DONUT

がらくたロボット インタビュー
ジャンルなんてどうでもいいし、ガレージのシーンを盛り上げたいとか思わない。自分らはどういう表現をしていくか、ということだけです
――ヤマモトダイジロウ

神戸在住の3ピース・ガレージロックバンド、がらくたロボット。彼らは2012年10月、当時高校1年生だったヤマモトダイジロウ(vo>)を中心に結成。2014年にムラカミフウタ(ba)、イノウエタカヒロ(dr)が加入し現体制となり、2016年にデビュー。初期衝動あふれるサウンドと、激しさとロマンチックな両面を併せ持つヤマモトのリリックはライブで聴くとさらなる破壊力があります。ザ・フーやクラッシュの系譜を持ちながら、温故知新を体現する3人が今回、このイベントのためだけに下北沢へ。ここでは、1stフルアルバム『ツキノアリカ』リリース時にフリーペーパーDONUT FREE vol.12に掲載したインタビューの完全版ロングバージョンをご紹介します。

――がらくたロボットの始まりはいつですか?

ヤマモトダイジロウ 俺が高校1年の頃に、同級生と組んだバンドです。その次の年くらいには東京に行ったりなんだり、動いていって。

――バンドを組みたいと思ったきっかけは?

ヤマモト それは小学校3年の時にギターを持ってからずっと思っていて。で、中学に入った時もバンドは組んだんだけど、それは趣味の範囲で終わったんですよ。それで、高校に行くからにはもうそろそろ本気でやらんとな、と。でも、ギターを手にした瞬間から、「何かを表現してやりたい」とはずっと思っていて。

―― ヤマモトさんは現在21歳ですが、小学校3年でギターを手にしたとはずいぶん早いですよね。

ヤマモト 家にザ・フーのCDが転がってたし、もっと言えばもの心つく前、母ちゃんのお腹におる時からそういう音楽を聴いてきたようなもんで、自ずとそれに手が伸びたというか。

―― ロックンロールに目覚めた瞬間は覚えてますか?

ヤマモト あ、それはありましたね。言葉ではよう言えんけど「これや!」っていう。小学生の時なんて、自分のやりたいことなんて見つからないじゃないですか。けど、自分はこれ(音楽)に感じるものがあったというか。漠然とですけど。

―― 小学3年でザ・フーを聴いている友達はきっといなかったのでは?

ヤマモト いなかったです。でもロックとか音楽って基本、特別感があるやないですか。自分しか知らないもの。自分の秘密。「お前らは知らんやろうけど、俺は知ってんねん」。そういう気持ちだったから。

―― その、自分だけの秘密だったものが、バンドを組むことによって他人と共有することになりますよね。自分の中でのやりくりは、すんなりといきましたか?

ヤマモト 例えば自分で聴いてきた音楽がDNAになっていたとして、バンドはその吸収したものを真似じゃなくて、どう表現したいかだと思っていたのがまずあって。その上で、じゃあ、がらくたロボットは何を吐き出すか。俺ひとりの表現じゃなくて、3人でひとつの体というか。それがやっぱりバンドの面白さだと思うんで、バンドを組むことでとくに意識が変わったことはなかったですね。バンドって、やってみんとわからないじゃないですか。メンバーそれぞれの良さがあって、ギリギリのラインでぶつかった瞬間ががらくたロボットなんですよ。ひとり一人に吸収された好きなもんがぶつかって、擦れて擦れて生まれたもんがこのバンドの音。バンドで大事にしてるポイントはそこですね。

―― 今のこの3人の音が、求めるバンド像だったと。

ヤマモト 求めるバンド像って、あんまわかんないです(笑)。3人がそろったから必然的に「これでいこうや」って。求めるバンドを組もうとして、求めるバンドになるとは俺は思ってないんで。

―― 生まれたもの=がらくたロボットなんですね。

ヤマモト そうそう。例えば俺のためにみんなが集まってくれるならわからないけど、でも、バンドって少なくてもそうじゃないっていうのは絶対あります。

――音楽の趣味は3人とも同じなんですか?

ヤマモト いや、違いますよ。ところどころはかぶってますけど。それぞれがいろんなのを聴くから広がるし、だから面白いなあと思います。

――3人それぞれがそれを受け入れているのがポイントなんですね。

ヤマモト そうですね。やっぱりそれこそ高校の頃は「いや、俺はそれは好きじゃない」とか言ってたけど、いったん飲み込んでしまえばもっと面白いことが生まれるんじゃないかって。

―― そういうのが結果、このアルバムにも表れているんですね。

ヤマモト それはあります。

―― 1stミニ『GOOD BYE-THE SUN』は10代との決別、2ndミニ『BREAK OUT』は突き抜けた衝動が詰まった作品でしたが、今作『ツキノアリカ』も何か明確なテーマをもって制作に臨んだんですか?

ヤマモト そうですね。こういうロックをやってると「若いのに」とか「ガキのくせに」とか言われたりして。それを振り切るように、影を切るように走ってきたんですけど、『ツキノアリカ』はそのまんまのアルバムというか。いいことも悪いことも自分らの影と一緒に連れて歩いて行けるような、そんな感じ。だから「産叫」という始まりの曲で(このバンドが)産まれるために叫んでる。で、「ツキノアリカ」を探しに行く。そういうアルバムですね。俺らが見ている月は太陽に見せられている月で、見る人によっても角度によっても全然違う。けど別にそれでいいんちゃうかな、と。そういうテーマ。まあ、説明なんて本当は何でもいいんやけど(笑)。

――「産叫」にはヤマモトさんが本当に産まれた時の声も収録されていますが、そういう思いがあって“産声”じゃなく“産叫”なんですね。

ヤマモト やっぱ叫ぶんでね。「俺はここにおるんや」って。たぶん、俺が産まれた時はそう言っとったと思いますよ。

―― アルバム全体にも月というキーワードがちらばっていますが、表題曲の「ツキノアリカ」は、古くからある曲だと聞きました。

ヤマモト この曲は高校2年生くらいから作ってた曲で、ずっとやりたいと思ってたけどどうしても技術的に自分の表現したいイメージに追いついてこなくて。イメージが自分を超えてたというか。今回、やっと音源化できて嬉しいですね。

―― すごく思い入れのある曲なんですね。ヤマモトさんの中でツキノアリカが見つけられたから完成したんですかね。

ヤマモト まあ、そうでしょ(笑)。

―― 曲や歌詞を作る原動力はどこからくるんでしょうか?

ヤマモト いろんなとこからですね。それこそ世の中とか、今起こっているリアルなことからも、本や映画のフィクションの世界からも。全部ひっくるめて、今の時代だからこそ見えること、発するべきことがある。そこで自分の感じるものが曲になったりします。

―― ヤマモトさんの歌は“きみ”や“僕”が、いろいろなものにあてはまるように聴こえます。

ヤマモト うん。“きみ”って、人とは限らないですからね。とらえる人の見方で何でもいいし。

―― 自分にとって曲作りしやすい環境などはありますか? 例えば、さあ書くぞ、と机に向かうとか。

ヤマモト いや、それはなかなかできない。難しい(笑)。だって、真っ白な紙に「絵を描いてください」と一緒ですからね。やっぱり何か別のものから刺激を受けて、表現になる。自分の部屋にいて何かは生まれてこない。

―― 環境の変化はやはり影響するんですね。今回は東京でレコーディングしたんですよね。

ヤマモト はい。このアルバム出す前にシングルカセット3部作を作ったんですけど、マイクの立て方とか生々しい音にしたいとか、そういう話をしながらやってたので、それを踏まえて東京でドーンと録りました。ほぼ一発録りくらいでしたね。「せーの!」で。

―― じゃあ、わりとステージに近いイメージ通りの音が録れた、と。

ヤマモト そうですね。だいたい一緒やと思います。

―― メンバーとは何か構想を練ったり、話し合いはしたんですか?

ヤマモト それこそ「ツキノアリカ」をテーマに組もうか、という話ですかね。そこからどういう流れにしようか、とか。曲は全曲、俺が作ってるんで、それに対してこのアルバムでどういうアレンジをするかというのは、3人で練習の時に話してましたね。原曲はどうあれ、このアルバムとしてこの曲はどういう風にいかそうか、とか。あと曲順も。

――とくにこだわった点、苦労した点は?

ヤマモト これまでに比べて結構コーラスが多いところかな。で、俺が音程とかを気にする歌い方をしていないので、コーラスが困るっていう(笑)。

―― コーラスを入れる人が困る(笑)。

ヤマモト そうそう。どっちに合わしたらいいかって。あとはもう、音ですね。なんていうか、『BREAKOUT』ははちきれそうな、はちきれる寸前みたいな音に近くて。でもこのアルバムは空間がある音というか。その場に立っているような音。そういうのがいいなあと。それこそさっき言ってたカセットのレコーディングの時も、みんなで同じ部屋で真ん中にマイクを立てて、それでバランスをとって、みたいなやり方をしたりしていたので。音と、その周りに空気があって、その(音が鳴っている)空気を録るというか。

―― なるほど。たしかに『BREAKOUT』は衝動ど真ん中の音を浴びる感じでしたが、今作は曲調もバラエティに富んでいるし、いい意味で世界が広がって未知の部分が感じられました。

ヤマモト 音もそうだし、曲の並びも、それこそ波のようというか。どこで前に出るか、引くか、そういうのを考えましたね。

――すごくアルバム感のある曲順ですよね。

ヤマモト やっぱり自分の好きな音楽がそうだし、ベスト盤作ってるんじゃないしね。このアルバムやから入る曲で作ってるから。それに、レコードでもCDでも、買うた瞬間、ジャケを手にした瞬間からもうアルバムのストーリーが始まる。そういうの全部含めてパッケージされてる。ダウンロードとかは曲単品だけど、アルバムって本や映画と一緒で、物語というか作品としてここにある、という感じなんですよね。

―― レコードやカセットテープの話も出てきましたが、いわゆるアナログ作品を作ったのはなぜですか?

ヤマモト ひとつは、音がいい。聴こえない部分の音があるというか。そのはみ出してる音に、心臓を鷲掴みにするような温かさ、ダイレクト感がある。あとは俺らのサウンドによう合うし。

―― 普段からレコードやカセットを聴いているんですか?

ヤマモト そうですね。自分が聴いてきたものがやっぱり好きですからね。CDも聴くけど、やっぱレコードの音がいい。ジャケットもLPとかだと大きさとか重さも、特別感がある。

―― たしかにバンドの音とよく合ってますね。これまで、曲作りやバンドに向かう姿勢、考え方など変わったところはありますか?

ヤマモト いや、あんま変わってないですよ。ただ、より自分の曲を愛するようになったんちゃいますかね。1曲1曲に対して、もっとこの曲を知りたいというか。1曲1曲をもっと好きになったら、アルバムももっと愛さなあかん、となる。そうすると、作り方も変わるし。前よりもいっそうそういう気持ちは大きいと思います。

―― なるほど。たしかに今作ではこれまで以上に3人が音に向き合っている印象も受けました。では、作品ごとの変化みたいな部分は、どう捉えてますか?

ヤマモト 音楽とかロックってずっと変わり続けていくもの。変わらぬひとつの強いものがあるとしたら、それ出して終わりなんです。超必殺技で。それがパンクのひとつだったというのもあります。けど、俺はステイし続けるのは嫌いなんです。つねに飛び出して行きたいと思ってるし、いろんなとこに行きたい。だから俺的視点では、このアルバムは変わってないとも思うし、そういう意味では変化してる。

―― それを毎回、自分に課していく大変さもあるのでは?

ヤマモト 大変すかね? そんなもんやと思うんですけどね。同じこと続ける強さもあるけど、それもすごいパワーがいるもの。だから、どうであっても周りがどうこういう辛さはないですよ。3人ともやってるうちに自然とそうなっていくもんです。

―― 3人の呼吸は合ってるということですね。

ヤマモト バンドなんでね。ライブとかも言葉なくてもいいというか。音があれば。メンバーががらくたロボットにおるだけで、信頼してる。

―― 誰もブレーキをかけない、と。

ヤマモト その時は俺が行きます(笑)。けど、俺はつねに前に進んで行きたいし、そのスピードを緩めるわけにはいかんと思っているし。各々がそう思っていたら、そういうパワーにもなるんで。それだけでいい。別にバンドって、俺が行く道を追いかけてこい、っていうもんじゃないし。それぞれが向かう先で集合してるのが、バンドが持つパワーだと思うんですよね。

―― 自分たちの音楽で音楽シーンをひっくり返してやろうとか、思いますか?

ヤマモト 別にジャンルなんてどうでもいいんです。ガレージのシーンを盛り上げたいとか思わないし。自分らはどういう表現をしていくか、ということだけ。それが伝わる人が増えたら自ずと変わってくるはずなんですよ。なんていうか、流行に乗っかろうとしたらもう時代遅れなんですよね。その先におらんと。このアルバムが俺らをいろんなところに連れて行ってくれるのを信じてます。神戸とか日本とかどうこうじゃなくて、もうどこまででも。

―― そんなアルバムができたと。

ヤマモト そうですね。いいアルバムが日本に届きましたよ。

(取材・文/秋元美乃・森内淳)
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■ DONUT×Rock is イベント開催!
Rock is LIVE 5 2018.10.12.fri 下北沢ベースメントバー hotspring/がらくたロボット/錯乱前戦

<STAFF> WEB DONUT 3/2018年10月2日発行/発行・編集・WEB制作=DONUT(秋元美乃/森内淳)/カバーデザイン=山﨑将弘/タイトル=三浦巌/編集協力=芳山香

INFORMATION



がらくたロボット『ツキノアリカ』
2018年4月25日Release
¥2,500(Tax in)
収録曲: 1.産叫  2.Heartful Murder  3.Runaway  4.My Way  5.Oh Yeah  6.君を待ってる  7.STOP  8.Lazy Crazy Sunday  9.Strawberry Dreamers  10.Andy’s Trying (Andy’s Crying)   11.トンネル  12.ツキノアリカ

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