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2022.03.17 upload

DOUBLE SIZE BEDROOM インタビュー
今はギターとベースとドラム、3人でできるものにしか興味がなくて。スリーピース最高という気持ちです
―― 但野正和

但野正和(vo&gt)、たむらゆうと(ba)、テス山本(dr)によるロックバンド、DOUBLE SIZE BEDROOMが2021年11月22日にミニアルバム『TIGER&TIGER&TIGER』をリリースした。このDOUBLE SIZE BEDROOMはもともと4人組バンドを目指して活動をスタートし、2019年2月にサポートメンバー鈴木太一(gt)の加入により念願の4人体制となったが、昨年3月に鈴木が脱退し再びスリーピースに。ダブサイ、どうなるか!? と思っていたところ、そんな心配を吹き飛ばすかのごとく彼らは鉄壁のバンド・トライアングルをフォーメーションし、心機一転、走り出していた。そうして完成した『TIGER&TIGER&TIGER』は新たなバンドの船出を宣言する作品に仕上がった。自らを鼓舞するロックンロールナンバーが無敵のパワーを生み出しているように、体制にこだわる彼らの姿はもうどこにもいない。このスリーピースで突き進むことを潔く音楽で鳴らしている。今回は、現在のDOUBLE SIZE BEDROOMに至るまでの変化と進化について、そして作品づくりについて但野正和にたっぷりと心境を語ってもらった。ちなみに明日2022年3月18日からは3日間連続で東京でのライブもあり。道外でのステージもこれから増えていくだろう。ぜひ、いまのダブサイを体感してほしい。

●取材・文=秋元美乃/森内淳

―― 昨年の12月は久しぶりに道外でのライブを行いましたね。

但野正和 はい。あの時はコロナの影響で色々中止になって以来、道外に行くのは約2年ぶりでしたね。本当に久しぶりでした。

―― その2年の間に、バンドとしての大きな変化もあって。

但野 はい。

―― 4人を目指して3人からスタートしたDOUBLE SIZE BEDROOMが、4人からまた3人に戻るという。

但野 そうですね。もちろん3人になろうと思って3人になったわけではなくて。アクシデントというか、サポートギターがやめてしまうっていう不本意なきっかけではあったんですけど。

―― あ、太一さんはサポートという形でしたね。

但野 サポートではあったけど、感覚的にはもうメンバーみたいな感じで思っていたので、サポートが終わるというよりは脱退、ぐらいの感覚でした。

―― 3人になり、音楽に向き合う気持ちの変化などはどうあらわれましたか?

但野 やっぱり最初は僕、本当に4人を目指してバンドをやってたし、4人になって「やっとこれで自分が理想としたものができる」とその時は思ってて。で、不本意な形でまた3人に戻ることになった。でも、いま現状の感じとして思うのは、バンドをスタートした3人の時は4人バンドを目指す3人だったんですけど、今はこの僕ら3人で理想だなというか、「これが完成だな」と思ってます。

―― そうなんですね。

但野 僕、けっこう気分でそうなるところもあるんですけど、これはわりとドシっとそう思えていて。正直言うと、ちょっとだけだけどやっぱり太一に遠慮してしまうところはあったのかも。やってくれてる、付き合ってもらってる、みたいな。それまでも「正式メンバーにならないか」みたいなタイミングもあったんですよ。でも、そうならなかったから、向こうとしては「付き合ってくれてるんだろうな」っていう感覚があったんで。

―― 踏み込めない部分があった、と。

但野 そこで僕も、盲目的にガッといけるタイプではなくて「太一はどう思ってるのかな」っていうのを気にしちゃうから。そういう気持ちもあったなかで、僕がちょうど35歳のこのタイミングで、 BLANKEY JET CITYをずっと見るという時期が訪れて。もう、ライブ映像を延々と繰り返し見ていたんです。あまりにもかっこよくて。そんな矢先、昨年のはじめに太一からサポートを辞めたいという話があって。で、その時に、瞬間的に何か新しくやりたい感覚がすぐ浮かんできたというか。

―― なるほど。

但野 ちょうどその頃、バンド的にもグルーヴを良くしていこうみたいな時期で。一体感がもっと欲しいし、スタジオにもアホみたいにめちゃめちゃ入りたいし、やっぱり練習したいんだよって。そういう話をリズム隊としてた。いま一番重要なのはそこだ、って。

―― バンドとして、なにか掴みにいこうとしていたんですね。

但野 そう。それもブランキーの影響なんですけど。もっとうねりを出していきたい、みたいな。あの……。これまでこういう話をする機会もしばらくなかったし、伝えてほしいことたくさんあるんですよ、僕。なのでどんどん話しちゃっていいですか?

―― もちろん。

但野 で、太一に「サポートを辞めたい」と言われた時、初めは僕ひとりの時だったんですよ。太一には太一で自分が一番やりたい需要なことがあって、それをやっていくには全てのエネルギーを一点に集中してそこに注ぎ込みたい、と。バンドのことを考えたらダブサイとしてはマイナス1になるし、また新しいギターを探すのか、3人で続けるのかとかわからないけれど、太一からその話を聞いて、ダブサイとしてではなく但野正和と鈴木太一の話として、僕もそうするべきだと思ったんですよね。引き止める理由がない。それはテスとたむらも納得で。

―― そうだったんですね。

但野 で、その翌日とかにたむらとテスと俺で話をしたんです。バンドの選択肢としたら「ギターを探す」「スリーピースでやる」「バンドを辞める」くらいじゃないですか。でもそこで、3人ともまだまだやるぞという気持ちだった。次のギターが見つかるまでとかじゃなく、スリーピースでいける気がする、みたいに思っちゃってて。いやもう、さっきも話したブランキーの影響というか、ベンジーの影響だと思うんですけど。ベンジーに憧れる男の子ってめちゃくちゃ多いと思うんですよ。ベンジーになりたい、みたいな感覚。そのぐらいの少年感でしたね。

―― ちょうどブランキーの映像を見ていた自分の感覚と合ったんですね。

但野 そうです。で、4人での残っているライブも全力で駆け抜けるのにプラスして、3人でもスタジオに入ったんです。3人になった途端にストップしたくなかったし、既存の曲をアレンジしたってパワーダウンになるしかない。だったら新曲だろうとなって、すぐに曲作りに入りました。それで、サビのメロディも何もない状況で、頭のリフ一発だけ持っていって作ったのが「電光石火の三重殺」。この曲ができたことで3人でいけるなって。無理するわけでもなく、自分がかっこいいと思ったものができたんです。

―― いきなりミュージックビデオが発表された曲ですね。

但野 はい。昨年の3月末に太一がラストのワンマンライブがあったんですけど、その先の活動について全く何も発表してなかったんですよ。新しくギターを探すとも、3人で続けるとも、何も言ってなかった。だからこのバンドを好きでいてくれてる人たちは不安だったかもしれない。でも、言葉じゃなくて一番説得力のあるものであっと言わせたかったというのがあって、太一がラストのワンマンが終わった瞬間に「電光石火の三重殺」のミュージックビデオをアップしたんです。

―― 次の動きは進めていた、と。

但野 自分たちのことを好きでいてくれる人のためだけに届けたいわけじゃもちろんないんですけど、ライブに来られなくても、部屋でひとりでロックを聴いている少年とか、そういう人にももちろん聞いてほしいし。ダブサイ、これからどうなるんだろうと心配していた人たちにも、バーンて底抜けなロックンロールを投げられたらそれが一番だなって思って。

―― それでこの曲はMV先行だったんですね。

但野 そう。「俺たちはこの形」って。それで、会場でミュージックビデオを発表するんじゃなくて、ライブが終わってすぐ、YouTubeにアップしておくという方法をとりました。もちろんライブでも新曲の話はしなかったから、徐々に気づいていく、という感じで。

―― 会場では流さなかったんですね。

但野 会場では終演後のBGMの1曲目に流してもらったんですけど、4人のラストライブが終わったばかりだから、どうだったんですかね。気づくか気づかないか。少し時間をおいて、新しいMVのことはツイートもしましたけど。

―― そういうことをしてたんですね。

但野 そうそう。あと、今のダブサイはまったく違うものだと思っていて。

―― じゃあ、3人に戻ったんじゃなく、新たなダブサイになったという感覚なんですね。

但野 うん。まさにそう思ってもらえたら。

―― 最初にダブサイを始めるときに、「自分にとってダブサイは初期衝動。 一番原点で、音楽をかっこいいと思ったロックの形の曲。それが今の自分がやるべきこと」という話をしてくれて。その原点を取り戻すじゃないけど、新しく更新したという感じですね。

但野 いや、もうまさにそうですね。確かに始めた時からそんなことを言ってましたね。言葉上じゃ何も変わらなくて。気持ち的には何か、あの頃よりもむしろ今の方が強くそう思っているというか。ダブサイを始めて今が一番、クリアな感じというか……

―― 前が見えてる感じ?

但野 そうすね。こうやるものっていうのがズドンと1本きた気はしていて。いつの時代もそう思うもんなのかもしれないですけどね。一番初めのスリーピースの時に感じたもどかしさみたいなものもないし。

―― 一時期は自分でキーボードを弾いてみたりとかもありましたよね。

但野 うん。そういう形もあったけど、今はギターとベースとドラムしか興味ないです。3人でできるものにしか興味がなくて、あとは何にもいらないなって思ってるんですよね。活動していく中で、前は正直、もっと聴いてもらいたいっていう気持ちが何か間違った方に歪んじゃって。こうした方が、とか、余計な方にいっちゃったりもして。やっぱり弱いんで。でもそういうのが一切なくなった。今は何が流行ってるとか、そういうのを気にするタイプではないですけど、迷いみたいなものも一切なくなって。なんていうか、うまく言えないですけど。

―― もしかしたら、前は意識しないようにとは思いつつも、ファンの期待に応えなきゃとか、そういう気持ちもあったような気はするんですよね。

但野 ああ、正直そうですね。

―― だけど、多分いまはそういうことも振り切れて、バンドだけを見られてる。

但野 そうですね。僕自身の根本は変わらないけど、ライブをどういうふうにやるかっていうやり方というか、感覚はすごい変わっちゃってるんですよ。自分の中で。音楽として、どれだけ3人でひとつのうねりを出せるか。それを見てもらったら絶対かっこいいだろうっていうのがあって。意図したものではなくて、それがいま、僕が一番かっこいいと思ってるものなんですよね。

―― はい。

但野 前までだったら多分、こんなふうなやり方で大丈夫かな? ダブサイを好きでいてくれる人にも伝わるかな?って、思ったと思う。でもいまはそういう心配は一切なくて、むしろ例えば4人時代の僕らのステージで好きになってくれた人が、「新しいかっこいいものに出会えるじゃん」と思ってもらえるかなと、そういう感覚でいますね。

―― 「三虎」の歌詞にもありますけど、たぶん、どこかの過程で但野くんが自分で持っている、自分の大事な1着に気づいたんじゃないですかね? それを見せておけば大丈夫、という。

但野 なるほど、そうですね。

―― だから今回のアルバム、すごく潔いアルバムができたなと思って聴きました。

但野 ありがとうございます。まずはもうこの1枚って感じのアルバムにはなりました。

―― 但野さんは、ギタリストとしては鍛錬はしたんですか?

但野 いやー。4人時代にさぼってしまったので、改めて頑張りました。でも、すごい楽しくなりましたね。いまギターがすごく好きです。新しいギターも買って。グレッチを買うかめっちゃ悩みましたね(笑)。

―― バンドを始めた少年みたいですね(笑)。

但野 本当にそうですよ。2人にめっちゃ見せるみたいな感じ(笑)。

―― 改めて、ニューアルバム『TIGER&TIGER&TIGER』の手応えは?

但野 今のうちらを知ってもらうには、まさにぴったりというものって思ってます。とにかくこの3人で、目の前に集中して作れたし、たむらもテスも2人とも全くモチベーションも落ちなかったし。スリーピースバンド最高っていう気持ちです。

―― 但野さんの覚悟もみえますね。あと、相変わらずものづくりのこだわりがジャケットまわりにも出てますね。

但野 僕らいまだに配信をやってなくて。だから余計に持っていてテンションの上がるものを作りたいんですよね。それで、前はマンガ付きを作ったし、次は何にしようかなと思った時に、7インチサイズのやつで、両A面シングルにしようって。盤はCDなんですけど、ジャケットの表にも裏にも帯が付いてて、というのを前回の2曲入りシングルで作りました。

―― 力作ですね。

但野 で、今回のアルバムは、A2サイズのポスターを折り畳んでジャケットにして、広げたらジャケットと違うデザインが出てきて裏面がポスターになる。これは川本真琴のファーストの形なんですけど。川本真琴はCDサイズなんですけどね。それをダブサイはほぼ7インチサイズで作って。

―― なるほど(笑)。

但野 これ、いつか僕やってみたかったんすよ(笑)。広げたらポスターになるでかいジャケット。

―― いろいろ面白い工夫をしていますね。

但野 2曲入りシングルの方の元アイデアは、札幌のずっと好きなバンド、BBジャンキーの作品なんですけど。両方とも憧れてて、いまやりたいと思って。

―― でも、ものを作るのっていいですよね。

但野 はい。やっぱり好きなんですよね。この先、配信とかも考えるのかもしれないけど、買ってくれた人が手元に持ってくれてる感じが好きなんですよね。もちろん、僕もサブスクで音楽は聴いたりします。便利だし。でもブランキーも配信ないんですよ。だから見つけては1枚1枚、買って揃え始めてます。見つけて手にした時の感動、はんぱないんですよ。

―― でも本当にいいアルバムができましたね。ものすごく潔いアルバムだし、ゴリゴリッとした曲たちの中で、例えば「後年ジャンプ」のような但野くん節の曲もあるし。

但野 ありがとうございます。

―― ところで、髪の毛はなんで切ったんですか?

但野 軽い気持ちだったんすよ。本当に簡単な気持ちで、もう暑いから切ろうかな、みたいな。なんか、だんだん髪型とかを気にしなくなってきて。容姿をちょっと整えておこうというのも大事だと思うんすけど、少し無頓着になってきた自分がちょっと嬉しくて。

―― なるほど、暑いから切る、みたいな感じだったんですね。いまのバンド感に合ってますね。

但野 嬉しいっす。

―― この『TIGER&TIGER&TIGER』というのは自分たちのことですよね。

但野 そうです。ハードルの高さはあるんですけど。もともとタイトルじゃなくて、「三虎」ができた時にサウンドトラックでサントラ、それをもじって思いついて、このタイトルを使いたいと思って。歌詞でも<虎になろう>って言ってますけど、それに見合う俺たちの演奏でもありたいというか。このスリーピースもきっちり3人で正三角形で、ベースドラムギター、全部が同じように出てて。

―― バンドのトライアングルの形ですね。

但野 そう。それは2人とも意識してて、やっぱり今回のアルバムでかなりたむらのベースもゴリゴリしてるし。例えばギターが鳴っていなくても、ベースとドラムが鳴ってるというか。

―― じゃあレコーディングもシンプルに行った感じですか?

但野 そうですね。あまりアレンジとかに頼らず。スキル面的な意味では録り直すというのはやったんですけど、アレンジ的な意味では極力少なくしたいっていう気持ちで、無駄にバックギターを重ねるとかもしたくなかったので。3人で再現できるもの。まさにライブ、みたいな。ギターを重ねなくても薄くならないようなリズム隊でいってほしい、というわがままを言わせてもらいました。ブランキーの3人のような、個々の楽器、人間味が出る感じというか。だから本当にファーストとしての挑戦って感じなんですよね、僕のイメージとしては。とにかく“三”、トリオであることにこだわりました。いや、本当に BLANKEY JET CITYに感謝ですね。

―― 3人のかっこよさが詰まった1枚も完成し、ライブも増えてきたのでこれからがまた楽しみですね。

但野 今回はそのかっこよさに全振りしてみたかったんです。なんか、ちょっと覆面とか面白いって思われるかもしれないけど、かっこよすぎるものってダサくなることもあると思うんですよ。かっこよすぎてダサい、みたいな。もちろん、かっこよくてダサくないものもあるんですよ。例えばニルヴァーナってかっこいいママなんですよ。でも、かっこよくてダサいものの方がかっこいい時もあるっていうか。パンクってちょっと何かそういう面がある気がして。それがいいんですよね。それくらい思い切りよくいきたいです。

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INFORMATION


ミニアルバム『TIGER&TIGER&TIGER』(ライブ会場&通販限定)
2021年11月22日リリース
収録曲: 01.三虎 02.電光石火の三重殺 03.7拍子 04.環状エレジー 05.××のマーチ 06.後年ジャンプ 07.くれなずめ 08.もしも昨日に
販売サイト:https://dsbroom.base.shop/


ライブ情報は公式サイトで確認してください。
https://twitter.com/dsbedroom

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