■REVIEW:『ザ・クロマニヨンズ ツアー JAMBO JAPAN 2025-2026』
ロックンロールの力を、120%示したライブアルバム
TEXT=森内 淳 PHOTO=柴田恵理
2026.07.22 upload
閉塞感の上に罵詈雑言が飛び交うような世の中であるが故に音楽は「親切で優しい言葉」であふれるのだろうが、道徳の教科書に載っているような言葉を連ねられても、捻くれ者のぼくには何も響かない。かえって気分が悪くなる。その対極にあるのがザ・クロマニヨンズの音楽だ。
ぼくにとって、クロマニヨンズの音楽はとても重要な位置を占めている。彼らが放つ音楽は生のエネルギーに溢れている。たとえその歌詞に意味を見いだせなくとも(本当はめちゃくちゃ意味がある)、だ。意味を求めることに意味はないとすら思う。とくにライブを見ているとそう思う。耳に飛び込んでくる爆音のなかにしか真実はないのではないか、と。
それが例え日常からの逃避であろうともかまわない。爆音はぼくの気分を確実に持ち上げてくれる。底なし沼に捕まった重たい身体を水面に浮かび上がらせる原動力にもなっている(そのかわりロックンロールという違う性格の底なし沼に飛び込むことになる)。
そもそもロックンロールとはそういう力を持っている音楽だ。裏を返せば、クロマニヨンズは紛れもないロックンロールを体現しているということになる。ぼくにとっては音楽、とくにロックンロールは生きることと密接に結びついている。もしもロックンロールに出会わなければ少年時代のぼくは孤独の重圧に負けていたにちがいない。いまも白旗をあげそうになるとき、クロマニヨンズのロックンロールがせせら笑ってくれる。それは大きな推進力になっている。
少年時代からライブアルバムを好んで聴いていた。ベスト盤の代替というよりも、ライブの臨場感を希求していた。スタジオ盤もいいけれど、ライブの粗粗しさに強く惹かれた。おそらく少年時代は田舎に住んでいたので、ライブに無縁だったからだろう。そのうち不完全性にリアリティを感じるようになった。いまも完璧なものよりも何かが欠落したもののほうに魅力を感じる。音楽がより生きているように聴こえるからだ。クロマニヨンズのレコードがかっこいいのは、ほぼ一発録りだからだと思う。スタジオ盤だけど、ライブに近い。そういうところにも惹かれるのだと思う。
これが今作のようなライブアルバムとなると、さらなる興奮が押し寄せてくる。暴力性が増すと同時に、楽曲に潜むロマンチックやポップや切なさの強度も増してくる。「キャブレターにひとしずく」や「フルスイング」「顔ネズミ」などのロックンロールナンバーはひたすら血がたぎり、例えば、21曲目の「ひどい目にあいながら下北沢」などはロマンチックと切なさのメーターを振り切ってしまう。さりげなくメンバー紹介なんかをやられては、エモーショナルな値も天辺まで届いてしまう。
ライブアルバムは映像がないところもいい。映像作品は記録としても(とくにクロマニヨンズの場合は)アートとしても成立している貴重なメディアではあるが、このアルバムに刺激された想像力が脳内に生み出す「映像」もまんざらではない。本物のライブにはかなわないかもしれないけれど、人の心のフィルムの性能はすごいのだ。『ザ・クロマニヨンズ ツアー JAMBO JAPAN 2025-2026』を聴きながら、皆さんなりのエキサイティングな時間をお過ごしください。
© 2026 DONUT
INFORMATION

『ザ・クロマニヨンズ ツアー JAMBO JAPAN 2025-2026』
2026年7月22日リリース
収録曲:01. Opening(JAMBO JAPAN 愛のテーマ)/
02. キャブレターにひとしずく/
03. グルグル/
04. 這う Part3/
05. チャンバラ/
06. どんちゃんの歌/
07. フルスイング/
08. グリセリン・クイーン/
09. イノチノマーチ/
10. 生きる/
11. ロックンロールエレキギター/
12. シカト100万%/
13. 空腹と俺/
14. 顔ネズミ/
15. 神様シクヨロ/
16. 暴動チャイル(BO CHILE)/
17. エルビス(仮)/
18. あいのロックンロール/
19. エイトビート/
20. ギリギリガガンガン/
21. ひどい目にあいながら下北沢/
22. 弾丸ロック/
23. タリホー/
24. ナンバーワン野郎!
■CD:初回仕様のみ紙ジャケット仕様 28P写真集付
■完全生産限定12インチアナログ盤(2LP):’60年代フリップバックE式盤を可能な限り再現。180g重量盤採用 28P写真集付
■収録曲の解説 TEXT=森内 淳
1曲目の「Opening(JAMBO JAPAN 愛のテーマ)」は登場のテーマ。毎回、似て非なるもののテーマが準備されている。2曲目の「キャブレターにひとしずく」から7曲目の「フルスイング」まではアルバム『JAMBO JAPAN』のA面の曲。最新アルバム収録曲を曲順通りにやるのはいまやクロマニヨンズのライブの定番に。ライブを楽しみたい方は最新作はマストバイ。8曲目「グリセリン・クイーン」は2009年リリースの5枚目のシングル。9曲目「イノチノマーチ」は2022年リリースの26枚目のシングル。ジャケットのイラストはさかなクンの作品。10曲目「生きる」は2018年リリースの17枚目のシングル。11曲目「ロックンロールエレキギター」から15曲目「神様シクヨロ」まではアルバム『JAMBO JAPAN』のB面の曲。16曲目「暴動チャイル(BO CHILE)」は2020年リリースの19枚目のシングル。17曲目「エルビス(仮)」は2015年リリースの14枚目のシングル。18曲目「あいのロックンロール」は2023年リリースの27枚目のシングル。19曲目「エイトビート」は2008年リリースの4枚目のシングル。20曲目「ギリギリガガンガン」は2007年リリースの3枚目のシングル。21曲目「ひどい目にあいながら下北沢」はアルバム『JAMBO JAPAN』のB面最後の曲。ここで本編は終了。22曲目「弾丸ロック」からアンコール。この曲は23曲目「タリホー」(2006年リリースのデビューシングル)のカップリング曲。最後の24曲目「ナンバーワン野郎!」は2011年リリースの9枚目のシングル。このアルバムはツアーのセットリストを丸ごと収録してある(但し公演によっては8〜10曲目とアンコール曲は異なる場合あり)。
DONUT INFORMATION
DONUT 20(表紙・巻頭:甲本ヒロト「旅をするレコード」)
ザ・クロマニヨンズの甲本ヒロト、フラワーカンパニーズのグレートマエカワ、ザ・コレクターズの加藤ひさし による各1万字に及ぶ熱いインタビューを掲載。さらに期待のバンド、錯乱前戦、暴動クラブ、自爆、YAPOOL、奏人心が登場。レジェンドからニューカマーまでロックンロールの現在地をたしかめながら未来を先取りする珠玉のロックンロール号が登場!
【表紙はザ・クロマニヨンズの甲本ヒロト】
今回のカバーはお気に入りのリロイ・カーのレコードを手に持って笑顔の甲本ヒロト。リロイ・カーの笑顔と甲本ヒロトの笑顔がシンクロするという表紙に(表紙撮影=柴田恵理)。
特設サイト:https://donutroll.tokyo/wd/20251110_donut20/





