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La Vie en ROSIE 〜ROSIEのレコード日記

La Vie en ROSIE 〜ROSIEのレコード日記
暴動クラブのベーシスト、城戸 “ROSIE” ヒナコが毎月、1枚レコードを紹介するコラム。
●プロフィール:城戸 “ROSIE” ヒナコはロックンロール・バンド、暴動クラブ(海外ではVoodoo Club)のベーシスト。メンバーは釘屋 玄(vo)、マツシマライズ(gt)、城戸 “ROSIE” ヒナコ(ba)、鈴木壱歩(dr)の4人。ワイルドで荒々しく挑発的なロックンロールでライブハウスシーンを席巻中。
■連載のアーカイブ:https://donutroll.tokyo/rosie/index.html#archives
■公式サイト:https://voodooclub.fanpla.jp/
■X:https://twitter.com/Voodoo_Club_
■Instagram:https://www.instagram.com/voodooclub_japan/

第13回:フランス・ギャル『FRANCE GALL』(1989)

2025.10.06 upload

〜ROSIEのフランス旅行記(前編)〜

フランス、パリ。
華の都と呼ばれ、昔から様々な映画や芸術作品の舞台やモチーフになり、時代、国を問わず多くの人たちの憧れの地として長年その座に君臨してきた街、そして私もその例に漏れず永らく夢見てきたあの街に、この夏、自分の足で立つことが、遂に叶ったのです。

日本からは飛行機で乗り換え含め約14時間。海外旅行自体ほとんど初めてに近かったのでせっかくの空の旅も今回は常に緊張が勝る。
まず、機内に乗った瞬間、ここは千葉県成田市であるはずなのにすでにそのアイデンティティがほとんど失われているので不思議な感覚になる。海外特有の香水の匂いが機内中に漂っており、飛び交っている言葉の多くが日本語ではない。これから始まろうとしている旅のプロローグを見せられている気になる。

私は港や空港が好きだ。空と海、との違いがあるが、どちらも普段は「国境」(あるいは県境でもいいが)というはっきりとした区切りで厳格に隔たれているはずのありとあらゆる「地」が、そこでは平然と入り混じっており、まるで一切の「区切り」がそこにだけは存在しないかのようであるからだ。常に誰かが辿り着き、誰かが旅立っていく。皆違う物語を持って、違う場所にたどり着く。本来出会うはずのない人同士がほんの束の間、同時に存在する場所。世界の広さと、同時に狭さを実感できる。

長時間のフライトはやはりハードだった。途中までは、イレギュラーへの興奮状態と旅への期待でなんとか乗り切れるのだが、半分くらい経ってくるととてつもなく巨大化した「暇」が、襲ってくるのである。寝でもできればいいのだが、こんな空中で易々と休まるわけもなく、インターネットも繋がらないので、持ってきていた本やら機内のモニターやらで暇を潰すしかない。機内のモニターにはどこの層に向けているのか全体的によくわからないラインナップの音楽と映画が用意されていて、映画の方はびっくりするくらいそそられるようなものが無かったので、音楽を聴くことにする。するとこちらの方は結構良くて、ルーリードの『transformer』、ピンクフロイドの『Pink Floyd at Pompei』と『狂気』という、大好きな3枚があるのを発見、これらを空中で聴けたのならそれはそれは最高だろう、と思い、早速配られたヘナヘナのイヤホンを挿し込み音量を限界まで引き上げ、ウキウキで再生ボタンを押す。が、しかし、そのウキウキは開始1秒で打ち砕かれることになる。

なんだ、これは。音が、パッキパキの、ガッビガビ、である。とんでもない。とんでもなさすぎる。昔愛用していた、自分で音楽を取り込んで持ち運べるセガの女の子向けおもちゃ『ジュエルペット ジュエルミュージックポッド』より、酷い。ローが信じられないくらいに出ていなくて、代わりに耳を劈くようなハイのみがブーストされまくっており、ひたすら鼓膜を攻撃してくる。お願いだ。トレブルを下げてくれ。ローを上げてトーンを絞ってくれ。ああ、ギルモアのギターがこんなにも安っぽくなることがあるだろうか。泣きそうだ。

しかしふと、このパッキパキのガッビガビのフロイドとルーリードを、よく知らない地球の北の方の空中で聴いている状況を客観的に考えてみると、実はかなりヤバい体験をしているのではないかと思い始め、次第にこの音響もこの空中における演出として相当素晴らしいとさえ思えてきて、結果、トランジットのオランダ空港に着くまでの間にこの3枚を爆音無限ループし続けた。最終的に私は雲の上で完全に“飛ばされて”いた。すごい音楽はどんな音響で聴いても結局、すごいのかもしれない。

そんなこんなでついにフランス、シャルル・ド・ゴール空港に到着する。フライトが遅れ、午前12時を過ぎていた。ほぼ最終便だったようで空港にはほとんど人がいないし、1泊目は空港内のホテルを取っていたので残念ながらせっかくのフランス上陸1日目はフランスを全く感じることなく終わる。やはり空港というものはどこであっても同じように、その国としての性格が最も失われる空間だなあ、と、思う(あ、オランダ空港にあったチューリップ屋さんは最高だった!)。

来る2日目、時差ボケも多少あって早めの時間に目が覚める。部屋の窓からエールフランスの機体が見えて、ここがフランスであることを思い出す。チェックアウトして空港からパリ市内までのバスに乗り、いよいよパリへと向かう。正直ここまでで、フランスにいるという実感は一度たりとも味わえていない。空港の人になにか尋ねて、返ってくるのはフランス訛りの英語だし(しかもちょっと態度が悪い)、あちこちから聞こえてくる会話もフランス語が殆ど、看板にも空港内の表示にも売店やチケット売り場にもフランス語が、当たり前だけれど、とにかく至る所に散りばめられているのだが、なぜだかずっと、フランスを感じられない。自分がひとつのシャボン玉のような泡の中に入っていて、遠い遠い夢を、ぼんやりと、見せられているかのようなのである。

ずっと、このままだったらどうしよう。

バスに1時間ほど揺られていると(運転が少し荒かったな)、突如としてパリが現れた。
あまりに突然のことだったので、咄嗟に状況が飲み込めない。さっきまで田舎道が続いていたのに気づけばバスの車窓に写るのは、見渡す限り、パリ、パリ、パリ。

雑誌や絵本の世界か何かに入り込んだかのような気分になって、感動というより混乱に近い。そしてなぜだか、間違えた、という気になった。
間違えて、「入りこんで」しまった。

するとまた突如として停留所に着き、突如として降ろされた。私はぼーっとしすぎなのだろうか。けど、降り立った瞬間の空気はよく覚えている。少し冷たくて、カラッとして、澄んだ空気だった。私は、たっぷりと息を吸い込んだ。気の済むまで。

パリだ。

降ろされたのはオペラガルニエの目の前。
なんだこれは(そう思うのも無理はない。今考えたらあの周辺はとんでもないところである)。
辺りには見たこともない、絵に描いたような風貌の建物が仰々しく連なっている。
しばらくその光景に呆気に取られていたが、ふと忘れかけていた自分の存在に気づき、私はゾッとした。またこれも感動、とは違う、どちらかというと少し嫌な寒気だった。

私は、打ちのめされていたのだ。


パリを夢見るようになってから、もう気づけば6年くらい、経った。

高校生の時分、母にゴダールの『女は女である』を見せられてからというもの、取り憑かれたように(そう、海と同じようにね)パリの街に憧れ、いつかは自分がここに住むような気もして、映画や写真、ガイドブック、沢山のパリをいろんな角度から見ては、自分がそこにいることをずっと想像してきた。大学に入ってからも好きが高じてフランス文学を専攻、留学こそバンドがあるのでできなかったものの、フランス語を勉強し、フランスの歴史、文化、文学、哲学、いろんなフランスを学んだ。このコラムも、タイトルはフランスを代表するシャンソン歌手、エディットピアフの「薔薇色の人生」からもじったフランス語であるし、初めの挨拶だってわざわざ毎回毎回ボンジュー、終わりをサリュ、で、徹底しているほどである。今回は言い忘れていました、ボンジュー。

とにかくそれほど、私にとっては特別な存在であり続けた、パリ。
特別すぎた、パリ。
その夢が叶う瞬間にいま、私はいる。今この瞬間に、叶っている。

はずなのに。
私が最も、感じたく無くて仕方なかったことが私を襲ってきてしまったのである。

夢は届かないままであるのが最も美しいのかもしれない。
月が届かないのと同じように。

フランスは本当に想像通りの場所だった。私の期待通りのパリが、全てそのまま、そこにあった。評判で聞くほど汚い場所でも無かった。想像通りすぎるくらいだった。

全ては私の問題だった。
あまりにも遠くに、パリを置きすぎたのかもしれない。
そして、自分の足をその地に降ろしさえすれば、パリが手に入るとばかり、思っていたのかもしれない。
パリは、どんなに私が自分の足をペッタリとその地につけても、どんなに強く強く、踏み締めてみても、あまりにもあまりにも、遠かった。遠く遠く、隔たれていた。私を包むシャボン玉は、割れてくれない。

今ここで私を囲んでいる全てが、なぜだかハリボテにしか見えなかった。
全てが舞台装置に見えた。飛び出す絵本に見えた。その中に間違えて、迷い込んでしまったようだった。
オペラ・ガルニエも、ギャラリーラファイエットも、何を見ても何を見ても私にとってはありえない光景なのに、当たり前のようにそこに存在していて、そこにいる人々も、それらを気にも留めずに当たり前のように生活している。
ここに生活があるということが、私には、異様なまでに、悔しかった。

夢のパリは、決して夢なんかではなかったのである。現実の一つの街、私が住む東京都と同じような、瀝とした街として、そこにあったのだ。

私は大きなスーツケースを持って、ここに立ちすくんでいる。全てがハリボテに感じている。
「今まさに夢が叶っている最中」の人がここにいますよ、というのに、人々は忙しなく、すり抜けていく。当たり前の生活を送っている。
私は謎の署名に声をかけられる。引っかかりそうになる。あとからスリの手口の一つだと知る。
涙が溢れてきそうになるのを、友達にバレないようサングラスをかけて、誤魔化す。

ヘイガール、悲しまないで、ヘイガール、涙なんて見せないで
ヘイガール、今度は、ヘイガール、きっとうまくいくぜ
Oh,欲しいものが oh,いつだって
お前のその手に入るとは、限らないぜ

ルースターズの「ヘイガール」が、頭に流れる。胸がぎゅっと痛くなる。

夢を見ることは、幸せなことだと思っていました。

そしてその夢を叶えることは、もっともっと素敵なことだと思っていました。

なのになぜ、私の心はこんなにも苦しいのでしょう?


私のパリ1日目は意外にもこんなふう、だったのでした。

―――――――――――――――

さて、今回は、私がフランスに恋して止まなかった高校生の頃の私が、耳にタコができるほど(できないのでいまだに聴き倒しているけど)聴いていた1枚をご紹介。まだ紹介していなかったことにびっくりしています。


『FRANCE GALL』(1989)フランス・ギャル

母親がもともと、フレンチポップが好きで、私が子供の頃からよく家でフランスギャルのベスト盤のCDを流していました。高校生になってそのCDを改めて自分で聴いてみてどハマり、これはどうしても!レコードで!聴きたい!と、レコード収集もまだ初心者ホヤホヤの頃、レコ屋に足を運んだところこちらを発見、しかもお気に入りの曲ばかりだったので高校生にとってはちょっと高かったけれど即購入したのでした。嬉しくて、大事に大事に抱えて帰ったのを思い出す、懐かしいな。フランスギャル初期の名曲がたくさん入った1枚です。


来る日も来る日もパリに恋焦がれては、フランスのギャル、になることを夢見ては、聴いてたなあ!

では、次回もフランス編、続きます。
お楽しみに!サリュ;)

世界中に愛と平和を!
城戸”ROSIE”ヒナコ



はじめての フランス・ギャル

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メジャー1stAL『暴動遊戯』
2025年10月8日リリース
収録曲:01. ドライヴ・ミー・トゥ・ザ・ムーン/ 02. FEEL SO GOOD?/ 03. 抱きしめたい/ 04. くだらない時代に唾を吐け/ 05. ダリア/ 06. ラヴ・ジェネレーター/ 07. 生活/ 08. ひまつぶし/ 09. ギミー・ショック/ 10. LIFE FUCK/ 11. FIRE/ 12. ハニー
初回生産分購入者対象 暴動クラブグッズ応募抽選特典あり
▼詳細はこちら
https://voodooclub.fanpla.jp/news/detail/51762

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11月09日(日)大阪・LIVE HOUSE BRONZE
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