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2022.11.16 upload

THE BEATLES 『REVOLVER』
3人のミュージシャンが語る『REVOLVER』

文=森内淳

『リボルバー』は1966年にリリースされたザ・ビートルズの7枚目のアルバムだ。ビートルズがデビューしたのは1962年。その後、半年に1枚のペースでアルバムをリリースしてきた。ワールドツアーをまわったり映画を撮影しながらのレコーディングはハードなものだった。彼らは3枚目のアルバム『ハード・デイズ・ナイト』で収録曲すべてをオリジナル曲でリリースしたにもかかわらず、次作の『ビートルズ・フォー・セール』では忙しすぎて曲が作れずファーストとセカンドのスタイル、つまりカバー曲を収録するスタイルに戻している。

ビートルズの転機は6枚目の『ラバー・ソウル』で訪れる。『フォー・セール』で片鱗を見せ始めていたスタジオで新しい音楽に挑戦したいという気持ちがいよいよ加速する。そしてついにはツアーをやめスタジオにこもって音楽を作ることに専念することを決意する。それまで半年に1枚リリースしていたアルバムも1年に1枚のペースに落とすことにした。その最初のアルバムが『リボルバー』だ。

このアルバムのレコーディングの合間に行った日本を含めたツアーとアルバムリリース後に行われたUSツアーがビートルズ最後のライブツアーとなった。音楽的な高みを目指した『リボルバー』の収録曲は当時の楽器や4人の編成ではライブでの再現が難しく(「トゥモロー・ネバー・ノウズ」なんて絶対に無理ですね)、ツアーでは同じ時期に録音された「ペイパーバック・ライター」(『リボルバー』スペシャル・エディションに収録)のみが披露された。

この年、ビートルズは『リボルバー』のみを発表し『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』のセッションへと突入する。レコード会社は埋め合わせをするように急造のベスト盤『オールディーズ』をリリース。このレコードはいわゆるやっつけ仕事で音も悪く、現在は生産中止になっている。

というのが『リボルバー』を取り巻くざっくりとした背景だ。付け加えるなら、この時期、ビートルズはライバルを得る。それがビーチ・ボーイズだ(近年、ポール・マッカートニーもそう発言している)。というよりもブライアン・ウィルソンといった方がいい。『ペット・サウンズ』に代表される彼のクリエイティブにビートルズのメンバーはおおいに刺激を受ける。そういえばブライアン・ウィルソンもバンドのツアーには参加せずに、ひとりでスタジオにこもってビーチ・ボーイズのアルバム制作に打ち込んでいた。彼はひとりで作品に打ち込みすぎて病に冒されてしまうのだが。そういった良きライバルの存在がビートルズの創作をより加速させている。

そんなこんなでビートルズはあらゆる音楽の可能性を追求するようになる。その最たる楽曲がジョン・レノンの手による「トゥモロー・ネバー・ノウズ」だ。クラブミュージックを20年以上先取りしたこの曲が『リボルバー』セッションのスタートとなった。この事実だけでもビートルズは違う次元に達している。こういう音楽が世の中に存在したのかどうかすらわからない時代にどうやってこのループミュージックを発想したのかがわからない。これを「お、いいじゃん、これ。ビートルズでやってみよう」と思った思考回路が知りたい。

もしかしたら「パソコンをいじってたらこういう曲ができたんじゃないか」と思われる方がいるかもしれない。残念ながら当時のレコーディングスタジオは完全無欠のアナログの世界だ。たまに『リボルバー』や『サージェント・ペパーズ』を今のクラブミュージックに比べればたいしたことないという人もいる。たぶんそういう人は当時もパソコンやネットやサイケデリック・ミュージックやクラブミュージックが普通に存在していたと思っているのだろう。あるわけはないのだ。

その『リボルバー』の素晴らしさを伝えるためにはどうしたらいいのか。それを考えたときに、ぼくらのようなリスナー目線ではなく、実際に日頃からレコーディング活動に携わっているミュージシャン視点の方がよりリアルにこのアルバムを映し出すことができるのではないかという結論に至った。そこでDONUTではザ・ビートルズ『リボルバー』特設サイトで、George(MOP of HEAD)、ROY(THE BAWDIES)、加藤ひさし(THE COLLECTORS)3人のミュージシャンにインタビューを行い、それぞれの視点から『リボルバー』について語ってもらった。

『REVOLVER』 SPECIAL INTERVIEW (取材=秋元美乃/森内淳)


■George(MOP of HEAD)
ブレイクビーツ、ダブステップ、ドラムンベース、ハウスなどのダンスミュージックを自らのバンド、MOP of HEADで表現しながら、サウンドプロデューサーやキーボード・プレイヤーとしてsumikaやASIAN KUNG-FU GENERATIONやYOASOBIなど、日本の音楽シーンの最前線で活躍するバンドに携わっているGeorge。常に最先端の音楽に軸足を置いている彼の立ち位置からザ・ビートルズの『リボルバー』の革新性について語ってもらった。

インタビューURL(3人共通);https://sp.universal-music.co.jp/beatles/interview.php

プロフィール:2006年にMOP of HEADを結成。FUJI ROCK FESTIVAL、COUNTDOWN JAPANなどの大型フェスに出演。また、DJとしてFUJI ROCK FESTIVAL '13、’14と2年連続でGAN-BAN SQUAREに出演する他、DOG BLOOD(SKRILLEX & BOYS NOIZE)初来日公演にてオープニングDJを務める。これまで楽曲提供やアレンジ、ライブ、レコーディング等に参加したアーティストはASIAN KUNG-FU GENERATION/BACK DROP BOMB/YOASOBI/向井太一/sumika/澁谷逆太郎(SUPER BEAVER)/Negicco/東方神起など多数。他にもHITOSHI MATSUMOTO Presents ドキュメンタルのオープニングやヤマザキナビスコカップ 決勝戦のBGM、ブルボン アーモンドラッシュのCM音楽などを手掛ける。



■ROY(THE BAWDIES)
『リボルバー』スペシャル・エディション発売記念インタビューの第2弾はTHE BAWDIESのROYが登場。ご存知のようにTHE BAWDIESは生粋のロックンロール・バンド。最新シングル「GET OUT MY WAY / LIES」でも濃密で熱量の高いロックンロールを鳴らしている。THE BAWDIESのサウンドはザ・ビートルズでいうと初期のそれと親和性がある。そこで今回は、ロックンロールの衝動を追い続ける者の視点から見た『リボルバー』というテーマでインタビューを行った。これまでの解説や批評とは少し違った角度から見えてくる『リボルバー』の風景を楽しんでもらいたい。

インタビューURL(3人共通);https://sp.universal-music.co.jp/beatles/interview.php

プロフィール:THE BAWDIESのボーカル&ベース。THE BAWDIESは小学校からの同級生のROY、JIM、MARCYと高校からの同級生、TAXMANによって2004年1月1日に結成。唯一無二の圧倒的なボーカルを武器に、メンバーが敬愛するリトル・リチャードやレイ・チャールズに代表されるリズム&ブルース、ロックンロールのルーツを昇華した楽曲、誰をも楽しませてくれるライブが各地で噂を呼ぶ。2枚のアルバム、シングルを経て2009年に『THIS IS MY STORY』でメジャーデビュー。最新型のロックンロールバンドとして国内外で高い支持を得る。2019年にはデビュー10周年、結成15周年を迎え、自身3度目となる日本武道館公演を開催。最新リリースとしては2022年10月19日にROYとTAXMANそれぞれがメインボーカルを務める両A面シングル「GET OUT OF MY WAY / LIES」を配信リリース。また、11月3日には7インチアナログレコード「FREAKS IN THE GARAGE - EP」を発表。また、11月8日を皮切りに全4ヵ所をまわる「BIRTH OF THE REBELS TOUR ~MARCYの復讐・TAXMANの逆襲~」を開催する。



■加藤ひさし(THE COLLECTORS)
ザ・ビートルズ『リボルバー』スペシャル・エディションのインタビュー企画第3弾はTHE COLLECTORSの加藤ひさしが登場。彼は中学でビートルズに衝撃を受け、高校でバンドを始め、10代の終わりに映画『さらば青春の光』によりモッズに目覚め、20代でTHE COLLECTORSを結成した。メジャーデビューから35年、60年代〜70年代のブリティッシュ・ロックを知り尽くしたベテランミュージシャンが語る『リボルバー』とビートルズのすごさとは?

インタビューURL(3人共通);https://sp.universal-music.co.jp/beatles/interview.php

プロフィール:THE COLLECTORSのヴォーカリスト。バンド活動の傍らで作詞・作曲家としても活躍。藤井フミヤ、矢沢永吉、小泉今日子をはじめ、多くのアーティストに詞や曲を提供している。1987年にTHE COLLECTORSのアルバム『僕はコレクター』でメジャーデビュー。2017年にはデビュー30周年を記念した日本武道館公演を行う。2018年に公開された初のドキュメンタリー映画『THE COLLECTORS〜さらば青春の新宿JAM〜』は5ヶ月に及ぶ異例のロングラン上映に。2022年にはデビュー35周年を記念した2度目の日本武道館公演を成功させる。11月23日に25枚目のオリジナルアルバム『ジューシーマーマレード』をリリース。2023年1月より渋谷クラブクアトロにて12ヶ月連続でマンスリーライブを行う。

INFORMATION


■スペシャル・エディション[5CDスーパー・デラックス][輸入国内仕様/完全生産限定盤]
CD1:オリジナル・アルバム ニュー・ステレオ・ミックス:14曲/CD2 & 3:セッションズ(ステレオ&モノ):31曲/CD4:『リボルバー』オリジナル・モノ・マスター:14曲/CD5:『リボルバー』EP:4曲/本文100ページの豪華ブックレット付/<日本盤のみ>英文ライナー翻訳付/歌詞対訳付


■スペシャル・エディション[2CDデラックス]
CD1:オリジナル・アルバム ニュー・ステレオ・ミックス:14曲/CD2:セッションズ・ハイライト+「ペイパーバック・ライター」&「レイン」ニュー・ステレオ・ミックス:15曲/40ページのブックレット付/<日本盤のみ>英文ライナー翻訳付/歌詞対訳付


■スペシャル・エディション[1CD]
オリジナル・アルバム ニュー・ステレオ・ミックス:14曲/<日本盤のみ> 英文ライナー翻訳付/歌詞対訳付


■スペシャル・エディション[4LP+7インチ・シングル:スーパー・デラックス][直輸入仕様/完全生産限定盤]
4枚の180g/ハーフスピード・マスタリングLP+45rpm 7インチEP/LP1:オリジナル・アルバム ニュー・ステレオ・ミックス:14曲/LP2 & 3:セッションズ(ステレオ&モノ):31曲/LP4:『リボルバー』 オリジナル・モノ・マスター:14曲/EP:『リボルバー』EP:4曲/本文100ページの豪華ブックレット付/<日本盤のみ>英文ライナー翻訳付/歌詞対訳付


■スペシャル・エディション[1LP][直輸入仕様/完全生産限定盤]
オリジナル・アルバム ニュー・ステレオ・ミックス:14曲/180g/ハーフスピード・マスタリングLP/<日本盤のみ>英文ライナー翻訳付/歌詞対訳付

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