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2022.03.31 upload

ドミコ ライブレビュー
「ドミコ 日比谷野外大音楽堂ワンマン 2022」
2022年3月19日(土) 日比谷野外大音楽堂

●撮影=西槇太一 文=森内淳

2022年3月19日。土曜日の日比谷野外大音楽堂は強い雨に見舞われた。この日の雨風によって、一度は暖かくなった東京も再び初冬のような寒さへと戻っていった。そういう悪条件のなか、野音のステージに立ったのがドミコだ。ドミコを知ったのは2016年のアルバム『soo coo?』。それをきっかけにライブを見てインタビューをやった。浅井健一&THE INTERCHANGE KILLSとDOUBLE SIZE BEDROOMとともにイベントにも出てもらった。ドミコは音楽通のリスナーの心をつかみ、ライブを繰り返しながら、徐々に輪を広げていった印象がある。一気に動員を増やすというよりも、着実に歩んできたように思う。そのドミコが野音のステージまでやってきたと思うと、なかなか感慨深いものがある。

とはいえ、ルーパーによってサウンドを構築していくスタイルのドミコと開放的な野外コンサートとの相性はどうなのか。過去にフジロックとARABAKIでドミコのステージを見ているが、いずれも客席まで屋根があるステージだった。フジロックは苗場食堂でもやったが、野外といっても野音ほどのスケール感はない。そう思っていたら、さかしたひかる(Vo,Gt)と長谷川啓太(Dr)がステージ上にゆっくりと現れ、「ドミコでーす」という一声を合図に、1曲目の「問題発生です」が始まった。その瞬間、野音はいつものドミコの世界観で覆われた。ドミコを語る上でローファイやオルタナティブというワードは避けて通れないが、何だかんだいっても、彼らのベースにあるのはロックなのだ。逆に野外でやることで、彼らの音楽のなかにあるロックのダイナミズムが引き出されたかっこうになった。





「ペーパーロールスター」「united pancake」「旅行ごっこ」と、ドミコは冒頭からロックンロールナンバーを連投した。「ペーパーロールスター」ではキング・クリムゾンの「スキッツォイド・マン」を匂わせるギターを野音に響かせた。「ロックは終わった」と笑うでもなく、「ロックは終わっていない!」と目くじらを立てるのでもなく、ドミコは何も気にすることなくロックを自分たちの音楽に取り込んできた。サイケデリック、フォークロック、プログレッシブロック……そういえばニール・ヤングにはまったこともあった。ドミコは1967年あたりから連綿とつづくロックを血肉化し、オルタナティブロックのフィルターを通して楽曲へ昇華させてきた。ドミコのなんでもありの融合は、ロックが新しいフィールドに踏み込むときに常に行ってきた「いろんなジャンルの音楽のミクスチャー」という手法そのものだ。



5曲目は2010年代のドミコの代表曲「まどろまない」が早くも登場。6曲目が「さなぎのなか」。2曲とも2016年のアルバム『soo coo?』からの選曲だ。7曲目は「くじらの巣」。ライブハウスで聴くと深海を漂うような気分になるこの曲も、曲の持つ独特な浮遊感が野外というシチュエーションのなかで本領を発揮。音の粒が広い空間のなかに拡散していくような、得もいわれぬ開放感を味わうことができた。その感覚は次の「ロースト・ビーチ・ベイベー」にも引き継がれた。この2曲は2017年のアルバム『hey hey , my my?』に収録されていて、親和性も高いせいか、ライブ中盤の聴きどころとなった。さらに同アルバムから「怪獣たちは」を演奏。ドミコの音楽性の広さを示すフォークロック調の曲だ。こういう曲もドミコは難なく乗りこなせてしまう。10曲目が「あたしぐらいは」。そして「ベッドルーム・シェイク・サマー」へと続く。アルバム『Nice Body?』に収録されている、サイケデリックを気怠さが包んだような曲たちだ。もしも雨が降っていなかったら、アスファルトの予熱が漂流する真夏の夜を想起させたにちがいない。

12曲目は「ばける」、13曲目は「化けよ」。14曲目が最新アルバム『血を嫌い肉を好む』のリードシングル「猿犬蛙馬」、『VOO DOO?』のロックンロールナンバー「びりびりしびれる」、アルバムタイトル曲「血を嫌い肉を好む」で本編が終了。アンコールは「深海旅行にて」。そして「こんなのおかしくない?」でライブは終了した。……と、普通のライブレビューのように書き連ねているが、いうまでもなくドミコは普通のロックバンドとは違う。音楽性が何層にも重なった楽曲を、さかしたひかると長谷川啓太がたった2人で表現しているのだ。しかも、いつものようにそっけないふるまいで、いつものように淡々と。しかしながら、たった2人で鳴らす音からはロックのダイナミズムがストレートに伝わってきた。とくに「ばける」「化けよ」から「血を嫌い肉を好む」の流れは圧巻だった。ドミコにとっては、そんなのどうでもいいことだろうけど、個人的には雨の野音にロックの可能性を見た気分になった。ブルース・スプリングスティーンやコールドプレイに限らず、ロックの現状を憂うミュージシャンは多いけど、新しい世代のバンドとともに、ロックは存在しつづけているのだ。



<<SETLIST>>
01.問題発生です
02.ペーパーロールスター
03.united pancake
04.旅行ごっこ
05.まどろまない
06.さなぎのなか
07.くじらの巣
08.ロースト・ビーチ・ベイベー
09.怪獣たちは
10.あたしぐらいは
11.ベッドルーム・シェイク・サマー
12.ばける
13.化けよ
14.猿犬蛙馬
15.びりびりしびれる
16.血を嫌い肉を好む
EN
17.深海旅行にて
18.こんなのおかしくない?


ドミコ「続・血を嫌い肉を好むTOUR」
2022年
5月21日(土)沖縄・Output
6月3日(金)京都・磔磔
6月4日(土)大阪・FANDANGO
6月9日(木)新潟・GOLDEN PIGS RED STAGE
6月10日(金)金沢・GOLD CREEK
6月16日(木)仙台・Rensa
6月18日(土)札幌・cube garden
6月19日(日)旭川・CASINO DRIVE
6月24日(金)神戸・MUSIC ZOO KOBE 太陽と虎
6月25日(土)広島・LIVE VANQUISH
6月26日(日)岡山・YEBISU YA PRO
7月1日(金)高松・DIME
7月3日(日)熊本・Django
7月4日(月)福岡・BEAT STATION
7月7日(木)名古屋・THE BOTTOM LINE
7月10日(日)東京・Spotify O-EAST
7月17日(日)大阪・BIGCAT

※ 最新のライブ情報は必ず公式サイトでご確認ください。
■ドミコ公式サイト:https://www.domico-music.com

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