DONUT

The Birthday インタビュー
共有ってのは“共鳴”だと思ったんだわ。今、最高潮じゃないかな
――チバユウスケ
その辺の阿吽は高まっている気はしますね
――フジイケンジ

The Birthdayが3月20日にニューアルバム『VIVIAN KILLERS』をリリースした。10作目のオリジナルアルバムとなる本作、一聴してまずはそのみずみずしさにグッとくる。リフもビートもメロディも、いわばThe Birthday印のごとく重厚でソリッドかつ艶あるサウンドの大海原だが、そこにかよう血潮の脈打つ感覚というか生命感が凄まじいのだ。前作のツアーでバンド史上最大数となる45本のツアーを回ったこともあり、そのパワーもすべて乗っかっているのかもしれない。歌声からはパンクの衝動が、サウンドからはロックンロールの衝動が漲っている。音楽への愛、そして、世界を消し去ってくれと嘆きながらも明日、未来への希望を照らすロックンロール。チバユウスケが描く言葉にはハッとするが、フジイケンジ、ヒライハルキ、クハラカズユキが繰り出すサウンド&リズムの雄弁さもしかり。いまこの4人がThe Birthdayをとおして響かせるロマンが鳴り止まない。ロックンロール・バンドの真骨頂をみせる本作についてチバとフジイに訊いた。

―― 去年はツアーがあって、ライブアルバム、シングルの発表があってという一年でしたが、今回のアルバム『VIVIAN KILLERS』はその合間に作っていたんでしょうか?

チバユウスケ そのとおり。

―― 45本回ったツアーは、作品作りに影響はありましたか?

チバ 影響は絶対あるよね。日常の生活とかライブをやったりとか、それが全部次のところへ行くのは当たり前の話でさ。

―― というのも、今回のアルバムはかっこよさに加えて、これまで以上にみずみずしいロックンロールが鳴っていて。前回のツアーがThe Birthday史上最大本数のツアーだったので、その日々のパワーがアルバムにも結実したのかなと思ったのですが。

チバ ああ。それもないとは言えないけど、俺にはわからない。全部、自然なことだからさ。俺の中では全部つながってる。だから何とも言えないんだよね。

―― それはそうですよね。作り続けている中でのことですもんね。

チバ うん。毎回毎回、その時が全てなんだわ。

フジイケンジ そうだね。

―― ずっと作り続けている中で、どこかで1枚のアルバムを作ろうとなった時に、何か4人で共有するようなことはあったんでしょうか。

チバ わからないけど、俺、この間思ったのは、その共有ってのは“共鳴”だと思ったんだわ。今また新曲を作ってんだけど、「お!それそれ!」っていう。ね? 一人でやってる時は当たり前だけど狙ったことしかできないでしょ。4人でスタジオに入って曲を作っている時に、何て言うのかな……このアルバムもそうだと思うんだけど、(手を上にあげながら)「おお! それそれそれそれ、うおおおお!」ってなるわけよ。

フジイ うんうん。

チバ それがアンサンブルっていうか、バンドというんですかね。それは今の4人になって増えてる気がする。

―― 共鳴って、すごくしっくりきますね。

チバ やった。

―― 曲作りの仕方は変わらないけど、共鳴の度合いが高まった、ということですよね。

チバ そう、そうだね。今、最高潮じゃないかな。一昨日くらいのリハが。

―― めちゃめちゃ最新ですね。いつもスタジオは、アイデアが生まれたら集まるんですか?

チバ いや、勝手にスケジュール決まってるから。別にそこに向けて曲を作ってもってくわけじゃないよ? まあちょっとはそこも考えるけどね。

―― このアルバムでチバさんの歌からはパンクの衝動、サウンドからはロックンロールの衝動、みたいなものが感じられて、それが合わさってすごいことになってるなと思ったのですが、演奏していて感じること、プレイで意識することとかはありましたか?

フジイ 細かくいうといろいろあるんですけど、いつもその時その時で曲や歌が求めてる世界観とかそういうのに、こちらも閃いたものをあてていくという感じで。さっきチバくんが共鳴って言ったけど、その辺の阿吽は高まっている気はしますね。

―― 例えば、リフ一発ですごく説得力がある曲もたくさんありますが、フジイさんの中では自然に生まれてくるんでしょうか?

フジイ わりと、その瞬間が勝負というか。「こんな曲できたよ」って一行歌った段階ですぐ反応するんで。だから、なんでそういうギターを弾いたのかは後から考えてもわからない。でもそういうフレーズは、たいがい最後まで残りますね。

―― 曲の元となる部分に、みんなが乗っかって共鳴していく感覚は、すぐわかる感じですか?

チバ わかるよ。

―― なかには共鳴しない曲もある、と。

フジイ まあ確かに共鳴度が低いものもあるんですけど……他の方がよかったら、その曲に陽が当たらなくなっていくこともある、というか。

―― その時は共鳴しているんだけど、さらにもっと共鳴する曲が生まれる、その繰り返しということなんですね。

フジイ そうそう!

チバ 今回のアルバムだと、16曲くらいは全然ひっかかってくれなかったもん。

フジイ それを全部かたちにしたら、ものすごい曲数のアルバムになっちゃうから。

―― 2枚組、3枚組とかになりそうですね。

フジイ だからある程度ね、選抜されていくんですよ。

チバ 俺途中で一瞬、心が折れそうになったもん。

フジイ ははははは。

―― チバさん、心が折れそうな時もあるんですね。

チバ あるよぉ(深く頷きながら)。

フジイ いや俺も苦しいんですよそれは。やりたいけどって思っても、はまらない時があるんですよ。

チバ あるある。そうだね。

―― 何ではまんないんですかね?

チバ 知らねぇよそんなの。だから難しいよね、音楽はね。

―― チバさんとしては全部、自信がある曲だったんですもんね。

チバ 「いいねぇこのメロディ」とかってフジケンたちに言われると思って持っていくわけじゃん。

―― 褒められたいコ、みたいな(笑)。

チバ もちろんそうだよ、当たり前じゃんか!

―― じゃあたくさんの曲の中からこの12曲がかたちになるまでに、かなり時間はかかったんでしょうか?

チバ 実はそうなんですよ。いま思えばね。

―― そう考えると、コンスタントにアルバムが完成するってすごいことですね。

チバ 曲はいくらでもできるんですよ。

―― その中でも共鳴度上位の12曲がアルバムになったということですが、集まってみると今作は、はじめに言ったようによりみずみずしいロックンロールが鳴っているアルバムだなと思います。今回みなさんが、そういう曲たちにとくに共鳴したというのは、何か思うところはありますか?

チバ ……俺の個人的な感覚だけど、とにかく音楽は日常で。それをロックンロールと言ってもらえるならそれはすごく嬉しいし、かっこいいし、楽しいし、ありがたいんだけど、でも、自分にとってはやっぱり普通なんだよね。でもずっと音楽のことを考えちゃうわけよ。ロックンロールをやる時は、ロックンロールをやんなきゃいけないの。きっと。でも、毎日の世界に対しての向き合い方は、ちょっとしっかりしてなきゃいけないの。税金払ったり。それをやった上でのロックンロールをやればいいんだよ。

フジイ なるほど。

チバ そう思うんだけどな。

―― 生活はしっかりしよう、と。

チバ そう、生活はしっかりしよう。絶対。……しっかりしてねぇな、俺。

フジイ ははははは。

―― まわりがどんなに「これはみずみずしいロックンロールだ」と言っても、チバさんの中では当たり前、日常のことなんですね。

チバ 全部当たり前ですよ。

―― でも聴き手としては、当たり前のようで当たり前じゃないというか。

チバ うん、わかるよ。言ってること。なんとなくね。でもやっぱり当たり前なんだよね。これが俺たちの(ギターを弾く手振りで)「ジャーン」なんだから。

フジイ うんうん。

―― どんなアルバムを作ろうっていうのではなく、日常の中のセッションの繰り返し。

フジイ そうですね。

―― フジイさんは普段、チバさんが作った曲を聴いて「いまはこういうモードなのかな」とか思われることはありますか?

チバ あ、それ聞いて。

フジイ それはあるんじゃないですかね。例えばザ・クロマニヨンズとKen Yokoyamaとツアー回ったら、そこからもらったもんってあるじゃないですか。そんなソウルみたいなものを少し垣間見られるような曲があったりとか。勢いの部分でね。もちろん僕も何かしらの影響をもらうし。今回は準備が一年あったから、自分たちのツアーやイベントとかそういう中から、モードというかスイッチが入った感触は感じますけどね。

―― そういう部分はフジイさんも共鳴するところですか?

フジイ うん。日常、ということでいうと、僕が(バンドに)入った当初もThe Birthdayはロックバンドだったし、さらにチバくんはそのイメージが強かったから。

チバ お前もTHE BARRETTだったじゃん。

フジイ まあ僕もそういう時期はあったんですけど。チバくんはそういう部分を貫いているけど、生活のこととかあまり語らないし、日常がロックンロールっていうのもほんと、その通りだし。

―― 日常がロックンロールっていうのは、やっぱりみなさんがずっと、いちリスナーでもあり続けているからでもあるんでしょうね。曲の中で、今作では「星降る夜に」では音楽がずっとのこっていくことが歌われていたり。「DISKO」ではまず<このくそメタルババァがよ>という衝撃の出だしが最高でしたが。

チバ これはずっと言われるな。

フジイ ははは。絶対言われるね。

―― これは突っ込まずにはいられなかったです(笑)。で、何事かと思って聴き進めていくと、心臓を貫かれたレコードへの愛が歌われていて。

チバ “このくそメタルババァ”って言っても、そこにも愛はあるわけよ。

―― “このくそメタルババァ”に?

チバ そう。別にこいつのことをぶっ殺したいと思ってるわけじゃなくて、しょうがないな、って。そう言えるようになったっていうことだよ。

―― なるほど。

チバ 思えるようになったっていうか、懐かしいなって。

―― この曲は「1977」と通じる曲ですが、こういう歌が続けて生まれているのは、チバさんの中で思いがどんどんシンプルになっているのかな、とも思ったのですが。

チバ シンプルにしたいな、というのはちょっとある。言葉というか……いまずっと取材してるから思ったんだけど、例えば「歌詞が変わってきてますよね」とか言われたりするのよ。で、言葉数が多くなったって言われることがあって。でも当たり前なんだよ。何でかって言うと、それはミッシェルん時から考えてたことなんだけど、そうじゃないと伝わらないと思ったから。全部説明しないといけないと思ったんだわ。

―― ミッシェルの時から伝わらないと思っていたんですか。

チバ うん。

―― でも、言葉数が多くなっていたのかもしれないけれど。

チバ 今回、減ったでしょ?

―― そう言われると減ってますね。減ってるし、タイトルを連呼している曲「LOVE IN THE SKY WITH DOROTHY」もあるし。シンプルな方向に向かっているような。

チバ 先のことはわかんないよ。何でみんな先のことばっかり言うの?

―― それは、ここ最近のThe Birthdayは希望を感じさせる曲が多いから、やっぱり一緒に未来をみたくなります。

チバ そうか。希望にね、未来にね。行くよ、うん。

―― 今回、先行シングルの「OH BABY!」がラストに来ているのはなぜでしょうか?

フジイ VIVIANとかマギーとか、メタルババァも含め、いろんな女性が出てくるじゃないですか。で、最後にそれら全部含め「OH BABAY!」って、求愛している感じがいいなあと思って。たまたまかもしれないけど、これが最後にきた時にすごく平和な感じがしましたね。

―― フジイさんはギタリストとしても、バンドのメンバーとしても、こうありたいというようなことはあるんでしょうか。

フジイ 例えば……アルバム作る時はつねにファーストアルバムのような気持ち、というのはありますね。新曲をやる時はおろし立ての曲だし、その日の朝、チバくんが浮かんだメロディかもしれないし。曲と関わる時は、そういう気持ちはつねにありますね。

チバ かっこいい。

フジイ そんな(笑)。

チバ いや、ちゃかして言ってんじゃないよ。かっこいい。

―― チバさんはフジイさんに、こんなギタリストでいてほしい、という思いはあるんでしょうか?

チバ もうないね。いや、こういうギタリストでいいんだよ。あとは俺の言ってることを理解してもらえるかとか。当たり前だけど、フジケンも俺のことを、俺のやってる音の雰囲気を理解しようとしてくれてると思うけどね。それだけだよ。そうしたらさ、70まで音楽やれるかもしれないよね。

フジイ 70?

チバ え、60?

フジイ いやいや、少なくとも70だね。

―― よく50で折り返し、なんていう言葉もありますが、そんなのはもったいないですよね。

チバ 折り返すなんてとんでもないよ。あとはもうまっしぐら! 死にまっしぐら!

フジイ ははははははは。すっごい現実的になってきたじゃん!

―― 生きることにまっしぐら、ということですね。

チバ 生きて生きて生きて、人は死ぬんだよ。俺、141まで生きるって何かで言われたんだけど。

全員 ははははは!

―― ポール・マッカートニーもストーンズも現役ですから。

チバ ポール・マッカートニー、武道館すごかったね。

―― ロックンロールに年齢は関係ないですよね。

チバ そう思いたいね。内田裕也さんもすごかったもんな。前に鮎川誠さんの還暦の時に裕也さんも来て、バーっと歌ってバーっと帰ってったんだけど、いやーかっこよかった。

―― でも、こうしてかっこいいアルバムが完成して手に取ることができるって、本当に嬉しいことで。音楽が続いていくパワーってすごいですよね。今回も、めちゃめちゃかっこいいアルバムをありがとうございます、という気持ちでいっぱいです。

フジイ ありがとうございます。

チバ こちらこそ。何がよかったんだろうね? 今となってはもうわかんないや。

―― この4人が、より固まった感もあって。もうThe Birthdayからは何が出てきても揺るぎない安定を感じるというか。

チバ それはこの人(フジイ)に言ってください。いまThe Birthdayを安定させてるのはこの人だから。

フジイ あははははは。

―― ハイクオリティーマークがボンと押されているというか。

フジイ 安心マーク? そう言えば、前のツアーの千秋楽が中野サンプラザだったんですけど、打ち上げはメンバー全員最後までいて。ちょっと感動的だったんですよ。

チバ ははははは。

フジイ 打ち上げ史上、一番感動的だったというか。

チバ まじ?

フジイ 4人で肩組んだりとか、そういう一幕もあって。で、チバくんが一番最初につぶれて、キュウちゃんが寝て、俺とハルキが最後まで。ハルキは一滴も飲まないのにずっといて。

チバ あ、ほんと? 全然知らない。

フジイ 普段はわりとみんな、自由にばらけたりするんだけど、誰も帰りたがらない、みたいな。

―― その感じがこのアルバムにはありますね。

チバ ふーん。あの日、そんな感じだったんだ。

フジイ 友達がたくさん集まっていましたね。ハルキくんもお酒飲まないし、俺もそんなに飲まない方だからいつもはそんな長居したりしないんだけど。

―― そういうバンド感が聞けるのは何だか嬉しいです。

チバ それバンド感なの?

フジイ バンド感だよ、あれは。

―― きっと4人のグルーヴですよね。そういうバンド感が、今作のみずみずしいロックンロールを生んだんですね。

チバ それもあるかもね。

―― 今作のロングツアーも始まりますが、ライブも楽しみにしています。

チバ うん。よろしくお願いします。

フジイ みなさん、ぜひ来てください。

(取材・文/秋元美乃・森内淳)

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<STAFF> WEB DONUT 6/2019年3月30日発行/発行・編集・WEB制作=DONUT(秋元美乃/森内淳)/カバーデザイン=山﨑将弘/タイトル=三浦巌

INFORMATION



The Birthday『VIVIAN KILLERS』
2019年3月20日(水)Release
3,240円(税込/通常盤)
収録曲:1 LOVE IN THE SKY WITH DOROTHY 2 KISS ME MAGGIE 3 青空 (VIVIAN KILLERS ver.) 4 POP CORN 5 Dusty Boy Dusty Girl 6 THE ANSWER 7 DISKO 8 THIRSTY BLUE HEAVEN 9 FLOWER (VIVIAN KILLERS ver.) 10 星降る夜に 11 DIABLO ~HASHIKA~ 12 OH BABY!

The Birthday LIVE INFORMATION >> https://www.universal-music.co.jp/the-birthday/news/2019-01-10/

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