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2025.06.26 upload

Us(アス)Live Review
2025年5月13日・新代田FEVER公演

写真=Masashi Yukimoto
テキスト=秋元美乃

4月にライブ盤『ウィー・アー・アス!ライヴ・イン・ジャパン 2024』をリリースしたフィンランド出身の5人組、Us(アス)が5月11日、12日、13日に大阪・東京にて再来日公演を開催。ここでは5月13日、新代田FEVERでのライブの模様を当日の写真とともにお届けする。

昨年の「FUJI ROCK FESTIVAL ‘24」と直後の単独公演(このライブが先述したライブ盤となった)でロックンロール・ファンを虜にした彼らの再来日だけに、会場は開演前から熱気があふれていたが、BGMにミッシェル・ガン・エレファントの「スモーキン・ビリー」が流れるとその熱はさらに加速。フロアから大合唱が沸き起こった。丸々1曲この曲がSEがわりとなり、曲が終わるとともにメンバーが登場。ひときわ大きな歓声で迎えられた。この時点ですでに、ステージとフロアの間にはロックンロールの見えない絆のようなものが生まれていたように思う。
1曲目はお馴染みの人気ナンバー「Black Sheep」。テオ・ヒルヴォネン(vo&gt)のゴリゴリのカッティングを合図にのっけから凄まじいテンションの5人が分厚い音を放つ。パン・ヒルヴォネン(hca)のハーモニカも絶好調で、ステージ上はもちろん、彼が会場全体のムードを引っ張っていくムードメーカーだと一目でわかる。このハーモニカ担当を擁するバンド編成はUs(アス)の大きな特徴で、昨年のメールインタビューではドクター・フィールグッドの影響や、ジェイムズ・コットンやリトル・ウォルターがハーモニカを吹いていたマディ・ウォーターズのバンドにも影響を受けていると答えてくれていた。そして1曲終わると「ありがとございます」と全員が深々とおじぎをしてから次の曲へ。これはフジロックでもライブハウスでも変わらない彼らのスタイルで、ふとした仕草にもロックンロールの文脈が見え隠れする。



ボーカルとハーモニカのせめぎ合いも聴きどころの「I Wanna Be Your Lover」(ボブ・ディランのカバー)、音の厚みと情緒を響かせてサウンドに起伏をもたらせた「Just My Situation」(ジム・ペンブロークのカバー)、マックス・ソメルヨキ(gt&vo)がパワフルなボーカルを繰り出す「Got to Know」(ペン・リーのカバー)などバンドの幹の太さが楽曲に如実にあらわれる。性急なナンバーもメロウなナンバーも、レーヴィ・ヤムサ(dr)のドラムが曲の軸足を捉えて離さないので揺らぐことはない。加えて、レーヴィとラスムス・ルオナコスキ(ba)によるリズム隊の呼吸もばっちりで、他のメンバーがいかに突っ走ろうと、それもバンドの懐の深さとして聴かせる粋がある。




中盤、1曲のなかで次第にオープンコードに開けていくように景色を変えるナンバーや、ガレージの真骨頂を極めたようなリフの効いたナンバーなど、デビューアルバム『アンダーグラウンド・ルネッサンス』でもライブ盤でも聴いたことがない曲たちもあったが新曲だろうか。また、アコースティックセットでも2曲披露。昨年、テオが「バンドを始めたばかりの頃は、エレクトリック・ライブと同じくらいアコースティック・ライブをやってた。そうすれば、より多くの会場で演奏できるし、移動もとても簡単だったからね。今でもたまにアコースティック・ライブをやるけど、みんなとても楽しんでいるよ。実際、新曲ができるたびにアコースティックで演奏するようにしているんだ。そうすれば、曲自体がうまくいくかどうかがはっきりするから」と話してくれたのを思い出す。



ライブでとびきりキャッチーな顔を覗かせる「Hop on a Cloud」は歌とギターから始まり、次第にバンドの音が重なっていく。5人のグルーヴが音色を包むような聴き心地がとてもいい。こうしたポップさも、つんのめるロックンロールも、パンキッシュなガレージもブルースも、彼らは「古き良き」ではなく今に鳴らす音としてロックンロールに向かっている。ライブでの5人の爆発感が何よりもそれを物語っている。


「While You Danced」から間髪入れずに「Say Mama」の爆裂プレイで本編終了。アンコールでは「Night Time」「Manchester Night Blues」を披露。この流れはとくに白熱ものだった。彼らの大胆なアレンジにみえる音楽愛はさることながら、全身全霊でプレイするその姿を一目見たら、きっと誰もがUs(アス)の、そしてロックンロールのファンになることだろう。
あとから聞いた話だが、彼らはセットリストを決め込んでいないそうだ。あのスリリングなステージのなかで、5人はサウンドをとおして通じ合っている。そしてショウの数をこなしてきた自負はもちろん、先人たちへのリスペクトと、温故知新を重ねながらオリジナリティで切り開いていくパワーがある。
この日のステージでも発表されたが、彼らは今年のフジロックにも2年連続となる出演が決定している。鳴り止まないアンコールの声援が、フジロックでもふたたび飛び交うに違いない。



© 2025 DONUT


■ Pickup!
Usのライブ盤『ウィー・アー・アス!ライヴ・イン・ジャパン 2024』をフジロックのROUTE 17 Rock'n'Roll ORCHESTRAで共演する釘屋 玄(暴動クラブ)がレビュー!


https://donutroll.tokyo/wd/20250503_us/

LIVE INFORMATION

「FUJI ROCK FESTIVAL '25」
2025年 7月25日(金) 26日(土) 27日(日)
新潟県・湯沢町苗場スキー場
https://www.fujirockfestival.com

<Us(アス)出演ステージ>
①7月25日(金)※グリーンステージ
②7月25日(金)ROUTE 17 Rock'n'Roll ORCHESTRA (feat. 山下久美子、甲本ヒロト、釘屋 玄、US、Liam Ó Maonlaí)※グリーンステージ
③7月25日(金)Acoustic Set ※GAN-BAN SQUARE
④7月26日(土)※苗場食堂

■ Us(アス)インフォメーション
「usbandofficial」
公式サイト:http://www.usbandofficial.com/
日本公式サイト:https://www.sonymusic.co.jp/artist/Us/

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