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2022.06.28 upload

オカモト“MOBY”タクヤ インタビュー
メジャーリーグと音楽は同じ娯楽として並列してるっていうか、影響しあっているんです
―― オカモト“MOBY”タクヤ

SCOOBIE DOのドラマー、オカモト“MOBY”タクヤが著書『ベースボール・イズ・ミュージック』を上梓した。メジャーリーグ(MLB)と音楽にまつわる物語を9章に分けて詳しく紹介している。文字数は本文だけで400字詰め原稿用紙425枚にも及び、欄外の注釈は500を超える。とてもにわか知識では書けないような力作だ。MLBの生中継の解説者としても活躍するMOBYだからこそ書けた著書だ。そういえば、ぼくは、2004年にヤンキースが地区優勝を決めた試合を(旧)ヤンキー・スタジアムたまたま見に行って、勝ったあとに紙吹雪と共に流れた「ニューヨーク・ニューヨーク」が忘れられない。まさにベースボールとミュージックが一体になった素晴らしい場面だった。この本を読んでいたら、あのときの「ニューヨーク・ニューヨーク」の光景が目の前に蘇った。90年代のはじめにシェイ・スタジアムにメッツの試合を見に行ったとき、ぼくの脳裏で鳴ったのは、この球場で史上初のスタジアム・ワンマンライブをやったビートルズのナンバーだった。ぼくですらこれだけの物語を持っている。『ベースボール・イズ・ミュージック』にはもっともっと面白いエピソードがたくさん掲載されている。著者のオカモト“MOBY”タクヤに、本のこと、MLBのことをじっくりと訊いた。

●取材・文=森内淳

―― 「音楽と野球」というテーマについては以前から着目していたんですか?

オカモト“MOBY”タクヤ どっちも大好きっていうのが大前提で。一緒とは言わないですけど、大事なもの同士。もちろん子供の頃から野球は好きで、メジャーリーグも子供の頃から触れ始めていて。最初は別々に触れていたんですけど、音楽と野球の関係性を意識し始めたのが大学1年の1995年にシカゴに行ったときなんですよ。

―― そこで2つの点がひとつの線になるんですね。

MOBY そうなんです。リグレー・フィールド(シカゴ・カブスのホームグラウンド)に初めて訪れたときに、球場の正門を見たら見たことがある看板があったんですよ。「これは『ブルース・ブラザーズ』に出てくるところだ!」って。映画の中で主人公の2人が免許証に登録した住所がリグレー・フィールドだったんですよ。警察はそれを見てすぐにリグレー・フィールドだってわかるんですけど、主人公たちを追いかけていたネオナチの連中にはそれがわからなくて、駆けつけたところはリグレー・フィールドだった、っていうくだりがあるんです。そこでその看板が映るんですよ。「うわー、一緒だ!」と思って。そこで好きな野球と音楽が交錯するんです。その瞬間、音楽と野球のつながりを意識し始めました。映画に出てきた看板は今でもリグレー・フィールドにあるんですよ。街の人たちがそれを大事にしている、そういうフランチャイズ感や、彼らにとっては野球も音楽もコメディも映画も一緒のところで語られるものなんだ、っていうことに感銘を受けました。

―― 別ジャンルなんだけど、どこかつながってる、と。

MOBY そうなんです。それから5年後の2000年にシカゴ・カブスとニューヨーク・メッツが日本で初めて公式戦が開催された際、ヴォーカルの(コヤマ)シュウくんと第2戦を見に行ったんです。そのときにリッキー・ヘンダーソンという盗塁記録を持ったレジェンド級の選手がジェームズ・ブラウンの曲で出てきたんですよ。他にもマイク・ピアザがジミ・ヘンドリクスの曲で出てきたり。それを見て「メジャーリーガーって自分たちで曲を選んでいるんだな」って思ったんですよ。このセンス、かっこいいな、と。選手たちが好きな音楽を選んで登場している、と。ただ野球をしている人たちではないんだ、と。美意識だったり趣味だったりをも野球の中で表現しているんだ、って。ぼくの中で音楽と野球がリンクしたんですよね。そこからメジャーリーグの球場でかかっている曲を意識し始めて、テレビを見ながら「こんなのがかかってるのか!?」とか、ちょっとずつ記憶、そして記録していったんです。

―― それが今回の著書につながっているわけですね。

MOBY MLBの解説やテレビ番組をやらせてもらうようになって「そうか、こういう見方って誰もしてなかったな」というのがあって、本になったという感じですかね。

―― 今回の著書は雑誌『Slugger』の連載コラムをまとめたというスタイルなんですか?

MOBY コラムを元にした部分もあるんですけど、基本、書き下ろしですね。コラムは字数も限られているので、コラムを書くために調べていくうちにいろいろわかってきたものごとを、全部は書けないんですよね。「本を書きませんか?」って言われたときに、それを体系づけて、小見出しも全部、ぼくが作って。章立てもほとんど全部やりました。もうちょっとここら辺を足してもらえませんか、っていうのは言われたんですけどね。ただ、最初はバンドのことを書くはずだったんですよ。

―― というと?

MOBY ワイフ(トミヤマユキコ)が左右社から単行本を出した経緯があって、ぼくの文章をたまたま読んだ編集者がいらっしゃったんです。最初はバンドの話を書いてほしい、って来たんですよ。バンドで食っていくとは云々、みたいなことを書こうと思っていたんですけど、コロナになって、ライブができなくなって、それじゃ本を書いても説得力がないな、と思って、やめたんです。

―― それがどうやってMLB(メジャー・リーグ・ベースボール)の本になるんですか?

MOBY その間に担当編集の方も変わったんですけど、その方がぼくの文章を読んで、この文体だったら全然いけるので、興味があることを書いてほしい、って言って。それで書けるかも、と思ったのがMLBのことだったんですよ。『Slugger』のコラムが単行本になる予定もないし、J SPORTSで『MLBミュージック』という番組をやっていて、そこでもぼくがある程度、企画を提案しているので、ネタのストックもあったんです。それを元に細かく調べていって書いていったら本になるかもしれません、って先方に伝えて。それで書き始めたら面白くて(笑)。

―― 本当によく調べてある本で、ベースボールと音楽の関係性がよくわかる本なんですが、執筆の手順としては持っているネタを章ごとに分類するところから始めたんですか?

MOBY 最初、持っているネタを音楽のジャンルで分けられるな、って思ったんです。

―― 本の6章から9章は「ロックとMLB」「シンガーソングライターとMLB」「ブラック・ミュージックとMLB」「ヒップホップとMLB」という項目に分けられていますね。

MOBY 「ロック~」と「シンガーソングライター~」はかぶるところもあるんですけどね。

―― ヒップホップはベースボールの歴史から考えると比較的新しい音楽ジャンルですよね。

MOBY 「ヒップホップ」を入れたのはビースティ・ボーイズの歌詞を読んで、研究に値するな、と思ったからなんです。野球選手の名前が歌詞に出てくるんだけど、その選手がレジェンドだったからではなく、引退したあとにサラ金のCMに出ていたことを引き合いに出して、売れてるオレ達には用なしさ!と、茶化しているんですよね。

―― 野球選手の名前が出てくるポップスとはたしかに視点が違っていますね(笑)。

MOBY よく調べないとそんなことわかんないじゃないですか。選手たちの名前がどういうふうに使われているのか、を調べたりすると、その時代における言葉のセンスとかもわかってくるんです。そういうことを調べていくのは面白いな、と思って。

―― それによってヒップホップのリリックの独特な視座をも知ることができますよね。

MOBY ヒップホップの歌詞と野球の関係を調べていくうちに、そういうことがどんどん出てきたんですよ。これは歌詞のことではないんですが、例えばMCハマーが子どもの頃に、オークランド・アスレチックスのボールボーイをやっていた、なんてことが出てきたりするんです。顔がハンク・アーロンに似ているから、彼のニックネームである「ハマー」と呼ばれるようになったこととか、全く知りませんでした。

―― 執筆にはどれくらい時間がかかったんですか?

MOBY オファーが来て、コラムや持っているネタに血肉をつけて、ビースティ・ボーイズのことを調べて……最初の稿を出したのが2020年12月とかだったから1年ちょっとですね。シーズンが始まっちゃうと、ぼくは解説を担当してるので、そんなに書けなかったんですけど、シーズンに入る前の1月から3月と、シーズンが終わった11月から、バーっと書きました。全部で17万字(※400字詰め原稿用紙で約425枚)あるんですけど、注釈を500個くらいつけちゃって(笑)。自分で自分の首を絞めてる(笑)。

―― たしかに注釈が多いですね。これはMOBYさんなりのこだわりなんですか?

MOBY 2007年にスペースシャワーTVで、いとうせいこうさん司会のクイズ番組の作家をやっていたことがありまして。元々クイズが好きで、いとうせいこうさんに誘われて。その流れで『全国高等学校クイズ選手権』のクイズも作っていたことがあるんですよ。そのときは毎日1問1答を20問、○×クイズを10問、3ヶ月くらい書いたんですよ。そのクイズを作るときに学んだのは、必ず裏をとらないといけない、ということ。絶対に間違った問題を出せないから。その裏をとるっていうことをこの本でもやっちゃったっていうか(笑)。

―― その裏をとらずにはいられない感じって、この本の根幹ですよね。なぜこんな分厚くて知識がたくさん詰まった本になったのか、よくわかりました(笑)。ところでMOBYさんはMLBに関する知識をどうやって身につけていったんですか?

MOBY 2000年代後半に、メジャーリーグではMLB.TVという、契約したら全部の試合がネットで見られるっていう配信サービスが始まるんですよ。後にDAZNを始め、現在は様々なサービスがあり、日本では現在MLBのネット配信をSPOTV NOWやABEMAなどがありますけど、メジャーリーグはそれがひじょうに早かったんです。ぼくは2010年から契約していて、ここ10年ちょっとはそれのお陰で、得られる情報量が一気に多くなりました。ただ動画はデータを食いすぎるのでWi-Fi環境じゃないと見られないので、機材車の移動時など、スマホで触れる際はラジオを聴いていました。MLB.TVは現地の生中継のラジオも聴けるんですよ。そうやっていくうちにMLBのデータがちょっとずつ頭に入ってくるんですよ。それからお金を貯めてアメリカに行って試合を見るようになって。試合を記憶しておきたいから、なるべくスコアをつけるようにして観ていたんです。そのときのスコアカードをあとで見たら「あ、あのときはこうだった」みたいなのが蘇るので。

―― 記録することが好きなんですね(笑)。

MOBY MLBって数字で掘ろうと思えばいくらでも掘れるんですよ。過去の記録を調べようと思ったら無料でいくらでも調べられるんです。例えばベーブ・ルースが何年に何号のホームランを打ったときの試合を調べようと思ったら、その試合の進行状況も全て出てくるんですよ。先発メンバーが誰とか。調べようと思えば1800年代の、19世紀の試合も調べられるんです。数字を辿っていけば無限に広がるんですよ。

―― それはすごい!

MOBY アメリカは歴史の浅い国で、その中でも野球文化は古いものだから大事にしないといけない、というのでちゃんと記録しているんでしょうね。アメリカはいろんなことが雑だったりする印象もあリますけど、ベースボールに関してはデータがものすごく綿密なんですよ。調べようと思ったら、ちょっとしたキーワードでいくらでも調べられるんで。

―― なるほど。どこまでも掘れるんですね。ハマったらやめられないですね(笑)。

MOBY やめられないですよ。調べたものはMLBの解説で使ったり、いつでも言えるようにしておくんです。

―― MLBの解説をやるようになったきっかけは何だったんですか?

MOBY 2016年にワールドシリーズをリグレー・フィールドに観に行って、帰ってきたタイミングで、現在コラムを書いている『Slugger』っていうメジャーリーグ専門誌から現地のレポートを依頼されたんです。その流れでコラムも書くようになりました。そうやって人とつながっていくうちに、ある野球関係者の飲み会に誘われ赴いた際、そこにいた方に「解説をやりませんか?」って誘われたんですよ。

―― 最初はどこで解説をやったんですか?

MOBY 2017年にDAZNでやりました。DAZNがメジャーリーグの放映をやめちゃったので1年間で終わっちゃったんですけど。今年はABEMAで月に平均6試合くらいはやっています。

―― 解説の仕事ってどういう準備をするんですか?

MOBY 今月はこの試合をお願いします、と言われたら、担当する試合のチームの選手の状況とかを調べたり、先発ピッチャー前の試合の数字とかを調べて……みたいな感じです。当日は試合開始からだいたい4時間くらい前に起きて、試合直前の情報、これが一番使えるので、それをアメリカのスポーツ情報サイトやMLBのオフィシャル・ニュースで調べます。

―― 時差があるので大変じゃないですか?

MOBY デイゲームだとだいたい日本時間の午前3時プレイボールとかなので、仮眠をとって、夜の11時には起きて、準備をして、みたいな。ナイトゲームの場合はアメリカの東部時間で午後7時プレイボールだとすると、日本時間は朝8時。なので、朝4時には起きて準備をしていますね。

―― しかし好きが高じて解説者にまでなるなんて面白いですね。

MOBY 現場(アメリカの球場)に行くようにしてたらこうなってた、というね。

―― あとはMOBYさんのたゆまぬ探究心ですよね。データを掘っていくエネルギーというか。

MOBY それもクイズ好きに由来しているんですけどね(笑)。

―― いろんなことがリンクしてるんですね。この本みたいですね。

MOBY あとは単純にアメリカ文化が好きなんですよね。

―― 日本のプロ野球とMLBのベースボールではやはりMLBの方が面白いですか?

MOBY 面白いしかっこいいのはメジャーリーグだな、と思います。ベースボールそのものがスタイリッシュなんですよね。そこはボク自身のアメリカかぶれが野球にも影響しているのかもしれないですけどね。

―― MLBと日本のプロ野球の違いは?と訊かれたら何と答えているんですか?

MOBY ぼくがよく言うのは「試合とゲームの違い」なんですよ。

―― 試合とゲーム、ですか。

MOBY 「試し合う」のと「ゲームをプレイする」ことの違いですよね。プレイボールで始まってゲームセットで終わるじゃないですか。ベースボールはゲームをやってるんですよ。遊んでいるんですよ。その違いじゃないかと思うんですよね。

―― 日本のプロ野球は『巨人の星』ではないですが、精神論に支配されている部分がありますよね。

MOBY 明治4年に野球が日本に入ってきて以降は、精神鍛錬の一環として野球をやる、という捉え方があったんですよね。だけどそういう考え方があったから野球は生き残れたという側面もあるんです。

―― どういうことですか?

MOBY 第二次大戦が始まったとき、野球は敵性のスポーツだったわけで、そんなものはけしからん、と、当時の政府当局から言われていたんです。そこを体にも精神にもいい、と言うことで、ある時期まで野球は何とか持ちこたえたんです。

―― なるほど。「精神鍛錬」という意味で、敵性スポーツである野球が戦時中にサバイブするエクスキューズとして成立したわけですね。

MOBY ところが戦争から帰ってきた方たちが軍隊式で野球を教えちゃったんですね。それが今に至っていて。「学生野球の父」と言われた早稲田大学の飛田穂州が「そうやって野球を精神鍛錬の一環として生き残らせたんだけど、それがかえって仇となってしまった」ということも言ってるんですね。

―― 野球は戦時下を生き残りはしたけど、ベースボールとは違うものになってしまったんですね。軍隊式というか体育会系のノリは連綿とはびこってますからね。それからぼくは中日ドラゴンズのファンで球場もたまに行くんですけど、あの外野の応援が苦手なんですよね。

MOBY 最初は大学野球の場で「応援」というものが始まり、それが今に至ってるんですよ。大学野球で応援団というものが球場に現れて「応援をする」っていう概念ができたんです。

―― あ、そうだったんですね。

MOBY 日本の場合は「野球を見に行く」というよりも「応援をしに行く」文化なんですよ。野球は「野球道」になっているんですよね。「道」なんですよ。ベースボールはそういうものではない。応援をしているわけではないんですよ。応援をするとなると(フィールドとスタンドが)分かれるわけじゃないですか。セパレートなわけですよね。そこなんですよね。そうなると「野球を見に行く」ということじゃないですよね。そういえば、メジャーリーグも1球団だけ鳴り物を使ってるチームがあるんですよ。

―― あ、そうなんですか?

MOBY オークランド・アスレチックスですね。そんなにバカバカやってはないですけど、外野の奥の方で太鼓を持ってる集団がいるんですよ。アスレチックスのチームのマークは、象が大きな玉に乗っているサーカスのようなイラストなので、たぶん、その流れなんじゃないかとは思うんですけど。他には、ニューヨーク・ヤンキースのライトスタンドのちょっと奥のエリアだけですが、投球と投球の間に、その日の先発選手に対して、ひとりずつ選手の名前をコールして、選手がそっちを向いて手を振るみたいなパフォーマンスを必ずやるんですよ。

―― 日本のプロ野球みたいですね。

MOBY ロールコールって言うんですけど、それに影響を受けたのが千葉ロッテマリーンズの応援だったりするんですよ。1990年代の後半にヤンキー・スタジアムに見に行って、簡潔な応援がすごくいいな、という話を伺ったことがあります。とはいえ。基本的には日本の場合は、歌を歌って、さぁ応援しましょう!っていう感じですよね。ぼくも子供の頃は当たり前のようにメガホンを持って応援していたんですけどね。野球を見ることや触れることに関して歴史が圧倒的に違うんですよね。ただ応援の文化も今となっては歴史の古い文化で、それがアジアのプロ野球にも波及しているところもあるので、それはそれで素晴らしいことだと思うんですけどね。

―― プロ野球とMLBのもうひとつの大きな違いは、この本の主題にもなっている他のカルチャーとのリンクですよね。例えば、この本にも出てくるジョン・フォガティの「センターフィールド」という歌なんかその最たるもので。

MOBY あの曲もただベースボールのことを歌ったわけじゃなくて、自分自身のことを歌ってるんですよね。

―― 権利関係でソロ活動を10年間封印されたジョン・フォガティがこの曲で「またシーンの真ん中に立つ」と宣言するという。それをベースボールのセンターに引っ掛けているんですよね。

MOBY しかも、あの曲に出てくる選手たちはほぼみんなセンターを守っていたんですよね。

―― ベースボールと他のカルチャーが激しくクロスしているんですよね。

MOBY そうなんですよ。例えば、日本の場合、野球を使って自分の立ち位置や心情を歌うっていうことはあんまりないですよね。アメリカの場合、娯楽としてイコールというか。スポーツと音楽は違うものではないという感じというか。同じ娯楽として並列してるっていうか、影響しあっているというか。

―― 「影響しあう」っていう言葉が一番ぴったりきますね。だからビリー・ジョエルがシェイ・スタジアムでライブをやった意味も違ってくるという。単なるスタジアム・コンサートではなくて、ニューヨーカーとしてのシェイ・スタジアムへのリスペクトがありますよね。

MOBY パール・ジャムが自分の好きなチームのホームグラウンド、リグレー・フィールドでライブをやったりとかね。日本でたまにあるとしたら奥田民生さんが広島カープのホームグラウンドでやる、とかくらいですかね。

―― そうですね。

MOBY くるりが去年「野球」という曲を書いたんです。野球自体をテーマにした曲を耳にしたのが久しぶりだったというか。いいな、と思いましたね。それで岸田(繁)くんに本の帯のコメントを頼んだんですよ。それでいくと、どうしても載せたかったのがビートルズが野球をしている写真ですね。出自がわからないのでイラストにしたんですけど、ググれば写真が出てくるので見てほしいです。

―― ビートルズは世界初のスタジアムでのワンマンライブをシェイ・スタジアム(当時はシェア・スタジアムと表記)でやるんですが、前年の1964年にも、ワンマンではないですが、カンザスシティのミュニシパル・スタジアムでやってるんですよね。そのときのエピソードも本の中に出てくるんですが、とても面白かった。

MOBY カンザスシティのミュニシパル・スタジアムでアマチュア時代からやってた「カンサス・シティ/ヘイ・ヘイ・ヘイ・ヘイ」を演奏したんですよね(※楽曲の日本語表記はカンザスではなくカンサス)。その演奏がよかったので『ビートルズ・フォー・セール』で同曲をレコーディングしたという。現代のカンザスシティ・ロイヤルズの本拠地、カウフマン・スタジアムでは、チームが勝つと「カンサス・シティ/ヘイ・ヘイ・ヘイ・ヘイ」が流れるという。

―― 野球と音楽がリンクしてる。物語でつながっている。

MOBY そうなんですよ。

―― それから、球場のオルガン奏者のくだりがあって、彼らは歌詞を上手く選手の名前や出身地に当てはめて演奏してみたり、ものすごく遊んでるというか、創造力に溢れてるんですよね。

MOBY テーマに対してジャズってるんですよね。

―― それは言い得て妙ですね。この本を読むと、野球から音楽、音楽から野球、という双方向で高めあっているのがよくわかります。

MOBY この本に出てきた音楽のプレイリストも巻末に載っているんですよ。

―― これを元に自分でプレイリストを作ったら面白いですよね。

MOBY 実はすでにあるんですよ。

―― そうなんですか?

MOBY この本の出てくる順にSpotifyにプレイリストを作ってるんですよ。

―― あ、ほんとだ。じゃこれもページの中に埋め込んでおきます。

MOBY お願いします。

―― これは本とは全然関係ないんですが、MOBYさんのMLBにおける注目の選手を教えていただけますか?

MOBY ここ最近の話だと、ピッツバーグ・パイレーツのオニール・クルーズっていう選手ですね。月曜日(6月20日)に今シーズン初出場した選手で。身長が6フィート7インチだから、201センチくらいあるんですよ。ヤンキースにアーロン・ジャッジっていうスラッガー、特に今シーズンは半端ないペースでホームランを打ってる選手と同じくらいの身長なんですけど、オニール・クルーズはショートを守っているんですよ。

―― 201センチの身長でショートですか!?

MOBY メジャーリーグ史上、一番背が高いショート、そして内野手なんじゃないか、と言われてるんですよ。

―― そんなに身体がデカくて動けるんですか?

MOBY これが動けるんですよ! 今年のデビュー戦でショートゴロを処理した際、ショートからファーストまでの送球が96マイル(155キロ)だったんです。その日の味方の先発ピッチャーの一番速いボールが154キロ。ピッチャーが投げる球よりも速かった、っていう(笑)。すごい選手が出てきて。足もめちゃくちゃ速いし、打球速度もシングルヒットで180キロくらいあるんですよ(※MLBの平均打球速度は約149キロ)。今までの常識を覆すんじゃないか、って言われてるんです。で、オニール・クルーズのお父さんはラファエル・クルーズ(※登録名:ラファエル・クルス)といって、2007年に中日ドラゴンズでプレイしているんですよ。で、彼が好きな選手が2000年に西武ライオンズにいたトニー・フェルナンデスなんです。日本に縁のある選手なんですよね。

―― ドラゴンズの根尾(昂)選手みたいにピッチャーでもいけるかもしれないですね。

MOBY ピッチャーだったら100マイル(160キロ)出せるの?ってテレビのインタビューで訊かれた際、それ以上出せるよ、って豪語したらしいですよ(笑)。

―― ハハハハハ。しかしMOBYさんの知識量は半端ないですね。これだけの知識が詰まってるからこういう本が出せるんでしょうけど。

MOBY 現時点での自分用のカンペを作った感じでもあるんですけどね(笑)。調べていけば答えが出てくるんだ、っていうのを今回、実感しました。

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SCOOBIE DO:ROCKとFUNKの最高沸点“Funk-a-lismo!”貫くサムライ四人衆。“LIVE CHAMP”の名に恥じぬその圧倒的なライブパフォーマンスと、完全自主運営なインディペンデント精神があらゆる音楽ファンに熱烈な支持を受けている。コヤマシュウ(Vocal),マツキタイジロウ(Guitar),ナガイケジョー(Bass),オカモト “MOBY” タクヤ(Drums) 。

INFORMATION

『ベースボール・イズ・ミュージック!音楽から始まるメジャーリーグ入門』
2022年4月29日リリース
著者:オカモト“MOBY”タクヤ
発行:左右社
ISBN978-4865280807


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SCOOBIE DO リリース情報

15thAL『Tough Layer』
2022年8月24日リリース
収録曲:明日は手の中に/今日の続きを/その声を/GEKIJYO/悲しい夜も/スピード/正解Funk/光の射す道へ/成し遂げざる者のブルース/荒野にて(曲順未定)


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LIVE INFORMATION

■ Funk-a-lismo! vol.13
10/01(土) 千葉LOOK 17:30 / 18:00
10/15(土) 高松DIME 17:00 / 17:30
11/03(木祝) 福岡LIVE HOUSE CB 18:00 / 18:30
11/05(土) 岡山CRAZY MAMA 2nd Room 17:00 / 17:30
11/13(日) 長野LIVE HOUSE J 16:00 / 16:30
11/26(土) 秋田CLUB Swindle 17:30 / 18:00
11/27(日) 仙台LIVE HOUSE enn 2nd 18:30 / 19:00
01/29(日) 恵比寿LIQUIDROOM 16:15 / 17:00
......and more!

※ライブ情報は変更になる場合がありますので、必ず公式サイトで確認してください。
https://www.scoobie-do.com/live_upcoming

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