DONUT


2025.2.14 upload

YAPOOL『Nouvelle Vague』インタビュー

若い子たちが『Nouvelle Vague』を聴いてさらにロールさせてほしい ―― 石川蓮(vo)
『Nouvelle Vague』は生きづらく思っている個人個人の革命になればいい ―― 水野公翔(gt)


「ケンドチョウライ」のイベントピックアップ(hotspringのボーカル・イノクチタカヒロとYAPOOLのボーカル・石川蓮との対談)につづき、今回が二度目の登場となった。そのときにも話が出ていたファーストアルバム『Nouvelle Vague』がついに完成。2月5日にリリースされた。ライブにおける圧倒的な熱量をスタジオで再現したような10曲のロックンロール・ナンバーで構成された作品になった。このアルバムを聴くと、hotspringが「ケンドチョウライ」でYAPOOLのライブに刺激を受け、奮い立たった理由がよくわかると思う。アルバムタイトルの「Nouvelle Vague」には、ロックンロールで新しい波を起こそうというYAPOOLの気概が込められているが、すでにその波はあちらこちらに波紋となって広がりつつある。各地で勢いのあるロックンロールバンドが頭角をあらわしているけれど、これがひとつの大きな渦になると、ロックンロールシーンは一気に面白くなると思う。彼らにはその起点となってほしいものだ。YAPOOLのメンバーは石川蓮(vo)水野公翔(gt)久留島風太(ba)オオサカユウヤ(dr)の4人。今回はボーカルの石川蓮と作詞作曲を担当しているギターの水野公翔に話を訊いた。

●取材=森内淳


ヌーヴェル・ヴァーグ/YAPOOL


■ 今のスタイルはライブを重ねることで突き詰めていきました

―― WEB DONUTでYAPOOLとhotspringのイベント「ケンドチョウライ」について石川さんとhotspringのイノクチさんに対談をやってもらって、実際にイベントを見に行ったんですが、YAPOOLのライブの熱量はすごかったですね。

石川蓮・水野公翔 ありがとうございます。

―― その対談のなかでもYAPOOLライブに刺激を受けて、急きょhotspringの「流行病」を書いたということをイノクチさんが言っていたんですけど、その気持ちが理解できました。

石川 いやー、嬉しいです(笑)。

―― そうやって各方面に影響を及ぼしているYAPOOLなんですが、結成してどれくらいになるんですか?

水野 丸3年くらいですね。

―― じゃその間、かなりライブを磨いてきたんですね。

水野 ライブはけっこうやりましたね。

石川 地方のライブが多いですね。各地に行ってライブというかたちがけっこう多くて。

水野 ライブは最初からガツンといけてたんじゃないかなあ。

石川 ただ、今みたいなYAPOOLのカラーが出たのは、けっこうライブを重ねていってからだと思いますね。

水野 たしかに最初はけっこう手探りだったかもしれないですね。YAPOOLはやりたいことが多すぎて、「いろんなジャンルの音楽をやっちゃえ!」みたいな。なんだろう、やりたいことはいっぱいあるんですけど、ライブをやっていくうちに、メンバーみんなが同じ方向を向き始めたという感じですね。

―― ライブの積み重ねがバンドの方向性を明確にしていった、と。

水野 そうですね。

―― 作詞・作曲は水野さんがやっているんですよね?

水野 そうです。

―― 今回の『Nouvelle Vague』はロックンロールな作品ですが、バンド結成当初はロックンロール以外にもいろんなジャンルの音楽を取り入れてみようという考えはあった、と。

石川 今でもあるよね。

―― あ、そうなんですね。

水野 ありますね。その考えは今でも全然、あります。ここからもっとYAPOOLは色彩豊かになっていくと思います。それについてはいろいろ考えています。

―― じゃあファーストアルバムはもう狼煙みたいな感じなんですね。

水野 そうですね。

石川 まさにそんな感じです。

―― YAPOOLはどうやって結成したんですか?

水野 元々みんな知り合いで、ライブハウスで知り合ったんですけど。YAPOOLを組む前にみんな他のバンドを組んでいて。とはいえ、素人に毛が生えたようなバンドだったんですけど。そんな感じで、今のメンバーは知り合い同士ではあったんですけど、たまたま同じタイミングでバンドが解散したり、脱退したりというのがあって。そこをYAPOOLのドラマーのオオサカユウヤっていう人間が、みんなに「俺の理想のメンバーだから」って、他の3人に声をかけて、YAPOOLができたんです。その当時、ライブハウスでライブを見てきたなかで、同年代で一番かっこいいと思ったメンバーをそれぞれ集めたみたいですね。彼のなかでのオールスターみたいな(笑)。

―― オオサカさんのメンバー集めが発端だったんですね。

水野 バンドの発起人はオオサカユウヤなんですよ。だから今でも、彼がいるからYAPOOLが成り立っているみたいなところはありますね。彼の存在は大きいですね。求心力があるというか。ムードメイカーだし……

石川 縁の下の力持ちだし。

―― だけどオオサカさんが曲をつくっているわけではないじゃないですか。どういう曲をバンドでやろうという話し合いはあったんですか?

石川 まあ1から10まで公翔が曲を作りきって、曲を出してくるわけではなくて、スタジオで4人の話し合いのうちに曲ができあがっていくパターンがあるので、ユウヤはユウヤで携わっている部分があるんですよね。

―― じゃあまず曲の原型があって、それを4人で補完しあってバンドの曲になっていったわけですね。

石川 そうですね。最初の頃はどんな感じだったっけ?

水野 俺、覚えてるよ。吉祥寺の練習スタジオだったと思うんだけど、最初はよそよそしかったね(笑)。

石川 そういった面もあったから、ライブを重ねていって、突き詰めていった部分が多かったのかなあ。


■ 中高生の頃は、スパイキーヘアと赤いモヒカンで街を歩いてました

―― 「BOY」という曲じゃないですけど、20世紀の終わりに生まれ落ちたみなさんがロックンロールをやるというのは素晴らしいことだと思うんですけど、実際、同年代のバンドのなかではけっこう孤立してたりするんですか?

水野 してますね!

石川 友達はだいぶ少ないです(笑)、YAPOOLは。

水野 友達が少ないのは俺個人の問題ではあるのかなと思うんですけど(笑)。それでいうとオオサカは友達が多いよな?

石川 たしかに(笑)。

水野 だけどやっぱりこういう感じの音楽をやっている人たちは少ないなあ、とは思いますね。

―― 例えば、水野さんはどういったきっかけでロックンロールにハマったんですか?

水野 きっかけはブルーハーツでしたね。ぼくと彼が幼馴染なんですけど……

石川 そうなんですよ。

水野 ブルーハーツを蓮の影響で聴き始めたと思うんですけど。ブルーハーツを聴いたおかげで、中学のときとか「パンク以外は●ね!」と思ってました(笑)。まわりはアイドルとか聴いていましたからね。

―― それはだいぶ孤立しますね(笑)。

水野 ブルーハーツを聴いて、パンクを掘るようになって、それで髪の毛を赤く染めてモヒカンにして革ジャンを着て、みたいな。

―― いいですね。気合入ってますね(笑)。

水野 めっちゃ浮いてたと思います。

石川 ぼくら、スパイキーヘアと赤いモヒカンで街を歩いてたんですよ(笑)。

―― はははははは。

水野 今、考えると、やばいですよね(笑)。めっちゃ田舎なんですよ。岐阜県の恵那市っていうところなんですけど。

―― 恵那市なら行ったことありますよ。

水野 えー、本当ですか?

―― 「中津川 THE SOLAR BUDOKAN」に行ったときに、一度、恵那市に宿泊しました。

水野 SOLAR BUDOKANには、高校生のときに蓮と一緒に行ってましたね。

石川 行ったね。

水野 地元でSOLAR BUDOKANのプレイベントがあって、それでチケットをもらって、それで行ったりとか。

―― 地元でフェスが開催されているような環境でも、同じような音楽の趣味を持つ友達や同級生はいなかったんですか?

水野 地元はいなかったですね。

石川 だから公翔とだけ、パンクの話をしたりとか。

水野 そうだよね。「ブルーハーツが影響を受けたのはなんだろう?」っていって、セックス・ピストルズとかザ・クラッシュとかラモーンズとかを聴いて。高校になってからミッシェル・ガン・エレファントと出会って。「あ、こういうバンド、好きだな」と思って。「ロックンロールをちゃんと聴こう」ってなって、「ロックンロールとパンク以外は●ね!」と思うようになりました(笑)。今でもありますけどね、そういう感じが(笑)。なんかねじ曲がっちゃったなあって感じですね(笑)。良くも悪くも(笑)。

―― まあ、そういった自分たちの心情や忸怩たる思いを「BOY」のように音楽で昇華させるという行為は健全ですよね。罵詈雑言をSNSに乗せることが日常になっていますけど、冷静に考えると歪ですからね。

石川 そうであってほしいですよね。

水野 「BOY」は聴く人にどう受け取ってもらえてもかまわないんだけど、つくった当初はけっこうまわりに歌うというよりも、自分たちに歌うというイメージで作りましたね。田舎の閉塞的なところで育って、いろんな不平不満と向き合う、みたいな。だからこれを歌えるのは幼馴染の蓮しかいないなあとは思ってます。

石川 そういう境遇を知っているからこそ、というのはあるよね。


■『Nouvelle Vague』が生きづらく思っている人たちの「革命」になってほしい

―― 『Nouvelle Vague』をつくるときに、どういうアルバムにしようという構想はありましたか?

水野 ロックバンドのファーストアルバムってめちゃめちゃ大事じゃないですか。勢いがあってかっこいいというのはマストで考えていて。それこそレコーディングしている最中とかも「この速いギターリフ以外、●ね!」とか思いながらやってましたね(笑)。「●ね!」とかあんまり言うとよくないか(笑)。

―― 伏せ字にしますので、全然、言ってもらっていいんですけど(笑)。

水野 今回のアルバムのジャケットは真っ赤なんですけど、これは「革命を起こすんだ!」という意味で赤にしたんです。革命色というか。そういう思想が強いとかじゃまったくないんですけど……

―― パブリックイメージとしてね。

水野 それは世間に対しての革命になってくれてもいいんですけど、10代の頃に俺が育った頃のときのような閉塞感とか、常に誰かに見られているようなところとか、そういう生きづらく思っている個人個人の革命になればいいなあとは思って作ってましたね。

―― 閉塞感を感じている10代や20代のリスナーはガス抜きが必要ですよね。

水野 ガス抜きになってくれたらいいですよね。

―― 『Nouvelle Vague』を聴いてライブハウスに行けば、ガス抜きになりますよね。

水野 そうですよね。

石川 本当にライブに来てほしいですよね。音源はもちろんですけど。

―― YAPOOLのライブは本当にいいですからね。石川さんはファーストアルバムを作るにあたって、何か思うところはありましたか?

石川 13歳とか14歳頃にロックンロールを聴いた衝撃は今でもあるので、若い子たちにぼくが受けた衝撃を受けてほしくて。それを繰り返していくうちに、また新しいロックンロールが出来上がっていくんだろうなと思うので、そういう意味でも、若い子たちに聴いてほしいし、これを聴いてさらにロールさせてほしいな、ということを思いながら、『Nouvelle Vague』の曲を歌いました。

水野 「Nouvelle Vague」という言葉も、意味はそのままというか、ニューウェイブというか新しい……なんと言ったらいいのかな……

―― ムーブメント? それはちょっと大げさですかね?

石川 ムーブメントも「Nouvelle Vague」という言葉に入ってるでしょ?

水野 うーん……そうですね……ムーブメントですかね(笑)。

―― 「Nouvelle Vague」の背景にはいろんなバンドと共闘していきたいという気持ちがあるんですよね。

水野 あります!

石川 もちろん!

水野 友達が少ないので、友達がほしい(笑)。それをムーブメントっていうのか。

石川 じゃないかな。

―― YAPOOLの『Nouvelle Vague』を中心に輪が広がっていけばいいんですからね。このアルバムに共感するバンドも少なくないはずですよ。

水野 それはちょっと作りたいですね。

―― このアルバムを聴いた誰かが心を動かして、ロックンロールバンドを作って、みたいな連鎖も起こるかもしれないですよね。とくにYAPOOLのように熱量の高いライブをやっていれば、その可能性は大きいように思います。

水野 あ、それはたしかにそうだ。

石川 そうなれば最高だな。

水野 若い子たちにはこのアルバムの曲をコピーしてほしいですね。YAPOOLの曲はそんなに難しいことをやっているわけではないので。

―― 最初の話に戻りますが、それを実践しているのが「ケンドチョウライ」というイベントで、YAPOOLとhotspringのイベントなんですけど、プラス1バンド、プラス2バンドのところで、どういったバンドと共闘して、どういったムーブメントを起こすのかが鍵だと思っています。

水野 イノクチさん、YAPOOLについてこられるのかな(笑)?


■ロックンロールに限らず、「いいな」と思う音楽をどんどん吸収して表現したい

―― まあ大丈夫でしょう(笑)。ところで、レコーディングはどんな感じだったんですか?

水野 スムーズと言ったらスムーズだったよね。

石川 曲によってじゃないかな。けっこう思いつきでいろいろやったりしたんですけど、いろいろ試してみましたね。

―― 一発録りではなくて……

石川 その逆ですね。いろいろやってみて納得できるところで完成させていきましたね。

水野 勢いを出すというのはまずあったんですけど、YAPOOLの熱をどう表現したら一番リスナーに刺さるだろうっていうことをいろいろ試しました。とくに「The Bogeyman」とか「Flower」とかはいろいろ試してみましたね。「ダーリン」もそうだな。「Flower」の歌詞はサビだけ俺が書いたんですけど、AメロBメロの歌詞は蓮が書いて。その兼ね合いとかもあって、けっこうプリプロでいろいろこねくり回しましたね。ドラムのパターンもいろいろ試して、いろいろ考えてやりましたね。俺個人の意見ではあるんですけど、一発録りの良さはもちろんあると思うんですけど。それも曲によりけりで、一発録りで完結してしまう曲であれば、絶対にそっちのほうがいいと思うんですけど、現代でレコーディングの選択肢がいろいろあるなかで「一発録りだ!」って言ってしまうのは、せっかく今の時代を生きているのに、選択肢を放棄しているんじゃないかなあって、俺は思ってしまうんですよね。とはいえ、一発録りが合う曲もあるし。例えば「午前二時Lady(La La Lee)」はほぼ一発録りで録ったし。

石川 そうだね、ほぼ一発だね。

水野 そうじゃない曲は、今は選択肢があるんだから、俺個人としては、いろいろやりたいね、とは思いますね。

―― それは探究心の表れでもあるんでしょうね。

水野 ビートルズが4トラックで一発録りをやったときも、どこにマイクを立てたらいい音で録れるのか、とか、そういう過程があったと思うんです。だから、録音方法そのものではなくて、そのときのレコーディング環境のなかで、どうやっていい音を録るかという、ビートルズの姿勢に影響を受けたというのはあるんですよ。だから、俺らも当時とは手法が違うだけで、マインドは同じなのかなとは思いますね。

―― そういう探究心が将来的に目指す音楽の幅にもつながっていくんでしょうね。

石川 音楽の幅は広がっていくと思います。

水野 もっといろいろやりたいことがありますね。

―― 具体的にはどういう音楽をやってみたい、というのはありますか?

水野 ダブみたいな音楽をやってみたいというのはあります。

―― クラッシュみたいな広がり方ですね。

水野 そうですね。ダブをYAPOOL流に解釈してやってみたいです。ロックンロールとかパンクは好きなんですけど、けっきょく、音楽のカテゴリーではなくて、エネルギーを感じたり生々しさを感じる音楽が好きなんだと思うんですよね。そういう音楽をやりたいんですよね。自分たちが「いいな」と思う音楽をどんどん吸収して表現したいな、とは思いますね。ファーストはわりと「ファーストだ!」っていうアルバムなんですけど(笑)、「YAPOOLはまだまだあるぜ!」と言いたいですね。

―― ロックンロールの熱量がMAXのYAPOOLのライブのなかにダブ的な要素を持つ曲が入ってくると、また世界が一気に広がりますね。その前に、アルバムツアーに期待しています。

水野 メンバーはみんな燃えてますね。なんと言っても、SHELTERでワンマンをやりますからね。大成功は間違いないでしょう(笑)。

――アルバムツアーの最終日の3月30日は下北沢SHELTERでワンマンライブなんですよね。

石川 SHELTERはやるしかないですね。

水野 バッチリですよ(笑)。ソールドアウトするでしょう!

© 2025 DONUT

RELEASE INFORMATION

1st Album『Nouvelle Vague』
2025年2月5日リリース
収録曲:01.ヌーヴェル・ヴァーグ/  02.The Bogeyman/ 03.レイトショー/ 04.Flower/ 05.ダーリン/ 06.午前二時Lady(La La Lee)/ 07.藁の上/ 08.チャイナタウンに背を向けて/ 09.BOY/ 10.トラヴィス

LIVE INFORMATION

「YAPOOL 1st Album Release Tour Nouvelle Vague Tour 2025」
2025年
2月08日(土)千葉・LOOK
2月14日(金)岡山・CRAZYMAMA 2nd Room
2月15日(土)大分・CLUB SPOT
2月16日(日)福岡・OP's
2月18日(火)兵庫・神戸VARIT.
3月13日(木)宮城・仙台FLYING SON
3月15日(土)群馬・the Groove TAKASAKI
3月21日(金)大阪・心斎橋BRONZE
3月23日(日)愛知・栄R.A.D
3月30日(日)東京・下北沢SHELTER(ワンマンライブ)

※ライブの日程や時間は変更・追加になることがあります。必ず公式サイトやSNSでご確認ください。
公式X:https://x.com/yapool_group

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