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2025.2.10 upload

フラワーカンパニーズ『正しい哺乳類』インタビュー

「正しい」という言葉自体をもう一回考えてみるのもいいんじゃないか、というね ―― 鈴木圭介
思いの強さというのは曲にあらわれるということを今回、初めて知りました ―― グレートマエカワ


フラワーカンパニーズがニューアルバム『正しい哺乳類』をリリース。ユニークなタイトルとジャケットデザインが目を引くこの新作は、人生の機微を紡ぐ物語がありながら、1曲目の「ラッコ!ラッコ!ラッコ!」や5曲目の「少年卓球」や8曲目の「I&You&He&She」のようにシンプルなロックンロールが存在感を示している。歌詞もきわめてシンプルで、これらの曲にはリスナーが想像力で補完できる「空白」がある。一見、多くを語ってはいないけれど、その奥にあるメッセージを掘り下げれば掘り下げるほど、興味深い。近作では、足し算よりも引き算によって、ロックンロールの魅力を提示してきたフラカンを象徴するようなアルバムになった。ラッコのこと、正しい哺乳類のこと、そして二度目の日本武道館公演のことについて、鈴木圭介(vo)とグレートマエカワ(ba)に訊いた。

●取材=森内淳


ラッコ!ラッコ!ラッコ!/フラワーカンパニーズ


■鈴木が全曲作るほうが絶対に面白いものができると思った

―― 手応えのある素晴らしいアルバムができたんですけれども。

鈴木圭介 ありがとうございます。

―― まずはお二人に感想をお聞きしたいんですけど。

鈴木 いろいろ取材とかしていただいてて、やっと手応えを感じてるところです(笑)。

グレートマエカワ 最近、あちらこちらで調子がいいということを言ってるんですけど、それがそのままアルバムになったかなあという感じがしています。

―― たしかにバンドの調子の良さは感じます。

マエカワ 前回の『ネイキッド!』もそんな感じがあったんですけど、それがより強くなったかなあという感じがしますね。

―― 今回は全作品、鈴木さんの作詞作曲作になりましたが、これは鈴木さんのなかで何か思うことがあったのですか?

鈴木 いや、全然……。

マエカワ むしろ僕が思うことがあって。

―― マエカワさんが?

マエカワ 最初、鈴木が何曲か持ってきてみんなでリハで合わせて、次の週、僕からも何か曲を出そうかなと思っていたら、そこでまた鈴木が5曲くらい持ってきて。それがまたいい曲で。いつも通り僕も何曲か用意していたりしてたんですけど、僕の曲というのは骨組みなので、そこから曲を完成させるのに時間がかかるんですよ。それをこれからバンドで作っていくより、鈴木のほうですでにこんなにたくさんいい曲ができているということは、このあともまたできるかな、という期待も含めて(笑)、今回は鈴木が全曲作るほうが絶対に面白いものができるんじゃないかな、と思って、曲を作るのも提出するのもやめて。最近のアルバムのなかにはジャムセッションから作る曲もあるんですけど、それもやらなくていいんじゃないかな、と思って。そうるすことで、鈴木の調子の良さがアルバムの調子の良さとして出るんじゃないかな、と思いましたね。

―― マエカワさんとしては、あえて曲を出さなかった、ということなんですね。

マエカワ 時間がもったいないとかじゃなくて、その時点で、いいものができているから、そこに「いや、こんな曲もあるんだけど」ってやらないほうが、勢いのあるアルバムになるんじゃないかな、と思ったんですよね。

―― 鈴木さんは絶好調だったんですね?

鈴木 いやいや、絶好調というか……まあ好調であることは間違いないんですけど(笑)、絶好調とまではさずがにねえ……まあ「今が旬」って言ってるくらいですから、まあまあ好調ではありますよね。

―― フラカンはものすごい数のライブをやっていますが、鈴木さんはいつもどういうタイミングで曲を作ってるんですか?

鈴木 ツアーとツアーの合間ですかね。ツアーと言っても一ヶ月出ずっぱりとかではないので。ただ忙しかったのは忙しかったんですけど、夢中になって曲を作っていたので、それすらも覚えてないというか。曲を作り出したら、そうなっちゃったというか。

―― 鈴木さんが夢中になって曲を作ったということがよく出ている作品になりましたよね。

マエカワ そうですね。


■ラッコが可愛いだけじゃなく、違う意味にとれるところがいい

―― とくに1曲目の「ラッコ!ラッコ!ラッコ!」。これは名曲なんじゃないかと思っています。

マエカワ 本当ですか? ありがとうございます(笑)。これもまたいろいろな意見もあると思うので(笑)。

―― シンプルなロックンロールとシンプルな言葉で、ただ生きることを生きることの素晴らしさを表現した曲だと勝手に解釈しているんですが、それを象徴するような「ラッコ!ラッコ!ラッコ!」という、多くを語らない、一見、意味のないようなタイトルがまた曲にすごくフィットしているなあと思いました。鈴木さんはこのタイトルをどうやって思いついたんですか?

鈴木 何も考えてないんですよ。ここ2年か3年くらい、ラッコが好きで、ラッコにハマってるんですね。

―― ラッコにハマってる?

マエカワ そういうことなんです(笑)。

鈴木 それをそのまんま歌にしたということなんです。

―― どうしてラッコなんですか?

鈴木 可愛いからです(笑)。

マエカワ 単純な理由なんですよ(笑)。YouTubeで見たら可愛かったからハマったっていう(笑)。50歳を超えて初めて推しができたって言ってるんですよ。これはなかなかのことですよ(笑)。

鈴木 実際にラッコを見に行ったりして。最初はYouTubeで、そこから現場(水族館)に足を運び、いろいろ文献を調べ……

―― 文献ですか……

鈴木 ラッコの生態について調べていると、また興味がどんどん湧いてきて、今、頭の半分がラッコになっていて、それを歌詞に書いて曲を出そうかなというつもりもなかったんですけど、なんかこんな曲ができちゃったんですけど、みたいな。ライブで2〜3回やれたらいいなというノリでメンバーに提出したら、意外に「いいんじゃない、これ」っていう反応だったので「じゃあ、アルバムに入れよう」って。

―― 鈴木さんはラッコを深掘ってるんですね。

鈴木 沼ってますね(笑)。調べれば調べるほど不思議な生き物なんですよ。元々はイタチなんですね。川にいたらカワウソになって、海に行ってラッコになったという。英語では「海のカワウソ」という意味の「sea otter」と言うんです。何しろ珍しいのが手を使うところらしいんですよ。手を使ってモノを食べるんですよ。

―― 前足じゃなくて、あくまで手だという。

鈴木 そうなんです。モノをとるときも手でとるんですよ。あと珍しいのは「お腹を出して寝る」ということなんです。哺乳類の動物でラッコだけなんじゃないかという。

―― 無防備なんですね。普通、動物はお腹を隠しますよね。

鈴木 お腹は一番守るべき場所なんですよね。犬がお腹を出すということは完全に飼い主に信頼しているということですよね。野生でお腹を出して寝るというのは珍しいんですよ。そういうことをいろいろ調べだすと面白くて。なんでこんな生き物が今まで絶滅せずに生きてこられたんだろうな、という。

―― 今の話ではないですけど、「ラッコ!ラッコ!ラッコ!」を聴いたときに、さっきも言いましたけど、生きることを生きることの尊さみたいな、ひじょうにシンプルなメッセージに行き着いたところがいいなあと思っていて、「生きることを生きるのが正しい哺乳類だ」というふうにも受け取ったんですよね。

マエカワ ラッコにハマってるものだから、鈴木はステージのMCでもラッコの話をしていたんですよ。それでMCが長くなったりもするんですけど(笑)、「ラッコ!ラッコ!ラッコ!」という曲自体がすごくいいのと、歌の内容も、ただラッコの生態を歌ったり、可愛い可愛いって言ってるんだけど、それだけじゃなく、違うふうにとれるところがいいなあと思っていて。しかも別に難しいことを言っているわけじゃないし。そこが素晴らしいと思う。

―― 言葉はシンプルなんだけど、メッセージは深いんですよね。

マエカワ そう思うんですよね。

―― まあ生きてるといろんなことがあって、歳をとっても、自暴自棄になることもあるんですが、ふと生きることを生きるというところに立ち返ると、ちょっと気が楽になるというか。これが哺乳類の正しいあり方なんじゃないか、と思ったときに、「このアルバム、深いぞ」ということになったんです。

鈴木 それでいうと、今、「正しい」という意味をすごく問われているというか。昨今のテレビの記者会見とかではないですけど、あそこで質問している人はおそらく正義だと思って質問しているわけですよね。でも、見ていてすごく気持ち悪いじゃないですか。それぞれの正義をぶつけ合っているんですよね。正しいをもっと突き詰めると正義にもなると思うんですけど、「正しいっていうのは何なのだろうな?」というのが自分でもよくわからないんですよ。それを問いたいというか。このアルバムで答えを出しているわけでもなく。

―― そこの自問自答はありますよね。だけど、おそらくラッコは正しいんですよね。

鈴木 ラッコは正しいですね。

―― 僕らはそれこそあるのかどうかわからない正しさを巡って、ぐだぐだとやってるんだけれども、ラッコはそういうものを超えて生きていることを生きているという。そこが面白かったというか、痛快でしたね。

鈴木 ラッコを見てみろよ、という(笑)。


■人が思ってる力は作品に何らかのかたちで出る

―― あと、2度目の日本武道館公演を前にして、シンプルなロックンロールサウンドと歌詞に立ち返る様がすごくいいなあと思いました。

鈴木 4ピースバンドなので、あんまり音を詰め込まないというのは、ここ何作かのアルバムでやっていることなので。ライブで再現しやすいように、曲の隙間は隙間として入れておくことが一番いいんじゃないかなあとは思っているんですよね。すごくいろんな音を詰め込んだり、音を同期させるバンドのほうが、むしろ多いので、それをやらずに作ったらどうなの?っていうことを、ここ何作かで試しているので、今回のアルバムもそれの延長なんです。

マエカワ それがやっぱり面白いんでね。そうすることによって、声も含め楽器もドンって出てくるから、それが一番というか。それがライブバンドとしての音なんだろうなという。それをそのままやっているんですよね。それでいうと、前作の『ネイキッド!』のほうが隙間が空いていたところもあるんですが、ただ今回のアルバムのほうがギターアレンジにしても、もうちょっとシンプルでいいんじゃないか、というふうに小難しくしないようにしたところもあったし、歌をドンと出した曲もあったんですよね。そうすることでソリッドな聴こえ方になったりとか。そこら辺は前作よりも押し進めたところではありますけどね。

―― 「ラッコ!ラッコ!ラッコ!」はまさにそれを象徴していたんですけど、5曲目の「少年卓球」も同じような意味で、いい曲で。

マエカワ 「少年卓球」も鈴木が中学のときに卓球部だったんです。

鈴木 卓球少年だったんですよ。

―― あ、そうだったんですね。

マエカワ 「ラッコ!ラッコ!ラッコ!」と「少年卓球」のことを取材でいわれることも多いんですけど、その2曲が特別かといったら、11曲全部が特別なんですけど、その2曲の濃さというのは、やっぱり鈴木の思いが強いんでしょうね。中学の多感な時期に卓球をやってりゃ、歌のテーマになるだろうなと思うし、ラッコも大好きとなれば、その思いの強さというのは曲にあらわれると思うんですよね。それを今回、僕は初めて知ったというか、人が思ってる力は作品に何らかのかたちで出るんだろうなあっていうのを、今、感じてますね。

―― 最初にこのアルバムを聴いたときに、まずこの2曲が刺さりました。

鈴木 実は今、第2次ラッコブームといわれているんですよ。今、日本に2頭しかいないんですけど。

―― え、ラッコって2頭しかいないんですか?

鈴木 そうなんです。鳥羽水族館に2頭しかいないんです。

―― 昔、池袋のサンシャイン水族館にうじゃうじゃいましたよ。

マエカワ いたみたいですね。サンシャインで見たっていう方にこないだも会いました。

鈴木 昔は日本に122頭いたんですよ。それが2頭になって。この先は輸入もできないんですね。だから日本でラッコを見られなくなると言われているんです。

マエカワ 絶滅危惧種みたいになっているんですよね。

鈴木 僕も3年くらい前までは知らなかったんですよ。そういう現実を知って、鳥羽水族館に行ったら、行列がすごいんですよ。それで第2次ラッコブームと言われているんですよ。で、今、空前の卓球ブームなんですよ。張本(智和)と(早田)ひなちゃんというヒーローが現れて、伊藤美誠と平野美宇のみまちゃん・みうちゃんもそうですし、引退しましたけど、(石川)佳純ちゃんもいて、空前の卓球ブームで、曲を出すならここしかないというタイミングなんですよ、実は(笑)。

―― 単に鈴木さんの趣味を歌ったわけではなく、ちゃんとトレンドにアジャストしてるわけですね(笑)。

鈴木 後付けかもしれないですけどね(笑)。ラッコブームと卓球ブームはたしかにきてるんですよ。卓球に関しては、やっと卓球が認められた、という思いもありますし。

―― 真面目な話、エンタメってそういう偶然は大事ですよね。それから「少年卓球」で刺さったのが「言葉よりも信じられた青春のピンポン」という一節で、言葉にいちいちツッコミを入れたり、言葉だけで人格のすべてを判断されるようなSNSに感じる違和感に対してこの一節がひとつの回答を示していて。相手が誰だかわかんないのに言い合ってるんじゃないよという。

鈴木 そうですね。

―― あと「星のブルペン」もすごくいい曲で。

マエカワ いい曲ですよね。

―― 「アクリル絵の具じゃでない絶妙なくすみ方」という一節があって。0か1で割り切れないものの積み重ねで人は形成されているわけで。

鈴木 自分らにも重ねているというか。若いバンドだったら原色のアクリル絵の具でバーって塗れるんでしょうけど、僕らは歳を重ねたバンドなので、そういう色は出せないかもしれないけど、長いことバンドを続けていれば、そういう絶妙なくすみ方もあるかもねということを歌ったんです。

―― そういう意味合いもあったんですね。一方では、さっきのSNSの話ではないけれど、白か黒かっていう風潮もあって……

鈴木 そうですよね。グレーはちょっとっていうところはありますよね。

マエカワ だからみんなが困っちゃうんですよね。みんながみんな白黒つけようになっちゃってるから。誰もがいい悪いがあって、それの積み重ねですからね。デジタル世代の特徴なんじゃないですか。0か1かっていうのは。

鈴木 議論もしないじゃないですか。コスパが大事なので議論も短くというか。

―― そういう風潮に対しての憂いだったり、ポジティブなメッセージだったりとかが、このアルバムで散見することができます。

鈴木 そうですね。結果、出ちゃったって感じなんですよね。別にそういうものを出そうと思って作ったわけじゃなく、そういうことを感じているからそういう歌詞が出ちゃったということでしょうね。感じているままに作っているので。

―― 「モノローグでもの申す」もそうだし「アイデンティティ」もそうだし。

鈴木 そうですね。

―― 日々を生きる上で感じたことを書いていたら、『正しい哺乳類』になったわけですね。

鈴木 「ラッコ!ラッコ!ラッコ!」も含めて(笑)。

―― 「ラッコ!ラッコ!ラッコ!」も「少年卓球」も「モノローグでもの申す」も「アイデンティティ」も今のフラカンの視座で歌われていますよね。

マエカワ そういう曲が入っているので、『正しい哺乳類』というタイトルはまとまりがいいというか、よくできているなあと思うんですよ。それが『正しい哺乳類?』みたいに、本当に正しいのかはわからないんですけど、「自分らはこれが正しいと思ってやってます」というところを出せたと思いますね。

鈴木 「正しい哺乳類っていうのは何なのか?」という問いかけもあるんですけどね。「人間が正しいのか?」とか。そもそもね。

マエカワ それを考えだしたら正しくないとも思っちゃいますからね。


■ライブには絶対の自信があるので、武道館では、そこを見てほしい

―― いろんな問いかけを含んだこの「正しい哺乳類」という一節をアルバムタイトルにした理由はあるんですか?

鈴木 これは最後の最後に「これでいいんじゃない?」っていうことになったのかな。

マエカワ まずツアーのタイトルを決めようということになって、鈴木に「何か考えて」と言ったら、「正しい哺乳類」というのが出てきたから、「いいね」って。「その一節を抜き取ったのはいいね」って。「アルバムタイトルも『正しい哺乳類』以上のいいタイトルはないかもね」ってなって、「これにしよう!」となりましたね。

鈴木 「正しい哺乳類」というフレーズは自分のなかでキラーフレーズなのかなと思ったんです。

―― 「正しい哺乳類とは?」みたいな問いかけをするのは面白いんじゃないか、みたいな?

鈴木 問いかけというと大げさですけど、「自分に対しての」という意味においては問いかけかもしれませんね。「正しい」という言葉自体をもう一回考えてみるのもいいんじゃないというね。そういう自問自答も全部アルバムタイトルには入ってるんです。

―― 我々はぐちゃっとした生き物ですからね。ぐちゃっとしてるところを肯定していきたいですね。

マエカワ たしかにぐちゃっとしてますよね。

鈴木 だから全然割り切れてはいないんですよ。

―― ぐちゃっとしているわりにはジャケットデザインはパキッとしてますよね。

マエカワ ジャケットはパキッとしてます(笑)。これはわかりやすいです。

鈴木 動物図鑑みたいな感じにしたかったんです。まあでも、ぐちゃっとしていると言えばぐちゃっとしてますけどね(笑)。

―― たしかに哺乳類の皆さんでずいぶん混み合っていますよね(笑)。

マエカワ 最初はもっと(動物の数が)少なかったんですけどね。もうちょっと足していったほうが面白いかな、と思って、これを足してってリクエストしたんだよね、たしか。

鈴木 僕はナマケモノとコアリクイを入れてってリクエストしました(笑)。好きな動物をどんどん入れていくと、どんどん増えていきますよね(笑)。

マエカワ 初めはメンバーも入っていなかったんですけど、メンバーは入れとかなきゃって。

―― メンバーが入っていたほうが俄然、ジャケットの意味が深くなりますよね。

マエカワ そうですよね。ただメンバーを入れたときに、普通、ジャケットの中心には鈴木がくるはずなのに、ラッコが真ん中に来てますからね。

鈴木 センターにラッコが来てるのが最高なんですよ。

マエカワ 鈴木が初めてセンターを譲ったという(笑)。フラカンというバンドの塩梅が詰まっていると思うんですよ。かといって、ちゃんと主張があるので。

―― アルバムの中身もそうですけど、こういったクリエイティブひとつとってみても、バンド活動を積み重ねていくうちにどんどん突き抜けていく感じがありますよね。

鈴木 いろんなものを削ぎ落とすというか、シンプルにだんだんなっていくというか。

―― この流れのなかで、9月20日(土)に日本武道館公演という大きなライブが控えているんですが、2015年に続く、10年ぶりの武道館公演という。

マエカワ そうですね、10年ぶりですね。いつかはやろうと前から思っていて、それこそ10年前から「いつかまたやれるといいなあ。状況がよくなったら絶対にやろう」と思ってたんです。だからといって、CDが急に売れるわけはないし、年間100本近くライブをやっていて、急に動員が増えるというわけでもないんですけど、この2〜3年、バンドの調子の良さというのをすごく感じてたから「ここでやらなきゃ」という。

―― なるほど。

マエカワ もしかしたら60歳くらいになって状況がよくなる可能性もあるし、逆にバンドがなくなっちゃう可能性もあるし、何が先にあるのかわからないじゃないですか。そうやって考えたときに、35周年の流れで、けっきょく36周年なるんですけど、バンドが調子いいときに一回やってみたら、次の景色がまた見えるだろうな、と思って。それで、みんなに「武道館でやらない?」っていう話をしたんです。

―― そのときはどういうリアクションだったんですか?

マエカワ 「え!?」っていう感じも、もちろんあったんですけど、「無理だろう」みたいなね。でも、それが普通の反応だと思うんですよ。「もしも発表する前に知っていたら、止めてたよ」と、どこかのイベンターの人にも言われたりもしたし。それは僕も重々わかっているんですけど、もしも興行的に大失敗しても死ぬわけじゃねえなっていうのもあったし、なんとかできると思うところもあったから、みんなに「考えてみてよ」と言ったところ、結果「やろうか」って。

―― 近作に象徴されるようなバンドのいい状態をたくさんの人に見てもらおう、ということですよね。

マエカワ そうです。そこが一番だと思います。

―― バンドの好調さは浅草公会堂での着席ライブでも感じました。

鈴木 やっててもすごく面白かったです。

―― 会場の都合もあって、着席がマストだったので、じっくりと楽曲と向き合えたライブでした。

マエカワ 今までこういうライブをやったことがなかったですからね。

鈴木 今までなかったですね。

―― じっくりと聴ける曲を選曲して……

マエカワ そういう曲もフラカンのひとつの世界なんだけど、それだけをクローズアップすることは今までなかったですからね。どうしてもね、ロックンロールバンドの側面を前面に出すバンドだと思ってるし。だからああいうライブを浅草でできたのはバンドにとってもデカかったですね。

鈴木 お客さんの評判もよかったと思います。

マエカワ 普段、聴けない曲もたくさんやったので。

―― ああいう見せ方もできるところに今のフラカンはいて、だからこそ日本武道館という象徴的な場所で再びライブをやる意味もあるというか。

マエカワ 武道館は失敗することは考えていないので(笑)、一人でも多くの人に見てもらいたいですし、そうするためにはどうしようかっていうことは、あと何ヶ月間で考えますけど、それとライブのクオリティは別なんで。ライブには絶対の自信があるので、そこを見てほしいですね。

© 2025 DONUT

RELEASE INFORMATION

20thAlbum『正しい哺乳類』
2025年1月22日リリース
収録曲:01. ラッコ!ラッコ!ラッコ!/ 02. アイデンティティ/ 03. ラー・ブルース/ 04. アメジスト/ 05. 少年卓球/ 06. 疑問符の歌/ 07. モノローグでもの申す/ 08. I & You & He & She/ 09. ミント/ 10. 星のブルペン/ 11. 愛の間の間

LIVE INFORMATION

「正しい哺乳類ツアー2025」
2025年
2月13日(木)大阪・FANDANGO
3月01日(土)新潟・CLUB RIVERST
3月02日(日)埼玉・HEAVEN'S ROCK さいたま新都心 VJ-3
3月13日(木)岡山・PEPPERLAND
3月15日(土)鹿児島・SR HALL
3月16日(日)福岡・BEAT STATION
3月20日(木・祝)青森・Quarter
3月22日(土)宮城・darwin
3月23日(日)福島・OUTLINE
4月05日(土)愛知・ElectricLadyLand
4月06日(日)石川・Kanazawa AZ
4月12日(土)北海道・札幌PENNY LANE24
4月19日(土)広島・CLUB QUATTRO
4月29日(火・祝)大阪・BIGCAT
5月02日(金)東京・SHIBUYA PLEASURE PLEASURE
5月11日(日)群馬・高崎CLUB jammer’s
5月17日(土)大分・T.O.P.S Bitts Hall (2月11日の振替公演
8月09日(土)愛媛・WStudioRED (2月9日の振替公演
8月10日(日)香川・高松DIME (2月8日の振替公演


「フラカンの日本武道館 Part2 〜超・今が旬〜」
日時:2025年9月20日(土) 開場15:30 / 開演16:30
会場:日本武道館
チケット料金:全席指定 7,800円(税込)
※4歳以上有料。3歳以下のお子様は、保護者1名につき、膝上観覧であれば1名まで無料。(但し別途席が必要な方は有料)
※中学生以下で座席を購入されたお子様は公演当日、窓口にて2,000円キャッシュバックいたします。保険証等、年齢のわかる身分証をご持参ください。
一般チケット発売日:2025年3月29日(土)
主催:フラカンの日本武道館実行委員会


※ライブの日程や時間は変更・追加になることがあります。必ず公式サイトでご確認ください。
公式サイト:https://flowercompanyz.com/

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