中野ミホのコラム「まほうの映画館2」
■中野ミホ(Singer/Songwriter)のコラム「まほうの映画館2」
中野ミホが最新作から過去の名作まで映画を紹介します。
●プロフィール:中野ミホ/北海道札幌市生まれ。2009年に結成したバンド「Drop’s」のボーカルとして活動し、5枚のフルアルバム、4枚のミニアルバムをリリース。2021年10月にDrop’sの活動を休止後、現在はシンガー、ソングライターとして活動。ギター弾き語り、ベースを弾きながらのサポートピアノとのデュオ編成やドラムを加えてのトリオ編成など、様々な形態で積極的にライブ活動を行なっている。
●公式サイト:https://nakanomiho.tumblr.com
●中野ミホYouTubeチャンネル:https://www.youtube.com/channel/UCjvQfnXVg6hTd8C8D6PSQGQ
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第50回「革命の炎なんか消えてても、あなたは最高のパパ。ワン・バトル・アフター・アナザー」
2025.10.21 upload
『ワン・バトル・アフター・アナザー』(2025年:アメリカ)
原題:『One Battle After Another』
監督・脚本:ポール・トーマス・アンダーソン
キャスト:レオナルド・ディカプリオ/ショーン・ペン/ベニチオ・デル・トロ/レジーナ・ホール/テヤナ・テイラー/チェイス・インフィニティ ほか
公式サイト:https://wwws.warnerbros.co.jp/onebattlemovie/
※全国順次公開中
みなさまこんにちは。
長かった夏もようやく終わり、だいぶ秋になってきましたね。
私はこの季節になると体が喜んでいる気がします。深呼吸していきましょうね。
さてさて、今回は楽しみにしていたこちらを映画館で観てきました。
『ワン・バトル・アフター・アナザー』(原題:『One Battle After Another』)
2025年、アメリカの作品です。
監督・脚本はポール・トーマス・アンダーソン、出演はレオナルド・ディカプリオ、ショーン・ペン、ベニチオ・デル・トロ、テヤナ・テイラー、レジーナ・ホール、チェイス・インフィニティなど。
かつて世を騒がせた革命家集団「フレンチ75」のメンバーであったパット(レオナルド・ディカプリオ)は、組織のメンバーが逮捕されたのをきっかけに、今は一人娘のウィラ(チェイス・インフィニティ)とともにボブという名前で冴えないが平凡な暮らしを送っていました。だがそんなある日、16年前に妻でカリスマ革命家だったペルフィディア(テヤナ・テイラー)に異常な執着心を持っていた、かつて移民収容所の指揮官だったスティーヴン・ロックジョー(ショーン・ペン)がある理由から彼と娘を捕らえようと再び追いかけてくることに……!
かつての仲間や娘の空手の先生など、さまざまな人物の助けを借りながら娘を守ろうとするボブ。
果たして戦いはどうなるのか……というお話。
いやー! めちゃくちゃ面白かった!です。
そして不覚にも(?)泣いてしまったー。
ポール・トーマス・アンダーソン監督、そして役者みんな、超かっこいいなぁ。3時間ずっと、予想がつかない唯一無二の傑作でした。さすがすぎます。
最初に言ってしまいますが、とにかくパパ・ディカプリオが最高です。笑って泣けます……!
妻のペルフィデイアが企てた銀行強盗の失敗がきっかけで、娘とともに逃亡し別人として暮らし始めるのですが、16年後、ボブとして生きている彼は部屋着のガウンを着てソファーでダラダラ。
活動家の面影なんてなく、お酒とドラッグのせいで娘に叱られ、過保護なために娘の友達にもウザがられるパパに……。
でも誰よりも彼女を愛し、大切にしています。
突然訪れたピンチに必死で娘を守ろうとするも、組織の合言葉は思い出せないし、機敏に動けなくて逃げきれないし、めっちゃリアルな中年!
それでも超本気で叫んだり泣いたり落ち込んだりしてて本当に応援したくなるし、愛おしいです。
催涙ガスにもろにやられて水道で顔洗ったり、ロックジョーにスーパーで声かけられた時の恐れおののく表情とか、振り切ってるディカプリオ最高だったなぁ〜笑
そしてめちゃくちゃやばいのがショーン・ペン演じるスティーヴン・ロックジョー……。もう変態だし偏りがすごいし、歩き方や表情とか仕草も完璧にキモくてすごい!(とても褒めています)
なのにどこか単純で憎めなさがあるのも良いです。
加えて女性たちのかっこよさよ!
娘が生まれると活動をやめ、我が子に全力で愛情を注ぐパットとは対照的に、恐れを知らず、大胆でセクシーに突き進むカリスマ革命家の奥様、ペルフィディア。パットのことを愛しているがゆえに娘に嫉妬してしまう複雑な感情や怒りも抱えていて、とても激しい人物。
そしてその血をまっすぐに受け継ぐ娘のウィラ。
彼女のピュアで力強い、何も染まらないような眼差しがとっても印象的です。きっと本当は怖くてたまらなかっただろうに、最後までめちゃくちゃ勇敢に戦っていてかっこよすぎ!
忘れてはいけないベニチオ・デル・トロ演じるウィラの空手のセンセイも最高です。落ち着け、波を思い浮かべろと言う彼はいつだって余裕があって素敵です。私もこんな先生に教わりたい……。
という具合に、他にもかなりクセの強いキャラクターが登場してきます。
そしてPTA監督ならではの音楽も素敵。
Jackson 5やGil Scott Heronなどテンションのあがるチョイスにグッときます。
でもなんていうか本当、いわゆるアクション大作のようなのとは全く違っていて、じわじわ最高にかっこよかったなぁ。
PTA監督ならではの品と滑稽さ、美しさがあるように感じました。
フィルムで撮られた質感や色、左右対称の画面、あとやっぱりどこか70年代っぽい翳り?謎?の雰囲気。ヘンテコな合言葉やアナログな機械もとても好きでした!
『ザ・マスター』とかでも感じたけれど、普通の生活から一歩はみ出したような、人間の心理の偏りがちな部分とか危険な部分を淡々と滑稽に描いているのが怖くて面白いなー。
今作はそれに独特すぎるカーチェイス?の緊張感も加わって最強でした。オンボロ車を爆走させる父ディカプリオほんとによかったなぁ。
移民の問題、人種差別、正直自分は彼女たちより身近に感じられることは少ないけれど、自分の生きる世界をよくするために、おかしいと思うことに真っ向から中指を立てて行動するパワーは、すごい。でもそれと同じくらい、娘を愛して守り抜こうとするパワーもすごいよなぁ。
結局は、父と娘の、家族のまっすぐ揺るぎない愛に勝るものなし。クライマックス、ぎゅっと涙が出ました……。
本当に唯一無二の、最高に面白い映画でした!
ぜひ劇場で感じてほしいです。
それではまたね。
© 2025 DONUT

INFORMATION

EP『Bones』
2025年10月2日リリース(CD)
2025年11月19日リリース(12インチアナログ盤)
収録曲:01. So long/02. グリーンピース/03. ねずみの記憶/04. オレンジ/05. バニラ
※先行シングル「オレンジ」「So long」配信中
配信URL:https://music.apple.com/jp/album/bones-ep/1835359666
LIVE INFORMATION

中野ミホ Bandset Tour 2025「Bones」
11月21日(金)旭川 CASINO DRIVE
11月22日(土)札幌 PROVO
11月23日(日)静内 SPICE TIGER
11月24日(月)小樽 音とこだま(弾き語り)
11月28日(金)渋谷 7th Floor(ワンマン)
※ライブの最新情報はオフィシャルサイト、公式Xにてご確認ください。
■ 公式サイト:https://nakanomiho.tumblr.com
■ 公式X:https://x.com/miho_doronco12




