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2024.11.26 upload

hotspring / YAPOOL
「ケンドチョウライ」インタビュー

3日間のうち2日くらいは「あ、負けた」みたいな感触があって。それで俺らけっこうムキになってひとつ抜け出せたような感じがありました―― イノクチタカヒロ(hotspring)

hotspringとYAPOOLがしのぎ合いをやってるところを見ているお客さんは絶対楽しいだろうなあっていうのがありますね―― 石川蓮(YAPOOL)

前回、hotspringのイノクチタカヒロにインタビューしたときに、2023年にやったhotspringとYAPOOLのスプリットツアーがいかに自分たちの糧になったかを力説された。告知解禁があったので掲載は省いたがイノクチは「今年もやるんです」といった。彼らのスプリットツアーのタイトルは「ケンドチョウライ」という。ケンドチョウライ(捲土重来)とは「一度敗者となった者が一旦引きさがり、勢いを盛り返して意気込んで来ること」という意味がある。コロナ禍で勢いを失ったロックンロールバンドの逆襲と捉えればこれ以上にいいタイトルはない。コロナが落ち着いてフィジカルな音楽が盛り返している実感があるという前回のイノクチタカヒロのインタビューを考えても、このイベント名はロックンロールシーンの状況を投影しているかのようだ。最近では10代のロックンロールバンドから「ケンドチョウライ」に出たいという打診もあるという。まだまだ規模は小さいが、ライブハウスシーンで「ケンドチョウライ」は少しずつではあるがその名前が浸透してきているようだ。さらに今回のツアーではお互いの曲をお互いがカバーしたスプリットシングル「Split!!!」も販売するという。「ケンドチョウライ」がイベントツアーの枠を超えてムーブメントになるのを願いつつ、hotspringのボーカル、イノクチタカヒロとYAPOOLのボーカル、石川蓮に訊いた。

●取材=森内 淳


―― 前回のインタビューではhotspringのEP「ANTHEM VOLT」のことについて語ってもらって、リリースツアーの東京公演を見せてもらったら、やはりライブもガラッと風景が変わっていて、お客さんの反応もすごくよかったですよね。

イノクチ お客さんも増えましたね。そういう印象はあります。まだまだですけど。

―― まわりのバンドマンの声を聞いたりリスナーの声を聞くと、hotspringへの期待も評価も高まっている印象はあります。

イノクチ 男性のお客さんが来るようになったんですよね。

―― 広がっている証拠ですね。

イノクチ とはいえ安心はできないですけど(笑)。

―― そこは気を引き締めてね(笑)。で、いい作品がいいライブにつながって、動員も増えるという好循環のなか、今度は去年につづき「hotspring x YAPOOL Split Tour 2024“ケンドチョウライ”」をやっています。そもそもYAPOOLとはどこで出会ったんですか?

イノクチ (石川)蓮と(水野)公翔が前やっていたANNIE DROPSっていうバンドがあって。コロナ禍で観客を20人しか入れられませんっていうときに新宿紅布で一回対バンをした記憶があって。それが最初の出会いですね。

石川 そうです。

イノクチ そこからすぐANNIE DROPSは解散しちゃったでしょ?

石川 解散しましたね。

イノクチ その後、1年くらいしたときに、ANNIE DROPSのメンバーが新しくバンドを組んだっていう話を聞いて。YAPOOLというバンドをやってるらしいということはなんとなく耳にしていて。対バンをしたのはYAPOOLが最初のEPかなんか作ったときだよね。

石川 そうですね。

イノクチ そのときにライブの企画に呼んでくれて。それが初共演ですね。ANNIE DROPSのときはライブハウスのブッキングだったのかな。hotspringをすごく好きな子たちがいるらしいっていうことで。じゃ一緒にやってみようかって。

石川 ギターの公翔から高校時代に「かっこいいバンドがいるぞ」ってhotspringを教えてもらって。上京して22歳の頃に忘れてモーテルズとhotspringの2マンライブのオープニングアクトに入れてもらって。

イノクチ オープニングアクトだったか。

石川 そうです。そこで初めて対バンをやりました。それが出会いになりますね。

―― 石川さんはhotspringをどんなバンドだと捉えていたんですか?

石川 無骨なロックンロールというのが最初のイメージで。

イノクチ そうなんだ(笑)。

石川 最初、ARABAKI ROCK FEST.の動画をYouTubeで見たんですよ。そのときは「45回転」をやっていて。その動画を公翔と2人で見て「かっこいい」となって。そこからですね、hotspringを2人で追いかけ始めたのは。

イノクチ YAPOOLと最初に対バンしたときに、やっぱり俺たちっぽさというか「ああ、hotspringを好きなの、わかるよ」って思った(笑)。同じような系統の日本語のロックンロールって感じだよね。日本脳炎とか好きなのかな。

石川 そうですね。

―― すぐに意気投合するんですか?

イノクチ 最初は普通に「対バン、お疲れ!」って感じだったんですけど、その後もちょいちょい対バンとかあったんだけど、意気投合したのは去年の「ケンドチョウライ」のときかな。「一緒にスプリットツアーをやりませんか?」ってYAPOOLが声をかけてくれて。去年は3ヵ所やったのかな?

石川 3ヵ所やりましたね。

イノクチ 3日間、まわって距離が縮まった感じだね。

石川 メンバー全員がhotspringが大好きなので、スプリットツアーをやりたいという意見がメンバー全員から出て。じゃオファーしちゃおうってただの勢いで言ってみたら受けてくれたので(笑)。

イノクチ ははははは。

石川 その前から西永福JAMとかのブッキングイベントでもちょくちょく対バンをやってもらっていたので、思い切ってオファーさせてもらいました。それで去年は京都と大阪と名古屋をまわって。

イノクチ そのツアーがけっこう面白かったんだよね、俺のなかでは。

石川 面白かったですね。

イノクチ バンドの調子がよくないわけではないんだけど、次に行きたいんだけど行けないみたいな、モヤッとしてる時期で。そのとき若手のバンドといっぱい共演したりしてね。前のインタビューでも話しましたけど、このままじゃ勢いで若いバンドに負けちゃうなあという。そういうときに「ケンドチョウライ」のツアーをやって。毎晩YAPOOLのライブを見ていると、やっぱり勢いがすごくて。そのときのhotspringにあまりなかったような衝動のようなものがYAPOOLにはあって。正直ね、3日間あって、たぶん2日くらいは「あ、負けた」みたいな感触があって。それで俺らけっこうムキになって、そこでひとつ抜け出せたような感じがありましたね。そのとき思ったのが、新しいものがないとツアーをまわるモチベーションもないとということで、それで「流行病」を無理やり作って。そのツアーで新曲としてやりだして、こないだ出したEPの「ANTHEM VOLT」を作るとっかかりにもなって。だからそういう意味でもhotspringにとって印象深いツアーだったかな、と。

―― それはYAPOOLの音楽性に刺激を受けたのか、それとも若さなのか……

イノクチ どっちもあると思いますよ。いろいろ経験するとわかってくるところがあって。ここは少し力を抜いてもいいんだとかってあるじゃないですか。YAPOOLはそういうのも何もわかってなくて、すげえがむしゃらにやってるんですよ。何も計算してない、みたいな。その計算のしてなさがすごくかっこよくて、眩しく見えちゃったんですね。

石川 「流行病」が「ケンドチョウライ」ツアーから生まれたということを以前、イノさんから聞かせてもらってて。それ自体が嬉しかったんですけど。その前から僕らのライブを見ていてムキになっていたことも感じてたりしたんですよ。それが次のライブのモチベーションにも絶対につながってもいたと思うんですよね。

イノクチ うん。

石川 そのしのぎ合いをやってる側も感じることができていて、それを見ているお客さんも絶対楽しいだろうなあっていうのがありましたね。

―― それが名作につながったという。

イノクチ 名作って……いやいや。

石川 「ANTHEM VOLT」は名作ですよ。

イノクチ 名作ですね(笑)。それが大きいですよ、ほんと。

―― 逆にYAPOOLがhotspringに刺激を受けたところはありますか?

石川 hotspringにはどうでもよさ感があると思うんですよ。とくにイノさんには。それはすごくいい意味なんですけど。ボーカル像としてそれの究極形なのかなというのはありますね。それがライブで随所に見えるところがいいなあって。僕にはできないなあっていうのがありますね。ジェラシーですね。

イノクチ どうでもよさ感?

石川 そうです。かっこいいんですよね。だらしなさ感というか。

イノクチ 俺がそういう性格だからじゃないの?

石川 いやいや(笑)。でもそれがライブで見えるのはよくないですか? かっこいいですよね、それが。

―― ちょっとルーズな感じ?

石川 そうです、そうです。そういうところを真似できないんです。ステージに上がるとかっこつけちゃうんですよね。そういうところがどうしても出ちゃうんで。

―― そこも若さなのかもしれないですね。

石川 かもしれないですね。

―― 去年の「ケンドチョウライ」は両バンドにとっていろんな発見があって有意義だったんですね。

イノクチ だと思います。

―― それで今年もやろう、と。

イノクチ やっぱツアーをまわっていると意気投合しますしね。しのぎを削ると。だけど10ほど年齢は違いますけど、あんまりその違いは感じないですね。YAPOOLは感じてるかもしれないですけど。

石川 僕らも感じてないです。hotspringってめっちゃ若いんですよ。行動もですけど(笑)。メンバーみんな、遠慮もないと思います。でも失礼なことをしていたらすみません(笑)。

イノクチ いやいや(笑)。オオサカユウヤとかね(笑)。それはその都度、注意するから(笑)。

―― 「ケンドチョウライ」のシーズン2をやろうと思ったのはどういう経緯だったんですか?

イノクチ 自然と「今年もやりませんか?」という感じで。

石川 早い段階からそんな感じでしたね。

イノクチ たぶん春くらいからやろうって言ってたよね。今年は自分たちで声をかけて各地でゲストバンドを入れて、去年よりも規模を大きくというか、そうやってやろうということになって。今、俺のマネージャーをやっているアベさんっていう人とYAPOOL側のベースの(久留島)風太が話し合って、去年と同じふうにまわるのも面白くないから、何かグッズを作ろうということになって。そこでしか買えない音源があったら面白いんじゃないかということで1曲ずつお互いの曲をカバーしてみようかって。

―― それがスプリットシングル「Split!!!」なんですね。お互いの曲をカバーしようよというアイデアはどこから出たんですか?

イノクチ それも自然と出てきました。そういうのだったら俺たちも面白いし、お客さんも共通のファンが多いので喜んでくれるんじゃないかなって。何をやるかは各バンドで決めて。YAPOOLの「レイトショー」は俺が一番自然に歌える曲だったんですよね。対バンをすると後が俺らだったりするので、袖からYAPOOLのライブを見ていて「レイトショー」が始まると、一緒に歌っていたので(笑)、歌いやすいのは自分でもわかってたし。このノリをhotspringでやれば絶対にハマるなということはなんとなくイメージできたので、そこはバンド内で話したときも「カバーするなら“レイトショー”じゃない?」っていう具合に。やりながらアレンジを考えてね。

石川 「レイトショー」をカバーすると聞いて、「やっぱりそうきたか」と思いましたね。「レイトショー」ってぼくとギターの公翔が掛け合いで歌っているんですよ。それをhotspringがどうやってアレンジしてくれるのかなっていうのはすごく楽しみでした。

イノクチ 蓮くんと公翔が何小節かずつを別々に歌うところをメンバー全員がそれぞれ歌う箇所を作ろうと思って。あとはもう後半の転調とテンポアップしたというところかな。俺らけっこう素直にカバーしたよね?

石川 そうですね。変わったのは後半くらいですもんね。

―― ライブでは披露しているんですか?

イノクチ このツアー中はやっています。めちゃめちゃいい感じで。千葉LOOKは大盛り上がりでした。悲鳴が上がりました(笑)。

石川 hotspringは千葉LOOKの1曲目に「レイトショー」を持ってきたんです。

―― え、そうなんですか?

イノクチ はい(笑)。

―― 狙ってました?

イノクチ 大当たりで(笑)。

―― お客さんは意表を突かれますよね。とくにYAPOOLのファンは。

石川 ですね(笑)。

―― YAPOOLはhotspringの「ダンダンダンダンッ」をカバーしました。

石川 けっこう試行錯誤したんですよ、どの曲をやろうかって。

イノクチ いろいろ言ってたよね?

石川 「リズムの奴隷」とか。YAPOOLに合いそうだなっていう曲をみんなで探していたんですけど、自分らっぽい曲を選ぶのは面白くないなということになって、逆にYAPOOLっぽくない曲を選ぼうと。ただhotspringのライブのなかでちゃんとセットリストに組み込まれているような曲から選ぼうとは思っていました。それで「ダンダンダンダンッ」を選んで。それをどうやって改造しようかっていう。けっこう改造ありきだったんですけど、そこでYAPOOLらしさを出すかというか。結果、かっこよくなったかなあとは思います。原曲よりけっこうテンポを速くしたので難しかったですけど。

イノクチ YAPOOLっぽくはなってたよね。

石川 はい。

イノクチ 別々にレコーディングしたので、聴くまで出来上がりがわかんなかったんだよね。で、「レイトショー」のレコーディングの日にYAPOOLから完成した「ダンダンダンダンッ」のデータが送られてきて。「できたらしいぞ」って、ちょっと焦った(笑)。「こんなアレンジをしてるんだ?」って。俺らはわりとまっすぐカバーしようとしていたので「大丈夫かな?」って(笑)。

―― シングルはどこで手に入るんですか?

イノクチ 会場限定で。あんまり枚数を作っていないんでやばいんだよね。

石川 初日で半分くらい売れたんです。

イノクチ 12月6日の東京ではどうなってるんだろう? 今からじゃ追加発注もできないし。追加発注したところでツアーが終わってしまうとクソ余るからね。売れちゃったらサブスクで出そうかな。ツアーが終わったあとに。聴きたいのに聴けないというのは可哀想なんで。

―― シーズン2は12月6日の最終公演までまだまだ盛り上がりそうですね。

石川 これからツアーの日程が怒涛になってくるんですけど、hotspringとまわったことのないライブハウスも行きますし、去年より絶対面白くなるなと思います。

イノクチ 去年よりもちょっと大きい感じでできているし、去年のツアーのときと同じで、また次のhotspringを探っている時期なんで、また新曲をツアー中にやりたいなと思っています。

―― またそういうモードになりましたか。

イノクチ 一発かましたいですね。まだ完成してはいないんですけど、オケだけはあるんですよ。「ケンドチョウライ」は新曲を発表する場にしようと思ってるんです。

―― それは面白いですね。これはもう言い出しっぺのYAPOOLからしたら光栄なことですね。

石川 ひじょうに光栄です。だから僕らも今回は新曲をいっぱい披露していこうかなって。かまし合っていきたいな、と思ってます。

イノクチ いいかまし合いができてるよね。このイベントをもっと大きくしていけたらいいなと思って。

―― 年々、「ケンドチョウライ」のツアーの規模とライブハウスの大きさを大きくしていくという目標があるといいですよね。

石川 そうなったら楽しそうですよね。

―― ということは今後も「ケンドチョウライ」は続けるんですね?

石川 続けたいです。

イノクチ 年一の恒例行事にしたいです。

―― このイベントがいい作品につながっていけばいいですよね。実際、hotspringの場合、そうなっているし。YAPOOLもアルバムをレコーディングしているんですよね?

イノクチ レコーディングは終わったの?

石川 もうちょっとですね。曲は録り終えて、あとはミックスとマスタリングですね。

イノクチ 何曲、録ったの?

石川 CDに残していない曲も入れるので、録ったのでいうと7曲ですね。全部で9曲入りの予定です。

―― 「ケンドチョウライ」の成果は出ていますか?

石川 出てますね。それは常々バンド内で話していました。

―― このイベントは将来的に面白いことになりそうですね。

イノクチ 去年より今年のほうが手応えはあります。東京は2マンでやるんですけど、基本は各地のライブハウスでもう1バンドを呼んで3マンでやってるんで。いろんなバンドを巻き込んで「ケンドチョウライ」を大きくしていければいいなと思ってます。

© 2024 DONUT

INFORMATION

CD 「Split!!!」
2024年11月2日リリース
収録曲:1.レイトショー(by hotspring)/ 2.ダンダンダンダンッ(by YAPOOL)
※会場限定販売

LIVE

​hotspring x YAPOOL Split Tour 2024“ケンドチョウライ”
2024年
11/02(土) 千葉・千葉LOOK w/the myeahns
11/22(金) 大阪・心斎橋BRONZE w/KiNGONS,THE NUGGETS
11/24(日) 愛知・名古屋CLUB UPSET w/climbgrow
11/29(金) 兵庫・神戸VARIT.  w/Gill Snatch,DNA GAINZ
12/06(金) 東京・下北沢CLUB Que

■ライブの詳細は諸事情により変更になる場合があります。必ず公式サイトやSNSで最新情報を確認してください。また上記以外のイベントの出演情報なども公式サイトやSNSでご確認ください。
公式X:https://x.com/hotspring_band

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