La Vie en ROSIE 〜ROSIEのレコード日記
■La Vie en ROSIE 〜ROSIEのレコード日記
暴動クラブのベーシスト、城戸 “ROSIE” ヒナコが毎月、1枚レコードを紹介するコラム。
●プロフィール:城戸 “ROSIE” ヒナコはロックンロール・バンド、暴動クラブ(海外ではVoodoo Club)のベーシスト。メンバーは釘屋 玄(vo)、マツシマライズ(gt)、城戸 “ROSIE” ヒナコ(ba)、鈴木壱歩(dr)の4人。平均年齢20才、ワイルドで荒々しく挑発的なロックンロールでライブハウスシーンを席巻中。昨年12月に行った二度のワンマンライブはそれぞれ即完。今、最も注目されているロックンロールバンド。■X:https://twitter.com/Voodoo_Club_ ■Instagram:https://www.instagram.com/voodooclub_japan/
第9回:丸山圭子『黄昏めもりい』
2024.10.31 upload
ボンジュー、ロージーです。
いまだに寒くなったり暑くなったり、ほんまどないなっとんじゃボケ、な日々でございますが、皆様はいかがお過ごしでしょうかしら。
おかげさまで私の自律神経失調症は悪くなるばかりでございます。
というのも今月、大事なお仕事中にぶっ倒れ(別名“誇張の女王”こと城戸ROSIEヒナコですが、今回ばかりは比喩ではなくガチです。情けない……)仕事を中断してしまった日もございました。事務所からも体調管理をしっかりしてくれと注意されてしまいまして、はあ、本当に本当に申し訳なかったけど、正直、バチクソに悔しかったっす。
皆様のロックンローラーに対する夢をぶち壊すようで申し訳ないですが、いわゆる酒とタバコの日々、なイメージとはもう全くもって裏腹に、私は喫煙もしない。酒もあまり飲まない。なんなら人様の前に出るようになってからは野菜とタンパク質が中心の健康的な食事をし1日2リットルの水を飲み、適度な運動も怠らない、いや、モデルか。ちょっと意識高い系の、な生活を送っておりまして、体調には日々、そこそこ気ぃつかってる方だとは思うんです。
それなのに大事な日にぶっ倒れてしまって、もうこれ以上どうしろってんだ。
22時には寝て6時には起きて、朝の青汁からの、ラジオ体操でもしろってか。
もうそんなんロックンローラーどころか、隠居生活中のジジババや。
ロックバンドやってるハタチがそんな生活してたらもうこの日本には夢も希望もなくなるっちゅうねん。舐めるな。
てなわけで、もし、私こそ健康の知識に明るいわよ! という方がもしおられましたら、なんか健康になれるいいやり方教えてください。まじで。
そして皆様も季節の変わり目、十分にお気をつけてくださいね……。
さて、もう毎回毎回この前置きが長すぎるという自覚がちゃんとございますので、今日こそは早速本題に入りたいと思います。もうすでに750字は超えていますが、誤差です。
私が本当に好きな1枚、秋になったら絶対これコラムで書くもんね!ってコラム始まったときから決めてたやつです。やっと出せるときが来たぞいひひという気持ちで、冬がちらちらと顔を出し始めた少しひんやりな今の時期にぴったりな、ロージー的、秋のしらべの1枚をご紹介いたします。
今月のレコードはコチラ。
丸山圭子『黄昏めもりい』(1976年)
丸山圭子『黄昏めもりい』(1976年)
秋にふさわしいだの、秋のしらべだのなんだのここまでいっといて、今、あらためて本人による“らいなあのおつ”を読んでみたら小春びよりの昼下がりとかなんとか書いてあるのを発見し、只今、心底絶望しているんですが、見なかったことにし、続けます。
大学1年から2年にかけての時分に、某レコード店でアルバイトをしていたときがありまして、そこのバイト先でこのアルバムがかかっていたのがきっかけでこのアルバムを知りました。
そのときも確か少し寒い時期だったんですが、伸びやかな美しい歌声がその少し寒い店内に響き渡るのを聴き、これは……と思った絶賛勤務中の私はポケットに忍ばせていた自分のスマホをこっそり取り出し(今だから言える話……)、お客さんと上司の目を盗み、バレないように必死のぱっちでShazamをかけたのが出会いです。
余談ですが私がバイト中、常にポッケにスマホを忍ばせていたのも、決してサボってやろうヘッヘッというヤンキー的精神からきているのではなく、こういうときのShazamのためだったのです。Shazamをかれこれ10年ほど愛用しているともう完全にShazam依存症にもなっておりまして、健やかなるときも病めるときも、そう、いつ、いかなるときも手放せないんです。ああまるで離れようにも離れられない、ズブズブに依存し泥沼化して長期化してしまった恋人のよう。
今思えば普通に上司に「これなんですかー!」とかって、可愛く聞けばよかったのに。可愛くないよなあ、自分マジで。
はい、話をレコードに戻しますと、私がShazamをしなくてはいてもたってもいられなくなった原因の曲はA面4曲目の「RHAPSODY IN THE MOON」。
今聴いてもこれが一番好きかもしれないです。
落ち着いたAメロからは想像できない、グッと盛り上がるサビの部分の、ピアノのなんかディンドン、ディンドンみたいなリズム(あくまで音楽をやっているという立場で、あるまじき適当さ)と、丸山さんの伸びやかな声が歌うシンプルな歌詞(特に「Provableさよなら」と言い捨てる最後の部分の感じが大変かっこいい)そして後ろでかすかに聞こえる男の人のコーラスの声とのマッチングがなんとも言えず、私にぶっ刺さったのです。勤務中の。
一番有名な曲はその一個前の「どうぞこのまま」で、もうそれはそれは一番有名なだけあって、めちゃくちゃいい曲。誰が聴いてもいい曲。
ボサノバ調のオシャンで切ない伴奏の上で、どうぞこのままと繰り返す丸山圭子の、まるで秋空のように透き通った綺麗な歌声。切ねえ。
丸山圭子、と私が言っても全くピンときていない感じだったうちのオカンがこの曲が流れたとたん「ああこの曲の人か」と言っていたのをみれば、この曲がどれだけ有名だったのかわかるのは至って容易である。
そしてさっきあげた「RHAPSODY IN THE MOON」にならんで私がまた特に大好きな曲が、B面5曲目、アルバムの一番最後に収録されている曲「Bye-bye」。
カントリー調で可愛い感じの曲。
夢を追っかけて生まれた街を離れ遠ざかっていく故郷に向かって「bye-bye……」と歌う丸山さん。
この「Bye-bye」の言い方がもうマジでかっこよくて……これはひらがなの「ばいばい」でもカタカナの「バイバイ」でもなく、完全に「Bye-bye」である。
私もこんなふうに「Bye-bye」と、歌える女性になりたいと心底思う。
クレジットを見ると、参加している人も豪華でびっくり。
コーラスは世界のヤマタツ、大貫妙子、村松邦夫という恐るべきラインナップで(残念ながらさっき私が好きだと言ったA面4曲目のコーラスが誰かは記述がなかった)、B面3曲目はチャボさん作詞作曲であった。
そして今書いてて気づいてまた個人的びっくりなのが、丸山さんはこのソロの前はピピ&コットの元メンバーだったらしい。知らんかった。何がびっくりかっていうと、私が先月のコラムで紹介したライブ盤『泉谷しげる登場』のライブで、ピピ&コットが出演しているのだ。この時期はまだ丸山さんじゃなかったみたいだけど……。
マジでなんも知らずに書いてたから思いも寄らないところで、このコラムが先月からの続編みたいになってるのに途中で気づいて個人的に鳥肌たった。
今、冬の気配を感じられる少し冷えた自分の部屋でこのレコードをかけながら温かいコーヒーを淹れてコラムを執筆しているのですが、うーん、良すぎる。めっちゃ良すぎる。なんか、もはや泣けてきた。どの曲が好きだどーだとか言った今の話全部嘘かも。全部一番好きかも。ごめんみんな。
「実は春のレコード説」が先に浮上して、一時はどうなることかと思われたが、やはり冬の初め、秋の日にこの茶色いジャケットが映えるし、切ないサウンドも丸山さんの美声も、どーもこの少し乾いた寒い空気にめちゃくちゃ合うのです。冷たい風といっしょにスーッと伸びていく感じ。あるいは寒い部屋で飲むあったかい飲み物から出る湯気と一緒に、私を包んでくれる感じ。かなあ。
皆様もロージーめに騙されたと思って、ちょっと寒い秋晴れの日なんかに聴いてみてください。
きっと丸山さんの美しい歌声が寒くてなんだか切ないような日でも優しく寄り添ってくれると思います。
ではまた次回お楽しみに。サリュー
P.S.お気付きの方がおられるかは分かりませんが私が先月からやたら文章中急に文字をデカくしたりして抑揚をつけ始めたのは、完全に先月村上龍の『69』を読んだ影響です。
マジで面白すぎたので勝手にパクっています。すみません龍さん。今は同じく村上龍の『昭和歌謡大全集』読んでます。電車で一人で読んで、おもろすぎて笑い堪えられないのでもう開き直って爆笑してます。
世界中に愛と平和を
城戸“ROSIE”ヒナコ
© 2024 DONUT
2025年4月22日(火)
恵比寿リキッドルームにてワンマンライブを開催!
暴動クラブ INFORMATION
CDシングル「撃ち抜いてBaby,明日を撃てLady」
2024年12月4日リリース
※CDのみの発売で、配信等はありません。
収録曲:01.撃ち抜いてBaby,明日を撃てLady/02.あばずれセブンティーン/03.欲望/04.撃ち抜いてBaby,明日を撃てLady– Alternate version
1stアルバム『暴動クラブ』
2024年8月7日リリース
※CDのみの発売で、配信等はありません。
収録曲:1.とめられない/2. Born to Kill/3. ロケッツ/4. すかんぴん・ブギ/5. カリフォルニアガール/6. Roadrunner/7. まちぼうけ/8. いとしのクロエ/9. Voodoo Rag/10. チェルシーガール/11. C.M.C.
RECORD STORE DAY限定7インチシングル「シニカル・ベイビー」
2024年4月20日リリース
収録曲:シニカル・ベイビー/気になるお前 全2曲
配信シングル「恋におちたら」
2024年2月14日リリース
収録曲:恋におちたら/俺のあの娘 全2曲
7インチ・レコード「暴動クラブのテーマ」
2023年11月3日 レコードの日 リリース
収録曲:暴動クラブのテーマ/Money(That’s What I Want) 全2曲