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2019.12.11 upload

THE BOYS&GIRLS インタビュー
このツアーは自分をどん底に落としたツアーだし、自分を掬い上げたツアーでもある。12月のファイナルは、誰かの人生に大きな影響を与えられるような日にできる気がしてるんですよ
――ワタナベシンゴ

2011年の結成から8年、多くの一歩を共にしてきたバンドメンバーから今年3月にギター、ベース、ドラムの3人が脱退。実質、ワタナベシンゴ(歌)のひとりバンドとなったTHE BOYS&GIRLS。しかしワタナベは翌・4月には“新体制”として、自身が声をかけて集めたというサポートメンバーを迎えてのライブを行い、5月に新曲「陽炎」を配信リリース、6月からは「明転」と題した全国対バンツアーに突入した。各地で空きっ腹に酒、-KARMA-、Hump Back、ハルカミライ、ircle、2、ハンブレッダーズ、My Hair is Badといった対バンとの一夜一夜を経て、いよいよ12/13(金)札幌ペニーレーン24でのワンマンライブを残すのみとなった。タイトルに付けられた“明転”とはよく舞台や照明関係でつかわれる言葉で、舞台が明るい状態のまま場面転換をする、という意味がある。新たな一歩を踏み出すTHE BOYS&GIRLSがどうなっていくのか、もしかしたらライブという場を通した公開ドキュメンタリーのようなツアーになっているのではないか。どうしてもファイナル前に今のボイガルが知りたくなり、ワタナベシンゴに話を訊いた。

●取材・文=秋元美乃/森内淳

―― ツアーも残りあと1本というところまできましたね。

ワタナベシンゴ あっという間でしたね。月に1~2本のペースだったから、もっとゆっくりに感じるかと思ってたんですけど、体感では1ヵ月で全部を回ってきたみたいな。ツアー以外の日も濃い日々が続いていたからそう感じるのかもしれないです。ゆっくり回ったツアーだったのに、駆け足のような毎日でしたね。

―― ツアーのスタートは(2019年)6月からでしたもんね。

ワタナベ ファイナルまで約半年。すごいぎゅっとしてる実感がありますね。

―― 3月のメンバー脱退を経て新体制でのツアーということで、大切な一歩だったかと思うのですが、いま振り返るとどんな始まりになりましたか?

ワタナベ 始まった時は僕のなかで無敵状態だったんですよ。少し冷たい言い方をすると「なんて思われてもいいや」という気持ちで始めたんです。「やりたいからやるんだ」って。ある種、初めてバンドを始めた時のような、誰に頼まれたわけでもないし誰のためにやるでもなく。ただ「バンドやりてえな」って。そんな気持ちで新体制のスタートをきれてたと思うんですよね。あれ、なんだったんだろう? 言っても8年間同じメンバーでやり続けてきたことがなくなって、絶対にサウンドも変わるしライブも変わるし。でも「やってやる」って無敵な気持ちでした。

―― 例えば、もっと体制が整ってから動き出すこともできたはずですよね。でもサポートメンバーという形でスタートしたのは、ボイガルの歩みを止めたくなかったとか、何か思うところがあったんでしょうか?

ワタナベ そうですね。ボイガルを止めたくないなというところですかね。止めたくないというか、今までと変わらずに「次はこういうことをやろう」という構想が出てきてたんで。……変わらなくはないけど、3月でオリジナルメンバーが脱退するって考えた時に、次は新しい曲を配信しよう、それからツアーを回ろう、っていう構想はあったので。メンバー編成は変わるけど、次を考えた結果、こういう活動になったっていう。

―― そうなんですね。

ワタナベ もちろん、めちゃめちゃデカい出来事だったんですよ。3人がやめるって。だけど、いったん休む、というタイプではないかな、と。

―― シンゴさん的には、今まで通り粛々とボイガルとしての活動を進めてきた、という感じなんですね。

ワタナベ かっこよく言うとそういう感じですね(笑)。正直、冷静ではいられてないんですけど、冷静に考えてるぞって思い込みながら。「どうしようどうしよう」って思いながらも「いや大丈夫、大丈夫」って。

―― ファンのみんなを心配させたくない、というような思いもあったのでは?

ワタナベ あったんですかね? でも、そこまで優しくないですからね。

―― 実際、サポートを迎えた新体制でのライブがスタートして、これまでとの違いを自分の中ではどう消化していったんですか?

ワタナベ 消化できてるのかはわからないですけど。サポートメンバーを僕の色に染めないようにしようと思って。サポートなんだけど、一緒にやってくれる仲間としてめちゃくちゃ助けられてます。単純に彼らがいるからライブができる、ということではなくて。例えば、練習とかでも曲のこととか、僕に指図してくるんですよ。「あの曲やらないんですか?」とか。いやいや、決めんのは俺だよと(笑)。そういうのがすごく嬉しくて。やっぱり音が全然変わるから、過去と比べて大変ではあるんですよ。でも、僕の言うことに合わせて100%やってくれというよりは、もっとグシャグシャでいい。グシャグシャになってでもステージに立って、イントロからアウトロまで曲を終わらせる。「これが今のTHE BOYS&GIRLSだ」っていうふうにやれた方がいいなと。そう僕が思って、彼らも思って、お客さんにも思ってもらえたら最高だなって。

―― それはリスクとは思わなかった?

ワタナベ そうですね、リスクとは思わなかったですけど、だんだんとツアーが進んでいくにつれて、「今が最高」と思いながらもう少し先のことを考えるようになって。その時に、このやり方でいつまでもできないなと思っちゃったんですよね。ふと。一人でいる時にそういう、ぼんやりと先のことを考えるようになって、練習やライブに影響が出始めたことがあったんですよ。8月くらいかな。

―― そこまで色々引き受けても止まらずに動き出したのは、例えばここで始めないといつ動き出せるかわからない、みたいな感情はあったんでしょうか?

ワタナベ いや、それはなかったかな。バンドを始めた時から俺のバンドだと思ってやってきてるし、“この4人じゃなきゃ”とは思ってなかったので。冷たい言い方に聞こえるかもしれないけど、でも、ボイガルを始めた時は俺がそういう気持ちでいないとダメだと思ってたので。もちろん、“このメンバーじゃなきゃ”っていうバンドもたくさんいるし、かっこいいと思うし、正解不正解はないですけど。でも僕はそうじゃなかった。やめた3人は大好きな友達ですけど。

―― なるほど。じゃあ一人で引っ張っていく自信はあったんですね。

ワタナベ はい。自信はありましたね。というか、3人がやめると決まった時点で、ボイガルじゃない新しいバンドをやる自信はなかったですね。

―― それくらい、ボイガルとシンゴさんはイコールになっているんですね。

ワタナベ そうだと思います。かっこつけた言い方になっちゃうけど、ボイガルが僕を残してくれたというか。もちろん、僕がボイガルを続けたいという気持ちもあるんですけど。うまく言葉で言えないけど。

―― いえいえ、すごく伝わります。さっき、先のことを考えすぎたという話がありましたが、具体的にはどんなことが頭によぎっていたんでしょう?

ワタナベ 夏くらいから、他のバンドをみて「勝てない」って感じることが増えてしまったんです。バンド感を見せつけられてというか。そう思うこと自体、メンバーに申し訳ないことではあるんですけど、俺はこのやり方でどこまでやれるかな、って。良いライブ見るとすぐ拗ねちゃうんで、僕。でも、どこかで自分の状況を棚に上げて、自分で自分を慰めることもあって。で、さっきの話につながるんですけど。このツアーが終わると今年も終わって、2020年はどうなるんだろう、と。今回のツアーって、いろいろ考慮しても月に1~2本しか組めなかった。

―― 物理的な問題があったんですね。

ワタナベ はい。今はこれでよかったと思ってるんですけど、来年はこのやり方でいいのかな、とか。俺の思うバンドって、どんな感じだっけ? と。

―― メンバーを固定しようという考えは?

ワタナベ そういうのも込みで先のことを考えちゃったんですよね。今は、その(考える)状態を超えられたんですけど。夏の一時期は本当に先が見えなくて、実はちょっと(バンドを)やめようかな、休もうかな、とも思ったんです。そんなこと思ったのは初めてで。メンバーがやめるって決まった時にも思わなかったのに。

―― そうなんですか。

ワタナベ でもこの間、朝方に急にいきなり超えましたね。ちょうどマネージャーたちと来年の打ち合わせをする日に、「しばらく休むってどうですかね?」って話をして、周りが凍りつく、みたいな。でも、その夜、YouTubeを見たり対バンのみんなの音楽を聴いたりしていたら、朝方4時くらいにハッと超えたんです。メンバーはどうなるかわからないけど、2020年のビジョンは見えたんです。

―― じゃあこのツアーは、シンゴさんがシンゴさん自身を焚きつけるようなツアーになってるんですね。

ワタナベ なってますね。自分をどん底に落としたツアーだし、自分を掬い上げたツアーでもあるし。

―― 今の話をきいて、今回のツアーがなぜ対バンツアーだったのかがわかりました。本当なら、もっと新体制が形になってから組んでもいいようなメンツばかりですよね。

ワタナベ そうですね。もう本当にやるしかないってことを頭からつま先まで思いたかったら、怪物とやりたかった。「最高なバンドたちが対バンとして出てくれていいでしょ?」ということじゃなくて。でも、今思えばみんなよく出てくれたなあ。本当に嬉しかった。

―― それはこれまでのボイガルへの評価と期待ですよね。

ワタナベ これまでの物語があったからよかったです。“オファーを受けてくれた=シンゴ、まじで頼むぞ”っていうエールなのかな、と受け取ってやることができましたね。

―― いろいろ考えると、“明転”というツアータイトルが本当にぴったりですね。明転=明るい中で舞台転換するという意味で、このツアーはステージ上でボイガルがどうなっていくのかを公開しているような。

ワタナベ いいタイトルが付けられましたね。今年の2月に舞台(『みみばしる』)に出させてもらって、その時に知った言葉だったんです。暗転する、明転するみたいなやりとりがあって。それがバンドにとっても自分にとってもすごくしっくりくる言葉で。

―― “暗転”と名付けた弾き語りツアーも行いましたが、バンドのツアーと同じ時期に弾き語りツアーをやるのは初めて?

ワタナベ 初めてです。

―― 両方のツアーを同時開催したのはなぜでしょうか?

ワタナベ 明転ツアーをやろうと思った時に、暗転ツアーもやりたいな、と。暗転があって明転がある、というのは僕が舞台で学んだことでもあるので、今回のツアーもそういうものにしたかったんです。ひとつのモチベーションとしても。あと、バンドでは行けないけど弾き語りなら行ける、という箇所もあったので。暗転を回ってる時は、明転ツアーがあってよかったなと思いながら回ってましたね。明転を回っている時に、僕ひとりの暗転ツアーのことを考えることはなかったけれど。

―― 弾き語りのアルバム『愛葉集』も発表しましたが、ステージではとくに歌が届く実感も強く感じたのでは?

ワタナベ そうですね。弾き語りがすごく楽しくなって。あと歌い方が少し変わったんですけど、それは暗転があったからなんですよね。届かせ方というか、そういうのが前よりわかった気がします。音がでかいのも好きだけど、爆音じゃ満足できないというか、ちゃんと歌を届けたいというか、そういうことも思うようになりました。メンバーのおかげで歌に集中できてるし。そういえばいつだったかな? 「ビーアライブ」っていう曲があるんですけど、ライブであまりにも良すぎて、ドラムを褒めまくるという日があったんですよ。あ、福岡公演だ。その日のリハはあまりよくなかったんですけど、でも、本番になったらすごくよくて。「これだよ! これがビーアライブだよ!」って。曲が終わって3~4分、ポルノ(dr)を褒めまくってましたね(笑)。

―― そんなことが(笑)。

ワタナベ なんかいいなあって思いましたね。今この瞬間に変わっていってるところをお客さんにも見せられたというか。このツアーもいろいろあって、台風でベースが間に合わなくて僕がベースボーカルをやったりとか。もうやりたくないですけど(笑)。ツアーとメンバーのおかげで、いい日々になっています。

―― 次はいよいよファイナルの札幌ワンマンですね。

ワタナベ やるっきゃないですね。お客さんがひとりでもいてくれるならいい、という気持ちもあるけれど、でもその場で聴ける最大人数には聴いてもらいたい。100人入るライブハウスなら、100人には直接届けられるわけだし。それなら100人に届けたいし。ペニーレーンは550人入るんですけど、550人に届けたい。ひとりでも多く。

―― ペニーレーンを会場に選んだのは、やはり思い入れが?

ワタナベ 去年の11月に初めてペニーレーンでワンマンをやって、その後に話し合って3人の脱退が決まって。で、最後にもう一度ペニーレーンでやろうといって3月にやった時は速攻で売れ切れたんです。その後のワンマンですからね。俺はボイガルを続けることを決めたから、そのツアーのファイナルはもうペニーレーンでやらなきゃ男じゃないなと。全国見てもいないと思いますよ、1年で3回、ペニーレーンでワンマンをやってるバンド。

―― ボイガルはいつも次を見せてくれるバンドなので、そうやって挑んでいく姿はすごく嬉しいです。

ワタナベ そうなんですよ、ずっと次を見せてきたのに、去年の11月だけは次を見せられなかった。それもあって、またペニーレーンでやりたい。絶対いいライブになると思うんだよな。

―― 2020年のボイガルの片鱗が見えるかもしれないですね。

ワタナベ すごく(ライブ)いいのになあ。即完しなかったな。今年の3月に来てくれたみんな、どこ行った? 3人がいないから? え? 俺そんな人気ない?

―― ははははは。

ワタナベ ボーカルが一番人気あると思ってたのに(笑)。

―― バンドマジックですね(笑)。

ワタナベ それも込みで、いろいろわかりましたね(笑)。今、すごく楽しめてます。この12月のファイナルは、誰かの人生に大きな影響を与えられるような日にできる気がしてるんですよ。俺にも、誰かの背中を押せるかもって。今までそんなこと思ったこともないけれど、今、ちょっとそう思ってます。なので、背中を押してくれる人を探してる人がいたら、俺に押させてほしい。

―― ワンマンも2020年のボイガルも楽しみですね。

ワタナベ 仕上げていきます。あと、冬の北海道で見るボイガルはこんなにいいんだってことも体感してほしいですね。レコーディングもしてるので、音源もどうなるか、楽しみにしていてください。

© 2019 DONUT

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INFORMATION



THE BOYS&GIRLS「陽炎」
2019年5月22日(水)配信Release
01陽炎



ワタナベシンゴ弾き語りCD『愛葉集』
2019年7月5日(金)会場限定Release
1.赤い靴履いてた男の子/2.私の部屋/3.朝顔と夏/4.今だ!/5.窮屈な唾/6.ゆーちゃん/7.ナトリウムランプ/8.思い馳せながら/9.フレンズ君とロマンズ君/10.カーテンコール/11.ミスターラッキーオールド


※ LIVE INFORMATION は公式サイトでご確認ください。


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