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2021.02.26 upload

ザ・クロマニヨンズ ライブレビュー
「ザ・クロマニヨンズ MUD SHAKES 2021」
2021年2月20日(土) 東京ガーデンシアター

●撮影=柴田恵理 文=森内淳

2021年2月20日土曜日、東京ガーデンシアターでザ・クロマニヨンズのライブ「MUD SHAKES 2021」がおこなわれた。例年50本以上ツアーをやっているクロマニヨンズだが、コロナ禍で(今のところ)ライブは今回だけ。つまり一発勝負。しかも会場のキャパシティは8千人。コロナ禍で席数を半分以下に制限しているとはいえ、ライブハウスとホールを行き来する例年のツアーとは勝手が違う。それに加え有観客で生配信という要素も加わる。一方、オーディエンスもコロナ禍ということで大声を出して騒ぐわけにはいかない。一緒に歌うこともできない。ただ拍手のみのリアクション。リサイタルならわかるが、これはロックンロールのライブでありクロマニヨンズのライブなのだ。久しぶりにクロマニヨンズのライブが見られる喜びとどんなライブになるのかわからない戸惑いが入り混じった空気。それを1曲目の「VIVA! 自由!!」が軽く吹き飛ばした。



甲本ヒロト(vo)、真島昌利(gt)、小林勝(ba)、桐田勝治(dr) の4人が出す分厚いロックンロールは圧倒的だった。なんだろう、この音の一体感は。クロマニヨンズのライブをずっと見てきたが、この日の音の存在感はずば抜けていた。これが一発勝負にかける熱量なのか、集中力なのか、緊張感なのか。「東京ガーデンシアターは音がいい」という話は聞いていた。それも奏功しているのだろうけど、そういう問題じゃないような気がするのだ。「暴動チャイル(BO CHILE)」「浅葱色」とライブが進行するにつれ、(歌も含めた)サウンドはさらに揺るぎないものへと変わっていった。「to be a rock and not to roll」(揺らぐことのないひとつの岩)とはレッド・ツェッペリンの「天国への階段」の一節だが、この日の彼らの演奏はまさにその一節を体現しているかのようだった。「新オオカミロック」が披露され「カーセイダーZ」の演奏が終わる頃には「今まで自分が見たクロマニヨンズのライブのなかでベストだ」と確信するに至った。終演後のツイッターに「最高でした」としか書けなかったのは、どんな言葉もこの音楽を前にしては無意味だと思ったからだ。「ライブは一期一会」とはブルース・スプリングスティーンの言葉だが、いろんな偶然(それは決していい偶然ではないけれど)が重なり合って生み出された時間のように思えた。過去のライブを引き合いに出せば、「奇跡のようなライブ」といわれているポール・マッカートニーの国技館のライブを見たときの感覚に近い。それはぼくだけではなく、会場や生配信で、この時間を共有していることの喜びをみんなが抱いていたのではないか



『MUD SHAKES』のA面最後の曲「ドンパンロック」を演奏し終わって、「クレーンゲーム」「生きる」「ペテン師ロック」の3曲を披露。このパートではあまり演奏しない曲が披露されることもあるが、今回はすべてシングル曲。前作『PUNCH』のシングル曲「クレーンゲーム」はコロナのため途中で中止になった前ツアーを見られなかったファンにとっては嬉しい選曲だったはずだ。やり慣れた過去曲になると地力も加わり、ライブはさらに揺るぎないものになる。シングル曲の連投のなか、観客は自分を抑えるのに大変だったと思う。会場中に心のブレーキが響いているようだった(ぼくには聞こえた)。そこをなんとか拍手にとどめておく。爆発する感情をなんとか心のなかに収めたと思ったら、ライブは『MUD SHAKES』のB面へ。B面は楽しい曲が次々に出てくる。プリミティブなロックンロールから多種多様な方向へ楽曲が広がっていく、まさにクロマニヨンズのもうひとつの頂天だ。甲本は「空き家」の前に「ここからテンポは落ちるけど世の中は数字ではかれるものではありません」とMC。これらの楽曲は心の奥底が爆裂するロックンロールなのだ。とくに「妖怪山エレキ」「ふみきりうどん」は秀逸。ポップとシュールと空想と現実が混じり合い、クロマニヨンズにしか表現できない世界が現出する。「ふみきりうどん」が終わったときに甲本が「いいアルバムだなー」と思わずつぶやいていたが、『MUD SHAKES』はロックンロールをいろんな角度で照らした、クロマニヨンズらしい、いい作品だ。



「ふみきりうどん」が終わって「今日はお祭りにしましょう」というMCにつづきシングル「暴動チャイルド(BO CHILE)」のカップリング曲「東京ブキズキ」が披露された。つづいて「エルビス(仮)」「どん底」「突撃ロック」「タリホー」がまるでメドレーのように演奏される。爆裂ロックンロールで支配された会場は、コロナ禍のまどろっこしいマナーやルールによって積み上げられた重たいレンガの壁が一気に吹っ飛んでいくような、そんな解放感で会場が満たされた。『MUD SHAKES』B面ラストの「かまわないでくださいブルース」で本編は終了。通常ならここで一旦ステージ脇へと引っ込んでアンコールで再登場するのだが4人はそのままステージに残る。「一回引っ込もうと思ったけど面倒くせえなあ。引っ込んでもやることないし」というヒロトのMCで、そのままアンコールへ突入。「おまけやります。今年最初のライブ、楽しかった」というMCにつづき、「エイトビート」「ギリギリガガンガン」「ナンバーワン野郎!」を演奏。(今のところ)たった一夜限りのツアーは終了した。



巣ごもりのなか、不必要な情報まで大量に入り込んでくる今日この頃、それが余計に閉塞感を呼びこむんだけれど、そういうものの対極にロックンロールのライブはあるのではないか。音を体感したその瞬間に心が動く。そこにこそ自分が求める真実があるんじゃないか。今のぼくらにはもっとロックンロールが必要だ。そんなことを思いながら会場をあとにした。こんなテキストを書いておいて、矛盾しているのだが、インターネットから入り込んでくるいろんな言葉に惑わされすぎなんじゃないか、と思った。「かまわないでくださいブルース」を、今度はぼくらが鳴らす番なのだ。




「ザ・クロマニヨンズ MUD SHAKES 2021」
2021年2月20日(土) 東京ガーデンシアター
<<SETLIST>>
01.VIVA! 自由!!
02.暴動チャイルド(BO CHILE)
03.浅葱色
04.新オオカミロック
05.カーセイダーZ
06.ドンパンロック
07.クレーンゲーム
08.生きる
09.ペテン師ロック
10.妖怪山エレキ
11.メタリックサマー
12.空き家
13.新人
14.ふみきりうどん
15.東京ブキズキ
16.エルビス(仮)
17.どん底
18.突撃ロック
19.タリホー
20.かまわないでくださいブルース
21.エイトビート
22.ギリギリガガンガン
23.ナンバーワン野郎!

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INFORMATION

ザ・クロマニヨンズ 「SIX KICKS ROCK&ROLL」特設サイトOPEN


2021年8月25日(水)20thシングル「ドライブ GO!」を皮切りに、2022年1月19日まで毎月1枚シングル(7inchアナログ&CD)が発売されるシングル6ヵ月連続リリース企画「SIX KICKS ROCK&ROLL」の特設サイトがオープン。

ザ・クロマニヨンズ「SIX KICKS ROCK&ROLL」特設サイト:
https://www.cro-magnons.net/sixkicks-rock-roll/
高橋ヨシオ インスタグラム:
takahashiyoshio_thecromagnons



LIVE DVD『ザ・クロマニヨンズ ライブ!MUD SHAKES 2021』
2021年6月30日リリース
初回限定盤特典:DVD+リストバンド&缶バッジ2個+メンバー使用モデル同型ピック2個付
DISC1(ザ・クロマニヨンズ MUD SHAKES 2021)収録曲:01.VIVA! 自由‼ 02.暴動チャイル(BO CHILE) 03.浅葱色 04.新オオカミロック 05.カーセイダーZ 06.ドンパンロック 07.クレーンゲーム 08.生きる 09.ペテン師ロック 10.妖怪山エレキ 11.メタリックサマー 12.空き家 13.新人 14.ふみきりうどん 15.東京ブキズキ 16.エルビス(仮) 17.どん底 18.突撃ロック 19.タリホー 20.かまわないでくださいブルース 21.エイトビート 22.ギリギリガガンガン 23.ナンバーワン野郎!
DISC2(ザ・クロマニヨンズ MUD SHAKES 全曲配信ライブ)収録曲:01.VIVA! 自由!! 02.暴動チャイル(BO CHILE) 03.浅葱色 04.新オオカミロック 05.カーセイダーZ 06.ドンパンロック 07.妖怪山エレキ 08.メタリックサマー 09.空き家 10.新人 11.ふみきりうどん 12.かまわないでくださいブルース 13.東京ブキズキ 14.クロマニヨン・ストンプ


ザ・クロマニヨンズ ライブ!MUD SHAKES 2021 爆音上映会
チケット:前売り/1,500円(ドリンク別): 当日/1,800円(ドリンク別)
参加者特典:2月20日「ザ・クロマニヨンズ MUD SHAKES 2021」公演のライブスタッフ用ラミネートパス/ライブグッズ販売/LIVE DVD「ザ・クロマニヨンズ ライブ!MUD SHAKES 2021」当日会場限定予約特典
※今回の上映内容はDVD(DISC1)収録の「ザ・クロマニヨンズ MUD SHAKES 2021」になります。
コロナ禍のため、参加予定の方は必ず公式サイトで最新情報をご確認ください。

6月18日(金)
群馬県 高崎club FLEEZ 18:00/18:30
長野県 長野CLUB JUNK BOX 18:30/19:00
愛媛県 松山サロンキティ 18:00/18:30
 
6月19日(土)
北海道 BESSIE HALL 14:30/15:00・17:30/18:00
秋田県 秋田Club SWINDLE 16:00/16:30・19:00/19:30
福島県 郡山 HIP SHOT JAPAN 18:00/18:30
滋賀県 滋賀 U☆STONE 15:30/16:00
 
6月20日(日)
青森県 青森Quarter 16:00/16:30
岩手県 KLUB COUNTER ACTION 宮古 17:30/18:00
山梨県 甲府CONVICTION 14:40/15:00・17:10/17:30
和歌山県 和歌山SHELTER 15:30/16:00
鹿児島県 鹿児島 CAPARVOホール 12:30/13:00・16:30/17:00
沖縄県 ミュージックタウン音市場 13:30/14:00・17:30/18:00
 
6月23日(水)
大阪府 なんばHatch 17:45/18:30

6月25日(金)
鳥取県 米子laughs 19:00/19:30
岡山県 岡山CRAZYMAMA KINGDOM 18:00/18:30
山口県 周南RISING HALL  18:00/18:30
高知県 高知X-pt. 18:00/18:30
 
6月26日(土)
福島県 club SONIC iwaki 18:30/19:00
広島県 広島クラブクアトロ 13:30/14:00・18:00/18:30
徳島県 徳島club GRINDHOUSE 18:00/18:30
佐賀県 佐賀GEILS 13:30/14:00・17:30/18:00

6月27日(日)
静岡県 Live House浜松 窓枠 13:00/13:30・16:30/17:00
愛知県 ボトムライン 13:00/13:30・16:30/17:00
広島県 広島クラブクアトロ 13:30/14:00・16:30/17:00
熊本県 熊本B.9 V1 12:30/13:00・16:30/17:00


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ザ・クロマニヨンズ『MUD SHAKES』
2020年12月2日(水)リリース
収録曲:1. VIVA! 自由!! 2. 暴動チャイル(BO CHILE) 3. 浅葱色 4. 新オオカミロック 5. カーセイダーZ 6. ドンパンロック 7. 妖怪山エレキ 8. メタリックサマー 9. 空き家 10. 新人 11. ふみきりうどん 12. かまわないでくださいブルース


※ LIVE INFORMATION は公式サイトでご確認ください。


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