
2025.08.27 upload
奏人心 第1回福岡ワンマンライブ 2025
“巻き起こる福岡の突風”
2025年8月22日(金) 福岡The Voodoo Lounge
オフィシャルライブレポートが到着!
●撮影=chiyori

福岡の突風ロックバンド 奏人心のはじめてのワンマン@福岡The Voodoo Loungeを目撃した。ニューEP「風がゆく若色の街」の曲を中心に、昨年11月のインディー・デビューEP「search感受youth」からも全曲、さらにまだ音源になっていない曲を加えて、全14曲、あっという間の60分だった。
驚くべきはバンドの成長だ。それまでは勢いだけで突っ走るライブで、初期衝動なんて言葉が軽く聞こえてしまうくらい激しく荒々しいライブだったが、この日の奏人心は違った。どこにも属さないサウンドで僕たちの前に出現した。まさにオルタナティブ=もうひとつの道で、ポップで時代性もあり、ニューグランジの熱情、インディーロックの強さもある。最初のシングル「昼でも星は光って」と、最新シングル「それがすべて」と、最新曲でまだ音源化されていない「SAYONARA」が、ひとつの物語としてつながっていて、変わらないものを持っているから変わり続けることができるということを実感させられるライブだった。
バンドとしての佇まいも変わった。ファーストEPはベース&ボーカルの永松有斗夢(以下、あとむ)が全曲Voをとっていたのだが、今回のEPからギター&ボーカルの山路あげは(以下、あげは)が収録曲の半分を書き、歌っている。ふたりとも声と歌い方に特徴がある。あとむの声には少年性のあやうさと儚さを感じる。あげはの声は宇宙まで突き抜ける人間力がみなぎっている。ふたりは混ざりあわない声だが、奏人心の音で歌うとピタッとくるから不思議だ。ライブでは向かって左があとむ、向かって右があげは。それぞれがリードをとる曲はもちろん、1曲の中でふたりが異なるパートを歌う曲も増えてきて、他に類を見ない奏人心の新しい看板となっている。

あとむとあげはの間には、煌びやかなルックスのドラマー 今橋一翔(以下、まさと)がいる。奏人心のグルーヴ・マスターであり、物語のあるサウンドの中心を担っている。最新EPに収録されている「ユース・キャンドル」のビートは通常のように2拍4拍でスネアが入るのではなく、変則的に変えることにより、物語に光を射し込む。さらにはエンディングの最も盛り上がるパートでも、通常のドラマーなら叩きまくるところ、2拍4拍のスネアのアタックを抜いて、場面転換を図ることにより、最高のクライマックスを演出している。
あとむの歌とダウンピッキングのベース、あげはの歌とフィードバックするギター、まさとの旋律を奏でるようなドラム。3つがあわさると突風が吹く。音の一つ一つがライブの光景になり、そこにリンクしていく思春期の終わりと青春のはじまりのリリックが、いまどこにもないロックとなって飛んでくる。
3人は高校生の時に同じ学校でバンドを組んだ。いっしょに同じ大学の同じ学部に入り、しかし、大学に行っていたのではバンド活動に支障をきたすことがわかり、3人でいっしょに大学を辞めて、奏人心にすべてを懸けている。学校や世の中になじめない3人がはじめたバンドは、テンプレートがなく、影響を受けているアーティストがいても影響はされていない。世の中の流れに入らず、SNSもあんまりやっていない。遠征先で台風や雪で帰れなくなり、所持金も底をついたり、ワンマンの前に真剣さのあまりはじめての喧嘩があったり、いろいろなことがあった。人より早く社会に出たから、日々の出来事を、歌にあるようにそれがすべてだと受け入れて、誰のせいにもしないで、すべてを自分たちで背負って進んできた。だから他のバンドが作ろうとしても絶対にできない、ジャンルやカルチャーやバックボーンでくくれない音ができている。生きている様が音源にもライブにもそのまま入っているのだ。
メンバー全員が今年20才になる。はじめてのワンマンは、これからはじまる長く劇的な物語のプロローグとなる、後々、語り継がれるであろう一夜となった。
来る10月1日には下北沢THREEにて東京で初ライブにして初ワンマン、しかもフリーライブに挑む。無謀である。でもこのバンドなら無謀も物語になる。お客さんが来ても来なくてもそこには必ず物語がある。いまを生きている僕たちにとってそれがすべてなのだから。

© 2025 DONUT
LIVE INFORMATION
DONUT presents
Imagination ErA 東京 イマジネーションの時代
日時:2025年10月1日(水) 18:00開場/19:00開演
会場:下北沢Three(https://www.toos.co.jp/3/)
料金:フリーコンサート(入場時に1ドリンク代必要)
整理券必要(電子チケット):イープラス(https://eplus.jp/soutosin-f/)
※入場希望の方はイープラスにて整理券(電子チケット)を発行してください。当日、整理券をお持ちでない方は整理券をお持ちの方の後の入場になりますが、満員の際はご入場をお断わりする場合があります。
特設サイト:https://donutroll.tokyo/wd/20251001_freelive/
問い合わせ:下北沢THREE 03-5486-8804
RELEASE INFORMATION
EP「風がゆく若色の街」
2025年8月6日配信リリース
収録曲:01.それがすべて/02.ユース・キャンドル/03.フィールドアンドサンセット/04.sin
配信リンク:https://friendship.lnk.to/cyaw_soutoshin
奏人心/「風がゆく若色の街」





