいたんですけど、本気すぎて毎回、苦しいといえば苦しいんですね。自分の痛いところを自らぎゅっと鷲掴みにしなければならないようなことだったので。

―― 山中さんはいつも真っ向勝負ですからね(笑)。

山中 でもゆっくりですけど俺の理解者ができたり、理解はしていなくても違う道筋を通って、結局ゴールは一緒だった人がたくさん増えたんですね。結果的にステージに立っている環境は他のバンドよりも相当早く正常化してたと思うんです。そうするとライブハウスのステージに立っている時間、つまり自分が作ったその世界だけは居心地がよくなっていて。もちろん音楽のテーマとして、作詞家として「苦しみ」というのは今後も歌っていくとは思うんですけど、でも今じゃないなという。苦しみを歌うのはもう十分やりきったなという感じだったので、今回は軽薄でもいいと思ったんです。ロックンロールっていろんな魅力があって、すごいナンパで軽薄な面も、俺は大好きで、ラブソングしか歌わないロックンロールも好きだし。だから今回はただ動物的なエネルギーみたいな、そっちをやりたいなというふうになったんですよね。

―― 楽しいロックンロールアルバムというテーマは近作の歌詞の反動だったんですね。

山中 とはいえ、けっこう珍しいと思うんですよ。自分にはそういう軽薄さがないから。そもそも「ストレンジ カメレオン」から始まったような男だからね(笑)。

―― そうですよね(笑)。今回も ArtTheaterGuildの木村祐介さんがギターで、ベースが安西卓丸さんとBase Ball Bear の関根史織さん、Radio Carolineの楠部真也さんがドラムで参加しています。楽しいスタジオの時間を過ごせましたか?

山中 例えば、6時ぐらいに「ご飯に行こう」っていうんですけど、普通に居酒屋で2時間半ぐらい過ごしてるんですよ(笑)。そこはたぶん世の中のミュージシャンと違うと思うんですけど。普通はスタジオに出前をとって30分くらいでご飯はすますんですけどね。

―― 普通はそうですよね(笑)。

山中 こっちは居酒屋に行って2時間ぐらい飲んでるわけなんですよ。それで「そろそろ、俺、ギター弾くわ」とか「よし、歌うわ」みたいな感じで。ひじょうにシリアスにレコーディングしているまともなミュージシャンに申し訳ない気がして(笑)。苦手なことはやってないので、全員、得意なことやってるので、お酒を飲んでも全然演奏できるし、歌えるんですよ。全然大丈夫なんです。声も毎日出るし。動物的にめちゃくちゃ頑丈なんですよ(笑)。「スタジオで集まって楽しく過ごしてアルバムができてツアーもあって、全国各地でまた楽しむ」という目的とはこういうことだと思うんですけどね(笑)。

―― 今回のアルバムは一番長い曲が表題曲の3分45秒で、2分台の曲もたくさんあるんですが、これは3分間のロックンロールを意識したんですか?

山中 曲が呼んでくるサウンドというのがあって、曲に呼ばれたサウンドで包むというのが基本なので、意図的に短くしようとは思ってないです。この人にはこの服が似合うとか今これが流行っているからこの服を着せようとかじゃなくて、この年齢のこの髪型のこの男性やこの女性にはこの服だろうっていう。パッとインスピレーションが湧いた服を与えるのと同じで、曲の特徴に合わせた作業をしたら、こうなってしまったというか。逆に短いのが似合う曲を作ったんだな、としかいいようがないですよね。ただスタートしたときと変わってしまったことがあって。

―― というと?

山中 自分はソングライターとしてポップでキャッチーな曲を作るのが得意なんですけど、逆にポップじゃないしキャッチーでもないロックンロールの魅力もあって。それを今回やろうと思ったのにできなかったんですよ。どうやってもポップがやって来ちゃうというか。なんかもっと全然メロディーがないような、もっと展開がないようなものって、今までやったことがないし、そういうものにちょっと憧れたんだけど……向いてないんですよね。できないっていうか。これでもやったつもりだという曲が最後の「the end」なんですけど、できるだけポップじゃないものと思って作ったのに、最後にいろいろ展開をしてしまって……うーん、どうしてもメロディアスなっちゃうんだなっていう。「Lame town」とかも、自分らしくない、ちょっとマイナー調の曲を書こうと思ってやったんだけど、わりとメロディアスになってしまうという。

―― まぁそれも山中さんの才能ですからね。

山中 まあ、しょうがないですよね。武器がそっちというか。

―― だけど「Balalaika」では体内時計が崩壊した山中さんのことを歌ってみたり、ユニークな歌詞を散見することができて、近作の山中作品とはまた違った楽しみ方ができました。

山中 鼻歌の状態のときに、口がでたらめに「Balalaika」と歌ってて、「ところで“Balalaika”ってなんだっけ?」と思って。「なんか聞いたことがあるな」と思って調べたらバラライカというロシアの楽器がありつつ、バラライカという名前のウォッカのカクテルもある、と。どうしてもサビで「Balalaika」っていいたいから、なんとか歌にできないかなと思って、物語を考えて、自分の不眠症の歌に置き換えてたらサビで「Balalaika」ってみんなで歌える曲になりました。

―― ウォッカで不眠症を倒そうという歌なんですよね。まさに動物的なロックンロールというか(笑)。

山中 昔、科学的な人間ドッグでいわれたんですけど、俺には気持ちよく眠るためのメラトニンが脳内に一切ないらしくて。冗談で「脳内物質のメラトニンをどこかで売ってないかな?」といってたら、売ってるんですよ、これが。買って飲んでみたんですけど効かなかったんです。1錠飲んで効かない、次に2錠飲んでも効かない。どんどん増やしてって、10錠でも効かなかったんですよ。「うん?」と思って調べたら、人によっては1瓶飲んでも効かないって書いてあって「そんなことやってられっか!」っていって。そこでバラライカ(ウォッカ)の登場ですよ(笑)。

―― ドナルドダックの甥っ子たちが出てくる「セクレト ヴィスタ」も面白かったです。騒々しいカートゥーンチックな雰囲気が今回のアルバムのフックになってるな、と思いました。

山中 そうですね。それも結局めちゃめちゃメロディアスになっちゃったんですよ(笑)。ポップじゃないものを作ろうと思ったのに、全然ポップになってしまったなあ。

―― 普通はポップにしようと思ってもポップにならなくて悩むんですけどね(笑)。山中さんの場合は逆だから(笑)。

山中 我慢できないんですよ。

―― そういう面白い歌詞もあるんだけれども、ただ、ほとんどの曲の根底にあるのはやっぱり「自由になりたい、世の中の閉塞感を突破したい」というものなんですが、楽しいロックンロールアルバムにしようと思いつつも、やはり山中さんのベースにあるものは出てくるんですね?

山中 思ってないことは歌えないので、それはそうですかね。

―― まぁ近作ほどの赤裸々でシリアスな表現ではないんですけどね。そこが今回のアルバムの特徴でもあるんですけども。

山中  極端な言い方をすると子供の頃から大人になるまで好きな漫画があったとして、そこには『ドラえもん』もあれば『ゴルゴ13』もあるんですよ。で『ドラえもん』に出てくる人の生き死に、例えばおばあちゃんとの別れと、『ゴルゴ13』に出てくる人間の生と死とは全く違うものなんですよね。どっちも好きで自分のなかにはあるけど、どういうふうにアウトプットして着地するかというのはやはり同じ漫画というジャンルでもかなり幅があると思うんですよ。だから本質は一緒なんだけど、今回は『ゴルゴ13』ではないっていうね。いや『ドラえもん』でもないんだけどね。例えが下手だなあ(笑)。インタビュー慣れしてないから例え話が下手だ(笑)。

―― 言わんとしていることはわかります(笑)。今回はまぁ『ドラえもん』寄りってことで(笑)。

山中 なんかもうちょっといい例えがなかったかなあ(笑)。ゴルゴもどうかと思うなあ(笑)。そうだな、手塚治虫さんと誰かみたいにしといた方がよかったかな。手塚治虫さんと浦沢直樹さんくらいの距離感かな、もしかしたら。

―― そっちの方がわかりやすいですね(笑)。

山中 さいとうたかを先生と藤子不二雄先生はちょっと例えが下手だった(笑)。

―― ところで今回のアルバムは全国流通ではなくライブ会場と通販のみの販売なんですね。

山中 実はレコーディングは去年の夏ぐらいからやってるんですよ。最初は「Booty call」1曲しかなかったら「Booty call」だけを録るとか、そうやってレコーディングしてたんですよ。ピロウズのツアーもやりながらやってたんで。ちょっと録ったらまた空いてって感じでやってて。で、先に全国ツアーをおさえちゃったんですね。何せそんなに早く動いているから余裕だと思ってたんですけど、実際、メンバーとスタジオと自分のスケジュールがそんなに上手く合わなくて、全国流通をしようとするとツアーに間に合わなくなってしまったんです。

マネージャー 4月26日発売なんですけど、実はまだ本製品が上がってないんですよ。

―― それは大変だ。発売日まであと12日くらいしかないですよね。しかしそうやってレコーディングしていたとは思いませんでした。このアルバムを聴くと短期間で一発録りでもやったかのような印象があります。

山中 曲ができたら録るみたいな感じで、本当に2曲録って3曲録って1曲録るみたいな感じでやってました。

―― 例えば、それだけ長い期間をかけてレコーディングをしていると途中で楽しいロックンロールアルバムというコンセプトがブレたりはしなかったんですか?

山中 今回はなかったですね。でもたまにありますよ。そのときはこの曲はちょっと外して、新しくできたこの曲にしようとか。そういうのはもちろんありますけど、今回はなかったです。

―― 山中さんのなかでは楽しいロックンロールにしようというテーマは確固たるものだったんですね。

山中 そうですね。しかもこれを作っているとき、ピロウズの「RETURN TO THIRD MOVEMENT!」の第4弾の最中で『ペナルティーライフ』と『GOOD DREAMS』の2枚の再現ツアーだったんですけど、けっこうヘビーでしんどい曲が多いんですよ。再現ツアーだからもちろん曲は変えられないじゃないですか。ずーっと過去のヘビーな曲を歌ってて、余計、楽しい曲をやりたいという気持ちがもうどんどん押し寄せてきて(笑)。「やっぱり俺は間違ってない。今のベクトルはこっちなんだ」というふうにピロウズのツアーが後押ししたところはあります。ソロでは涙が出るようなしんどい曲じゃなくて軽薄な曲を歌いたいというふうになっていたと思います。

―― それはブレようがないですね。そうやってこの10曲入りのアルバムができたわけですね。

山中 さらに俺が異常なのはアルバムを録り終わっているのに「スタジオをおさえてくれ」といって、完全な手ぶら状態で行って、そこで曲を作ってエンジニアと2人でデモを録ってたんですよ。

―― アルバムを録り終えたのに、なぜまた曲を作り始めたんですか?

山中 アルバムを録り終わって、ここから休みが1週間あるといわれると、なんかしんどいですよ。ずっと酒を飲んで具合が悪くなるだけから。そしたら今回のレコーディングに参加してくれたメンバーたちが俺がスタジオにいることを聞きつけて「暇だから行っていいですか?」ってやって来て、結局みんなでまた録ったりとかして、今、このアルバムの後に録った曲が10曲あるんですよ(笑)。

―― レコーディングをきっかけに逆に曲のストックが増えてるという(笑)。しかし山中さんはどうしてそんなに曲を量産できるんですか?

山中 向いてますね、俺は。ナチュラルボーン・ソングライターだと思います(笑)。あと10曲くらい作れそうだな。

―― ははははは。

山中 年齢を重ねた往年のミュージシャンがあんまり新曲を書かなくなっているのを見た若い頃の俺は「もし自分の才能が枯れてきたら潔くミュージシャンを辞めて違う人生を歩もう」という気持ちがあったのと同時に「俺だけは例外で一生曲を書けるんじゃないかな」とも思ってたんですよ。たぶん、そうなんですよ(笑)。

―― だんだんポール・マッカートニーみたいになってきましたね(笑)。

山中 このペースで作品を出しているのは俺だけじゃないかなと思うんだけど(笑)。

―― ポールは78歳でニューアルバムを出しましたからね。

山中 俺もできるんじゃないかな(笑)。

―― メロディーがどんどん出てくるから量産できるんですか? それとも歌いたいことが出てくるんですか?

山中 歌いたいことは出てこないですね。歌詞を書くのはしんどいですね。どうでもいい歌詞はしんどくないけど、ちゃんとしたことを歌おうと思ったらしんどいです。というのも気に入った表現はもう使ってしまっているので。二番煎じもすんで「さて、どうする?」っていうことなので、歌詞は難しい。あ、しんどいっていったけど苦しんではいないです。だからしんどいという言い方は違いますね。歌詞は曲に比べたらちょっと時間がかかるくらいで、決して苦しんではないです。

―― 山中さんはどうやって歌詞を書いているんですか?

山中 腕を組んで白紙を眺めていても何も進まないんです。だから、これはもうだいぶ前からなんですけど「いい歌詞じゃなくて大丈夫」というマインドコントロールというか「名曲じゃなくても大丈夫だよ。とりあえず最初につまんない絵でもいいから描け」って自分にいってて。そうやって描いていくと、得意な絵を描くことになりますよね。それを見て、過去に自分が書いた歌詞と一緒だということに気づいたら、そこを修正するんです。修正したことで「何か魅力的じゃないな」と思ったときにはまた修正して。そうやっていくうちに急にスイッチが入るんですよ。そしたら何時間も歌詞を書くことに没頭してるんです。出来上がった歌詞を見ると最初に真っ白な画用紙に描いた絵は1ミリも残ってないんです。全部消しゴムで消して、全部変わったものになってる。最初は太陽を描いたのに虹になってますというぐらい全然違う絵に変わっているんです。

―― そうやって新しい歌が出来上がっていくんですね。

山中 とにかく白い画用紙を腕を組んで見ている状態が一番つらいのはわかっているので「駄目でいいよ。なんでもいいからやろうよ」っていうね。そうやって切り替えるのが俺はちょっと得意なんだと思います。だから才能じゃなくて、性格が凄く曲作りに向いてるんだと思うんです。なかには才能があるのに性格が向いてない人がいて、そういう人は曲作りが苦しいことになっていくんだと思います。才能がある人が「こんなんじゃ駄目だ!」って苦しんでいくと、天才は曲を書かなくなるんですよ。

―― たしかに。よく映画でもそういう天才の苦悩が描かれたりしますよね。

山中 自分の曲を自分で好きになる性格じゃないと苦しいんですよ。だから俺は曲を作る能力というよりも性格が向いてるんです。それに俺の場合は、さっきもいったように、アルバムを作ってツアーやりたい。いろんな街で仲間と音楽をやって移動日は飲みに行って楽しく過ごしたい。全国で仲間と酒を飲むためには俺は努力を惜しまない、というのがあるから(笑)。

―― それが常に巨大な人参としてぶら下がっているんですね(笑)。

山中 そうそう(笑)。

―― しかも全国のファンの人たちも喜びますしね。

山中 WinWinですからね。だから俺は本当にミュージシャンに向いてるんだなと思います。

―― 今回、歌詞で気になったのが8曲目の「Boogie Box」に「ニューヨーク・タイムズが“ロックムーヴメントはもう過去の物”と伝えている」という一節です。それに抗うような歌詞が続きますが、これはどういった心情で書いたんですか?

山中 カルチャーっていうのは移りゆくものだから、例えば、中高生の頃、親が好きだったものって大嫌いだったし、それがファッションでも音楽でも、親が勧めるものは本当に嫌いで。だから今、54歳の俺が勧めるものが、若者が嫌いっていうのはカルチャーとしてはすごく健全なことなんだけど、あの、ロックっていうのは若者のときに人生で初めて見たまばゆい光とか衝撃だったんですね。あの衝撃を超えることはなくて。あの衝撃の余韻で一生楽しめてるんですよ。だから若者が今の Kポップとかダンスミュージックにそれを感じてるのならそれでいいなと思うんですよ。原理が一緒だったらね。そうじゃなくて、音楽もファッションも全部似たようなポジションで、全部ふわっと楽しみたいな、となっていたら、ちょっと不健全な気がして、寂しいなっていう。

―― なるほどね。

山中 これは俺の想像だからわからないんですけどね。自分のなかのモンスターを飼いならしたり、解放したり、大人しくさせたりするのに、俺はロックがすごい大事だったので、今の若者にとって音楽はそういうポジションにあるんだろうかっていう。この話を聞いた若者が「いやいや、うるせえわ」ってなったら「そうか、老害だよな、すまん」っていえる冷静さもあるんだけど、でもどこかではすごいかっこいい20代前半のロックバンドが現れて、世の中を変えて欲しいとは思ってますね。

―― 世の中全体がふわっとした現代にロックはフィットしないのかもしれませんね。

山中 そもそもロックミュージックは行儀が悪いもので、大人たちが「聴くな」っていうようなものだったじゃないですか。そこが最高に魅力的だったんですよ。ところが、この3年間で日本人の行儀の良さに俺はもう呆れ返ったというか。

―― たしかにこの3年間でそういう面も見えてきましたよね。

山中 真面目と従順は違うんだっていう。従順だとつけこんでくる奴らが絶対いるので危うい。真面目っていうのは、真剣にひとつずつ物事を考えて、もしルールが間違ってたら「このルールは間違ってるんだ」って強く抗うことだと俺は思うので。「とりあえずいいよ。従ってとけば楽だから」っていうのは怖い。なので「この国がどうなっていくのか怖い」というテーマでアルバムを作りました(笑)。

―― ははははは。だけど7曲目の「Grave Keeper」とかそういう波風を立てない風潮への批評を内包したりしていますからね。

山中 そうです、そうです。

―― 5月13日からツアーが始まりますが、アルバムと同じように楽しいロックンロールがテーマになってくるんですか?

山中 そうですね。過去曲もシリアスな曲は混ぜてないので、間違いなく楽しいツアーになるだろうなっていうのはわかってます。ようやく世の中も、世の中はどうでもいいんだけど、とりあえずライブハウスのなかは山中さわお界隈は完全に正常化しているので、ここから萎縮することは絶対ないから、2019年までみたいな健全なロックンロールショーになるだろうなと楽しみにしています。

© 2023 DONUT

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INFORMATION


AL 『Booty call』
2023年4月26日リリース
収録曲:【CD】 1. Booty call/ 2. Balalaika/ 3. セクレト ヴィスタ/ 4. allegory (Booty version)/ 5. Lame town/ 6. トランス バランス/ 7. Grave Keeper/ 8. Boogie Box/ 9. the man/ 10. the end/ 【DVD】 1. セクレト ヴィスタ [MUSIC VIDEO]/ 2. Recording of Boogie Box
※ライブ会場と通販で販売
通販:
◆RED BAT:https://redbat.shop
◆BUSTERS SHOP:http://busters-shop.com/


■ ライブ情報
BOOTY CALL TOUR
2023年5月13日 (土) 前橋 DYVER
2023年5月20日 (土) F.A.D 横浜
2023年5月27日 (土) 下北沢 CLUB Que
2023年6月03日 (土) 宇都宮 HEAVEN’S ROCK VJ-2
2023年6月07日 (水) 札幌 PENNY LANE24
2023年6月09日 (金) 青森 Quarter
2023年6月11日 (日) 仙台 CLUB JUNK BOX
2023年6月16日 (金) 荻窪 TOP BEAT CLUB
2023年6月21日 (水) 徳島 club GRINDHOUSE
2023年6月23日 (金) 広島 CLUB QUATTRO
2023年6月24日 (土) 福岡 DRUM Be-1
2023年6月26日 (月) 岡山 YEBISU YA PRO
2023年6月28日 (水) 浜松 窓枠
2023年7月01日 (土) 新潟 CLUB RIVERST
2023年7月02日 (日) 長野 CLUB JUNK BOX
2023年7月07日 (金) 心斎橋 BIGCAT
2023年7月09日 (日) 名古屋 CLUB QUATTRO
2023年7月13日 (木) 渋谷 CLUB QUATTRO

■ 諸事情で日程や開演時間が変更になる場合があります。公式サイトで必ず最新情報をご確認ください。
山中さわお公式サイト:http://yamanakasawao.com/y/live

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