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カタヤマヒロキのコラム「食べロック2」

カタヤマヒロキ(Dudes、Lüstzöe)のコラム「食べロック2」
A級やB級といったカテゴリーを超え、食へこだわり、食べまくるロッカー、カタヤマヒロキがお送りする食のコラム「食べロック2」。ほぼ月1で「食」を投下!
●プロフィール:カタヤマヒロキ/ボーカリスト。Dudes、LüstZöe、地獄ヘルズ ボーカル担当。ラジオのDJも担当。Droogは無期限活動休止中。公式サイト:dudes-official.com/katayama

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第1回:「ちょっぴり辛いセイロンライス」

2018年5月よりRock isで毎月書いていたコラム「食べロック」が2019年12月で最終回を迎えた。
計20回。
毎月毎月よくこのようなぺーぺーの駄文を読んでくれる人がいる驚きの気持ちと、掲載してくれる方々に感謝の気持ちを抱きつつ、好きなように書いてきた。

そして一度は終わったが、また復活できるようで今月から新たに始めることになった。
「おかわり!食べロック」
とでも、銘打って書き始めようかと思ったが、通常運転、いつも通りのテンションでいこうと思う。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

二十歳くらいの時にバンドのツアーで各地に頻繁に行くようになった。
九州の田舎者には、どの土地も新鮮で色々な発見があった。
事務所に所属しマネージャーが付き、車一台でメンバーと共に各地をまわっていた。
そして、何度目かの大阪。
マネージャーが連れて行ってくれたのが、アメ村にある名店「ニューライト」だった。
入るのを思わず躊躇してしまいそうな、怪しげな店構えで、扉を開けると外観以上にカオス。
まるでアメ村を表すような、ごちゃごちゃ感と居心地の良さが際立った空間だった。

「セイロンライス、カツのせをお願いします」

聞いたことのない食べ物を注文するマネージャーに戸惑いつつ、同じくセイロンライス、カツのせを注文して待っていた。



やってきたのはカレーのような、でもカレーよりは水分が多くしゃばしゃばしていて、ポンっと生卵が落としてある。
そこにたっぷりとソースがかかり揚げたてサクサクなカツ。

なんだ、この食べ物は……!

ひと口食べると、意外とスパイシーなカレーソースと白米の比率がとっても絶妙。
生卵を崩すと、生卵が全体をマイルドにまとめ上げて、カレーほど硬くなく、スープほどは緩くないという、カレー雑炊のような印象。
値段もセイロンライスが当時で500円、カツのせでも650円くらいだったはず。
聞くと、牛肉と玉ねぎにカレー粉、デミグラスソース、ラーメンスープがミックスされているらしい。
店内にいる人の8~9割はこれを食べてたと思う。
ひと口でセイロンライスの虜になった。
それからというもの大阪へ行った際は時間があるとマネージャーと一緒に、ニューライトへ行った。

「ヒロキ、本当セイロンライス好きだね」

マネージャーに言われながら、毎回“セイロンライス カツのせ”を頼んだ。
同じのしか頼んでないので、同じ写真しかないが、これがほんとうに落ち着く味というか、旨いのだ。





数年後、バンドやチームの様子が変わってきて、遂に事務所とバンドが離れるときがやってきた。
いつものようにスタジオで音を出していると、神妙な面持ちでマネージャーが部屋に入ってきて、思わず皆が音を止めた。

「ああ……とうとうそのときが来たんだな」

なんとなく勘付いていた。

その後にマネージャーが口にした言葉は、俺にとって大事な言葉だから取っておく。

それからバンドは止まってしまったが、僕は今も音楽を続けており、ライブで大阪に行くとセイロンライスをたまに食べに行く。
あのカオスな空間で食べるしゃばしゃばなセイロンライス、カツのせは相変わらず独特で、旨い。
ただ、ひと口食べるたびに、マネージャーと過ごした日々を思い出して、ちょっぴり辛いセイロンライスは、さらに辛くしょっぱくなるのであった。

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口に入れた瞬間BGM
松田聖子「SWEET MEMORIES」
(1983年8月シングル『ガラスの林檎/SWEET MEMORIES』収録)
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