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2023.03.02 upload

THE TOP BEAT CLUB の全貌
〜 Mr.PAN(THE NEATBEATS)インタビュー

THE TOP BEAT CLUBは「ロックンロールの公民館」なんです
―― Mr.PAN

荻窪に新しいライブハウスTHE TOP BEAT CLUBがオープンした。正確にはここはライブハウスではない。地下のライブホールに加え、1階にはカウンターのみのカフェ、2階には3月オープン予定のレコードストア&ラウンジがしつらえてある。早い話、ロックンロールの遊び場のような場所だ。この遊び場をプロデュースしたのがザ・ニートビーツのMr.PANだ。彼は10年くらい前からこういう場を作りたいと話していた。それが今、実現してしまった。ライブホールのオープンは2月10日金曜日。ザ・ニートビーツが超満員の観客を前にこけら落としを行った。もしライブホールを作るならリヴァプールのキャヴァーン・クラブみたいなレンガ造りにしたいと話していたMr.PANだが、その理想がかなってオールレンガ造りのホールが完成した。キャパシティこそ300名だが、天井が高く音の鳴りもよく、居心地のいいホールになっている。他にも搬出搬入専用の通路があったり、並んでいるお客さんが雨に濡れない工夫がされていたりと、いたれりつくせりの空間になっている。今回はオープンしたばかりのTOP BEAT CLUBで忙しく動き回るMr.PANに無理をいって取材をさせてもらった。

●撮影(ライブ写真)=柴田恵理 取材=秋元美乃/森内淳


<荻窪の環状八号線沿いにオープンしたTHE TOP BEAT CLUB>

―― THE TOP BEAT CLUBのこけら落としを見せていただいたんですけど、音がものすごくいいですよね。

Mr.PAN あ、ほんと? よかった。

―― 音はこだわったんですよね?

PAN 全部、妄想っていうか、こんな感じになるんちゃうかなという感じで作ってるから、別に自分でものすごく計算したわけでもなくて。ただまぁレンガでアーチ状にしようとは思ってたので、レンガで出来ている門司のブリックホールであるとか、そういう場所でライブをやっていると「あ、音響的にこんな感じになるのかな」というのがあったし、音響設計はうちのスタジオ(GRAND-FROG STUDIO)をやった人にやってもらったので、今回はこういう設定でこういうチューニングでこういう機材を選びましょうということで話が進んでいった感じかな。実はスピーカーは一番最新の機材を選んであるんですよ。最初から「最新の機材で爆音を出さない」というのだけは決めていて。

―― 金曜日にライブを見ていて爆音で押すアーティストのハコではないなという印象がありました。

PAN そうそう。古い大きなアナログのスピーカーを入れて爆音で出すと、ただただ爆音になってしまって気持ちよくないというね。無理に音を出すよりも最新機材の効率の良さをアナログに設定するという方向で考えましたね。そうなると音像がすごくクリアに出るからね。爆音で出しちゃうと今のライブハウスと同じ音像になっちゃうから。楽器の音を残して、プラス補助という意味合いというか。そうするとライブ中に一番後ろのバーでお酒の注文もできるというね。

―― なるほど。

PAN 実はそれが一番やりたかったっていう。それが俺のなかのパブ・スタイルというのかな。演奏を聴きながらお酒も飲むというね。


<エントランスはお客さんが雨に濡れずに並べるよう工夫された>

―― そういったスタイルを目指したんですね?

PAN 演奏中はお酒の注文もできないっていうのは自分のなかではちょっと違うなという。それができるチューニングをやっていますね。

―― ライブハウス帰りはたいてい耳がキーンとなるんですけど、こけら落としの日はそんなことがなくて、本当に気持ちよく帰れました。いい意味でまろやかな音なんですよね。

PAN それは嬉しいですね。ぼくが求めてた感想というか。例えばイベントで4バンドとか5バンド出るとして、だいたいメインのバンドって最後に出るじゃないですか。ぼくの体験上、ライブに行くと、4バンドめとか5バンドめのときには疲れてることがあるのよね。それは時間なのか空間の音にやられているのかはわからないんだけど、トリでメインのバンドが演奏してもお客さんの感じる力がちょっと鈍っちゃってて感動が薄れちゃうことがあって、あれをどうにかしたいなというのはありましたね。例えば2時間とか3時間とかあるのであれば、その時間ずっとそこにいてもなるべく疲れにくい環境のほうが音楽的にも理想というか。

―― だから逆に下手なバンドは下手さが際立つんじゃないかという不安もよぎりました。

PAN そこはなるべくバンドの方に頑張ってもらいたいよね。このハコは搬入がやりやすいんだけどステージまわりの機材は扱いにくいとか、そういうアンバランスなところでやりたくて。「あそこのステージはちょっと頑張ってやらないといい音がしない」とか。「いい音はするんだけど、それをもっといい音にするためにはバンドが頑張ってくださいよ」みたいな、そんなんあったほうが面白いかなと思うのね。

―― 頑張りがいがあるハコではありますよね。

PAN 自分でこのハコを作って、自分でチョイスしたものがほとんどで、そのなかで他のバンドを見るのもものすごく楽しみで。みんなどういうふうに音を出してくれんのかなあとは思ってますね。


<ホールに入る手前の壁にはクラウドファンディングのレンガが>

―― イクイップメントの表を見たんですけど、ヴィンテージのアンプはPANさんのGRAND-FROG STUDIOから持ってきてるんですね。

PAN そう、持ってきたんです。スタジオでは使わないアンプもあるしね。使わないよりもここで使ったほうがいいかな、と思って。ただセルマーってイクイップメント表に出したところで「誰が使うの?」っていうのはありますけどね(笑)。ま、そういうのもいいかなと思って(笑)。来たバンドに「どう? 使う?」って訊いて「あ……いいです」って断られてもいいから、「使いたい」とか「楽しそう」とか思ってくれる人を見つけたいという。

―― ライブハウスには必ず置いてあるアンプがないんですよね。

PAN JC(ローランド・ジャズ・コーラス)がない。ライブハウスにおけるシェア率が100%に近いであろうJCを置いていない唯一のハコなんじゃないかなという。

―― なぜ置かなかったんですか?

PAN 別にJCが悪いわけではなくて、JCを置いちゃうと誰でも使えちゃうんですよ。それを置かないということでこのハコの基準を作ったような気がするんですよ。JCがないことを楽しんでくれるかどうかということなんですよね。今のマーシャルとかもそうだけど、今のアンプって、だいたいリハーサルスタジオで使ってるから、みんな安心して設定できるから楽なんですよ。でもそれだと冒険がないなと思って。JCを置かないことによってライブに向けての緊張感を高めたいという(笑)。「ちゃんとできるかな?」みたいな(笑)。いい意味で緊張感を高めてもらうために普段使ってる機材はあえて置かんとこうかな、みたいな。うちでは普段どおりに日常を提供しないというか(笑)。自分たちで持ってきてくれる分には全然いいんですけどね。

―― 新人バンドの皆さんにとってはまさに闘いの場ですね(笑)。

PAN いいと思うね。ぼくらだってニートビーツを結成してすぐにアメリカに行ったんだけど、ろくに機材もないようなところで毎回違うシチュエーションでライブをやったからね。後から考えるとあの経験はよかったなと思ってて。あれがあったから今はどこでもできるっていうのもあるし。普段のレギュラーなシチュエーションでずっとライブをやるよりもなんかちょっとイレギュラーなことをやってたほうが絶対に強くなるし、新しい発見もあるからね。


<ホールの一番奥のドリンクカウンター>

―― TOP BEAT CLUBはミュージック・ワンダーランドというふうにうたっています。

PAN ライブホールに関していうと、自分の部屋というイメージで「ホームパーティをしにきてよ」という感覚で作りました。だから正確にはライブハウスではないんですよ。アメリカでホームパーティに行ったら絶対にバンドが演奏しているじゃないですか。あのイメージがむちゃくちゃ大きくて。だからライブハウスをやるという感覚とは違うのかな。それにライブハウスを経営するのは大変やから、ここはライブハウスじゃないよと思うと、けっこう気分的に楽になる(笑)。自分の部屋に人を呼んで楽しくやるというのは別にストレスじゃないし。そういう考え方のほうが正解なのかなって。

―― 自分の部屋だからこそ自分のこだわりで作れたというのもありますしね。

PAN そう。ライブハウスのビジネスモデルで考えてしまうと、極端にいうと自分の好みでないことも仕事としてしなくちゃいけないことが出てくるかもしれないし。現実的に経営のほうでお金のほうに走るというか、そういうこともちょっとは考えないといけないかもしれないし。だけどなるべくそれはやめたくて。

―― だけど現実的にはやらないとまずいですよね。

PAN そうなんですよ。今、そこの狭間で困ってるんです(笑)。

―― ただTOP BEAT CLUBはライブホールだけではなくていろんな機能があって、それが稼働し始めるとまた違う風景が見えてくるかもしれませんね。

PAN そうだね。

―― 2階はレコードショップになるんですよね。

PAN ライブホールのオープンまでにレコードストアまで手がまわらんかったね。

―― いつくらいから始まるんですか?

PAN 3月くらいからやろうっていう話になっていて。レコード屋のほうもちょっとラウンジみたいなものを作るんで。

―― それはまた楽しみですね。

PAN ここは全部が動き出したときにディズニーランドのロックンロール・バージョンみたいになればいいかなと。だからあんまりライブハウスができたからライブハウスに行こうというイメージじゃなくて、たまたま遊びに行った場所の下でライブをやってましたよ、みたいなのがいいかなと思ってるんですよ。何時にオープンだから何時に行けばいいとか、そんなんよりは「今日は誰がやってんの?」「へー、ニートビーツがやってんの? じゃ下に見に行こうかな」みたいな、それぐらいのシチュエーションというか空気感がいいですね。だから1階は普通に誰でも自由に出入りできるというか。

―― 今、取材をやらせてもらっているこのカフェスペースはチケットを持っていなくても入れるんですね?

PAN そうです。ここは普通のカフェなんですよ。上のレコード屋もそうだけど、別にライブホールのチケットを持ってなくても遊びに来ればいいし。

―― 海外っぽいですね。

PAN 海外ってライブハウスっていわないからね。ヴェニューとかいうよね。あんまりライブハウスとはいわない。

―― 海外でライブを見ると、ライブを見ないで後ろのカウンターでけっこうな人数の人たちがぐちゃぐちゃ喋ってるんですよね。

PAN そうそう。そういうのもありなんだよね。それぞれの楽しみ方で過ごしてくれればいいし。自由に往来できて、空間を楽しんでくれたほうがいいので、あんまりライブハウスにライブを見に行くって感じじゃないほうがいい。ライブハウスってライブが終わったら「はい、出てください」っていうイメージが多いけど、ここは「なるべくおってくれへん?」みたいな(笑)。とくにこのカフェスペースなんかはなるべくお客さんに残ってほしい場所というか。「閉店ギリギリまで飲んでくださいよ」みたいな。なるべく帰したくない(笑)。追い出すどころか最後までいてくださいよって。「なんですぐ帰るんですか?」みたいな感じの場所になればいいなと思ってる。ライブが終わっても出られへんように鍵を閉めようかなと思って(笑)。ライブホールもライブが終わってからも「居て楽しい」と思ってもらったり「ちょっとお喋りしたいな」とか、そういうのでもいいから、そこの空間に居たいと思ってくれるようになるのが一番いいかな。


<レンガはカナダのレンガ職人が施工した>

―― たしかにライブホールは天井が高くて居心地はいいですよね。

PAN 天井高とかもすごく細かく注文しましたね。アーチを作ったときにこれぐらいの高さとか。だいたい2、3回、設計をやり直して。あとは換気もすごく気をつけた。それはもうコロナありきの話やったけど。

―― 途中で設計を変更したんですよね?

PAN コロナの前から設計は始まっていたから、そのときのシステムとは大幅に変わったよね。コロナ禍になったときに「どうする?」という話になって、やるんだったら徹底的にやろうっていうことになって、とてつもない換気装置を入れて。普通のライブハウスに入れる2倍くらいの給排気の機器を取り付けてあって、普通に使うと給排気の風が寒くておられへんという(笑)。

―― ははははは。

PAN 営業時間外で下のホールでタバコをめっちゃ吸ってるけど誰もわからへんくらい換気がすごい(笑)。換気がすごすぎて「お客さん、少ないときどうする?」って逆に悩んでるのね(笑)。外の空気をものすごく取り入れてるからフロアが寒くなるという(笑)。

―― その換気口から音が漏れたりはしないんですか?

PAN これがね、ちょっと漏れるかなと思ったの。ダクトをやってくれた会社に「音漏れどうですか?」って訊いたら、かなり綿密に設計してもらって一切音漏れはしないんです。このビル自体はね、縦振動で「下のホールでなんかやってるな」っていうのはわかるんだけど、両隣はもう何をやってるかわからない。

―― このビルは全部、TOP BEAT CLUBの施設ですからね。

PAN こないだも近所のおばちゃんが来て「ここって何かあるんですよね?」っていわれて。「地下に音楽ができるスペースがありますよ」っていったら「音がしないから何をやってるんだろうと思って」っていわれて(笑)。

―― 逆に怪しまれてる(笑)。

PAN そうそう(笑)。「娘とそういう話になりまして」って(笑)。「いやいや、地下にちゃんとあるんですよ」って。「入り口もどこにあるんだろうって娘と話してまして。なんか謎の建物が建ったっていう話になってたんですけど」って(笑)。「じゃもう来てください」っていって地下のライブホールに案内して「こうなってるんですよ」って。音もしないのに人だけがぞろぞろ建物に入ってたら「ここには何があるんですか?」ってなるよね(笑)。

―― たしかに(笑)。

PAN 音も何も聴こえないから逆に怪しまれているという(笑)。

―― 両隣がマンションだからちょっと心配してたんですよ。

PAN 実は俺も心配してた。ところが環八(※TOP BEAT CLUBの前は環状八号線が走っている)のほうがうるさい。ここ道路の下が空洞になってて、そこも車が通ってるから車の響きのほうが大きくて、音が漏れたとしても環八がうるさくて表には聴こえない。裏口はダクトで処理してあるからそこからも聴こえないし、給排気がすごすぎて、その音のほうが大きい(笑)。給排気の音にライブホールの音が吸われちゃってて。換気を大きくした選択は正解だったね。


<2023年2月10日金曜日、THE TOP BEAT CLUBの歴史が始まった>

―― 換気や防音の他にも、並んでるお客さんが雨に濡れないようにしたりと細かくお客さんの要望に応えていますよね。

PAN そこは大変やった。昭和の男だからさ、やさしくないのね、気持ちがね。それにやっぱり気づいたよね(笑)。「あー、やっぱり女性の時代だよ」みたいな(笑)。「女性にやさしくないと」みたいな(笑)。今までそんなこと考えてなかったのに、そういう感覚になったのがなんか不思議な感じやったね。スーパーマーケットじゃないけど「ここにこれを欲しいです」といったご意見箱みたいなものを置いてる気分だったね。「その意見、取り入れてみます」みたいな。こないだ「女性用トイレにバッグをかけられるフックがほしいです」っていわれたから「わかりました。重要ですね、それは」といって(笑)。「ご意見ありがとうございます」って(笑)。「クロークですか、じゃあクロークも検討させていただきます」って(笑)。これからもそういう意見を取り入れていったほうがいいかなみたいな。ブルーハーツの「人にやさしく」じゃないけどね、そういう感じやね、今は(笑)。自分のためにやるっていう考えじゃなくてよかったなと思ってる。これ20年前やったらね、たぶん自分のためだけに作ってたと思う。こういう作り方を一切してない。もっと不便でもっと使いにくかったと思う。それでOKやった。でも今、50歳になって思ったのが、自分のためだけじゃなくて誰かが楽しいと思ってるのを見るのがいいっていう感覚かな。

―― ビートルズが今から聴く子どもたちのためにステレオリミックスをリリースするようなもんですね(笑)。

PAN そうそう。自分が第三者になっていくのがいいっていう。

―― 今後の課題はあるんですか?

PAN 今、ここに来てくれてるスタッフは以前ライブハウスの店長をやってたりとか、そういう人たちがたまたま集まってくれて、すごくスタッフ力が高くていいんだけど、いかんせん中高年なんで(笑)。俺も含めてね。だから今の問題はやっぱりいかにここを継承していくかということかな。中高年で支えているものを次の人がやるっていうのはここだけの問題じゃないしね。今の最大の仕事は次にここをやる人を見つけるということかな。

―― そういう意味でも若いバンドを積極的にブッキングする必要がありますね。

PAN そう。どんどん来てもらって、感化されて「ここでライブをやれて楽しいね。ここで働けたらいいね」とか、そういうのが全部相互作用で起こっていくと、それが一番いいかなと。

―― PANさんが準備した機材でやってみると「俺たちの演奏、いつもよりいいな」って思う若いバンドもいると思うんですよね。

PAN そうなると思うよ。「知らない」というのが問題なんだよね。ヴィンテージのアンプに触ったこともないし聴いたこともない。それを知らないというのが問題で、それを知ってもらうっていうことは、ぼくらがやるべきことだということ。物持ち世代やからね。断捨離苦手世代やから。物をよう捨てへんという(笑)。そうやって集めたヴィンテージのものを上手いこと使うっていうのはいいことだと思う。あとは小学生とか中学生とか、そういうレベルで子供を呼んで「カレーを食わすから、ちょっとビートルズを弾かへん?」みたいな、そういうちょっとロックンロールの洗脳に近いことをやってみようかなと(笑)。

―― ますます怪しまれますよ(笑)。

PAN カレーは無料なんだけど、なんかローリング・ストーンズとか弾かされるという(笑)。「ストーンズ、覚えて帰れ」みたいな(笑)。子供にCDを配ったりとかね。ぼくらの時代はそういうのがあったからね。カセットテープを渡されて「これ、聴けよ」みたいなね。あれをやらないとなと思って。そういう次の世代につなげることをすごく考えてるかな。今思ってるのは高校生とかティーンのバンドをブッキングしてソフトドリンクイベントをやろうとか。あとはスペースがあるから季節がよくなったらフリーマーケットとかもできるし。

―― あ、いいですね。近所の人も来られますね。

PAN あんまり音楽とは関係ない人も来られるようにね。フリーマーケットに来た人が「下で何かやってるよ」みたいな、そういうオープン型のイベントをやってもいいなと思ってる。若い子なんかのイベントはそういうのと合わせてやっても面白いかなと思って。上でフリーマーケットをやって下で高校生が演奏しているという。近所の人も楽しい日曜日を過ごせるんじゃないかなと思って。

――ここを作るのをきっかけにだいぶ心情の変化があったんですね。

PAN 「俺はどういう感覚でここを作ろうとしているのかな?」と思ったときに「ここは自分のために作りたいわけじゃないな」と急に思い始めて。例えばスタジオ(GRAND-FROG STUDIO)を作ったときはニートビーツがレコーディングできるためだけのスタジオでいいと思って作ったんだけど、ここはぼくらだけじゃなくて他の人にも使ってもらったほうがいいし、もう自分のためではないなという感覚があって。ロックンロールの公民館みたいなイメージが自分のなかに出てきて。ロックンロールの公共施設で、中高年にとってはデイケアサービスみたいな感じでもいいんだけど(笑)。

―― みんなが使えるロックンロールの公民館っていいですね。

PAN だから荻窪でよかったのかなと思ってる。この周辺はライブハウスがめちゃくちゃ多いわけでもないしね。これが渋谷とか下北沢でやったらイメージが違うのかなと思って。最初、ここの土地が出たときに「荻窪ってどうなのかな?」というのがあって。都心でもないし駅からもちょっと離れてるし。だけど逆にいいかなと思ってきて。近所の人もすごく面白いし。いくつか候補はあったけど、ここが唯一の更地で。お金もすごくかかったけど「行け!」って。本当はクラウドファンディングなしでやれればよかったんだけど、途中で壮絶な値上げの嵐で。建築資材が1.5倍から2倍。コロナで流通が滞って、その後に戦争があって資材が十分に輸入できなくなって全部値上がりして。けっきょく国産の資材のほうが安いということになったんだけど、それでも1.5倍から2倍になって、けっこう綱渡りだった。ロックンロール・サーカスやなと思って(笑)。ローンも何十年計画やから俺はもういないかもわからんね(笑)。そういうのも含めて次にやる人を見つけないとね。俺の意志とローンをついでくれる人を募集してます(笑)。

■ THE TOP BEAT CLUB 公式サイト:"https://topbeatclub.com/

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