2024.7.23 upload
ポール・マッカートニー写真展 1963-64〜Eyes of the Storm〜
2024年7月19日(金)〜9月24日(火)六本木ヒルズ・東京シティビュー
2024年10月12日(土)〜2025年1月5日(日)グランフロント大阪 北館 ナレッジキャピタル イベントラボ
●テキスト=森内 淳
●写真=MPL Communications © National Portrait Gallery, London. Exhibition curated by Sir Paul McCartney with Sarah Brown on behalf of MPL Communications Limited and Rosie Broadley for the National Portrait Gallery, London, and presented by Fuji TV.
Self - portrait. London, 1963
© 1963 Paul McCartney under exclusive license to MPL Archive LLP
「ポール・マッカートニー写真展 1963-64〜Eyes of the Storm〜」は2023年ロンドンのナショナル・ポートレート・ギャラリーのリニューアルオープン記念として開催され、好評を博した。その写真展が六本木ヒルズの東京シティビューで開幕した。
本展覧会の写真の数々はポール・マッカートニーが所有していたペンタックスの35ミリカメラによって撮影されたもの(このカメラの入手先は不明だという。展覧会では同じ機種のペンタックスが展示してあった)。今回、会場に展示されている約250枚の写真は、そのほとんどの写真がポールの視点で切り取られている。なかにはポールが被写体のものもあるが、それらはポールのカメラを使ってスタッフや知人が写したものだ。これらは2020年にポール個人のアーカイブから発見された1000枚の写真のなかから厳選された。60年間、ネガやコンタクト・シートのままプリント化されてこなかったものばかりで、ポール自身もプリントされたものを見るのは初めてだったそうだ。
撮影期間は1963年12月から「エド・サリバン・ショー」でアメリカを席巻した1964年2月までの約3ヵ月間。たった3ヵ月の記録ではあるけれど、ビートルズの活動自体が8年間だったことを考えると、決して短い時間とはいえない。しかもこの3ヵ月はイギリスのロックンロール・スターから全世界のロックンロール・スターへと変わる、そのターニングポイントにあたる時期だ。バンドにとっても最も重要な時期をとらえた貴重な資料ともいえる。
John and George. Paris, January 1964
© 1964 Paul McCartney under exclusive license to MPL Archive LLP
ここに写っているビートルズは記者会見や取材や有名人に会うときの(つまりぼくたちがよく目にしてきた)「かまえた」ビートルズではない。これが本展覧会の最大の特徴だ。ここにいるジョン・レノン、ジョージ・ハリスン、リンゴ・スター、そしてポールは肩の力が抜けている。余所行きではなく素の状態だ。なかには居眠りしているジョージ・ハリスンの写真もある。ジョンもリンゴも自然体であることが表情や仕草にあらわれている。なので、メディアに掲載するには没になりそうな写真や構図が決まっていない写真も多い。しかし、それがよりドキュメンタリー感に拍車をかけている。 メンバーだけではなく、マネージャーのブライアン・エプスタインやロードマネージャーのマル・エヴァンスを始めとしたビートルズを支えたスタッフたちの写真も素に近い(飛行機のなかのブライアン・エプスタインの表情がいい)。それからメンバーが乗った自動車を追いかけるファンの姿(映画『ハードデイズ・ナイト』の冒頭シーンのアイデアになったという)、ビートルズを護衛する警察官、マスコミなど「ビートルズ現象」を形作ったありとあらゆる要素がポールの視点で切り取られている。
Ringo Starr. London, January 1964
© 1964 Paul McCartney under exclusive license to MPL Archive LLP
この写真たちに囲まれていると、当時のビートルズの熱狂の渦のなかにいるような錯覚に陥る。ビートルマニアの歓声やビートルズを前に騒然とするマスコミたち、楽屋での息づかいが聞こえてくる(聞こえてきそうではなく、はっきりと聞こえてくる)。この空間にたたずんでいると、いつしかビートルズと一緒に旅しているような感覚にすらなる。ビートルズのドキュメンタリー映画のなかに放り込まれたような気分だ。 こういう疑似体験ができるのも展覧会というライブならではだ。すでに写真集として発売されているので、ファンのなかには見飽きるくらい見たという人もいるかもしれないけれど、この展覧会での体験は本をめくるのとはまったくの別物といっていい。本を、ライブ映像をおさめたDVDやBlu-rayに例えると、この展覧会はライブそのものだ。
West 58th Street, crossing 6th Avenue. New York, February 1964
© 1964 Paul McCartney under exclusive license to MPL Archive LLP
エントランスにはオリジナルのフォトスポットが設置してあるほか、高さ2mを超える巨大なビートルズのメンバーの写真パネルが置いてある。これは日本独自の演出だという。それからブライアン・エプスタインが所蔵していたビートルズのブロンズ像も展示してある(これはパリで作られたもので、そのときの写真も展示してある)。またブルームバーグ・コネクツ・アプリをスマートフォンにダウンロードすると、ポール自身の解説を聞くことができる。 エントランスの時点で、この展覧会をつくっている人たちの情熱が伝わってくる。ポール自身も協力的で、写真のフレームから壁の色まで決めたそうだ。ポールが写真で綴った熱狂渦巻く63年〜64年のビートルズを、ビートルズ現象を、彼の日記を読むように楽しんでもらえれば、と思う。
© 2024 DONUT
EXHIBITION INFORMATION
「ポール・マッカートニー写真展 1963-64〜Eyes of the Storm〜」
<東京>
会場:東京シティビュー (東京都港区六本木6丁目10−1 六本木ヒルズ森タワー52階)
会期:2024年7月19日(金)〜9月24日(火)
開館時間:10:00〜19:00(金土は〜20:00 ※入館は閉館の30分前まで)
入館料(税込):一般2,600円/学生(高校・大学生)1,800円/子供(4歳〜中学生)1,000円
TICKET:https://www.eyesofthestorm.jp/ticket.html
<大阪>
会場:グランフロント大阪 北館 ナレッジキャピタル イベントラボ
会期:2024年10月12日(土)〜2025年1月5日(日)
休館日 :2024年12月31日(火)、2025年1月1日(水・祝)
詳しくは公式サイトまで:https://www.eyesofthestorm.jp/
The Beatles INFORMATION
■ 1964年2月7日、ザ・ビートルズのメンバーらは未曾有の熱狂と歓迎に包まれ、初めて米ニューヨーク・ケネディ空港に降り立った……ザ・ビートルズ初訪米と彼らの絆を鮮明に映し出す完全新作ドキュメンタリー『ビートルズ ’64』がディズニープラス「スター」で2024年11月29日より独占配信。
■ 2024年11月22日、アメリカでリリースされた7作のアルバムに焦点を当てたアナログ盤ボックス・セット『ザ・ビートルズ:1964 U.S.アルバムズ・イン・MONO』を11月22日にリリース。
■くわしくはレーベルサイトまで:https://www.universal-music.co.jp/the-beatles/news/2024-10-15/
Paul McCartney INFORMATION
『ワン・ハンド・クラッピング』
2024年6月14日リリース
収録曲:【Disc1】1.ワン・ハンド・クラッピング/2.ジェット/3.ソイリー/4.C・ムーン/リトル・ウーマン・ラヴ/5.メイビー・アイム・アメイズド(恋することのもどかしさ)/6.マイ・ラヴ/7.ブルーバード/8.レッツ・ラヴ/9.オール・オブ・ユー/10.アイル・ギヴ・ユー・ア・リング/11.バンド・オン・ザ・ラン/12.007死ぬのは奴らだ/13.1985年/14.ベイビー・フェイス【Disc2】1.レット・ミー・ロール・イット/2.ブルー・ムーン・オブ・ケンタッキー/3.パワー・カット/4.ラヴ・マイ・ベイビー/5.レット・イット・ビー/6.ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード/レディ・マドンナ/7.ジュニアズ・ファーム/8.サリー・G/9.トゥモロウ/10.ゴー・ナウ/11.ワイルド・ライフ/12.ハイ・ハイ・ハイ