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歌王子あび「ソファベッド宇宙旅行2」

歌王子あび(VERANPARADE)「ソファベッド宇宙旅行2」
歌王子あびが思い巡らす“夢うつつ”連載コラム。
●プロフィール:歌王子あび/宮崎在住のロックバンド、VERANPARADEのボーカル。2021年3月に新ギタリストを迎え3人体制に。同月デジタルシングル「ラインマーカーズ」を発表。
公式サイト:https://veranpara-de.com
最新ライブ情報:https://twitter.com/veranparade


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第7回:「ラザロ」

2021.11.05 upload

頭痛が鎮痛剤で改善されにくくなり視界が狭くなっている気がしたので久しぶりに整骨院に行った。先生は相変わらず何かしらの神様みたいに優しい笑顔で丁寧に僕の体を整えていった。首筋から肩のあたりを揉んでもらっている時、あまりの気持ち良さに「ぐお〜〜」と唸ると「すんごい疲れてるよ、お疲れさま」と言われた。家にばっかりいて疲れるようなことをした覚えはないのだが僕の身体はすんごい疲れていたらしい。じんわりと温かく広くなっていく頭の中で一体僕は何に疲れていたんだろうと考えてもやっぱり答えは出なかったが「すんごい疲れてるよ」と言ってもらったことで心のコリがほぐれたような憂鬱まで矯正してもらったような気分になった。もしかすると医学的なテクニックなのかもしれない。機会があったら真似してみようと思う。

コロナも今は少しずつ落ち着いてきてライブをしたり練習したり人に会ったりゆっくりではあるが日常が戻ってきつつある。全然油断できる状況ではないが素直に嬉しい。このままずっと落ち着いていて欲しい。

宮崎にはSR-BOXというライブハウスがある。僕が17歳の頃生まれて初めて観に行ったライブハウスで、初めて立ったステージでもあり、ライブを一番多くしたのもSR-BOXだ。正真正銘、VERANPARADEのホーム。そのSR-BOXの店長である図師さんが宮崎に新しいライブハウスを作った。名を「ラザロ」という。新しいライブハウスを作ることにしたという図師さんからのメールには「こんなご時世にライブハウス作るのバカだと思うけど命がけです(笑)」と語尾に(笑)がつけてあった。全然笑えなかった。すぐに「ラザロ」という言葉の意味を調べて少し涙が出た。
ラザロが完成したと聞いて、まだオープンしてないラザロを見せてもらいに行った日は家に帰りついた後、胸のあたりがポカポカして生きるパワーがアップし、いても立ってもいられなくなって気がついたら新しい曲ができていた。1時間くらいで一気に書ききった。「街」という曲だ。色んな人の想いや覚悟や迷いや悔しさや嬉しさが僕の大好きなこの街の景色を作っていたんだと改めて気がついた。街は人が作り、人は心で出来てる。

光栄なことにオープニングライブで歌わせてもらった。ラザロのおかげで出来た新曲をラザロの大切な最初の日に歌わせてもらえて幸せだった。MCで半分ちょけながら喋っていて「図師さんがラザロを作るのに必要な膨大なお金を借りるための重要な書類に印鑑を押す時、おそらく図師さんの頭に浮かんだのはこの街で音楽をするかわいい僕らの顔だったと思うんですよね〜」と言ったら、本当にそうだったんじゃないかという気がしてきて自分で言っといて自分でボロボロと泣いてしまった。自爆である。フロアにはこの街で音楽をするかわいい友達の顔がぼやけながらもしっかりと見えた。僕の友達はみんな顔が可愛い。これから先、ラザロでは色んなライブがあり色んな涙が落ちるわけだがラザロのステージに一番最初に落ちたのは僕の涙です。これはかなり縁起がいいと思うな。図師さん、宮崎にはVERANPARADEがいますから安心して死ぬまでライブハウスしてくださいね。僕、かなり長生きするのでちゃんと看取ります。

このまま行けるところまで行きたい。

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